表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

001_今世の旅立ち

昔から人間が生きる理由が理解できなかった。

仕事、家事、勉強。

楽しいこともあれど、こんな面倒な事までしてわざわざ生きて楽しいのかと。

それでも多くの人間は生きているし、大人になるまでには何か悟るのだろうと期待して生きてきた。

学生時代は働かなくてよいし。


そのまま社会人になり、やはり生きる必要性を理解できなかった時、残るのは仕事や家事といった日常の苦痛のみだった。

労働環境は大いに普通で、実家暮らし故に一般的な単身者より家事もやってないが、それでも生きるのが面倒だった。


人生の幸福という株価は暴落して、今後も下がり続けるだろうと思った。

ならば自殺して損切りするのが合理的だろう。

だから自分は死ぬことに対して、多少の恐ろしさはあれど悲観的ではない。


では何故今日まで死んでいないのか?

理由は一つ、母が可哀想だからだ。

子供が自殺した報せを聞かせるのは親不孝だからな。


つまり生きれば苦痛が伴い、かといって死ぬ事も気掛かりだ。

板挟みだな。

でも、いつまでも苦しむわけにいかない。

母には悪いが、俺にも幸せになる権利がある。

幸せというよりかは不幸の回避であって、結末は死だけれども。


まぁここまでの内容と、個人宛のあれこれを遺書に書き留め、実家からタクシーで去ったのが真夜中の出来事。

降りた先で歩き辿り着くは、とある採石場跡地だ。

少なめの迷惑で死のうと思っても、検索結果は自殺止めなさいのページしか出なくて···

飛び降り自殺で思いついたのがここしかなかった。

家族と何度か来た観光スポットだし、ここで死ぬのもどうかと思うが、まぁ我慢してくれ母よ。

妹はまだ学生だし母が俺の後を追う心配はない。


さて···いざ断崖絶壁に立ってみると、やはり死ぬのが恐ろしいものだ。

ちょっと胡座を組んで人生を振り返り、心を落ち着ける。

しかし最後には母が悲しむ姿が思い浮かび、申し訳なさで涙が頬を伝う。

気づけば日の出の時間だ。

片道の駄賃で来たから帰りは歩きになるが、それでも、自宅へ帰れば何事もなく日常が続くだろう。


最後の最後まで悔やみきれない気持ちで一杯だったが、俺は崖へ身を投げた。

ごめんお母さん、こんな怠慢な人間で···

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ