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第四話

「望むところだ」

 堂々とセドリックは言い返す。

「罪というのならお前にも思うところがあるだろう。覚悟するのはお前の方かもしれないがな」

「……何?」

 眉を不機嫌な角度につりあげると、グレイシアは言った。

「よくもそのようなことを……!」

「身に覚えがないか? それならそれで構わない。暴くまでだ」

「暴く、ですって」

 怒りで思わず席を立とうとした彼女をアンが肩を押さえて止めた。

「お座りください」

 ぎりと歯ぎしりの音が聞こえるかと思うくらいに、グレイシアは唇を切り結ぶと、アンをひと睨みしてから席に座りなおした。

 その様子を冷静に眺めた後、改めてパドフに向き直るとセドリックは言った。

「失礼した。話を戻そうか。……その古地図を頼りに俺の部下たちは地下から城に入り、近衛兵の制服を着て今、ここにいるというわけだ」

「正体をあらわすタイミングを計っていた、と。これは恐れ入った。しかし、これからあなたは何をしようというのです。罪を暴くなどと物騒なことを言っているが、こんな騒ぎを起こしてしまっては、謀反と言われて断罪されるのはあなたたちの方かもしれませんぞ。あなただけでなく、部下の命も危険にさらしていることはお判りでしょうな?」

「ああ、判っている」

 セドリックはゆっくりと辺りを見回した。

「それが判っていても、やらなければならないのだ」

「何をしようと? ご自身の潔白を証明するのならもっと穏やかなやり方があったはず」

「それだけではない」

 セドリックはこちらを睨みつけているグレイシアを一瞥してから言った。

「いまここですべての真実を解き明かす。どのような結末になろうとも。

パドフ少佐、あなたはそこで一部始終を見ることになる。あるいは世にも忌まわしいことを知ることになるかもしれないが、しかしその目を閉じずに最後まで見ていて欲しい。他の者もそうだ」

「証人になれと仰っておられましたな。しかし真実とは……何のことです?」

「それは」

 一呼吸おいてセドリックは言葉を継いだ。

「先ずは、我が母、エメリア妃殺害の件だ」

「……殺害?」

 場内の空気が一瞬にして張り詰めた。

 それは誰もが心の奥で密かに疑いを持っていた事だったが、言葉にすることなど到底できなかった。全員が恐れるように息を呑み、助けを求めるように視線を彷徨わせた。

「で、殿下」

 あえぐようにパドフは言った。

「エメリアさまはご病気で……」

「そうだな、確かに母は病気だった。だが、その病気の母を死に追いやったものがある」

「殿下、おやめください」

 パドフは声をひそめてセドリックに言った。

「それ以上、突き詰めれば、あなたにとって大切なものすべてが壊れてしまうかもしれませんぞ。あなたはグレイシア王妃だけでなくお父上を、国王陛下を敵に回すおつもりですか」

「……すべては母の死から始まっている。そこからこの国の歪みが始まっているのだ。だからこそ正さなければならない。誰が傷つこうと、何が壊れようと」

「誰が傷ついても?」

 パドフは隣に立つ令嬢を見た。

「それはこの方に対しても言われることですか」

「……何?」

 セドリックは初めてその存在に気が付いたというように、目を細めて黒いヴェールの小柄な女性をみつめた。

「そこにいるのは……」

「この方はあなたの大切な方でしょう?」

 パドフの言葉に()されるように、令嬢は顔を上げてセドリックをみつめ返した。そしてゆっくりと彼の傍へと歩みを進める。

「待て。どうしてあなたがここにいるのだ?」

 はっと息を呑むとセドリックは言った。

「あなたがここにいることを誰も望んではいないはずだ」

 肩越しに振り返り、彼はそこにいる第一部隊の面々を見回した。そして、最後にユーリを見る。

「……お前は知っていたのか?」

「まさか」

 呆然としているのはユーリもまた同じだった。彼はゆっくりと首を横に振った。

「こればかりは計算外です」



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