ユグドラシルという組織
「…と、いうわけで
5人の退学の件は
なしということになりました」
三浦に呼び出された勇真と鈴
本当は一華と涼と賢人も呼びたかったのだが
学校に来ていないため仕方無かった
「本当ですか?
あんなに退学させたがってた理事長が?」
「僕も正直不思議なんです
説得してきても全く手応えがなかったんですが
昨日、急に退学処分は取り消しだって言って
まぁ、何はともあれ僕としては
ほっとしているんですけどね」
教室に戻った勇真はほっとなどしていられなかった
それは鈴も同じようだ
「あの理事長が急に退学処分を取り消しなんて
何かあったとしか考えられない」
「俺もそう思う
けど、んー…」
勇真はしばらく考え込んだ後
1つの可能性が浮かんだ
「赤原学園はユグドラシルが関わってるっていう噂を聞いたことがある
仮にその噂が本当で
経営にまで関わっていて
理事長よりも上のポジションにいるなら…
理事長が急に意見を変えたことも納得できる…が」
「えぇ
そんなことをして何の得があるのか
自分達の利益なしに
ここまでしないでしょうね」
「だよな
やっぱユグドラシルは関係ないのかな」
2人は頭を悩ましていた
頑固な理事長が考えを180度変えたというのには
やはり疑問が残るものとなった
せっかく退学を免れたのだから
これからは慎ましく
暮らしていこうなどと
改心するはずもなく
この日、5人は
空き教室に集まっていた
「結局はこの間の西岡順也とかいう男からも
後から来た男たちからも
何も収穫なかったじゃねーか」
賢人は少しイラついたように
机の上にあぐらをかいている
「あぁ
わかったことは
下っ端には何も知らされてない
情報管理が徹底されてるってことだけだな
俺らは…」
「情報なんかどうでもいいだろ
さっさと潰すぞ
そのなんとかっていう組織」
よりいらいらしている
一華が勇真を遮った
順也のことがあってから
すぐにでも暴れたいのだろう
「ユグドラシルよ」
そんな一華に冷静に対応する鈴
「無理、覚えらんねー
なんでそんな名前なんだよ」
脳をあまり活用しない一華
カタカナなんて覚えようという気すら
起こらなかった
勇真は一華を落ち着かせることも含め
腕を組ながら語り始めた
「ユグドラシルっていうのは
北欧神話に出てくる世界を体現する巨大な木のことだよ
日本語で言えば世界樹
街を支配してるっていうことで
この名前を使ってるんだろうね
腕に入ってる木の刺青も
そこからきたものだろう
そして、このユグドラシルの木の根本には
3つの泉がある
そのうちの1つがウルドって名前だ
それを考えると
ウルド以外にも神話にちなんだチーム等が
存在していても不思議じゃない
ユグドラシルはその木の通り巨大な組織ってことなんだろうな」
賢人は気にくわないといった表情で話を聞いていた
「大袈裟な名前つけたもんだな」
「へぇ、初めて知りました」
鈴は勇真の知識や情報量の多さに感心していた
「なら、私らも名前つけるか?
カタカナは面倒臭いから…
反乱軍倉沢組とか」
「俺の名前使うのかよ…」
適当なことを言う一華に
冗談だろと言いたげな勇真
そんな勇真に
涼が作った笑みを携えながら歩み寄る
「まぁいいじゃん
そんなに名乗る機会もねーだろ
……こんなだっせぇ名前」
挑発するように一華を横目で見る
ビュン
突然何かが涼の目の横を通り髪をかすめる
振り返るとシャーペンが壁に突き刺さっていた
「本当うっせーよお前」
一華は既に次のシャーペンを構えている
「はぁ、お前らな…」
そんな様子を見ながら勇真は
特に止めることもなく
大きく溜め息をついて項垂れる
暫くして落ち着きを取り戻した空き教室で
勇真はやっと本題を切り出すことができた
「涼、会議室の件はどうなってる?」
「あぁ、毎週金曜日にホテルの会議室に
川口達幹部は集まってる
今週も会議室の使用予定が
21時から入ってるみたいだ」
もちろん正規のルートで仕入れた訳ではない
会議室が使用される日時を勇真に教える
「明日の夜か…
幹部を押さえれば拠点もわかるだろうし
そうすれば
すべてを潰すこともできるだろうな」
「幹部は全部で10人だ
5人もいればすぐ片付くんじゃねーの?」
「強い奴らなんだろ?
少しは対抗してもらわねーと
倒し甲斐がねーよ」
「えぇ、強いですよ」
「全員が銃を持っている可能性があるしな」
涼の楽観的な発言に
賢人はナイフの刃を眺めながらそう言い
勇真は注意を促す
銃という言葉に緊張が走る
「俺らがやろうとしていることは
死と隣り合わせの反乱だ
迷ってる時間も悩んでる時間もない
明日、決行する
覚悟はいいか?」
勇真が最後の意思を確認する
「負けるつもりは一切ねーけどな」
賢人の強気な言葉にならうように
全員が静かに頷く
いよいよ街の闇を潰すための
戦いが動き始めた




