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アラサーからのダンジョン探索~英雄は目指さない。マイペースに遊びながら稼ぎます~  作者: 迷子
第三章 はじめましてマイ・フェア・レディ

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第130話 グレーな商売……いや黒だろこれ

 世永さんのパーティ〈不動戦士団〉。

 そのパーティは、悪魔狩りに特化した集団である。


 〈戦士〉系のジョブの持ち主が四人に、〈斥候〉系のジョブが一人。

 〈魔術師〉系が一人もいないなんとも脳筋なパーティだが、だからといって弱い訳ではない。


 肉弾戦に特化したメンバー構成だからこそ、近接戦では無二の強さを発揮する。 

 高い【精神耐性】レベルを備え、【魔術】を受け続けてきたからこそ【魔術耐性】もある。


 どこまでも脳筋に突き抜け、自分の強みを強引に押し付ける戦術。

 搦め手を得意とする悪魔系の魔物だからこそ、それは刺さる。


「【挑発】!」


 世永さんの前に出た仲間が、迷わず敵を引き付ける。

 二匹のヘルハウンドは導かれるように、大楯を持ったその人へと襲い掛かった。


 ガッシリと一匹のヘルハウンドの攻撃を受け止めるが、残りの一匹が回り込んでタンク役の人を攻撃しようとしている。


「【シールドバッシュ】!」


 しかし、回りこもうとするヘルハウンドの進路を塞ぐように、もう一人の盾持ちが思い切り跳ね返した。

 大楯を持ったメインタンクと、それをカバーする円盾持ちとのタンク二枚構成。


 単純だが、これ以上なく手堅い構成だ。

 この二枚のタンクがいるからこそ、残りの人が遠慮なく攻撃できる。


「ほっ!」

「もう一丁!」


 メインタンクに抑えられた一匹を、槍持ちと〈斥候〉が見事な連携で襲い掛かる。〈斥候〉のナイフがヘルハウンドの足に刺さり動きを鈍らせれば、槍持ちの人が正確無比な槍さばきでその喉を抉った。


 悲鳴を上げることもできず、一匹のヘルハウンドが仕留められる。見事な職人技と言えよう。

 そして【シールドバッシュ】によって弾き返されたもう一匹には、世永さんが襲い掛かった。


 鈍重そうな大きな体からは想像もできないような速度で距離を詰める。

 ヘルハウンドが体を起こそうとした時には、既にそのウォーハンマーを振りかぶっていた。


「――ぬぅん!」


 ウォーハンマーでのすくい上げるような一撃。それがヘルハウンドの頭に当たった瞬間、パァンッ、とまるで水風船のように弾け飛んだ。

 血と脳髄が入った赤い水風船である。――いや怖すぎるわ。


 その一撃を見て、俺達は誰もが顔を青ざめていた。

 特に同じ〈戦士〉職である川辺は、そのヤバさを知ったのか声が震えている。


「なんだあの威力。普通じゃないだろ」

「同感だ。低レベルの【魔術】くらいの威力は――いや、それを超えるか。ただの〈戦士〉じゃないね?」

「ああ、まぁな。あれは世永さんのスキルによるものだ」


 悪魔狩りに特化していると言われている〈不動戦士団〉ではあるが、この言い方は正確ではない。

 パーティの中に一人、悪魔を殺すことに特化している人がいる。何を隠そう、それこそが世永さんだ。


 〈悪魔狩り〉――悪魔を狩る力と技術を身に着けた、対悪魔に特化した〈戦士〉の上位ジョブ。悪魔に対するメインアタッカーに相応しいジョブである。


 〈不動戦士団〉とは、メインアタッカーである〈悪魔狩り〉の世永さんを主軸にしていくことをコンセプトにしているパーティだ。


 タンクが二枚に、〈斥候〉と槍使いが一人ずつ。それぞれが探索者として上澄みの力がある。それが世永さんを援護するだけに全力を尽すのは勿体なくないか?


 そう思うかもしれないが、対悪魔戦において世永さんにはそれだけの価値がある。


【退魔打ち】――悪魔に対する特攻を持つパッシブスキル。


 世永さんに派手な攻撃スキルは必要ない。

【退魔打ち】があるだけで、全ての攻撃が悪魔に対する致命の一撃になりかねないのだから。


 そしてそれは当然、サキュバスに対しても同じである。


「ヒッ――ッ!?」


 あっさりとヘルハウンドの頭が弾け飛んだことに、二人のサキュバスは引き攣った声を上げた。


 恐怖に震えてガチガチと歯を鳴らす様は、まるで変質者に遭遇した婦女子のごとし。そんな二人に、世永さんはウォーハンマーを構え、ゆっくりと迫っている。


 ……どっちが悪者なのか分からなくなる光景だ。もう完全にホラーとかスリラーな映画のそれなんだよ。絵面が悪すぎる。 


 俺に力が在れば、あの二人を救う為に思わず飛び出していたかもしれない。


 サキュバスは少しでも足掻こうと、今も【誘惑】を世永さん達に飛ばしている。しかし、彼らは悪魔を狩り続けてこのダンジョンを攻略し続けたもの。俺達とは比べ物にならない【精神耐性】の前では、何の意味もなさない。


「ヒッ――ヒィッ、ヒィー!?」


 二匹のサキュバスは恐怖に耐えられず、背を向けて逃げ出そうとした。

 しかし、やはり素のステータスが違いすぎる。高レベルの〈斥候〉職に引けを取らない速度で追いかけながら、世永さんはまたスキルを発動した。


「【浸透打撃】――【二連撃ち】!」


 背から追いかけているにも関わらず、世永さんはサキュバスとすれ違うように交差し、その頭部にウォーハンマーを振るった。


 またヘルハウンドのような悲劇が繰り返される。思わず目を逸らしそうになったが、俺の思ったような光景は訪れなかった。


 頭部にウォーハンマーの一撃を受けたサキュバス達は、糸が切れた操り人形のように力なくその場に倒れる。確実にその命を奪われたのだろう。しかしその美しい身体には、一切の傷が無かった。


 そんなサキュバス達の姿には、七緒ちゃんとチヨちゃんも驚いたらしい。


「嘘? 傷が全くない? あんな物で叩かれたのに?」

「わんちゃんは頭が弾け飛んだのに?」

「世永さんのスキルだ。衝撃を全て内部に叩き込んだんだよ」


【浸透打撃】――打撃の衝撃を内部に送り込むスキル。


 ミライさんも同種のスキル【貫通打撃】を持っているが、あれは防御力を貫くだけのもの。多少なりとも外傷を残していた。それに比べれば、こっちの方が内部ダメージという意味は大きいだろう。


 ただでさえ【退魔打ち】によって強化された打撃による一撃が、全て内部に送られたら? わざわざ説明するまでもない。


 綺麗な外見に反し、サキュバスの頭の中はとんでもないことになっているはず。きっと脳みそがぐちゃぐちゃになったプリンのように……ああ、考えたくもないっ。


「あのよ、今の一撃もスゲェが、オレとしては世永さんの動きが気になるんだが。サキュバスに襲い掛かった時の方が、動きが鋭くねぇか?」

「おお、さすが同じ〈戦士〉職。よく分かったな」


 怖いものを見ないふりをしてる俺に、川辺は怪訝そうに尋ねてきた。  

 コイツも多少〈戦士〉として目が肥えて来たということなのだろうか。なんか生意気だな。川辺の癖に。


 実際、川辺の目は正しい。世永さんの動きは、二種類のパッシブスキルによるものだ。


【悪魔殺し】――悪魔に対して有利を取るパッシブスキル。悪魔との戦闘の際、そのステータスを向上する。


 これを持っているだけで、悪魔系との戦闘で常に優位に立てるようになる。

 〈悪魔狩り〉である世永さんはもちろんのこと、他の四人もこれは持っているらしい。伊達に長期に渡って歌舞伎町ダンジョンを攻略している訳ではない。


 これがあるからこそ、不動戦士団は悪魔狩りに特化したパーティになったということだ。

 そして世永さんはそれに加え、もう一つのスキルがある。


【女殺し(物理)】――女性に対する特攻スキル。対象の性別が女に該当する場合、攻撃力の補正に加えステータスを向上する。女に該当する存在から敵意を持たれやすくなる。


 そう、これこそが世永さんの対悪魔戦、サキュバス戦においての戦闘力の正体。

 対悪魔特攻に加え、対女性特攻。この二つを習得しているからこそ、世永さんは対サキュバス戦において無類の強さを発揮するのだ。


「【女殺し(物理)】って、そんなもんがあるのかよ……」

「(物理)ってことは、ノーマルの【女殺し】もあるのかな。女性を口説けるみたいな」


 呆れを含んだ川辺のぼやきに、伊波は鋭い考察を見せる。

 正直それは俺も思った。もし存在するならどうにか取得方法を見つけ出して覚えたいところだ。俺にはホム嫁がいるから要らんかもしれんが。


 複雑な顔になりつつも、七緒ちゃんは渋々頷く。


「正直なんとも言えないですが、【女殺し(物理)】の必要性は分かりました。サキュバスの館を探索するなら、是非とも覚えないといけないスキルなんですね」

「うん、そうだね……」


「――? 楓太さん、なんか元気がないですね? もしかして何か問題があるんですか?」

「まぁね。【女殺し(物理)】にはとんでもないデメリットがあるから」


 不思議そうにしているチヨちゃんに、俺は誤魔化すように笑って答えた。


【女殺し(物理)】。確かにサキュバス戦では無類の強さを発揮する強スキルだ。

 そのメリットだけを見るなら、是が非でも習得したいところだろう。なんせ二分の一の確率で、ほとんどの魔物に対して特攻を持てるんだから。


 しかしそれほどの強スキルだからこそ、それと釣り合わせるようなデメリットも存在する。ここでもう一度、【女殺し(物理)】の効果を見返してほしい。


【女殺し(物理)】――女性に対する特攻スキル。対象の性別が女に該当する場合、攻撃力の補正に加え、ステータスを向上する。女に該当する存在から敵意を持たれやすくなる。


 女に該当する存在から敵意を持たれやすくなる。これだ。


 これのせいで、世永さんは女性に該当する魔物からヘイトを買い安くなった。さっきサキュバスが世永さんを見て、敵意を剥き出しにしたのもこれが原因だ。


 男を【誘惑】して食い物にするサキュバスにすら効果を発揮するのだから、その効果の強さは察せるだろう。


 そしてここが重要なんだけど、このデメリット――魔物に限定するとは一切書いてないんだよね。


「おい、それってまさか……」

「嘘だろう? それじゃあ……」

「ああ、お前たちの想像通りだ」


 男として、いち早くその意味に気づいた二人に、俺は力なく頷く。

 まさかと思っていたことを肯定され、川辺と伊波は同情と悲しみが混ぜ合わさった顔で世永さんを見た。


 そう、そういうことなんだ。

 このスキル、持っているだけで人間の女性からも嫌われやすくなるんだよね。


 習得すれば間違いなく、探索者としては有用なスキル。しかしその瞬間から、灰色の人生を歩ませる可能性を高めてしまう、まさに呪いのようなスキルなのである。


 この思わぬデメリットには、七緒ちゃんとチヨちゃんもさすがに同情した。


「それは……ちょっと可哀想ですね」

「あれ? でもおかしくないですか? 私は別に世永さんのことは嫌いじゃないですよ?」

「ある程度ステータスを高めた探索者なら、そのデメリットにも抵抗できるんだよ。それに人間は魔物に比べて理性的だから、理由もなく嫌うことはない。だけど一つ欠点を見れば気になるだろうし、やっぱり嫌いやすくなる。そしてステータスの低い一般人なら、ね……」


 さっきのサキュバスのように、見ただけで殺気を飛ばされるレベルになる、という。


 世永さんは元々、その不細工な顔で女性に好かれるようなタイプではなかったらしい。

 恋愛にまで発展しなくて、慰めるように風俗通いをして、そこでもあまりいい反応をされなくて。


 人柄は良いが、顔が悪く金もない。女を引っかける最初の一歩に多大なハンデを抱えている。

 一生独身かと覚悟しかけたそんな時、ダンジョンが現れた。


 工場で働いていた世永さんは、その時に閃いた。

 今の俺が金を稼ぐにはこれしかない! ダンジョンで一発当てて札束ビンタで女を落とそう!


 実に共感できる理由で、世永さんは探索者になることを決意したのだ。

 そして世永さんが潜り続けると決めたのが、悪魔の出る歌舞伎町ダンジョン。


 そこならばサキュバスがいるかもしれないと、無聊を慰める女の温もりを、魔物に求めた。

 そして同じような考えだった今のスケベ仲間と巡り合い、歌舞伎町ダンジョンを攻略し続けたのだ。


【悪魔殺し】を身につけるほどの力を付け、より深く潜り。

 予想通りサキュバスに出会い、人生で初めて触れた女の優しさに癒されながら殺されかけ。


 魔物とはいえそんな女をなるべく傷つけたくない、という想いから【浸透打撃】を習得。

 その想いは一緒だった仲間の協力もあり、サキュバスの相手は世永さんという不文律が生まれ。


 その結果――徐々に徐々にと、サキュバスに嫌われ始めた。

 あれ? と思いつつ、気のせいだとばかりにそのまま探索を続けたら。


 地上で出会った女からは、嫌悪の視線を送られ。

 サキュバスの集落ですら、出禁を食らい。


 〈悪魔狩り〉へと成長した頃には、サキュバスにすら相手をしてもらえなくなっていた。

 俺は結局、サキュバスですらこうなのか。そう密かに悩んでいた時に俺と出会い、小畑会の結成で希望を見出し。


 そして集会でステータスの【鑑定】を受け、全ての真実を知った結果が――あの時の涙である。


 愛を求めたがゆえに、愛を失った悲しき男。

 それが〝悪魔殺し〟――世永公司なのだ。


 もうね、ステータス【鑑定】をした時は、思わず涙ぐんだよね。

 女ができないと悩んでいた人だというのに、こんな悲劇があるかよ……ッ!


 神は……ダンジョンマスターは何を思って、彼にこんな試練を与えたんだ。

 というか女と出会えないからサキュバスに逃げたのに、そのサキュバスにすら嫌われるってなんだよ。それくらいは許してやれよ。


 ちなみにそこで同じく世永さんの全貌を知り、全力で慰めていたパーティの面々だが。それを知ってからはますます連携を深め、積極的にサキュバスは世永さんに任せているそうな。


 同情はすれど、それはそれ。万が一にでも自分が【女殺し(物理)】を習得しない用心の結果らしい。


 結果的にパーティはより強くなったそうだが……いやカスだろ。気持ちは分かり過ぎるけどクズすぎるだろ。そこは一緒に堕ちるとこまで堕ちてやれよぉ! 俺だったら絶対にやらないけどっ!


 だが、世永さんはそんな仲間を骨の二、三本折った程度で、全てを許したらしい。

 ガンジーでさえかなぐり捨てて殴り掛かってくるレベルの所業だというのに、なんて心の広い人だ。


 こんな人こそ救われてほしいと思うが、世界はなんて残酷なんだろうか。


 そんな世永さんは、悲しみを隠しきれない瞳で横たわったサキュバスを見下ろしていた。

 うつ伏せに倒れたサキュバスを丁寧に持ち上げ、仰向けに寝かせる。


 そして手を伸ばし、恐怖に見開いたその瞳を、優しく閉じさせた。 


「――せめて安らかに」


 その表情はまるで神父のような、慈愛に満ちたものだった。綺麗に眠っているサキュバスに寄り添い、窓から差し込む光が二人を照らし、まるで絵画のようなシーンを作り出していた。


 ――いや殺したのはお前やろがい。


 あまりにそれらしい光景だから危うく騙されるところだった。加害者が何を言ってんだ?


 偽善どころかただの欺瞞じゃねぇか。

 詐欺にもほどがあるわ……。


「小畑さん、このサキュバスはどうする? 普通のサキュバスだが、傷なく仕留めたが」

「ああ、はい。そうですね……」


 平然と問いかけてくる世永さんに、狼狽えてしまった。

 さっきまでの顔はどこに行った? 温度差に風邪ひくわ。


「俺のマジックバッグにはかなりアイテムが入っているんで、あまり入らないんですよ。精々一、二体かな? なので、できれば世永さん達の方で預かってほしいんですけど」

「なるほどな。そうなるとこの子達は置いていった方がいいだろうな。なるべく荷は少なくしているが、それでもサキュバスを丸ごととなると、八体くらいしか入らない。どうせなら上位のサキュバスの方が嬉しいだろ?」


「ですね。コモンレアだったら無理して持って帰る必要はないかなと」

「言い方」

「女性をレア度で測るとか最低だと思います」


 七緒ちゃんとチヨちゃんから、わりと厳しめの目で睨まれた。

 思わず出ちゃったけど、確かにコモンレアはないな。ごめん。でも違うんだ。女性って言うより、魔物のランクで見ただけなんだ……。


 サキュバスを壁際に寄せた世永さんが、そんな俺達を見てフッと笑う。


「そんじゃ、先に行くとするか。あんまりもたもたしていると日が暮れちまうからな」

「ここまで綺麗に仕留めたなら、高く売れるから勿体ねぇんだけどな。まぁ今回は依頼が目的じゃねぇからな」


 世永さんに応えるように、メンバーの人が相槌を打って俺達の前を歩く。

 俺達もそれを追いかけるのだが……今ちょっと興味深いことを言ったな?


「やっぱり傷一つないとなると高く売れますか。あっ、もしかして世永さん達の主な収入源って、まさにそのサキュバス?」


 歌舞伎町ダンジョンは実入りがあまりよくないダンジョンだとは言うが、ここまで完璧な素材となるとまた話が違ってくるのかもしれない。


 実際、世永さんのような人じゃないとこれは難しいだろうし。独占商売になっているのかも。


 そう、ただ気になったから聞いてみただけだったのに、なんだろうな。

 ギクリという風に一瞬、世永さん達の身体が固まったような……。


「おっ、おお。まぁそんな感じよ。これがそこそこの値段で売れてな」

「いくらでも捌けるから、狙って狩るにも困らねぇんだぜ」

「――いや、おかしくないですか? 確か協会が求めているサキュバスの素材は、尻尾や羽の部分だけだったはず。丸ごと提出という依頼は無かったような……」


 え? そうなの? 歌舞伎町ダンジョンでの素材回収依頼なんて、確認してなかったから知らんかった。

 でも、伊波が言うなら間違いないだろうな。こういうのを間違える奴じゃないし。


 ……待て。じゃあなんで全身を丸ごと持ち帰る必要があるんだ?


 何か怪しいものを感じ、世永さんをじっと見つめる。

 こちらに背を向けていた世永さん一行だったが、気まずそうにこちらを振り返りながら語りだした。


「ああ~、まぁなんだ。確かに協会では羽と尻尾の買い取りしかしていない。というか、本体丸ごとを持ち出すのはマナー違反というか、まぁ暗黙の了解で禁止されてるんだよな」

「まぁ、はい。なんとなく分かりますね」


 見た目は少し変わった特徴があるだけの、人間の美女だもんな。

 こんな物を持ち帰って広げて見ろ。その瞬間からサスペンスの始まりだ。

 おまわりさんへの通報は不可避。俺達を助けるために東さんが泣いてしまう。


「でもな、その……美女であることには変わりないだろ?」

「それは認めますよ。それで?」


「だからほら、求める人はいる訳だよ。それも結構な数が」

「求めるって、羽とか尻尾の素材じゃなくて、死体そのものを?」

「いや、死体だからこそっていうかよ……」


 いや、死体だからこそって。いくら美女でも死体じゃ……あ?


「そ、それってまさか……死体愛好(ネクロフィ)――」

「俺達はちげぇぞ!? 断じて違うっ! 生きている女性がタイプだ!」

「その通りだ! 決して持ち帰って遊ぶとかはしたことがない! 頼むから勘違いしないでくれ!」


 いや、遊ぶとか言うなよ。マジで救えないやつじゃん。

 世永さん達は必死に弁明するが、俺達のドン引きした視線は変わらない。というか、弁明すればするほど世永さん達が汚く思えてくるな。


 特に七緒ちゃんとチヨちゃんが酷い。嫌悪感すら通り越し、恐怖が見える。そりゃ同じ女性としてはそうなるわな。


 まぁ、ともかくだ――


「つまり協会を通さず、個人の伝手でそういう趣味を抱えている奴に売りさばいていると? その、商品的にも法律的にも、かなりグレーなのでは?」

「仕方ないだろ!? 需要があるんだから! そしてそういう奴に限って金は持ってるんだ! 一体持ち込むだけでとんでもない大金が支払われるんだから、そりゃ売るだろうよ!?」


「いや、いくら需要があるとはいえ、倫理的にどうなんですか……?」

「小畑さんがよりにもよってそれを言うのか!? 嫁ンクルスを作ろうとしているくせに!?」


 俺の嫁を死体と一緒にしないで欲しいんだが。

 まぁでも、倫理的には俺もどっこいどっこいか?

 改めて倫理観に悩む俺に、裏切るのかとでもいいたげな顔で、世永さんは捲し立てる。


「小畑さんだって言っていただろう!? 性癖で悩む男達を救いたいって! 俺達も同じことをしているだけだ!」

「いや、そうなんですけど……ちょっとこういうケースは想定しなかったというか。マジで犯罪っぽいというか……」


「――そもそもこいつらは人間じゃねぇだろ!? 魔物だ! 分類としては素材扱いだ! だったら違法じゃねぇし別にいいじゃねぇか! 俺達は売っているだけで、買う方が悪いんだよ!」

「それを口にしちゃったら駄目でしょうよ……」

「サイテー」

「人としてあり得ないです」


 とうとう七緒ちゃんとチヨちゃんが、軽蔑の視線を隠せなくなってしまった。

 世永さんを憐れと思っていたんだが、正直自業自得というか、当然な罰なんじゃないかなこれ……。


 宗教団体、動物愛護団体、生命倫理団体、女性団体。

 もしこれがバレたら、一体どれだけの団体から糾弾の声が上がるかな?

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― 新着の感想 ―
世永さんに渡す嫁ンクルスには精神耐性必須ですね レベルを上げたら無効化される程度のスキル影響範囲なら精神耐性あればほぼ影響ないでしょうから嫁ンクルスならなんとでもなるでしょう
女殺し(物理)…この作品もスゲーオモロイけど½が敵なのか?w カクヨムもチョッと拝見したけどコッチで進みます。
言うて、既にコボルトの死体かき集めてホムンクルス量産してる時点でどっちもどっちなんだがなあ……それはそれとして。 小畑氏、「コモンレアはいらない」発言してるけど、またぶっつけ本番で上位サキュバス錬成…
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