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この狂った街の全てに抗え  作者: 柑藍
休まらない夏休み
18/37

倉庫の中の秘密

夏休みの生徒がいない静かな学校で

教師陣は職員室で会議を行っていた


妙にピリついた空気感と

答えの出ない議題について

話し合わなければいけないこの脱力感


この雰囲気は約半年前に

ここにいる多くの教師が感じたものと似ていた


安藤も半年前の

新2年生のクラス分けの時を思い出していた


隣では

三浦が肩身が狭そうに座っている


「夏休み、赤原学園の生徒が

問題を起こさない日がありません

どの学年でもあばれているようですが

特に2年生のあの5人は酷いですよ!


喧嘩していると通報されて

何度警察が動いたことか…

警察が着く頃には

もう負けた連中しかいないようだが」


「だったらあの5人の内の

誰かとは限らないのでは…?」


自分の生徒を庇おうと

三浦は反論した


「決して彼らを評価するつもりはないが


何人もの男を動けなくし

その場から立ち去れる赤原の生徒なんて

そうそういないだろ


赤原学園の生徒だってことは

わかってんだ」


「た、確かに…そうですね」


赤原学園には血の気が多く

すぐに手が出る生徒ばかりが

在籍しているが

強いといっても

毎回警察から逃げ切る程でもないだろう


現に補導された生徒もかなりいる


こうして会議が行われている間でも

街では

赤原学園の生徒が暴れていた


まだ明るい時間だが

とある裏路地では賢人が

とある空き地では一華が

誰ともわからない奴等と喧嘩をしていた


2人とも頭が良い方ではないのだが

薄々おかしいことに勘付いていた


喧嘩の売られ方が

雑な気がしていたのだ


賢人の方は

真相をある程度掴んでいた


勝敗が決まったあと

もう立ち向かってこない

奴等に言った


「俺に喧嘩を売らせるなら

もっと強い奴を用意しろって言っとけ

五十嵐に」


そう

賢人と一華に喧嘩を売らせていたのは

涼だった


一華に殴られたくらいでは

反省などしない涼は

ネットで2人に懸賞金をかけて

街から消そうと考えたのだ


監視カメラをハッキングして

2人の居場所を教える徹底ぶり


しかし

2人に勝てる人物はなかなか現れない


賢人は倒した相手から

少しずつ情報を聞き出し

真相にたどり着いた


一方、一華は

キレると力を制御できなくなる


「おい!

お前らを差し向けたのは誰なんだよ!

寝てんじゃねーよ」


胸ぐらを掴み

問いかけるが

意識が朦朧とする彼らは

何も答えることができなかった


「ったく、どいつもこいつも…」


これが涼の仕業だと知ったら

1発殴るだけでは済まないだろうが

諦めがついたのか

彼らを放置して

どこかへ歩き出した


街を闇が支配する時刻


ウルドの拠点となっている

さびれた倉庫に鈴はいた


大勢の女性に向かい合うように

1人、立っていた


「前にも言いましたけど

私には、何の期待もしないでください」


チームのトップに立つ者としては

信じられない発言だった


そんなことを言われて

期待をしてウルドに入った新メンバーは

黙っていられなかった


「トップがこんなんでいいのかよ!?」


「そうだよ!

だいたい高校生のガキの下なんかで

やってられるかよ」


「めっちゃ弱そうじゃんかよ

すぐに下克上起こしてやろうか?」


集団から少し抜け出した3人の女達


髪もそれぞれ明るい茶色に染めていて

傷んでいるのがわかるくらいだ


鈴よりもいくつか歳上に見える彼女達は

1対1で争うなんて気は微塵もなく

3人で鈴を袋叩きにしてやろう

というかんじだ


鈴が一歩踏み出す


来る!

そう思った彼女達はそれぞれ

何らかの反応をしようとしたが

鈴を前に

そのスピードでは遅すぎた


鈴の動きには迷いがなかった


1人の女の背後に素早く回ると

首に腕を回す


慣れた様子で

もう一方の手でボールペンを取り出すと

首に突き立てた


「何の、真似だよ」


「面倒なので殺しはしません

ですが、さすがにボールペンが首に刺さると

痛いと思います」


表情を変えずに

狂気を感じさせるこの行動


誰もが言葉を失った


鈴はお構いなしに

少しずつボールペンの先を首に刺していく


「いっ、痛い!やめろ!

ギブギブギブ!

すみませんでした!」


謝罪の言葉が倉庫に響く


するとやっと彼女は解放され

背中を押され仲間の元へ戻された


「やる気のある、なしは関係ありません

この組織を動かすのは

強さや恐怖による支配です


下克上は…

私が起こします」


意味を掴めない集団を前に

鈴の目はどこか遠くを見つめていた


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