最終話 闘いの舞台へ
「ああいう〝仕込み〟だったんだね」
試合を終えたディルとガルディアが、並んでスタジアム内の通路を歩く。
「ああ。奇策もいいところだったけどな」
ディルとしては、やはり怪我した身で勝利するための不本意な策だったのだろう。
「それに最後、綺麗に決まったよね。今後はアレで行くわけ?」
「さあな。ただ、決心はした。これからは、使えるところでは使ってく」
ディルは常に即答する。その歩調も速く、ガルディアもそれに合わせて早足になっていた。
ファイナルを間近に控えているためか、通路には他に人の姿はほとんど見られない。先の試合の余韻なのか、これから始まる最終戦への期待からなのか、スタンド全体からざわめきが聞こえる。
試合後にすぐ合同控室側まで来たガルディアだったが、次の試合まではかなりの準備時間が設けられると神官から聞かされ、二人は一度フィオリトゥーラの控室まで戻ることにしていた。
「……よし。よくやった、俺。完璧だっただろうが」
声をかけずにいると、ディルは喜びと興奮を隠せない様子で、小さく拳を握りながら、途切れ途切れに自身を称賛する呟きをもらす。
試合までの期間、ディルは通じて平静を装っていたが、実際には相当張りつめていたのだろうなと、ガルディアはその横顔を見ながら思った。
「フィオはどうしてる?」
「クローディアさんに手伝ってもらって、準備してるよ。緊張はしてるみたいだけど、そんなに悪くない感じじゃないかな。あと、アルシェルさんがフィオさんの両手剣を見て今も唸ってるはず。相当衝撃を受けたみたい」
二人が第二控室に戻ると、すでにフィオリトゥーラは胸鎧の装着も終え、姿勢よく椅子に腰かけていた。
「ディル、おめでとうございます」
その姿を見つけた彼女は、可憐な微笑みとともに祝福の言葉をディルへと贈る。
ディルは視線を逸らし、照れくさそうに笑った。
クローディアはフィオリトゥーラの脇に控え、その後ろではガルディアが言ったとおり、アルシェルがカルダ=エルギムの両手剣を手にしたまま硬直していた。その目が瞬きも忘れて、剣身に釘付けになっている。
「うん、完璧でしょ。どう見ても、メインを張るのに相応しいよね」
上質な戦闘装備で身を固めたフィオリトゥーラの姿を見て、ガルディアがうんうんとうなずく。
「おい、アルシェル。ほどほどにしておけよ」
「あ、ああ……。ありがとう、参考になった。凄いね、ほんと」
ディルに言われ両手剣を革袋に戻すと、アルシェルは茫然とした様子でそれをフィオリトゥーラへと手渡した。それから彼女は、我に返るようにと激しく首を横に振る。
「お疲れさま。うまく使えたみたいだね」
アルシェルが手近にあった大きな布を掴むと、ディルへと差しだした。
「ああ、練習どおりに抜けた。結果も上々だ。ま、あれだけ鞘と一体化してたら、まずわからねえよな」
ディルは布を受けとると、濡れた髪や身体を拭きながら、座るフィオリトゥーラを覗き見る。
傷ひとつない白銀色の金属鎧は、過飾なくシンプルだがそれだけに精巧な造りとデザインが際立ち、フィオリトゥーラの身体のラインを崩さないよう見事なバランスで戦闘服と一体化している。不要な光の反射を抑えるためか、表面は艶を抑えた加工が施されているが、一度見るとしばらく目を離せないような美しさがあった。
そんな白銀の鎧と赤とマスタードイエローを基調とした戦闘服の調和に息をのみつつ、視線を少しだけ移せば、見慣れたようで見慣れることはない彼女の美貌がそこにある。
今日の彼女はラモン戦の時同様、白金の髪を背後でひとつに編んで垂らしていた。
ふと目が合うと、フィオリトゥーラがその笑みを深める。
ディルはそのまま雨水を拭う振りをして、顔を布で隠した。一瞬でも見惚れた顔を見られてしまっただろうかと、密かに舌打ちした。
これであの〝剣〟だからな……。今日の試合に勝ったら、一気に有名になっちまうかもな。
それからしばらくは、今終えたディルの試合についての話題などが皆の口から出たりもしたが、次第に口数は減っていき、控室の中は徐々に試合前の緊迫した空気で満たされていく。
「僕、ちょっと様子を見てくるよ。なんか自分の試合じゃないのに緊張してきちゃった」
ガルディアは苦笑いしながらそう言うと、一人部屋を出ていった。
ガルディアがS席スタンド脇の関係者用観覧スペースに到着すると、そこはすでに先の試合の時以上に人の密度が増していた。今日の試合に出場した剣闘士やその関係者の中からも、かなりの人数がザリの闘いを見ようとこの場に集まっている。
雨はすでにやんでいた。
空を見上げれば、雲のところどころに切れ間ができ、そこから無数の光が地上へと差している。
放射する幾筋かの光の膜は巨大なカーテンのように広がり、雨上がりの聖地の空は、なかなかに神々しい姿を見せていた。
「ちょっとごめんね」
観衆の隙間をくぐり抜け、最前列に抜けでると、準備中の闘技場の光景を見て、ガルディアは思わず声をもらした。
「うわ、何これ……」
先のフォルトン戦では四名の神官が周囲に配置されていたが、今はその倍以上の人数が闘技場を囲んでいた。
剣律もいるじゃん……。
数えれば、その人数は十四人。しかも、そのうち六人は、銀色の鎧に赤白のローブを身にまとい帯剣した剣律騎士団員だった。
神官が四人配置されているだけでもそれなりに物々しい雰囲気があったというのに、今はそれを遥かに越える大袈裟な厳戒態勢が敷かれていた。
均等に配置され直立姿勢で緊張感漂わせる彼らの他にも、スタンド席に異常がないかなど何人かの神官が小走りに周囲を駆けまわっている。
その中に、ガルディアは知った顔を見つけた。
「アレン! ……アレンッ!」
顔見知りの名前を呼ぶと、まだ十代の若い神官見習いが足を止める。
「あれ、ガルディアさん? 今日出てましたっけ?」
「いや、今日は知り合いの観戦。ね、ちょっといい?」
ガルディアが手招きすると、白一色のローブに身を包んだアレンがこちらへと近寄ってきた。
ガルディアは口に手を当て、その耳元にささやき声で話しかける。
「ねえ、なんでこんななわけ? 〝剣律〟までいるじゃん」
言われてアレンは周囲を見渡した。
「あー、これですか。いや、ファイナルに出る〝ザリ〟って、聞いてます? かなりやばい奴みたいですよ。これ、逃走やら危険行為やらを監視、抑止するためらしいです。それと相手の方が上位申請者らしくて、試合の形勢次第では早々に割って入れって指示も出てるみたいです。まあでも、噂どおりならその前に殺されちゃうんじゃないですかね? 確か相手〝D〟ですし。この試合、集客はかなりのものですけど、管理者は結構殺気立ってますよ。この試合組んじゃった人、たぶん何かしら処分を受けますね」
早口でひととおりを言いきると、「それじゃ」と、アレンは慌ただしく自身の職務へと戻っていく。
ガルディアは配置された神官や剣律騎士の姿をあらためて眺めた後、闘技場をぐるりと囲むスタンド席を仰ぎ見た。
なるほどね……。基本的には、噂のザリがどんな残酷ショーを見せてくれるかって雰囲気なわけね。
しかも、相手はあのフィオリトゥーラだ。すでに彼女の初戦の話を聞いている者もいるだろうし、そうでなくともこの会場で後ほどその姿を見せれば、特に一部の悪趣味な連中などは一斉に色めき立つことだろう。
まあそれが普通だよね、と思いながらも、ガルディアは密かにほくそ笑む。
「そろそろ出る準備をした方がいいよ」
ガルディアが控室に戻り声をかけると、丁度その背後で、階段を一人の神官が下りてくる。
「フィオリトゥーラ・ランズベルト様。入場口への移動をお願いします」
入るなり相手の姿も見ずに軽く頭を下げた神官は、その顔を上げた途端に動きを止めた。
立ち上がったフィオリトゥーラの姿を目の当たりにして呆然とするその様子を横目でうかがい、ガルディアはくすりと笑った。
魂でも抜かれてしまったかのように、神官はしばらくその姿に見惚れていたが、やがてその表情が複雑なものに変わる。
どうやらまともな神経をしている側らしく、この見目麗しく気品溢れる少女が、これからザリの最初の犠牲者となるべく、自身の手で処刑台に上げられるという事実に気がついたのだろう。
もっとも、それはごく当たり前な反応で、スラクストンの屋敷に彼女が訪れた翌日、初戦に臨むその姿を前に、ディルもガルディアもやはり、望ましくない形として無残な敗北を少なからず想像したものだった。
「それでは行ってまいります」
通路に出た後、背筋を伸ばして姿勢よく前を行く神官のあとにフィオリトゥーラが続く。他の四人は関係者スペースで観戦するため、ここで彼女と分かれた。
スタンド席下の通路をぐるりと半周進み、選手入場口となる合同控室前が見えてきた時、フィオリトゥーラはふと背後に気配を感じた。
近づいてくるその足音。どうしてか、姿を見ずとも誰だかわかった。
「ディル」
足は止めずに、隣に現れたその姿を見て声をかける。
やはりディルだった。
小走りで来たものの慌てて追いかけてきたという風でもなく、彼はフィオリトゥーラに歩調を合わせると、そのまま並んで歩きだした。
「どうされたのですか?」
「いや、試合前のザリがどんな顔してんのか、見ておきたくなってな」
決着つかずとはいえ、すでに一度彼女と一戦を交えているザリが、どういった心境や雰囲気で試合に臨もうとしているのか。ディルはその点に興味が湧き、思い立って三人と分かれてこちら側に来たのだ。
訊ね聞いたものの、そんなディルに対してフィオリトゥーラは特に反応を見せなかった。
やはり緊張しているのだろうかと、その横顔を見ながらディルは考えるが、静かでどこか物憂げにも見えるその表情から何かを読みとることは難しかった。
観察したいのはザリだけではない。それを口にしなかったが、当然フィオリトゥーラの側にも興味がある。
「後ほど入場の指示が出ますので、それまではこちらでしばし待機願います。それでは失礼いたします」
丁寧に礼をすると、案内した神官は今来た方と反対の方へそのまま通路を進んで姿を消した。
闘技場への入場路と合同控室の間は試合を間近に控えた剣闘士の一時待機所となっていて、開けたそのスペースには人の輪ができていた。
二十人近くはいるだろうか。そのほとんどが今日の試合に出場した剣闘士と関係者たちで、彼らはいち早くザリの姿を見ようとここに集まってきたようだった。観覧スペースではないが、入場側のこちらからでも闘技場は一望でき、そのまま試合を観ることもできる。
本来ならば進行に携わる神官が現れ解散を命じそうではあるが、単独の闘技場のファイナルともなるとこういった光景は珍しくなく、大抵は黙認されることの方が多い。
「失礼いたします」
まばらに空いた隙間を抜け、フィオリトゥーラとディルがその人の輪が作るスペースの中央に立つ。
ザリも審判を務める神官も、まだここには来ていない。
両手剣を背負った戦闘服姿のフィオリトゥーラが足を止めると、緊張と期待を織り混ぜながらザリを待っていたはずのその場の空気が一変した。
皆の視線が一点に集中する。
予期せぬ者の突然の降臨に周囲は沈黙し、続いてそれぞれが息をのみ訳もわからず感嘆すると、やがてこれがザリの対戦相手なのだと理解し、次第にひそひそと声がもれ始めた。
彼女の横に並びながら、ディルはそんな様子を冷めた視線で見渡した。
フィオリトゥーラに直接声をかけようとする者はおらず、輪を作る者たちは、互いに確認しあうように目の前に現れた剣士について口にしていた。
しばらくすると、彼女の隣にいる男が先ほど試合を終えたばかりのディルだということにも気がついたらしく、「ディルエンドだろ」、「なんでだよ」と、それについても聞こえるようになってくる。
「聞こえてるぜ」
顔を向けずに誰にともなくディルが言うと、再びこの場に沈黙が訪れた。
フィオリトゥーラは少し居心地悪そうに唇を噛みながらも、しっかりと顔を上げ、その視線を闘技場の方へと向けている。
「――おい、来たぞ」
誰かが声をかけると、皆が一斉に振り向き、その方角で自然と人の輪が裂けていった。
合同控室脇の階段から二人の神官が連なって出てくると、続いてその背後に、百九十センチ近い長身のひょろりとした男がその姿を現す。
ザリだった。
あの夜と服装は大きく異なっているが、間違いなかった。
「指示があるまで、ここで待て。いいな!」
神官の一人が強く言い放つと、ザリは目頭が深く切れこんだそのアーモンドのような形をした目をゆっくりと細め、はああ、と気怠そうに息を吐いた。
「わかってるよお。うっるせえなあ」
「いいか、大人しくしてろよ」
「余計なことをするなよ」
二人の神官はその口調こそ強めだが、腰が引けているのは明らかで、ザリがフィオリトゥーラの方へ歩きだしたのを見届けると、これ以上関わりたくないとばかりにすぐさまこの場から立ち去ってしまう。
きゅっと、その目をさらに細くして歪な笑みを作ると、ザリがゆらゆらと身体を揺らしながら近づいてくる。
ザリの登場に自然と距離を空けようと、皆が後退りしたため、人の輪が崩れ大きく広がっていった。
「今日はまた随分と勇ましい恰好じゃねえかよお」
あの夜にも聞いたわざとらしく裏返した不快な声が響く。
フィオリトゥーラが振り向くと、ザリは少しの距離を置いて足を止めていた。
そんなザリも、彼女同様にあの時とは異なる衣装に身を包んでいた。
今日の彼はマントを羽織っておらず、また服全体の色味が明るく強い。
鮮やかな白地のチュニックは、肩から袖のないデザインの物で、ベルト下に出た長い裾が膝上まで垂れている。その裾の端からは、赤と黒が混じった炎とも蛇ともつかないような幾筋もの不気味な紋様が絡み、ザリの胸元の辺りまでうねり這い上がっていた。
腰にはあの鉈のような特徴的な巨大ナイフ、ククリが鞘に収められて、左右に一本ずつ下げられている。
「今日は騎士様の邪魔は入らねえからな。たっぷり可愛がってやるよお」
面長な顔の近くまで両手を掲げると、そこで十本の長い指が一斉に蠢いた。
ザリはその目を見開かせ、白目の中に浮いた小さな瞳でフィオリトゥーラを凝視する。
当のフィオリトゥーラと隣のディルは、それを静かに眺めた。むしろ周囲の者たちの方が、ザリの異様な雰囲気にのまれ、戦慄してしまっていた。
前のザリと違う……?
フィオリトゥーラは臆することなく、平然とザリと目を合わせながら思う。そう感じたのは服装の違いなどからではない。
表情? それともその眼だろうか?
その言動や表面上の態度と相反して、あの時に散々見られた見下し弄んでやろうという雰囲気が、そこにはまるで感じられないのだ。
そうか、とフィオリトゥーラは納得する。
最後の時だ。ファラールとエリオスが現れる直前、ザリと対峙し再び剣を交えようとしていた、あの時……。
両腕を広げ大きく構えた、ザリのその顔……。
ディルは密かに息をのんだ。
目が据わってやがる……。
その派手な服装も含めて、おそらく小細工を弄する気などないのだろう。
闘いが始まれば、ククリとその戦闘技術を余すことなく用いて、真っ向からフィオリトゥーラと衝突する。そんな気配が漂っていた。
「おい、入場の準備を始めるぞ!」
声がすると、赤白のローブに身を包んだ男が、輪を割って入ってくる。
「お待たせいたしました」
フィオリトゥーラの方にのみ小さく会釈をすると、男は周囲へ睨みをきかし、すでに崩れかけていた人の輪をさらに外に押し広げた。
「む? そちらは?」
男はディルに気がつくと、その強面をぐいと近づけてくる。
「ただの荷物持ちだよ。入場前には退くから安心してくれ」
ディルは薄く笑みを浮かべながら、素早く男を観察した。
神官のような赤白のローブをまとっているが、その袖や裾の縁に金の刺繍でラインが入っている。鎧こそ身に着けていないが、顔つき、ローブ越しにわかる体格などから、神官ではないなとディルは予想した。
剣律の隊長クラスか……。
審判までもが、ザリのために特別に用意されたようだった。
羨ましいかぎりだな。
ディルはフィオリトゥーラへと手を差しだす。
「預かるぜ。入場前に剣を抜いておけよ」
「それではお願いします」
フィオリトゥーラがカルダ=エルギムの両手剣を革袋から取りだす中、審判の男が闘技場側に立つ者たちを左右に退かせ入場路への道を空けていた。
すると、ザリが唐突に歩きだす。
「――おいッ」
審判の男が制止しようと声をかけるが、ザリは構わず進んでいってしまう。
「並んで仲良く入場ってかあ? 勝手にやってくれよお」
一人闘技場の中央に向けて行ってしまうザリを見て、審判の男は一度は逡巡するが、すぐに振り向くと、フィオリトゥーラに声をかけた。
「貴女さえ構わなければ、このまま進行します。いかがでしょう?」
どうやら男は、この程度のことであれば多少形式を無視しても早々に試合を開始させる方を選択したいようだった。
隣でそれを聞きながら、ディルも賢明な判断だなと思う。
「構いません」
フィオリトゥーラは革袋をディルに預けると、剣先を斜めに下げた後、くるりと振り返る。
その視線の先には、周囲を見回しながら背中を丸めた猫背の姿勢で、闘技場の上をうろうろと歩きまわるザリの姿があった。一人だけで現れたその姿を前に、戸惑う観衆たちからのどよめきが聞こえる。
ディルも同様に、闘技場や会場の様子に目を向けた。
雨はもうすっかりやんでいた。
次第に割れていく低い灰色の雲の底が、黄金色に輝き、その隙間から光芒が連なり降りそそぐ。
何かが降りてきそうな空だなと、ディルは思わずそんな妙なことを考えた。
「フィオ。前に闘った時のイメージに引きずられすぎるなよ」
耳打ちするディルに、ザリを眺めたままフィオリトゥーラが小さくうなずく。
「アイツの戦闘経験は半端ないだろうからな。そういうのも利用してくるぞ。ククリも今回は最初から――」
続けようとするディルへ、フィオリトゥーラがその顔を向けた。
「ディル」
唐突に現れた碧い瞳を前に、ディルは思わず動きを止める。彼女はいつでも不意を打ってくるのだ。
「な、なんだよ」
フィオリトゥーラがどこか楽しげに、可憐な微笑みを披露する。
「ご忠告感謝いたします。しかし、ご心配なく。私が、あのような者に後れをとるとお思いですか?」
ディルはそんな彼女の言葉に驚き、一度はその目を見開かせるが、すぐに表情を戻すと、今度は笑いだした。
「ははッ、言うじゃねえか」
「――それでは入場を開始します」
審判の男が告げ入場口に立つと、両手剣を携えたフィオリトゥーラがその背後につく。
ディルは一歩下がり、そんな彼女の後ろ姿を見つめた。
その横顔がかすかに覗く。
「見ていてください。いざ、参ります――」
颯爽と、彼女は闘いの舞台に向けたその一歩を、強く踏みだした。
約束の剣 了
最後まで読んでいただき、ありがとうごさいました。
もし、少しでも楽しんでいただけたのならば嬉しいかぎりです。
よかったら、評価、感想などお待ちしています。




