説得
それから5人が揃うことがないまま
冬休みを迎えようとしていた
三浦はデスクの上に倒れ込むように頭を置くと
深い深いため息をついた
この光景を眺めるのは何度目だろうかと
隣の席に座る安藤は
三浦がなぜ落ち込んでいるのか
すぐにわかった
「五十嵐君と柴崎さんと塚本君、
結局今日も欠席で連絡がとれないんです…よね?」
「……そうなんですよ」
体を起こすと何とも頼りない声で呟いた
「せっかく退学処分は免れたのに…
これじゃあ、またいつ
退学の話が出てくるかわからないじゃないですかぁ……」
まるで目の前に3人がいるかのように
話す三浦
しかし次第にどこを見ているのかわからなかった目が
真剣なものに変わっていく
「あの子達は歯止めが利かない気がするんです
自分の中にブレーキがないというか
止まることを知らないというか…
だから僕たち教師が力にならなきゃいけないんでしょうけど……」
「もー大丈夫ですよ
きっと三浦先生の思いは伝わってますって」
「そうですかね?」
そう言った三浦は
少しだけ元気を取り戻したようにはにかんでみせた
「少し時間いい?」
「………。……は?」
夜、一華のアパートを訪ねた人物
一華は扉を開けたはいいが
目の前にいる蛍光灯に照らされたその訪問者、
鈴の言葉に一瞬思考が停止した
1人暮らしを始めてから誰も来たことがないこの部屋に
鈴が訪れていることもそうだが
1対1の時間をつくれという鈴の言葉に
一華は驚いていた
鈴が順也のチームを潰したと知ったあの日から
1度も口を利いていない2人
一華は鈴に会うことがないように
学校にも暫く行っていない
それなのに部屋に来られてしまったのだ
そして夜の公園に連れ出された
鈴は公園の奥にある
屋根のついているベンチに座った
立ったままで早く用を済ませろよと言いたげな
一華にも座るように促すと
鈴とは距離をとってベンチの上にあぐらをかいた
「なんだよ、呼び出して」
鈴とは反対の方向を見たままだ
「…その、」
勇真ともう1度5人で集まろうと話し
一華の説得を任された鈴
しかし、ここまで一華を連れてきたが
何を言えばいいのか頭の中でまとまらなかった
いつものよつに淡々と事実を述べてしまったら
完全に亀裂が入ってしまうことはわかっていた
まずはやはり西岡順也のことについて
謝罪するべきだろうか
だがそれでまた揉めてしまった場合
私はきっと反論してしまうだろう
鈴は今まで人を説得などしたことがない
人の気持ちを考えたこともない
というより考えられない
自分の気持ちに無頓着なのだから
静けさが支配するその場で
先に話したのは一華の方だった
「あんさ、順也のチームのことだったらもういいよ
考えたんだけどよ
あれは…潰された方が悪いだろ」
「…え?」
「だから
あれは順也のチームと
お前がいたチームの抗争ってことだろ?
それで負けたんだよ、あいつらは」
「そ、そうかもしれないけど」
鈴は困惑する
自分の本当の考えを
一華に言い当てられた気がしたからだ
「確かにムカつくよ
だからあの組織を潰すんだ」
その言葉に込められた一華の強い復讐心を目の当たりにした鈴は
自分のここでの使命を完遂しようとする
「柴崎さん
もう1度、5人で集まりませんか?
ユグドラシルを潰すために」
鈴はベンチから立ち上がり
一華に歩み寄ると淡々とそう告げた
涼と賢人の説得にあたっていたのは勇真だ
裏切り者について話がある、と
夜の駅前に2人を呼び出した
「本当に裏切り者がわかったのか?」
3人揃うとすぐに涼が疑わしそうな目付きで言った
「悪い、それはまだ…
裏切り者を探し出す為に
頼みがあるんだ
…もう1度5人で集まってくれないか?」
「いや、待て
裏切り者わかんねーのかよ」
やはり涼はそこが解決しないと
集まる気はないらしい
勇真は裏切り者が誰なのか
なんとなくは絞れていた
しかし確証を見つけてはいなかった
「まだ詳しくは言えない」
「言えないってどういうことだよ
それにまた5人集まって動いたとしても
前回と同じ失敗が起こるかもしれないだろ」
勇真のハッキリしない態度に
賢人も納得できない様子だ
「そうだよ
こっちの情報が筒抜けなら
何したって意味ねーし
罠仕掛けられるかもしんねーじゃん」
賢人と涼が
5人で集まったときの問題点をあげる
勇真はこれを待っていた
それぞれ思う問題があるということは
逆を言うと
その問題を解消すれば自分の意見に賛成させる流れに
持っていけるということだ
そして勇真にはそれができる
自信があった
「次実行する作戦だけでも聞いてくれないか?
それを聞いてからもう1度集まるかどうか
決めてほしい」
勇真は2人に頼んだ
まぁ、作戦は聞いてみよう
という2人に勇真は自分の考えた作戦を伝えた




