第117話 フィールドボス③
「――ヴァアアアアアアオオオオオオオオオ!」
『スタンプが来ます! 効果範囲に集合!』
脚を傷つけられているせいか、久々とすら感じる【地鳴踏】の前兆。
しかしもはや慣れた攻撃だ。マサ君の指示が走る前に、自分から動いている者もいた。
だが、これが油断に繋がったのだろう。
フィールドボスのその攻撃は、それまでのものとは違った。
ドンッ、と大きく足が踏み鳴らされる。定例通りなら、そのスタンプ攻撃の範囲は着弾から円形に広がる筈だった。
しかし今回の一撃のエネルギー攻撃は、縦方向に広がっていた。
「はっ? 縦?」
「しかもこれ、ジグザグって――やべぇ!」
スキルによるエネルギー攻撃の前兆が、地面が光るという形で現れる。それはまるで雷のような、ジグザグで不規則な方向に伸びる形を描いていた。
『――全力退避! 急げぇえええええ!』
一瞬思考が硬直した前衛部隊に、マサ君の咄嗟に指示を出す。
本来は効果範囲に皆で飛び込む作戦だ。しかし急な変化に加え、円形ではなく棒状の範囲では、それが逆に難しいと判断したのだろう。
その判断は正解だった。ハッと表情を変えた前衛部隊が、すぐに横に走り逃げる。直線状に効果範囲が変わったからこそ、その一撃を避けることは容易だった。
その直後、ドンッ、という重々しい音と共に、バゴォッ、と地面が大きく盛り上がった。
「なんだあれ?【地鳴踏】なのか? あんな使い方もできるのか……」
いかに高レベル探索者といえど、自力で飛び越すには難しい高さだ。こんな高さまで盛り上がる土属性の攻撃? 耐性装備を付けているとはいえ、食らったらどれだけのダメージが入るか予想もつかない。
俺はあれが直撃した時のことを想像し、青ざめていた。しかしマサ君は、それよりも最悪なケースを想像したようだ。
「――まずい!『前衛部隊! 一度外側に撤退!』」
撤退? と、俺はその指示に疑問を覚えた。
確かに脅威かもしれないが、回避という意味ではやりやすくなったんじゃないか?
俺には逆立ちしても無理だが、皆なら避けるだけならできそうだけど。
だったらここから先は、皆で受けるのではなく、効果範囲から逃れながら攻撃を重ねる方が――そこまで考えて、ようやく俺も気づいた。
フィールドボスが盛り上げた地面は、その場に残っている。
「ヴァアアアアアオオオオオオオオオオ!!」
これまで一発ずつしか【地鳴踏】を打たなかったグランドスタンプは、前足を両方とも上げ、すぐに振り下ろした。
両前足で叩きつけた今度の攻撃は、歪な七支刀を放射状に並べたように広がっていく。
その軌跡に合わせて、また土の壁が作られるとしたら……ッ!
「やべえぞ! 逃げろ逃げろ!」
「全員一旦離れろ! まだ連発するかもしれねぇ!」
全員が同じ末路を思いつき、とにかくグランドスタンプから離れる。
グランドスタンプは体力の続く限り、周囲にそれを連発してきた。
貯めが短い分、威力は低いのかもしれない。範囲も狭くなっているのだろう。
しかし効果範囲を線状にした分、距離は伸びているようだ。バゴンッ、バゴンッと。どんどん土が盛り上がっていく。
その盛り上がっている土が繋がり、逃げ道が塞がれていく。それはまるで迷路か、あるいは檻のような。
とはいえ、さすが経験豊富な探索者たちだ。ほとんどの人が安全圏に抜け出していく。
これならと安堵しかけた時、それを崩されるような光景を目にした。
「あれは……今西さん!?」
前衛組に入っていた今西さんが、ヨタヨタとした足取りで動きが鈍い。どうやらどこかで足をくじいたようだ。あと少しで抜けられるというところなのに、間に合いそうにない。
しかもその立っている位置は、ちょうどスキルの効果範囲内だ。
このままでは今西さんが――そう思ったその時、ミライさんが今西さんを掴んだ。先に外へと逃げていたはずなのに、今西さんがいないと気づき戻ってきたようだ。
「お姉様!? いけません、僕のことは置いて――」
「ふふっ、そうもいかないでしょ。とはいえ間に合いそうにないわね。着地はしっかりしなさい」
「え? ――きゃあああ!?」
ミライさんはそのまま今西さんを外側へ投げ飛ばし、自分はひょいと後ろに下がった。
その次の瞬間、ドカァ、とミライさんの目の前が盛り上がる形で土が隆起する。
ミライさんが閉じ込められた!? 慌てて壁を透かして見れば、ミライさんは普段の買い物にでも悩んでいるかのような軽い態度で、壁を見上げていた。
「あらあら。閉じ込められちゃったわね。困ったわ」
「――ぁぁぁあああああああ! ぐへぇ!? ぐぬぬぬっ、この四つ足トカゲが」
「あらいたの? しかも生きているし。そのまま死ねばいいのに」
「誰が死ぬかボケ! テメェが死ね!」
閉じ込められた土の迷路の中から、トシさんの怒鳴り声が聞こえてくる。
今上から落ちてきたのはトシさんか。グランドスタンプに振り落とされて偶然ミライさんのとこに落ちたんだな。よりにもよって逃げ場のない場所に……なんて運が無い。
しかしあの二人、こんな時まで喧嘩してるのかよ。それどころじゃないだろ!
いつも通り過ぎる二人に苛立ちすら感じた時、グランドスタンプがまた足を上げ、魔力を貯めているのが見えた。
既に迷路の檻は出来上がっている。これでは範囲攻撃から逃げられる術はない。
今もマサ君の指示で後衛部隊が、そしてピーちゃんが攻撃して気を引こうとするが、確実に閉じ込めた二人を殺すつもりなのか止まる気配がない。
まさしく絶体絶命と言える状況。俺はもう無理だと思い、諦めかけていた。
ミライさんもまた、目を瞑って静かに腕を組み、その時を待っているように見える。
しかしただ一人、チッ、と不機嫌そうに舌を鳴らし、トシさんは足掻こうとしていた。
「仕方ねぇか――来い! ババア!」
「アンタ何様のつもりよ誰に向かって口聞いているのでも仕方ないわねその自己犠牲精神に免じて今回だけは許してあげるわ感謝しなさい」
「お前マジでふざけんなよ!? 後で絶対ぶん殴るからな!?」
グランドスタンプがスキルを放つ直前、ミライさんはトシさんに向かって走り出し、跳んだ。
トシさんは両手で足場を作り、ミライさんを受け止める。そしてそのまま全力で上へと投げ、同時にミライさんもその勢いを使って高く飛んだ。
高レベル探索者二人の合わせ技により、ミライさんは壁をも超える高さまで跳び、宙に逃れる。宙に飛ぶことで【地鳴踏】を透かすと、壁を越えてそのまま着地し、先に逃げていた前衛部隊に合流する。
「お姉様っ! 大丈夫ですか!? すみません、僕のせいで!」
「いいのよ。こうして無事に戻ってきたのだから。だけどトシは……死んだかしら?」
「縁起でもないこと言ってんじゃねぇバカ!」
軽い調子で言うミライさんをタケさんが叱りつけた時、フィールドボスが作った壁の迷路が崩れていく。どうやら広範囲型の【地鳴踏】の衝撃に耐えられなかったようだ。
そして崩された壁の向こうに、トシさんは立っていた。
「――ゲボッ!? あっ、あぁ……ガハッ……ッ!?」
しかし、無事とはいかなかったようだ。
対象範囲に分散する衝撃。それは言い換えるなら、人数が少ないほどダメージを受けるということでもある。
それを一手に引き受けることになったトシさんは、全身に走った衝撃に白目を向き、大量の血を吐いた。
振動で内臓を傷つけられたのか!? だとしたらいくらトシさんでもまずい! 早く治療しないと命に関わるかもしれない!
『タンク!【挑発】で引き付けて! 誰でもいい! 急いで!』
マサ君の指示が出る前に、タンク組の人は既に動き始めていた。しかし、それでも遅い。グランドスタンプは次の攻撃動作に入ろうとしている。
【挑発】の効果範囲には遠い。トシさんもなんとか這って逃げようとするが、駄目だ。もう間に合わない!
「うわぁああああああああああああ!?!?!?!?」
そう思った時、一人だけ突出して救援に駆けつけていた奴がいた。
一回りはデカい太ったダチョウに乗った、見覚えのある太った体つきは――
「川辺!? マジかアイツ!?」
恐怖を紛らわすためか、パニック気味の声を上げている。その身体が赤く光ったのは、同時に【挑発】を使ったからだろう。
脚を上げかけていたグランドスタンプは、鬱陶しそうに後ろから迫った川辺を見た。
尻尾が横に大きく振られる。【尾鞭】の横凪ぎがくる! あれは三人がかりでようやく止められるもんだぞ! 今度は川辺が死ぬ!?
「ぐっ、くっ……ッ! ちくしょうがあああああああ!」
「全員急げ! 川辺を死なせるなっ!」
川辺はダチョウから降りると、大楯をどっしりと構えた。その身体は恐怖に震えている。自分でも無茶だと分かっているのだろう。
そんな川辺を助けようと、タケさんも走りながら声を張り上げた。それに応えるように他のタンクも走っているが、駄目だ。【尾鞭】の方が早い!
「ザンギ! お前は逃げろっ!」
「グェエエエエエエエエエエエエ!!!!」
「逃げろって言って……ああもう! ほんとバカ!」
川辺はザンギだけでも逃がそうとするが、ザンギは羽を大きく広げて立ち向かおうとしており、逃げる気配がない。
笑っているのか、泣いているのか微妙な顔で、川辺は再びフィールドボスを睨み付けた。
『川辺さん! 全力で防御! とにかく生き延びろ!』
「――ッ!! ~~~~♪ ~~~~♪」
せめてもの援護とばかりに、マサ君が指示を飛ばす。それとほぼ同時に、七緒ちゃんが【歌唱】の曲を変えた。それは何度でも立ち上がって戦う、戦士の歌。たとえ勝ち目のない戦いでも諦めず、挑む勇気を与える歌だ。
「――舐めんじゃねぇぞ、ちょっとデカいからってなんだってんだ!」
七緒ちゃんの歌が良かったのだろうか。怯えを隠せなかった川辺の目に、闘志が宿った。
しかしグランドスタンプにとっては些細な問題だったのだろう。川辺の変化に全く意を介さず、【尾鞭】の一撃を繰り出そうとしていた。
処刑の刃に等しいそれから目を逸らさず、川辺は吠えた。
「俺だって重いんだよ! そんな尻尾程度で吹き飛ぶか!」
巨大な尻尾が、とうとう繰り出される。空気が唸り、全てを曳き潰さんとする。
それを目前にしながら、川辺は全身に力を込めた。
「――デブ舐めんなぁああああああああああ!!!!」
その瞬間、川辺の身体に重い鈍色の光が纏われた。
三人がかりでようやく止められる、グランドスタンプの【尾鞭】。巨大な尾と川辺の大楯が衝突する。だが、川辺は吹き飛ばされることなく、その場に踏ん張った。
「うぉおおおおおおおああああああああ!」
それだけではない、なんと川辺はその尻尾をそのまま弾き返し、グランドスタンプにたたらを踏ませた。
……え? 弾いた!? 吹き飛ばされるどころか!? 逆に!?
この結果には誰もが驚いた。助けようとしていたタンクの人達も、それ以外の連中も、馬鹿げた光景に例外なく目を丸くしている。
誰よりも冷静に戦場を見ているマサ君ですら、この結果には呆然としていた。
「こ、これは……とんでもないですね……」
「うっそだろアイツ。どうなって――あ」
【人物鑑定】
名称:川辺健斗
スキル:【泰山重躯】
【泰山重躯】――不動状態時、瞬間的に体重を増やす。総重量に比例し防御力に補正。攻撃者に対しノックバック効果。
あいつ、土壇場でスキルを生やしたのか。
確かにこれならあの結果も納得できるが、なんとまぁアイツらしいスキルを手に入れたもんだ。
しかしまぁ気が抜けるようなスキルだな。だけど、それがもたらした戦果は大きい!
矮小な存在に、逆に弾き返されたことがプライドに触ったのだろう。
苛立ったように、グランドスタンプがもう一度尻尾を振る。川辺は体力を使い果たし、膝を着いていた。しかし、その前にマルが立ちふさがる。
「マル! 【守護命令】!」
「――ワオオオオオオオオオン!!」
マルのバリアが割れながらも、完全にその攻撃を受け止める。
そしてその一撃を防いだ間に、タケさん達タンク部隊が到着した。
「――よくやった! 本当によくやったぞお前!」
「ああ! 大金星だ! 下がって休め!」
「はっ、はひぃ……そうさせてもらいますぅ……」
「グェエエエエエエ!」
ザンギは川辺を咥えて背中に乗せると、そのまま全力で離脱する。
川辺の稼いだ時間で、再びタンクの態勢を整わせることができた。そして――トシさんの回復まで。
「ガハハハハハッ! ありがとよ川辺ぇ! んでよくもやってくれたなテメェ! 死に晒せええええ!!」
川辺が引きつけている間にポーションを飲んだトシさんは、さっきまで大怪我をしていたとは思えないような動きで再び襲い掛かった。
それに続くように、再び前衛部隊が別れ、四肢を攻撃し始める。
崩れかけた戦況は、先ほどまでの優位な状況に戻った。
いや、それどころか、更にグランドスタンプを追い詰めることになりそうだ。
「――ぐっ、ぐぅうううううううう……!」
「伊波さん? どうしました?」
後衛部隊の方から、俺でも感じ取れるほどの魔力のうごめきがあった。
それは、伊波の物だった。
【魔力補填】を全開で回した初撃――それ以上の魔力を。
「川辺は限界を超えて戦った……くそっ、カッコ良すぎる……あんなところを見せられて、負けていられないでしょう……魔力だけで足りないなら、持っていけるもの全部持ってけ……!」
「これは……タンク部隊! 全力で【挑発】回してください! 後衛部隊、伊波さんに合わせて全力で一撃を!」
伊波の顔色が悪くなるにつれ、その魔力はどんどん上がり続ける。それは一流の〈魔術師〉である刻子さんすらも驚かせた。伊波に合わせる、と周りを動かすことを決意するほどまでに。
【人物鑑定】
名称:伊波智
スキル:【生命過給】
【生命過給】――生命力を消費し、消費量に応じた魔力に変換する。
あのバカ。まだ威力を求めるかよ。しかもまた無茶なスキルを覚えやがって。
それに下手に今強い一撃を放っても、タンクの【挑発】を邪魔するだけだっていうのに。今じゃなくてもいいだろ。
……いや、違うか。
川辺があれだけのことをやって見せたんだ。それで大人しくしてろって方が無茶だな。
だったらそれに呼応して、どこまでもぶち上がれ!
「はぁぁぁああああああ……!」
もはや制御することすら困難なほどの魔力。生命力さえつぎ込んだそれは、味方ですら恐怖を覚えるほどに高まった。
災害を思わせるその力を――伊波は解き放つ!
「【エ〇ーナルフォースブリザード】! 相手は死ぬ!」
「台無しだよあのバカ!」
友の奮闘に応えるっていうカッコイイ場面だったのによぉ!!
なんでそこでボケるかなぁ!? でも本人は真剣なんだよな本当にもうさぁ!
あまりのぬけっぷりにぶん殴りたくなる。呆れを通り越して悲しくなるほどだが、しかし伊波が放ったその【魔術】は、絶大な効果をもたらした。
凍えるような冷たい風が、周囲一帯に流れた。そう思ったら、グランドスタンプの体が足元から凍り付き、胴体、首、頭まで届く。
巻き込まれないように、前衛部隊は慌ててその場から逃げ出した。次の瞬間、グランドスタンプが氷山の中に閉じ込められたかのように凍り付き、その氷が一瞬でガシャンと崩壊する。
「――ヴァアアアアアアア……ッ!」
氷が崩れたのだから、失敗かと思いかけた。が、氷に閉じ込められた時点でどうやらダメージになったようだ。これまでになかった苦悶の声を上げている。
『後衛部隊! 放てっ!』
その絶好の隙を、マサ君の指示であらゆる【魔術】、遠距離攻撃が追撃した。
避けることもできず、攻撃の波に埋まるグランドスタンプを見て、伊波は力なく笑い膝を着く。
「ふっ、ふふっ……川辺に負けない程度に頑張れましたかね?」
「ええ、甲乙つけがたいですね。素晴らしい一撃でした」
刻子さんに褒められ、まんざらでもない顔をしている。
実際、本当に凄い一撃だった。あんな【魔術】を放てるようになっていたのかと、感動すら覚える。
相手はまだ死んでないけどな。
大言壮語も甚だしい結果だけど、まぁ褒めてやろう。
後衛部隊の容赦ない飽和攻撃で、グランドスタンプが土煙に隠れた。ここまで傷つけてもまだ目標まで届かない。なんて体力だ……。
まだ時間がかかるかもしれない。そう思いながら土煙を見ていた時、途轍もない咆哮が轟いた。
「――ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
それは、【大咆哮】による攻撃ではない。
単純に、激怒からくる怒りの咆哮だ。
しかし、その怒りは声だけに留まらない。フィールドの覇者たる存在が、今まで受けた事のない屈辱に、その姿すらも変えていた。
全身が赤黒く染まり、穏やかですらあった顔つきは、肉食竜のような凶暴な憎悪に染まっている。
「小畑さん! どうですか!?」
「うん、とうとう来た!」
【魔物鑑定】による結果で見たのだから、間違いない。怒り状態に入っている。
【臨線激昂】――体力が一定以下まで減少した時にのみ発動可能。死の淵に追い込まれた危機感により、激怒状態に入る。全ステータスに補正。
瀕死にまで追い込まれた怒りによって、その身体能力を跳ね上げるスキル。
よりにもよってフィールドボスが、そんなスキルによって強化されると考えれば、絶望を感じるだろう。
そして、それを見た俺達は――勝利を確信した。
「小畑さん! 合図を!」
「了解!」
マサ君の指示に嬉々としながら、俺は準備した旗を振る。
大きく、バサッ、バサッ、と。もういいですよ~と伝えるように。
――パアアアアアアアアアアン!
そして次の瞬間、戦場を切り裂くように渇いた音が響いた。
それは、いっそ軽すぎると感じるほどで。
しかし、その音によって訪れた結果は、絶大すぎる。
「――グヴァアアアアアアアオオオオオオオオ!?」
グランドスタンプの頭部が、その音と共に弾け飛んだ。どこからか飛んできたその一撃は、頑丈なグランドスタンプの顔面を抉り、片目を潰した。
それに、誰もが歓声上げていた。
そして誰もが、これを成した人物を頭で思い浮かべた。
小畑会の最終兵器にして、格上殺しの達人。
孤高マタギ、天城晴久。
最強のコミュ障ジジイが、とうとう動き出したのだ。
♦ ♦
小畑会の面々が戦っている戦場より、離れた平原で。
数人の人影が、息を潜めグランドスタンプを窺っていた。
アキラを含め、斥候職の者が三人。
そして、膝立ちで銃を構えている天城。
天城はスコープを覗き、自分の一撃が当たったのを見て呟いた。
「――今北産業」
「甘えてんじゃねえよ」
「一からロムれ」
「ググレカス」
「酷いンゴ……ッ!」




