夜の街の真相
三浦と安藤が進むのとは逆の方向に歩いている
鈴と1人の男
周囲には誰一人としていない
大きな倉庫だけがいくつも建ち並んでいる
「あんな作り話
警察相手によく通用したな
どうせあのオヤジ達殴ったのお前だろ?」
「北山さんってどこまで私に関わるんですか?」
北山と呼ばれた男は
警察署にいた時とは違い
今はもう
危ないオーラを隠そうともしていない
「さぁな
どこまでも関わるのかもな
お前の作り話がばれることは
ないんだろうな?」
「あの男達の中で
本当の事を話せる人なんて
いないと思いますから」
普通の高校生なら
声が震えてしまいそうな
そんな雰囲気の北山を前にしても
鈴の口調は何も変わらなかった
数時間前
街の中心部で鈴が酔っ払いに絡まれ
酔っ払いが攻撃を受けて
動けなくなるまで
鈴と酔っ払い4人以外に
その場に人はいなかった
鈴を助けた何者かなど
存在しなかった
「お姉さんっ
1人ですかぁ?」
「おーい、無視か?」
会社員である彼らは
仕事でこの街に来ていた
だから知らなかった
赤原学園の制服を着ている奴に
むやみに絡むなという
注意事項を
「無視はよくないよ
おじさん達が礼儀を教えてあげます!」
ビシッと敬礼をする男達を
まるで見えていないかのように
鈴は通りすぎようとする
「ちょっと、ちょっと」
1人が鈴の腕を掴み
足を止めようと強く引っ張る
鈴は歩くのを止めたが
かなりの力で引っ張られているのに
びくともしない
「あー、酒のせいで力が入らないな…」
その言葉を聞いて
もう1人が鈴の腕に手を伸ばそうとする
その瞬間
手を伸ばしかけた男は
フワフワと宙を浮いているような
不思議な感覚に襲われた
他の3人も同じだった
鈴の腕を掴んでいた男も
いつの間にか自分の手が
掴んでいるものが
空気に変わっていることに気づく
酒のせいでフワフワしているのだろうか
飲み過ぎたかな…
そんな事を考えていた男達
だが
直後に背中への大きな衝撃があった
重たい痛みが身体中を支配する
彼らには暫く把握できなかった
目の前にいた女子高生に
4人まとめて殴り飛ばされ
地面に叩きつけられているという
この状況を
混乱から抜け出せないまま
1人が気づくと
首を無理に右に向かせられていた
顎を押さえられている手に
力がどんどん加わり
このままでは首が折られることが
やっとわかる
「ぅがっ…」
誰が押さえつけているのか
目だけを動かし確認すると
先程の女子高生が仰向けの自分の横にしゃがみ
無表情で顎を手で抑えていた
「2度と私に関わらないでください
それと…
もうすぐパトロール中の警官が来ます
私があなた達を殴ったことを
黙っていてください
そうすれば命は奪いません
今も、これからも
それができないならここで口封じをしますし
今後だれかに話すことがあったら
その時も
あなた達の命で償ってもらいます
連帯責任です
…どうします」
男は彼女からただならぬ殺気を感じていた
アルコールが回っている頭でも
自分の命が危ないことは理解できた
徐々に首へ加えられる力がどんどん強まる
本当に殺される
そう思うが恐怖心で
声がでない
「わ、わかったから!」
その時、別の男がかなり焦った様子で返事をした
すると力は弱められ
首は解放されたが
まだ全身の痛みは残ったままだ
「そうですか
よかったです
決して脅しではないので
注意してください」
無表情のまま女子高生、篠原鈴は
いつの間にか盗み出していた
各々の免許証を見せた
見せられた男達は
鈴の怖さを思い知らされた
どこかで警察に事情を説明しようと
考えていたが
それをしたら本当に殺されると思ったのだ
その後すぐに
鈴の言った通り
パトロール中の警官が
駆け寄って来たのだった
真っ暗な道を
鈴と北山は歩いていた
人の気配は全くなく
不気味なくらいにシンとしている
使われていないような
倉庫ばかりが並んでいる
「あまり勝手に動くなよ
一般人を相手にして
注目を浴びると厄介だ」
「…」
「今回は大目に見といてやるが
赤原のバカとやり合うようなことは
避けろよ」
北山の言葉に鈴は反応せず
目の前に迫った倉庫の大きな扉に手をかけた
「一服してくる
あとは頼んだぞ」
北山はポケットからタバコを取り出し火をつける
鈴は返事をすることなく
錆び付いた扉を開く
「ここに私を戻したこと
後悔させてあげます」
小さく呟くと
風に髪を揺られながら
その中に姿を消した




