必殺!レーザービーム!
「とりあえず服を着よう」
いつまでも裸でいるわけにはいかないからな。
「お?あったあった。男物だけど大丈夫だろう」
俺は仕舞われていた服を着る。
ビリッ!
「……き、きっと古くなってたんだな」
ビリッ!
「……んな馬鹿な……」
服を着ようとするたびに破けるのだ。
力加減が難しくて。
「こりゃあ普通の服じゃだめだな……どうすっかなぁ……」
着る事が出来そうなのがローブくらいしかない。
裸にローブか……。
「はぁ……一先ず着よう」
俺は裸の状態でローブを着る。
「うっへぇ、裸より落ち着かないぞコレ……ってそんなことを言っている場合じゃないな」
そう、急がなければならないのだ。
ここら一帯が更地になるような爆発が起きたのだ。
その衝撃は様々な街や国に届いているだろう。
遅かれ早かれ、調査隊が来るはずだ。
「その前に準備を整えてここを離れないと」
幸か不幸か分からないが、とりあえず生きていたのだ。
調査隊に捕まるとかいう、つまらない終わり方をしたくない。
「服はこれでいい。武器は……全部吹き飛んだな……」
俺は剣どころか、武器全般が使えない。
だから、俺は錬金術で作った爆弾とかその辺りの武器で自衛して生きてきたのだ。
俺はそれらが直ぐに使える位置に置いている。
それが今回はあだになった……。
「まぁ、今はこの体が武器みたいなもんだ。何とかなるだろう。それよりも……」
この地下を何とかしなければならない。
ここには、俺の実験材料だけでなく、研究資料まで置いてあるのだ。
なんの資料かって?ホムンクルスだよ。
それに、失敗作のホムンクルスまで保管してあるのだ。
ただの人体実験場と勘違いしてくれれば、「マッドマンがいたようだ。上に報告しよう」で済むが、ホムンクルスの研究資料だとバレた場合、「急いで国に戻るぞ!ホムンクルスが存在する可能性がある!」とかなってしまったら、大陸中にそれが伝わる。
おそらくすべての国が調査を開始するだろう。
この世界にとって、ホムンクルスとは世界を動かすほどの存在なのだ。
そうなってしまっては、生活がしにくくなる。
「……必要最低限のもの以外は処分していこう。自分の努力の結晶を自分で壊すのは……ちょっときついけどな」
わかっている。
そんなことを言っている場いじゃない。
「ハァ……異空間収納袋さえあればなぁ」
異空間収納袋、あり得ない程入る袋だ。
俺なら、作れないことは無い。
だが、最も重要な素材が手に入らない。
次元龍の爪、これが必要なのだ。
次元龍とはおとぎ話にもなっている伝説の魔物で、その爪は世界を切り裂くとさえ言われている。
今のところ、その爪は三つ存在が確認されている。
だが、そのどれもが別々の国の国宝として保管されている。
錬金術師とはそういうものなのだ。
どんなに腕がよくても、素材が無いと何も作れない。
道具と素材が無ければ無能なのだ。
「無いものねだりしても仕様がない。ぱっぱと作業に取り掛かろう」
俺は部屋から必要な物だけを持ち出した後、素材の中からある物をパパっと作る。
俺はそれをもって外に出る。
「持ち出したのは最低限の道具と金だけ。それ以外は全部処分………安らかに眠れ『ご主人様』」
俺は先ほど作ったものを地下の入り口から投げ入れる。
そのまま歪んだ扉を閉めた。
ドオォォン!!
地面の下から伝わる衝撃、積み上げてきたすべてが崩れ去った事が分かった。
何となくわかる。
俺は死んだのだ。
以前の、錬金術師だった俺は確かに死んだ。
あの時の爆発で跡形もなく。
今の俺は……あの男の記憶があるだけの、ホムンクルスなのだ。
何故かはわからないが、そう確信できる。
そう考えれば、少しは報われるだろう。
ホムンクルスの製作という試みは、確かに成功したのだ。
「さて!これで二回目の転生を果たしてしまったわけだが……何をしようか?」
歩きながら考える事にしよう。
ここに居るわけにはいかない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ぬぅ~~」
俺は一先ず、一番近い街に向かって歩いている。
そして俺は、歩いている途中にあることに気付いたのだ。
「『加工時のみ魔力消費ゼロ』のチートがなくなっている……」
そう、あるのは『解析の魔眼』のみ。
先ほど拠点を爆破した時に作った爆弾。
あれを作るときに魔力を消費したのだ。
この体は莫大な魔力を有しているが、無尽蔵という訳ではない。
さらに、ホムンクルスにとって、魔力とは命綱なのだ。
これがなくなった時点で死ぬ。
体が自壊するのだ。
「よく考えないとな……」
魔力回復のポーションは最優先で買うべきだろう。
ホムンクルスは食料を必要としない。
魔力さえあればそれでいいのだ。
「ん?この音は……」
遠くから激しい音が聞こえる。
てかこの体耳良すぎだろ。
俺は走って近づいてみる。
「見えてきたな。……やっぱり戦闘音だったか」
俺は少し離れた所から様子を見るために止まろうとする。
ズサァァァァ―――――――
「あっ!勢い付きすぎた!止まらないっ!」
足は動かしていないのに、走った勢いが強すぎて止まり切れず、最終的には……
「(ヤバい、どうしよう……戦闘してることろのど真ん中に来ちゃったよ……みんな誰あいつ?みたいな顔で見てるよぉ……)」
周りには馬車が一台、それを守るように三人の騎士みたいな人が居て……その人を倒そうとしている汚い格好の人が15人か。
15人の方は多分盗賊だな。
「えっと……こんにちは?」
一先ず挨拶から始める事にした。
「な……なんだぁ?変なねーちゃんが来たと思ったら……てか、めちゃくちゃ美人じゃねぇーか!まさか獲物の方からくるとはな!コイツもついでに持って帰ろうぜ!!」
「へっへっへ、そうだな!たっぷり楽しんでから売っぱらっちまおうぜ!この容姿だ。かなりの金になるだろうさ!」
盗賊たちは俺で楽しんでから金にしたい様だ。
俺がとんでもない勢いで吹っ飛んできた事は無視ですか?
まぁいいや。
「丁度いい」
「あ?何がだ?へっへ、まぁいいさ。ほれ、大人しくこっちに来たら痛い思いしなくて済むぜ」
せっかくだから、この体に仕込んだ武装の性能確認と行こうかね。
と言っても大した数はつけてないんだがね。
「一つ目」
俺は掌を盗賊たちに向けて、最小出力の『レーザー』を撃つ。
ジュッ!!
「………へ?」
盗賊が一人溶けた。
「ん~最小出力でこれかぁ……これじゃあテストにならないな」
俺はそのまま次々と盗賊をレーザーで撃っていく。
たった15人しかいなかった盗賊は、数秒で全滅した。
ちなみに、これのレーザーは魔法である。
この体の中に魔法陣を組み込んであるのだ。
俺はそこに魔力を流すだけで魔法が発動する。
ほぼノータイムで発動できるのでとても便利だ。
さて、何もしない訳にはいかないよなぁ。
「大丈夫でしたか?」
俺は馬車の方にいた騎士に声をかける。
「あ、あぁ。ありがとう助かっ「ガチャ」」
騎士の人がお礼を言おうとしたとき、馬車の扉が開いた。
そのにいたのは、一人の少女だった。
「お嬢様。如何なさいましたか?」
「何も問題ありませんわ。あなた達と、そこのお方のお陰でね」
お嬢様と呼ばれた少女は、それだけを騎士に言った後、俺の方に近づいて来る。
「さぞ名のある高名な魔術師様とお見受けします。この度は我々の危機をお救い下さりありがとうございました。私、ペイル侯爵家の長女、イリレスと申します。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
おう……まさかのお貴族様だったぜ。
なんでこんなところに貴族が居るんだろう?
「私はこの先の街に住んでいる『アイン』と申します。ただの街人で、魔術師ではありません」
別に嘘は言っていない。
俺の家はさっきまでいた拠点とは別に、街の中にも家を持っている。
俺が錬金術師として活動しているときに住んでいた街がこの先の街なのだ。
「……え?無名……そんなまさか……だって、あれほどの力を」
お嬢様はぶつぶつと何かを言いながら考え事を始めてしまった。
……え?俺はどうすればいいの?このままいっていいの?




