街中での騒動は注目の的
数日間ホテルで過ごしていた涼だが
いくら快適といっても
飽きてくるものだ
そこで
街に出ることにした
気を付ける相手は一華だけではない
この街は物騒だ
喧嘩を売られても
その相手に
そのことを後悔させる程の
痛手を負わせたい涼は
様々な武器を隠し持って出かける
夕方
街の中心部でもあり
よく待ち合わせに使われる駅前
そこに人だかりができている
下校途中の高校生が主なようだ
野次馬が見ている先では
2人の男子高校生が向き合っていた
「お前が1番強いっていう噂がある
それを確かめに来た」
「全く
俺は平穏に暮らしたいんだけどな…
まぁいいや
どの道、やり合うつもりだったし」
この街の高校生の間では有名な2人
1人は左頬に傷があり
喧嘩が強い男
1人は甘いルックスを持ち
金で何でも動かす男
赤原学園の狂った5人と呼ばれる男達
塚本賢人と五十嵐涼だ
そんな2人が直接対決するとあっては
偶然通りかかった人々は
好奇心を掻き立てられた
賢人は強い奴を相手にしたい
涼は賢人を自分の支配下におきたい
それが主であるが
ただ目障りだという理由も
2人の中には少なからず存在している
「あれ、塚本と五十嵐だろ?
どう考えたって塚本の方が強いだろ」
「あぁ、だよな?」
野次馬達はどちらが勝つのか予想している
彼らの言う通りだ
身体能力でいっても
経験値でいっても
賢人の方が確実に勝っているだろう
しかし
この喧嘩は素手で勝負なんていう
優しいものではない
賢人が折り畳みナイフを持ったとしても
同等にまで押し上げる武器を
涼は駆使するのだ
そうやって一華にも傷を負わせた
「何でも使いたいようにやれよ
柴崎に対して何使ったか知らねーけど
アイツは頭を使わないから
負けるんだよ」
「たしかに、あの女はバカだな
でも、お前も俺に負ける
あの女と同じだ」
涼は金属でできた警棒のようなものを取り出し
ひと振りすると
その勢いで
棒は元の3倍程の長さに伸びた
「男を相手にするんだ
手加減はしない」
そう言うと
賢人は使い慣れたナイフを出した
殴り合いの喧嘩が始まると思っていた野次馬は
思いもよらぬ展開に不安が募る
それでもその場を離れる者は少ない
人だかりから
うわぁ、と声があがる
先に仕掛けたのは涼だった
棒を振り上げ
殴ろうとする
しかし賢人はさらりと避け
ナイフで切りつけようとする
その動きに反応した涼は
急いで棒でガードする
キーンという金属同士がぶつかり合う
耳障りな音が空気を切り裂く
至近距離で睨み合う2人
だが、すぐに距離をとる
その瞬間
少しだけ隙ができた涼を
賢人は見逃さなかった
離れると同時に
ナイフを振るう
「…っ」
数歩下がった涼の制服、ちょうどみぞおち辺りに
横に走る裂け目が入れられていた
「てめぇ…」
涼は持っていた金属の棒を
賢人に向かって投げつけたが
当たることはなかった
もちろん、これが攻撃になるとは
涼も考えていないだろう
この武器は使えないと思ったのだろうか
「自分の武器放り出すとは…
降参か?」
涼には新しい武器を取りだそうという
動きもない
自分の足元に転がった金属の棒を
賢人は拾い上げた
それを見た涼は
ふっと口角をあげた
賢人は危険を察知したが
既に遅かった
ビリビリと
掴んだ棒から電流が流れたのだ
うっ、と顔を歪める賢人
自分から注意が逸れたことを確認した涼は
その場から賢人に向かって走り出し
勢いをつけて蹴りつけた
賢人は態勢を崩し
倒れ込む
「いって…」
電流を流され
蹴りまて入れられ
痛がってはいるものの
賢人に与えられたものは
通常の人間が負うであろうダメージよりも
はるかに軽いものだった
涼は賢人が手放した棒を掴む
「これな
俺以外が持つと電流が流れるようになってんだよ
よくできてるだろ?」
そんな2人の邪魔をするように
バイクの轟音が響き渡った
明らかに改造されたものの音だ
バイクの集団は人混みに突っ込むと
避ける人々の間を通り抜け
2人の側でバイクを降りた
「お前ら赤原だろ?
テメェらん所の女にウチの奴が
世話になってよぉ
わりぃが見せしめにテメェらをボコらせてもらう」
そう言って金属バットやらを
持ち出すおよそ20人の彼らは
一華にやられた鳥羽工の
生徒の仕返しに来たのだろう
2人が言葉を発す前に
既に殴りかかっている
2人にとって邪魔が入ることは
不本意であったが
鳥羽工の奴らを片付けるのが
先だと思ったのだろう
仕方なく相手をすることにした
そのため
現場は大混乱となった
人数では圧倒的不利であった2人だが
戦況ではかなり優勢な立場にあった
「見せしめだ?
喧嘩を売る相手を間違えてんだよ!」
涼は次々に鳥羽工の生徒を倒していく
「弱い
話にならねー」
賢人は向かってくる相手を
つまらなさそうに迎え撃つ
1対1の喧嘩を邪魔された2人は
その怒りを思う存分ぶつけていた
その怒りはとどまることを知らず
震えがって逃げようとする鳥羽工の生徒を
それぞれ追いかけ回す
終息し、駅前が静まる頃には
もうお互いがどこにいるのかわからなくなっていた




