第132話 やっぱりこいつら賊だよ……
〈境界の魔鏡〉の先に、隠された部屋がある。
それが分かってからは、一気に探索が進んだ。
これまでの道を戻り、もう一度部屋を探索。鏡を片っ端から調べていく。
中には罠だけの部屋があったりと、やはり美味い話だけではなかったが、慎重に〈斥候〉の人が調べたおかげで、幸いなことに死者はない。
そしてさらに二カ所の宝部屋を見つけ、封印の起点を破壊できた。
当然、その中には金銀財宝が!
さすがに〈貞淑の指輪〉のような規格外のマジックアイテムこそ見つからなかったが、財宝の煌びやかな輝きはそれに負けず劣らずの美しさだった。
「ふへへへっ! まさかこんなおまけが手に入るとはな」
「会長の嫁探しだけのつもりが、思ってもない幸運だ」
「全部売れば数億は確実にいくな。ただ捌き方には気を付けねぇとな」
「ああ、悪魔の拠点にこんな物があると知られたら、他の奴らも黙ってないだろうからな。バレるにしても俺らが全部回収してからでないと」
世永さんのメンバーも、この望外の幸運には大変満足そうだ。
俺の嫁作りの為だけに付き合わせたようなものだから、ちょっと申しわけないと思っていた。これが依頼料代わりになるのなら俺もありがたく思う。
だから、別に独占してもらってもいいんだけど……。
「世永さん、本当にいいんですか? 俺らまで財宝の分け前を貰っちゃって。探索の護衛までしてもらってるのに……」
「良いに決まってるだろ。探索を共にしたメンバーで山分けするのが探索者の常識だ。そもそも小畑さんが鏡の秘密に気づいたおかげで手に入った物だし、これから他の拠点の財宝を拾うこともできる。それを考えればむしろ俺らの方こそ、情報料としてこれ全部渡してもおかしくないくらいだ」
ああー、まぁ言われてみればその通りか。
これから〈歌舞伎町ダンジョン〉の財宝を全て独占することに比べれば、これ一回きりを渡しても惜しくはないかもしれん。
「それにだ。ここで俺らがこの財宝を全部貰ったってあとで知られたら、アイツらに何を突っ込まれるか分からんからな」
「ああ、それは確かに……」
――会長から搾取したのかテメェ!?
――これは忠誠心が疑われますねぇ!
――こいつは紛れもなく小畑会への反逆だよなぁ!?
そう言いがかりをつけて、なにやら重大なペナルティを押し付けることもありえないとは言いきれない。ホム嫁製作の順番を後回し、とか。
おかしいな。味方のはずなのに、一番油断できないのが身内ってどうなってるんだろう?
「財宝を捌くのに時間はかかるが、それは勘弁してくれ。安易に人目のあるところで捌けない以上、どうしてもな」
「もちろんですよ。いくらでも待ちますんで、高く売っちゃってください」
「ああ、任せてくれ。それと気に入った物があれば、いくつか持って行ってもいいぞ。こんだけあればそれくらいはサービスする」
「そうですね。俺はともかく、あの二人は欲しがりそうですからね……」
「うーん……これはちょっと派手かしらね?」
「そうだね~。でも、一個くらいお出かけ用に欲しいかもっ」
七緒ちゃんもチヨちゃんも、宝石が使われたアクセサリーを次々に手を取り、嬉しそうに悩んでいる。
七緒ちゃんの頭に被されたダイヤのティアラや、チヨちゃんの首に掛けられたルビーのネックレスが眩しく輝いていた。
二人に似合っているし、とても良いと思うけど、よくそんなものを身に着けて平然としていられるものだ。その図太さが羨ましい。
「俺らはアクセサリーに興味ないしなぁ。……いや待てよ。将来の嫁の為に一つくらいは貰っておくか?」
「それだっ! 俺もロリ嫁の為のプレゼントを用意しないとっ!」
「僕も森山さん用に一つ貰おうかな。エルフなら何が似合うかな。やっぱりルビーかな? それとも琥珀だろうか?」
うーん、と悩む伊波に、俺と川辺はイラッとしたものを感じた。
いや、いいんだよ。上手くいってなによりだよ。いいんだけどさぁ。
無自覚にマウント取りやがってよぉ……!
まぁなにはともあれ、思わぬ臨時収入も入りそうで何よりだ。
サキュバスを狩りに来ただけなのに、こんなに儲かってくると笑いが止まらねぇなぁ!
「よし、これまでの部屋は探索し終えたな。それじゃあ、いよいよ奥に向かおうか」
世永さんの指示に頷き、俺達はまた先に進む。
最初に〈境界の魔鏡〉を調べた書斎を通り過ぎると、廊下の角に突き当たった。
そこを右に曲がった先に、扉が見える。その扉を開けてみれば、これまで以上に強い香りが漏れ出してきた。
一瞬、フラッと視界が揺れる。立ち眩みのような感覚に慌てて足に力を入れ、その場に踏みとどまった。
「うっ。これ、けっこう匂いがキツイですね」
「そうだな。それにこいつは……ああ、なるほど。小畑さん達、ここからは気をしっかり持ってくれ。香炉に負けるなってだけじゃなく、何を見ても動じないようにな」
途端に、世永達の顔つきが変わった。
財宝を見つけて緩んでいたのに、いつ殺し合いが始まってもおかしくないような、剣呑な表情に。
なんだ? この先に何か危険なものがあるのか?
疑問に思いつつも、俺達は世永さん達の後に続いて部屋に入る。するとそこは薄暗い空間で、螺旋状の階段が地下まで降りていた。
下まではそう深くはない。階段から見下ろせば、それなりの広い空間が見える。
そしてその壁には、格子のような物がいくつも並んで見えた。
地下室で、薄暗くて、格子……これ、もしかしなくても。
「あの、世永さん。これって……」
「降りてみればわかるさ。行くぞ」
ズンズン進む世永さん達を、俺達はおそるおそると追いかける。
そして階段を下りて周りを見回し、上で予感した通りだったと確信した。
「やっぱり牢屋か。ってことはここ、地下牢か」
幾つもある檻の両脇には、西洋風の鎧がまるで門番のように飾られていた。
そして牢屋の中には、捉えた者を縛る鎖と、小さなツボがある。まさかとは思うが、用を足すものか?
中にあるのはそれだけで、他に何もない。本当に捉えた者を閉じ込めるためだけのものだ。人権無視も甚だしい。
もしこんなところに囚われたらと思うと、気が狂いそうだ。
「なんでサキュバスの館にこんな物があるんだよ……。夢が崩れそうなんだけど」
「当然、屋敷に侵入してきた者を捕まえるための場所だな。そして侵入するのは探索者以外にあり得ない」
つまり、人間を捕らえて逃がさないための場所であると。
改めて牢の数々を見回す。そして、視界の端にゾッとする物が目に入ってしまった。
明らかに人間だろうと分かる白骨化した遺体。その足首には、鎖が繋がれている。
思わず助けを求めるように、川辺に目をやる。
「あれってもしかしなくても……」
「まぁ、そうなんだろうな……」
「ここでサキュバスに死ぬまで搾り取られたということかな? せめてベッドが欲しいところだよね」
なんでもなさそうに言う伊波に、俺と川辺は顔をひきつらせた。
コイツ、この光景を見てなんでそんな冷静でいられるの?
「こんな薄暗い場所で殺されるのは嫌だな。サキュバスの館なら、せめて最後まで夢を見ていたい……」
「夢は見れるぞ? ここに閉じ込められた者は、二十四時間この香を吸い込み続けることになるからな。そうなれば思考がほとんど消え、出ようとも思えなくなる。サキュバスとの戯れの中、幸せな夢を見ながら死ぬことになるはずだ」
それただ殺されるよりよっぽど恐ろしんですけど!?
やっぱり予想よりずっと怖いなサキュバスの館! 希望はあっても絶望に繋がってやがる!
世永さんの話には、七緒ちゃんとチヨちゃんも青ざめていた。
「ここに閉じ込められるのって、やっぱり男だけじゃないわよね? インキュバスに夢中になったら女も同じか……」
「楓太さん達もそうだけど、お姉ちゃんも気を付けようね。本当に危ないよ」
「危ないっていうか、捕まったら死んだも同然だけどね。さすがにこれを見たら俺達だってサキュバスに恐怖を覚えるよ。というかこんな所にいるのも嫌だわ。早く探索してここから出よう」
想定外のサキュバスの恐ろしさを突き付けられ、俺達はここから逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。
何か変わった物はないかと改めて見回せば、広間の奥、壁の中央に、ドンと大きな香炉が置かれている。
いや、本当に大きいな。自宅に置いてある拠点用〈錬金釜〉よりちょっと小さいくらいのものだ。
その香炉からはみるみると煙が立ち込めており、そして香炉自体が怪しく光っている。
ここまで見つけた香炉に、あんな光を放ったものはなかったが……。
「世永さん、あれって?」
「ああ、結界の起点だな。香も止まるし、壊すに限る」
やっぱりそうか! だったら壊しましょ! そうしましょ!
こんな恐ろしい空間を少しでも和らげなければ!
「だが、そう簡単にはいかないようだ――構えろ! 来るぞ!」
世永さんの声で、〈不動戦士団〉のメンバーが瞬時に装備を構えた。
それに遅れて、俺達も周囲を警戒する。
反射的に備えたが、敵がいるのか? 一体どこに――あっ!
その次の瞬間、牢屋の両脇に置かれていた鎧が一人でに動き出す。
中は空洞の筈なのに、ぎこちないながらも人が入っているような動き。
鎧だけが動きだす、こいつらは――
「【魔物鑑定】――〈ホロウ・アーマー〉か! 初めて見た!」
悪魔と言うより、どちらかと言えば亡霊系統に属する魔物だ。
悪魔ではないが、この姿と特徴なら確かに悪魔系のダンジョンにいてもおかしくない。ましてやこんな、サキュバスの館ならばなおさら!
広間の中央に立つ俺達に迫るように、四方からホロウ・アーマーがゆっくりと距離を詰めてくる。
クソッ、罠か! こいつら、牢屋を守る為ではなく、侵入者を囲んで殺す為に置かれていたのか!
囲まれて動揺する俺達とは裏腹に、世永さんは冷静に周りを見回して言う。
「少し数が多いか。小畑さん、そっちにも任せるぞ! 小畑さん達はもう十分に強い! このレベルの相手なら問題なくやれる!」
「――ッ! 分かりました!」
当然のように戦力として組み込む世永さんの声に、俺は腹を据えた。
そうだ。護衛についてもらっているとはいえ、俺らもレベル30半ばに達している一流の探索者。この程度の相手なら十分にやれる!
「いつまでも弱いままじゃない。俺らが強くなったところを見せてやるか」
「お前は見ているだけで、戦うのはオレらだけどな」
「うっさいわ! だったらお前こそ見てろよ! 俺だって少しは援護してやる!」
「そこで前へ出ないのは、分を弁えていると評価すべきなのか、根性なしと見下すべきなのか……」
いちいちうるさいなこいつら! そこまで言うなら見てろよ! 本気で役立ってやるからな!
「~~~~♪ ~~~~♪ ――」
いつものように七緒ちゃんが歌う。
敵はいかにも物理攻撃を得意としそうな鎧の魔物だ。それに対抗するように、効果は攻撃と防御のバフ。順当な選曲だろう。
なら、俺がやるべきは――
「これでも食らえ!」
アイテムポーチに両手を突っ込み、試験管を取り出す。それを俺は周囲にばら撒いた。
ホロウ・アーマーに当たると、パリンッと試験官が割れ、中の薬が鎧にばら撒かれる。
その薬は鎧に触れると、プシュー、と音を立てながら煙を上げた。煙の隙間から見て見れば、鎧が溶け出している。
自らの身体が傷ついたからか、ゔぉおおおぉと、地の底から苦しんでいるような悲鳴が鎧から聞こえてきた。
「見たか! 俺特製〈溶解薬〉! ナメクジ系統が放つ酸の液体に、【装備破壊】のスキル素材を混ぜ合わせたものだ! 鎧相手にこれは効くだろう!」
「おおっ。これは助かる。――ふんっ!」
世永さんが感心したように呟くと、ウォーハンマーを一振り。
元々のレベル差と七緒ちゃんのバフ。そして溶解液により脆くなったホロウ・アーマーは、一撃で鎧の前面を吹き飛ばし、ガシャンッと音を立てて倒れた。
すげぇな。ここまで弱らせるとあんな豪快に弾け飛ぶか。
「よし、それならオレも! ――【挑発】! オラァ!!」
それを横目で見て乗ってきたのか、川辺が一歩前で敵を引き付ける。
そして近寄ったホロウ・アーマーにメイスを叩きつけた。さすがに世永さんのように弾け飛ぶとまでは行かないが、メイスが当たった箇所が砕け散り、鎧に穴を空ける。
「ピーちゃん! 行って!」
「ピュイイイイイイイ!」
屋敷内ということでこれまで出番が無かったピーちゃんだが、ここなら広さも高さもある。
チヨちゃんの指示でピーちゃんは飛び上がり、加速して体を燃やし、そのまま近寄ったホロウ・アーマーを貫き、一撃で落とした。
防御力の落ちた鎧に脅威はない。川辺でもピーちゃんでも、一撃で甚大なダメージを与えることができる。
だが、一番戦果が大きいのは伊波だった。
「川辺! 一歩下がれ! ――【フレアボム!】」
集まってきたホロウ・アーマーの眼前に、拳大の火の玉が現れる。その火の玉がカッと一瞬光ると、ボンッと小規模な爆発を起こした。
脆くなった鎧には、その爆発に耐えるだけの防御力は無かったらしい。一度に三体ものホロウ・アーマーが鎧に穴を空け、仰向けに倒れて動かなくなる。
思った以上に順調に片づけられている。これなら問題なくここを潜り抜けられそうだ。
そう安心しかけた時、思わぬ乱入者が頭上から現れた。
「――シャアアアアアアア!」
「むっ!?」
真上からの奇襲に、世永さんはウォーハンマーで受け止め、弾き飛ばす。
飛ばされた乱入者はクルクルと宙で回り、ストッと軽やかに着地する。
曲芸のような体捌きを軽々と行える身体能力。どんな魔物だと思えば、その姿は明らかにサキュバスのそれだった。しかし、よく見れば今まで見てきたサキュバスよりも高身長で、筋肉質に見える。
美しい顔に、弾力のありそうな形の良い胸と大きな尻。女性らしさがこんなにも出ているのに、割れた腹筋の対比に、ドキッとするフェチを感じる。――こんな時まで見蕩れる自分が恨めしい。
襲撃を受けた世永さんは、ほうっと意外そうな声を上げた。
「〈サキュバス・アマゾネス〉か。久しぶりに見たな」
サキュバス・アマゾネス。本来、搦め手を得意とするサキュバスには珍しい、肉弾戦を主とするサキュバスだ。
その強さは先ほどの身のこなしを見れば分かる。ざっと【鑑定】したみたところ、【格闘術】なんてスキルまで持っている。スキルでも戦闘向けの物があるとなると、今までのサキュバスの感覚で戦ったら痛い目にあうだろう。
そのサキュバス・アマゾネスが、上から更に二体、吹き飛ばされたサキュバスの元に降りて来た。
計三体のサキュバス・アマゾネス。ホロウ・アーマーよりも間違いなく強敵だが……。
「だが、アマゾネスだろうと所詮はサキュバス。俺の敵ではない!」
サキュバスが相手にするには、世永さんは相手が悪い。
サキュバス・アマゾネスが三体掛かりで世永さんに襲い掛かる。
迷いなく動き、時間差で襲い掛かろうとする動きに淀みはない。明らかにコンビネーションに慣れている。それだけの経験を積んでいる魔物ということか!
並みの相手なら、三体掛かりの連携でなすすべもなくやられているだろう。
しかし、世永さんにはそれを上回る実力と経験がある。
「【退魔打ち】、【浸透打撃】――【交差打ち】!」
【交差打ち】――カウンター成立時に、ダメージ補正をかけるスキルだ。
世永さんはサキュバス・アマゾネスの攻撃を躱しつつ、すれ違いざまにウォーハンマーの一撃を振るった。
頭部、腹部。自然な動きで振るわれたそれは急所に叩き込まれ、強靭なサキュバス・アマゾネスの身体を貫く。
世永さんが三体のサキュバスを通り過ぎた時、気丈な女戦士たちはバタッと力なく倒れていった。悪魔特攻に女性特攻。それにカウンターの補正まで加えられた内部攻撃は、いかに上位種のサキュバスでも耐えられなかったようだ。
分かってはいるが、本当にサキュバス相手には鬼のような強さを発揮する人だな。
逆に言えば、女だけには特に強く出れるっていう。
頼もしいはずなのに、なんか情けなくなってきた……。
ブンッ、とウォーハンマーを振り回してから肩にかつぎ、手向けのように世永さんは言う。
「苦しむのは今だけだ。安心して小畑さんのお嫁さんになるといい……」
マジでやめろ。そこで俺の名前を出すな。まるで俺がド畜生みたいだろうが。
頼むから俺まで巻き込むな!
手強いサキュバス・アマゾネスさえ消せれば、あとは特に苦労することもない。
ホロウ・アーマーをあっさりと片づけ、問題なく起点となった香炉を破壊することができた。
部屋中に焚かれていた香がすぐに消えていき、空気が澄んでいくのを感じて、俺は息を吐いた。
「なんとか生き残れたか。助かった。――そしてどうよ俺の活躍は!? 中々の性能だったでしょうよ!」
「いや、真面目に助かったわ。あれがなければもう少し苦戦したと思うぞ」
「うん、それは確かに。アイテムの性能もそうだけど、よく両手で正確にアイテムをばら撒けたね? あんなのできたっけ?」
「ふっ、俺も日々成長しているんだよ。【アイテムスロー】のレベルが上がればあれくらい造作もない」
珍しく褒めてくれる川辺と伊波に、ドヤ顔を見せる。
それだけじゃなく、投げる動作に補正もあるからな。今の俺なら左右の二刀流投手として、プロ野球で活躍できるかもしれない。
いや、やっぱり無理かな。補正があってもステータスが貧弱だからな。
最近は漫画を超えるプロ選手もいるしね。あいつらこそマジモンの化け物だろ……。
「しかしアマゾネスが出て来た時はさすがに焦ったな。世永さんがいるから問題なかったけど」
「それは俺達も同じだよ。アマゾネスは本当に珍しいからな」
「だけど、アマゾネスが守る屋敷なら、いよいよマダムには期待できるかもな。こんな強い奴を従えるだけの強さがあるってことだし」
ほう、それはつまり俺に相応しい極上のホム嫁が手に入るってことですね?
世永さんのメンバーの話に、妄想が膨らんでしまう。一体どんなマダムなのか、楽しみで仕方ない。
「さて、起点は壊したことだし、こっち側の探索はこれで終わりか――おっと。鏡があるな。よし、あれを調べ終えたら今度は屋敷の逆側を調べにいくってことでいいか?」
「はい。それでいきましょう」
「うむ。ところで、このアマゾネス達は回収ってことでいいよな? 珍しい奴らだし、強さも素体としては十分だ。捨てていくことはないと思うが」
「もちろんです。丁重にお願いします」
世永さんの提案に従い、素直に頷く。
格闘戦ができるサキュバスなら、前衛タイプのホム嫁も作れる。
美しい女戦士を作るなら、これ以上の素材はないだろう。割れた腹筋を堪能できると思うと今から楽しみだ。
持って行くとなったら、嫌な顔一つせず世永さんの仲間が動いてくれた。
俺よりも強いのに、こんな雑用でも率先して動いてくれるんだから、本当にありがたい。
「それじゃあ俺のバッグに入れるか。――へっへへっ。良い身体してやがるっ」
「おいおい、見ろよこのケツ。たまんねぇなおい。鍛えてるからかでけぇでけぇ。バッグに入るかな?」
「あんまべたべた触るなよ。会長の女になるかもしれねぇんだぞっ」
ただ、その会話がマジでゲスそのものだった。
デカいバッグの中に、無理矢理サキュバスのデカい尻を通そうとする姿――完全に誘拐犯のそれなんだが。
どうしよう。俺、こんな奴らの首領ってことになるのか。
同類に見られそうですっげぇ嫌なんだけど……。




