16 何も起こらないわけない(前)
悪役令嬢や聖女が登場してくる話が大好きで、読んでいるうちに楽しくなって、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。
今作は宇宙が舞台のSFになってます。
短編のつもりだったのに、登場人物の裏のつながりが見えてきて、それを拾っていたら思ったより話が長くなってしまいました。あともう少しです!
あきれずに最後までお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
アキラはアーサーに変装し、大学に向かう車の後部座席にヘンリーと座っていた。
現在12時半を過ぎたところ。
大学の式典は午後2時からなのだが、1時半には到着していなければならないので早めに動いている。
運転しているのはビル。ヘンリーの運転手兼護衛だ。
助手席には礼がスーツを着て座っている。
午後1時になる前に大学の駐車場に到着。
車を降り、出迎えに出てきた大学の関係者と会場内の控室へ移動する。
対応や会話はヘンリーに任せ、アキラは礼をしたり「はい」と返事したりするくらい。
兄の後をついていく弟を演じている。
「おーい! ヘンリー!」「今日は来賓か?」とすれ違う学生から声をかけられる。
そっか、ヘンリーさんはここの学生だった。
何を専攻しているんだろう? 聞いてなかったな。
アキラは周囲に気を配りながら、ヘンリーの後姿を見やった。
何も起こらないといいな。
ヴェスがそろそろ応援と合流して入国してきているはず。
元国王の屋敷に向かうことになっている。
控室に到着すると学長とか理事長とかが来て挨拶をされた。
元国王家、今は平民といっても、まだまだ王として慕われていることが伝わってくる。
午後2時になり式典会場へ移動しようという時に式典のスタッフらしい人が控室に飛び込んできた。
「式典を妨害するために爆弾を仕掛けた! と脅迫がありました。
調査中のため、しばらくここで待機をお願いします!」
ビルと礼が部屋の中を再確認する。
「大丈夫そうですね」とビルが言った時、近くで爆発音が聞こえた。
「会場の方からです!」と礼。
ビルが「見てきます!」と出て行こうとするのを礼があわてて止める。
「警護対象者から離れない!」
ヘンリーが舌打ちした。
隣にいたアキラにしか聞こえないほどの小さい音だったが……。
「ビル、確認して来てくれないか?」とヘンリーが言い出す。
礼もアキラもぎょっとする。
「ビル、頼むよ。外の様子を知りたいんだ!」
ビルは戸惑いながら礼を見るが、礼はあきらめてうなずく。
ビルが出て行くとすぐ戻ってきて「こちらから移動するように言われました」と言った。
「誰に? そしてどこに?」と礼が言いかけるが、それを遮るようにしてヘンリーが「近くに私の研究室がある。そこなら安全だ」と言った。
礼が躊躇している。アキラも何かおかしいと思い始めていた。
控室から出て、建物の外に出ると式典会場の講堂から黒い煙が少しだけ上がっているのが見えた。
何かが焼けたようなにおいもする。
スタッフが何人か走りまわっているのが見えた。学生などが近づかないように規制をしているようでこちらには誰も気が付いていない。
「研究室はあっちだ」
ヘンリーが人の姿が見える方向とは逆の方を指差す。
あれ、あっちって……。
アキラが立ち止まっていると「早く!」とヘンリーに腕をつかまれ引っ張られる。
「兄様、スタッフに移動したことを知らせないと!」
アーサーを演じながらアキラが抵抗する。
「ビル!」とヘンリーが大声を出した。
するとビルが礼の顔に何かスプレーのようなものをかけようとした。
「礼! 顔!」とアキラは叫び、駆け寄ろうとするがヘンリーに腕を引っ張られ止められる。
礼が顔を手で覆うがすべては避けきれず、その場に崩れ落ちるように倒れこむ。
ビルも噴射物から逃げるように素早く礼のそばを離れた。
アキラが身をひねってヘンリーの腕から逃れると、礼に駆け寄り、その場に座り込むと礼の容態を調べようとする。
礼がヘンリーとビルから見えないようにアキラの身体を盾に死角になっているのを確認すると、片手を顔から外し、アキラのポケットに何かを滑り込ませ、うなずき、またすぐ顔を覆う。
「礼!」
アキラはビルに腕をつかまれ強引に立たせられ、ヘンリーの後を連れていかれる。
アキラ達の姿が見えなくなると、礼がその場に起き上がるがすぐには立てず、座り込んだまま大きく息を吐いた。
「やられたわ……、失神系の薬剤か……。アキラにはなぜ使わない? アキラが目的?」
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!




