002_預かった第二の人生
朝が来て、夢から醒める。
誰だって経験したことがある感覚だろう。
夢の中って平素の自分じゃ取らない行動をするあたり、別の自我で動いてるみたいだよな。
でも偶々夢を覚えたまま起きても、すぐ普段の自分に戻るだろう。
夢なんて数時間の経験に過ぎないから、これまでの自我が勝るわけだ。
じゃあ···もし22年の夢から醒めた時、普段の自我はどうなるのか?
なんとも言えない奇妙な感覚だ。
12年間、俺は農家の息子であるレオンとして生きてきたはずだ。
しかし今朝経験した22年の人生と、死に際の恐怖はあまりにも鮮明で、自分がレオンなのか矢切好真なのかわからなくなりかけた。
暫くのあいだボーッとしていた気がするが、落ち着きと共に記憶も定着してくると、俺は自分を説明できる···
俺はレオンだ。
だが、前世を22年生きた情けない人間でもある。
突然前世を思い出しはしたが、レオンとして人生を歩んできたんだ。
レオンが昨晩食べたメニューも思い出せる。
あのソーセージ美味かったな。
だが矢切好真の人生も思い出せる。
レオンと矢切は性格が異なるように感じたが、思えば矢切も学生時代は楽しく過ごした。
レオンの性格は若かりし頃の自分と似ていた。
おかげで統合されたのに違和感がないが、思考体系は既に大人びて、レオンが感じてきた人生の主観の大きさが無くなってしまった···
保健の授業で習ったような気がするな、客観性の認知とかそういうやつ。
レオンはこれまで人生を楽しんでいたんだが、今となっては同じように楽しめるかわからないな。
さて、自問自答のようにレオンと矢切を分けて説明してみたが、なんというか両方とも既に「俺」だ。
レオンでもあり矢切でもある。
そうなると矢切だった部分の気持ちが、自殺したはずなのに線続きで別の人生が始まったことに困惑してきた。
もう一度死ぬべきか?
いや、矢切として他人の命に責任感が働く上、レオンに希死念慮はない。
これから第二の人生をまともに歩めるか不安はあっても、今は生きねばならないだろう。
レオンの日常を始めなければならない。




