ハッキングで見る夜の街
そんな様子を
監視カメラを通して見ていた人物がいた
「へぇ、篠原もこういうことやってんだな」
涼は画面を見ながら呟いた
この倉庫は五十嵐グループが管理していたもので
監視カメラの映像を盗むのも
比較的簡単だった
そして、涼は
他にも街で何か起きていないか
監視カメラの映像をチェックして回る
元々は賢人や一華を潰すために
ハッキングしたものだったが
良い暇潰しになっていた
多くの映像を見ていた涼の目にとまったもの
公園に設置された防犯カメラの映像だ
「やっぱりお前は
夜の街にいるんだな
ふっ、しかもこの男…川口じゃねーか」
そこに映っていたのは
一華と川口という男だった
涼は川口を知っていた
会ったことはないが
兄、夏の経営するホテルのカメラを覗いていたとき
何度も見た顔だ
そして夏が手を組んで
会議室を貸している
裏の組織の人間であった
会議室に来るメンバーはいつも決まっており
幹部の印だろうか
彼等は全員左の手首より少し
ちょうど袖で隠れる部分に
木の刺青をいれていた
川口は数人いる幹部をまとめあげていた
かつて川口の情報をもっと得ようと
誰もいない会議室に忍び込み
隠しカメラや盗聴器を仕込んだこともあったが
妨害されたらしく
何も映らず何も聞こえなかった
涼が倉庫の監視カメラのチェックを始める少し前
鈴の隣には川口がいた
北山と同じくらいの年齢で
やはり北山と同じく
危ない臭いのする男だった
鈴の記憶では
北山は川口と話すとき敬語で話すが
川口は北山に対して命令口調だ
そのため
川口は
ウルドを支配する組織のトップか
それに近い地位の人物なのかもしれないと
鈴は思っていた
実際、何かのボスのような
雰囲気を纏っている
「篠原、ウルドをまとめあげろよ
お前にかかってるからな」
鈴が返事をしないことに慣れているのか
返事を待つ様子もない
「俺はそろそろ行く
今夜は待ち人がいるんだ
篠原と同じくらいの年齢らしい」
少しだけ気になるような反応を示した鈴だったが
やはり言葉は発しない
「じゃあ、行ってくる」
倉庫を出た川口は
待ち合わせ場所に向かう
正確には
呼び出された場所だ
闇に包まれた公園に着いた川口の視線の先には
1人の女が立っていた
「お前か、俺を呼び出したのは
ずっと俺らのことを探してたらしいな
いくら会いたいからって
幹部を脅して俺を呼び出させるとは
命知らずだな
まぁ、そこまでされたから
俺はここに来た訳だが」
そこまで汚い言葉を使うこともなく
だが確実にヤバい人間だとわからせる
目付きや空気で威嚇する
だが
目の前の女子高生、柴崎一華に
威嚇など関係なかった
「お前が川口か
お前には…聞きたいことがあるんだよ」
沸き上がる怒りの感情を
ギリギリのところで押し留め
質問をぶつける
「甘くみてもらっちゃ困るよ
情報は組織を動かす上で重要な部品だ
ガキに聞かれたからって
簡単には答えられねーよ」
後ろに潜んでいた男達が
ゾロゾロと出てくると
川口の前に立つ
川口に手を出させるつもりはないようだ
「だったら…
答えたくなるようにしてやるよ!」
一華は言い終わる前に
駆け出していた
大勢の男に臆することなく
加速して突っ込む
一撃で確実に仕留める戦い方
息の根を止めても構わないと思っているのかもしれない
邪魔な奴は
誰彼構わずぶっ飛ばす
最も後ろにいる川口を目指し
男達を次々となぎ倒していく
肘や拳を使って最大の力を出して殴る
服を捕まれてもすぐに
みぞおちに膝を入れる
男が蹴りあげるため足をあげようとすると
それを察知した一華は
ふりあげられようとする相手の足を
すぐさま踏みつけて
攻撃をさせないようにする
男達を倒すのに
そこまでの時間は要しなかった
「あーあ
こんなガキにボコられて…
使えねーなぁ」
目の前で味方が傷を負ったというのに
全く動じずに
煙草に煙を吐き出している
一華は
距離を保ったままで
睨み付けた
「3年前、お前らが連れ去った男…
西岡順也はどこだ?」
「西岡?
さぁな」
知っていて知らないふりをしているのか
もしくは本当に知らないのか




