80 悪ガキの国外追放計画
『シェルター・ルーム』に一泊した俺達は、陽が暮れたころに外に出た。
が・・・
放り投げておいたはずの『アッパラパー』達がいない?
「縛った奴等は何処に投げたの?」
「この辺りだが・・・いないな。 “縄抜け” したか?」
メルさんが首を傾げてる。
「 “草” が『回収』したそうです。「賞金首』がいたみたいですね。小遣い稼ぎでしょう。」
スズネさんが、小石の裏に掛かれた『暗号』を読んでいた。
抜け目ないね~
正門は既に閉まっている時間だが、通りはまだ賑やかだ。
群衆に紛れながら、北へ向かう。
《 被害者達は?》
俺とスズネさんと、メル・メイコンビは、少し距離を置いて歩いている。
4人で固まると、それなりに目立つからね。
会話も『念話』だ。
《 保護されてます。『薬』の副作用がないか様子を見ながら、希望者は家に帰すそうです。》
《 かかった費用は請求書を書いて、僕に・・・》
《 大した金額じゃないから、サービスするそうです。良かったですねw》
俺の “お財布事情” まで把握されてんのかね?
足を向けて寝られんな・・・
《 こっち、アストラスと反対方向だけど?どこ行くの?》
メイさんが聞いてきた、
《 遠回りして帰るよ。 『バギー』は目立つからね。何度も同じルートを往復すると、すぐに足が付く。》
《 “目くらまし” かい? 陛下は知っているんだろう?》
メイさんと共に、少し距離を置きながら歩く メルさんが聞いてきた。
《 ザッカの件は、いずれ報告するけど、時期を遅らせたいからね。居場所がバレると『タラギュース家』が血相を変えて出馬しそうだし・・・》
《 かなり ”怒り狂って” いたらしいですからね。行方不明のままがよろしいかと。》
スズネさんが、冷静に報告してくれた。
《 タラギュースか。教会でも、ちょくちょく話を聞いたな。『スキル至上主義』の家系だとか・・・》
メルさんが、思い出したように呟いた。
《 そうなの?》
《 聞いた話だが、過去に何代か、立て続けに『剣聖』が生まれたらしい。戦場でも活躍したんだとか・・・『ドラゴン』を倒したとかいう『噂』も聞いたことがあるが、眉唾ものだな。》
ほう。見栄と外聞に振り回される家系か・・・
『スキル』を発現できなかったザッカには『針の筵』のような環境だったかね。
かといって “他人様に迷惑” をかけてもいい理由にはならんが・・・
《 奴隷商には行かれないのですか?》
スズネさんが聞いてきた。
《 僕は『ザッカ』の主人になるつもりはないよ。できるだけ長生きして『反省』して欲しいからね。いずれ『魔王』に ”突撃かますヤツの傍” には置いとかない方がいいかな?》
《 お優しいですねw》
《 『サラフィナ様』の依頼じゃなきゃ、見向きもしなかったよ。マジで ”尻蹴っ飛ばして” おけば良かったかな・・・》
《 ふふ。男の尻に興味あるのかい?》
メルさんは『俺の股間』に興味アリアリだろう?
《 誤解を招くような発言は控えてくれる? 僕はスズネさん一筋だよ。》
《 あら?私達は?》
《 ん~・・・付録?》
《 よし!メイ。蹴飛ばそう! ボクが許す!》
《 アイアイサー!!》
疼く尻を耐えながら、『バギー』がひた走る。
「とりあえず北へ・・・途中でUターンしてドンダリデを東回りのルートで帰ろうか。」
「はい。」
『ハンドル』を握るスズネさんが答えた。
「お肉も補充しなきゃね。コカちゃんいるかな~」
クレアリス御一行様には、親子丼やカツカレーは刺激が強すぎたみたいだったからね。
無心で食い付いてたしww
「時間的に余裕あるし、のんびり帰ろうか。」
といっても夜明け前には『アストラス領』に着きそうだがw
「で?『ザッカ』はどうするか決めたかい?」
メルさんが、後部座席から身を乗り出してきた。
「国外に逃がすのが一番安全かな。奴隷は絶対条件だけど・・・スズネ。“草” は国外へのルート持ってる?」
「ありますよ。少々値は張りますし、審査も必須ですが、ザッカ一人なら問題ないかと・・・」
「審査って?」
メイさん久々の『はてなマーク』w
「身辺調査ですね。国外で『問題」起こされても困りますし・・・“草” はもともと『情報』だけを扱う『調査機関』ですので『国際問題』や『紛争』に繋がるような『人物』は受け付けておりません。」
「『ザッカ』は『国際問題』には繋がらないか。」
「伯爵家の三男坊で『家名』も剥奪されていますし、奴隷は確定してますので、まずは安全かと。」
「メイ、メル。大物狙おう。お金稼いでさっさと “お荷物” を国外追放してしまおう。」
「りょうか~い。」
「 “粗大ごみ” 扱いだなww」
夜明け前。
アストラス領に着くころには、それなりの収穫を得ていた。
『ジャンボ・サーヴァント』などという、『魔物図鑑』にも載ってないような『珍しいモンスター』もいたがね。
『鑑定くん』が教えてくれたよw
一言で説明するなら、執事服着た『妖怪:がしゃどくろ』だ。
なぜに執事と思って、よく見たら ”ゾンビが集団で” 張り付いてたりする。
ドンダリデ領の影響だろうか。
『神剣』と『神聖魔法』で残らず成仏させたがね。
『魔石』拾うのが大変だったよw
ドンビシャスの冒険者ギルドでは ”号泣する受付嬢” と ”頭を抱えるギルマス” を宥めつつ、『魔石』を放出した。
禿げたらゴメンww
「ザッカの分は、これだけあれば足りるかな?」
稼いだ報酬をマルっと差し出す。
「十分かと。」
中身を確認したスズネさんが、保証してくれた。
たった一人でも “正規ルート” じゃないからね。
多少足元を見られても。文句は言えない。
残りの魔石は『商業ギルド』かな?
『学校』の運営資金は、寄付金も集まって順調そうだし・・・
野菜と果物補充して、ダンジョンで魔石集めて・・・今度は『神父』と『シスター』用の宿舎かな?
「どう思う?」
『ロザニーのケーキ屋』でパイを頬張るメル・メイコンビに相談。
ダイエットはどこ行ったw
スズネさんは “草” と連絡を取りに行っている。
「そうだな、『シスター用の宿舎』はあった方がいいかもな。結構汚れてたし、『ウォッシュ&ドライ』の魔法を獲得しても、風呂には入りたいんじゃないか?」
『風呂』か・・・一般的じゃないが、長旅を経て来てくれるんなら、その程度の『サービス』はした方がいいかな?
『メイドさん』達の魔法の練習にもなるし・・・
「そうねぇ、神父はこの先『数』が増えそうじゃない?『宿舎』だと人数制限が出てくるだろうし。揉める原因になるんじゃないかな?」
「増えるかな?大した話はしてないと思うけど?」
「自覚がないのかい?君の話は『経典』にも載ってないような『斬新』かつ『奥深い話』ばかりだぞ。」
「前世の世界じゃ『創造神』が降臨して、その情報が大量の本になって “当たり前” な感じがするかもしれないけどね。『四つの教え』なんて、こっちじゃ ”目から鱗の衝撃だ” と思うよ。」
「・・・そういうもんかな?」
「「そういうもんよ(サ)」」
とりあえず、セルア会長を捕まえて相談。
二つ返事で、ダンジョン屋敷の庭に『女性用の宿舎』を立てることになった。
野郎共は『テント』だ。許せw
後は丸投げだ。
昨夜は寝てないから少し眠い。
まずは寝よう。
ノテノテと屋敷に向かう。
クレアリス様との約束まで、あと四日。
ひと眠りして、ダンジョン入って・・・どこまで行けるか・・・
『北のザブズクルのダンジョン』にいる『勇者』は、単独で70階層を走破したという。
俺達は『チーム』で51階層止まりだ。
『神剣』や『魔剣』持ちで『勇者』が二人も揃って、51階層止まり・・・
しかも向こうは “キャッキャウフフな素敵な世界” を満喫しているという。
余裕か!?
ヨユーなのか!!??
なんか悔しい。
道端で出会ったら、すれ違いざまに “カンチョー” してやりたくなるくらい悔しい。
ハリセンでも良いな。
昨日、蹴飛ばされたばかりだし・・・
よし、決めた!
さっさと『アストラスのダンジョン』攻略済ませて『北のザブズクルのダンジョン』に行こう!
あいさつ代わりに、ハリセンで股間を引っ叩いてやろう!
直接 ”蹴っ飛ばす” より遥かに良心的だ!
そうしよう!!
「うわ!デビルスマイル・・・」
「なんか良からぬこと考えてるな・・・」
◆◆
王城。執務室。
「クレアリスから手紙が来た。」
ベルトナラキウス・フォン・ヨーデル国王が、封を解いた手紙を示した。
「私も、姪からの手紙を受け取りました。治療は成功したようですね。」
ノルグナー・エイトラディス公爵は、落ち着いた様子で答えた。
「グレイの手紙を受け取った時には、まさかと思ったが・・・よもやダンジョンの50階層に連れて行かれるとはな・・・濃い魔力の環境下での治癒魔法か・・・出来ると思うか?」
「魔法省に問い合わせてみましたが、判らないそうです。そもそも50階層に行ける人物など、そう滅多にはいませんしね。」
「『北のザブズクルのダンジョン』に潜ってるヤツはどうだ?」
「もともと単独で潜ってますし、『チーム』での『活動経験』が圧倒的に不足しています。実力としては70階層付近まで行けるようですが・・・」
「病人を連れて潜るのは難しいか・・・つくづく “規格外” だな.」
「クレアリス様は、いつお戻りになると?」
「治療が済んでから、7日間は食事と運動療法が必要らしい・・・というか、帰りたくないとゴネておる。」
「ゴネる? グレイ君が気に入ったので?」
「かもしれんな。身分を剥奪してもいいからアストラスに残りたいのだそうだ。」
「・・・私が知るクレアリス様とは、ずいぶん印象が異なるような・・・」
「そうだな。アイツは ”自分や他人を達観視する” ところがある。冷酷なまでにな。だが、この手紙を読む限りにおいては、そういうところが見受けられん。まるで恋文のようだ。洗脳でもされたか。」
「『治癒魔法』と『洗脳術』は、施行法や魔法形態からして ”全くの別物” です。それに研究者である姪が ”常にお傍にいた” と書いてありました。彼女の目を盗んで『洗脳』するのは不可能かと。」
「だよな~ 本気で惚れたか?」
「そう捉えるのが自然かと。」
「ホレたか・・・まあいい・・・ギスギスした関係を保つより、よっぽどマシだ・・・癪だがな。」
「女性はいずれ、父親の手から離れるものですw それより、報告書はもう読まれましたか?」
「どれだ?」
「お手元にある・・・それです。狼人族『咬牙のガルー』が ”生け捕り” にされたそうです。」
「ほう?殺さず、生け捕りか・・・それなりの腕だな。」
「懸賞金は金貨150枚。王都では名の知れた悪党ですが、少し ”困ったこと” になっておりまして。」
「なんだ。」
「『商人街の裏路地』で見つけられたそうですが、その時点で『幼児退行』してたそうです。」
「幼児退行? なんだソレ?」
「文字通り、子供・・・この場合は子狼ですか・・・認知能力が低下し、集中力が散漫で、まるで2歳から3歳児のようだと。」
「見つかった状況を詳しく話せ。」
「場所は『商人街の中央広場』に面する商店の『裏路地』だそうです。見つけたのは商店の主人で、時間は早朝。複数の簀巻きにされた『人間』に混ざっていたそうです。」
「複数?他にもいたのか?」
「はい。それで被害に遭った者達に『首実験』をさせたところ、”薬の売買をしていた組織だ” ということが判明しました。」
「まて。直接 『犯罪者』と会わせたのか?・・・もしかして、簀巻きにされた連中も?」
「はい。全員『幼児退行』を起こしていました。自分が何で捕まったのかも覚えてないようなので。」
「・・・珍妙な話よな・・・」
「そうですね。」
「・・・小僧か?」
「どうでしょう・・・もう一つ。未確認ですが・・・」
「・・・話せ。」
「例の『光る魔物』が、”北へ向かって高速で” 走り去って行った・・・とか。」
「・・・アレか・・・非常識か?」
「人的被害がなく・・・非常識と言ってよいかと・・・」
「非常識か・・・俺の感想を聞きたいか。」
「いえ。私も同じことを考えてますので。」
「「あの悪ガキめ!」」
◆◆
屋敷の玄関先に、早々と『奴隷商人』に扮した “草” が俺を待っていた。
言葉少なく『ザッカ』を引き渡す。
言うべきことは言った。
泣き濡れているが、後は彼の人生だ。
ただ、引き渡す前に、いくつか条件を付けておいたがね。
① 『ザッカ』の主は教会の神父であること。
② 日に1度は、神に『祈り』を捧げるように ”命じる” こと。
③ 彼が自発的に口にするまで、決して彼の過去を追求しないこと。
『反省』が進めば。誰かに告白したり相談したりせざるを得ない時期が来る。
客観的な意見が欲しくなるのだ。
なら、教会辺りがいいだろう。
相談したら『口の軽い生臭坊主』でした・・・なんて ”オチ” も考えられなくもないが・・・気にしてもしょうがない。
国内で枕を高くして眠れない以上、見知らぬ他国でひっそりと暮らすしかないからな。
なるようにしかなるまいよ。
泣き濡れた『ザッカ』の横顔を見ながら、心の中で、そっと手を合わせた。
んで現在w
例によって『拘束睡眠』下で ”昼間の惰眠” を貪っていたところに、ロデムがギルマスから『一報』があったことを知らせに来た。
ダンジョンの『部分変動』があったらしい。
「ん~ん。珍しいね~」
眠気眼をこすりながら、メイさんが呟いた。
「部分変動なんか聞いたこともないが?」
俺の『股間』に埋もれていたメルさんが、ムクリと顔を上げる。
「またそんな所で・・・何度も言ってるでしょう? 私が最初ですよ。」
いや、スズネさん?
今それどころじゃないんだが??
ロデム笑ってるし・・・てか、遠慮しろ!
「メイ。ダンジョンは僕より詳しいよね。部分変動は珍しい?」
「ん~ ”ダンジョンは生き物説” が有力だからね~ 誰かが触っちゃイケナイトコを刺激しちゃったとか・・・『外的要因』だとかでも・・・あるかな?」
「外的要因って?」
「ん~ たとえば、でっかい『ワーム』に齧られたとか? 『悪魔儀式』とかで『変質』させちゃったとか? イロイロ・・・」
「儀式か・・・よろしくないね。ロデム。ギルマス何か言ってた?」
「いえ。とにかく相談したいからと・・・複数の『冒険者チーム』が、連絡取れていないようです。」
「救助隊に加われってことかな? 行かなきゃ分かんないか・・・皆、準備して。」
とりあえず、行くだけ行ってみることにした。
「ご協力いただけませんか。」
コッカスさんが頭を下げてきた・
「そのためにここにいます。可能な限り、詳しい情報を。」
「感謝します。現在、3チームとの連絡が取れていません。変動があったのは8階層です。」
「3チームだけですか?他のチームは?」
「幸い、帰還石は正常に動いていますので、無事帰って来れていますが・・・」
「変動の原因に心当たりは?」
「全く。」
「悪魔崇拝者の儀式のような、”歓迎せざる行い” にも反応するダンジョンがあると、耳にしたことがございますが・・・」
「そのようなことが?・・・いえ私の知る限り、そのような『マネ』をする者はいないはずですが・・・」
「あくまで可能性です。違う要因で動いたのかもしれません。ですが ”万一の可能性も” 捨てきれませんので、身辺調査はしておいた方が宜しいのではないかと。」
「解りました。今日潜った『チーム』全員を調べましょう。」
「僕達以外の『救助隊チーム』『は?」
「隣の部屋に待機させています。こちらへ・・・」
次回 10月18日(日曜) 更新予定




