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この狂った街の全てに抗え  作者: 柑藍
最終章 終わり、そして始まり
36/37

それから

「うぅっ……」


腹部に弾が命中した三浦は

その場に身を屈め

手で押さえるが血が溢れ出している


一方三浦が放った弾丸も

勇真の左肩を撃ち抜いていた

神経が悲鳴をあげるような痛みに

勇真は顔を歪めた


「ぅぁあ!」


「もう復讐は果たされましたよね?

ここを出ましょう」


鈴は冷静さを装い

早くこの場から立ち去るように促す


賢人は勇真の撃たれていない右肩に腕を回し支えた


「柴崎さんは警察に匿名で通報して


倉沢君、あいつを殺すつもりはないのよね?

なら、救急車も」


鈴はてきぱきと指示を飛ばす


「あぁ」


「あとは…倉沢君よね…

病院に連れていったら

事情を説明しなきゃいけなくなる…」


1番の問題は

傷口から血が止まらない勇真を

どうするかだ


鈴が悩むなか

涼はあまり好ましくないように

1つの提案をした


「……なら

俺の知り合いに頼もう」


そして建物の前まで来た

涼専属の運転手が運転する車に乗り込み

走ること約10分

車はとある一軒家に到着した


中に入ると

そこは自宅を改造した病院のようになっていて

1人の白衣を着た若い女性が待っていた


「銃で撃たれたんだって?


早く運んで、ここに寝かせて」


勇真をベッドの上に寝かせると

全員その部屋から閉め出された


「あの人は?」


「小さい時から世話になってる医者だ

あぁ見えて結構歳いってるんだ」


医者の秘密を暴露しながら

暫く待っていると

扉が開いた


「終わったわよー


それにしても撃たれるって何したのよ?

あんまり派手な喧嘩はしないのよ」


「はいはい」


涼はお礼も言わず

ぶっきらぼうにそう言う


だがそんな涼を可愛いと思っているのだろう

その医者はくしゃくしゃと

涼の頭を撫でた


「もー、涼ちゃんってば


そういえば涼ちゃんの友達に会うのって初めてね」


涼ちゃんなんて呼ばれていることに一華は笑いを堪えている


「友達じゃねーよ

もう、いいから

ちょっと出てろよ」


「ちぇっ

せっかく仲良くなろうと思ったのに」


そう言い白衣を翻すと

口を尖らせながら出ていった


右肩に包帯が巻いてあり

痛々しい勇真だが

意識ははっきりしていた



「ユグドラシルが壊滅して

警察に連れていかれてんなら

俺らのこともすぐバレるんじゃねーの?」


顔も見られているし

名前を知られている人もいる


警察に話されれば一発でアウトだ


そんなことになったら

涼の夏を自分よりも下の地位に落とす野望が

上手くいかなくなるかもしれないのだ


「大丈夫だ


ユグドラシルについて

警察は調べることはしないだろう


手を組んでいたことがバレると

厄介だからな


俺らのことが明るみになることもない」


「そうか


…これでこのチームは解散だな」


「あぁ、目的達成のための条件はクリアした

あとはそれぞれがどうするかだ」


それが解散の言葉となった

彼らの中に寂しさがあったのかはわからない


もしかしたらそんな思いに気づく前に

勇真の言う通り

そこからそれぞれ

自分の行くべき場所へと向かったのかもしれない



鈴はウルドが拠点としていた

倉庫に来ていた


こんな明るい時間に鈴が倉庫に

入ることなどなかったため

その明るさが新鮮に感じられた

誰もいない倉庫

もう来ることはいと思っていた倉庫


鈴は自分がウルドのリーダーとして

いつも全員に話していた場所に立った


そして息を吸い込んで言った

いつもと変わらず淡々と


「こんな私を

リーダーと呼んでくれてありがとう」


賢人は電車に乗ると

実家のある街を目指した


そして駅で降りるとそのまま

祖父の眠っているお墓へ向かった


初めて訪れた祖父のお墓の前に立つ


真剣にじっと見ていたが

ふっと笑みがこぼれた


「てめぇを超えたってことでいいよな?


どうだ、孫に超えられた気分は?」


しかしその笑みは嫌なものではない

賢人の頬にある傷を柔らかな風がなでていく



「言い逃れはできねーだろ」


次から次に夏へと突きつけられる

危ない組織と繋がっていた証拠


涼は下を向くばかりの夏ではなく

じっと父を見た


父は渋い顔をしていたが

さすがに見過ごす訳にはいかない状況だった


「たしかに、夏に任せておくのは心配だな


経営は涼が

夏は涼のサポートに回ってやれ」


「………はい」


夏は拳を握り悔しそうな声で返事をした


そんな夏に涼は

勝ち誇った目を向けるのだった



順也がいそうな場所など

皆目検討もつかない一華は

自分のアパートに戻った


ポストに入っているチラシを

バサッと机の上に置く


すると広がったチラシの中に

封筒が紛れているのが見えた


「手紙か?」


差出人の名前はない

切手もないため直接届けられたものだろう


注意を払いながら開けると

やはり中身は手紙だった


イチへ、から始まり

そこに書かれていたのは

謝罪と感謝の言葉だった


「これ……順也からか」


そして最後には


俺は街を出るが心配するな

きっとまた会えるから


そう書かれていた


「なんだよ、順也のやろー」


一華は手紙を強く握った

そして堪えきれなくなった感情が

手紙の上にこぼれ落ちた




「あ、……寝てしまってた」


肩の痛みに耐えながら

勇真は妹、穂香が入院している病院に足を運んでいた


そして語りかけているうちに

椅子に座ったまま眠ってしまっていたのだろう

気がついたら朝を迎えていた


「穂香…

もう、全部終わったよ」


勇真はゆっくり立ち上がり

その場を去ろうとする


「……おに、ちゃん?」


勇真はぴたっと立ち止まった

耳を疑う


振り返ると穂香はベッドの上で目を開き

こっちを見ている


心を衝撃に襲われる


「ほ、のか?」


意識が戻った穂香を見て

勇真は緊張から解き放たれた気がした


急いで看護師に連絡をする


そのあとは

バタバタと医者が入ってきたり

母が駆けつけたりと

人が入り乱れた


そんな様子を見ながら

勇真は満足したように微笑むと

病院から出た


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