81 八階層の魔族と約束
「ぶえ~~くしょい!!」
盛大にくしゃみがでた。
少し寒くないか?
それとも誰か噂してるかな?
「きったないわね~ それでも貴族子息!?」
メイさんが容赦ないw
「そうだと思う。おっと。『トップソンガゼル』5匹。正面から突っ込んでくるよ。」
「シカ肉か。悪くない。」
トップソンガゼル。
普段は雑食だが、人肉を好む魔物だ。
ダンジョンの外では、主に子供が襲われやすい。
鋭く真っすぐな角で突き上げ、踏み殺す。
3匹から10匹程度の群れで行動し、囲まれると厄介だ。
ちなみにトップソンガゼルの肉は。そのまま焼いても臭みが強く。食えたもんじゃないが、パイナップルに酷似した『パイン』と『アッポ』と『シロップ』と『香草』に一晩漬けておくと臭みも取れ、驚くほど食べやすくなる。
『パイン』や『アッポ』はまあ、なんとなくわかる。
果物の酵素が肉の『たんぱく質』を分解するんだろう。
『香草』も臭みを取るには必要だ。
だが。
『シロップ』・・・?・・・
何故に必要??
『鑑定くん』が教えてくんなきゃ、思いつきもしないよ!
食えば納得するからいいけど・・・
「乙女の柔肌に惹かれたかしらw」
メイさん余裕w
「ステーキにするにしても、明日か。待ち遠しいな。」
メルさん早くも勝利宣言ww
「アッポと パインは沢山ありますから、楽しみですね。」
スズネさんが食いしん坊www
「お肉を ダンジョンに吸収 されないように気を付けてね~ 来るよ~」
俺の出番はないwwww
そんな感じでサクサク進む。
他のチームは置いてけぼりだ。
事前通告してるからなw
浅層での攻略スピードは、俺達がトップだ。
実は。ついさっき少し揉めた。
救助チームは ”クラン形式” が通常だのと・・・言いたいことは解る。
だが俺からしてみれば。浅層において ”その常識” は当てはまらないと思う。
怪我人は交代で、担いでったほうが早くね? ってな話だ。
俺なら『シェルター・ルーム(別室)に放り込むけどw
んで
よくよく話を聞いてみれば、どうやら俺の『アイテムボックス』が目当てらしい。
大量のポーションをはじめ、救助用のロープ、梯子。タンカ等々、
クソ重くて嵩張る荷物は『アイテムボックス』に放り込めば万事O.K.ってなわけだ。
ポーターかよ!!
いや、ポーターも大事な仕事だけども・・・
「解りました。救助用の荷物は僕が運びます。そのかわり、先頭は ”僕等のチーム” に譲ってください。宜しいですか?」
「お、おう。判った。頼りにしてるぜ。」
「ありがとうございます。ただ僕達の ”攻略スピード” は少々早いので、遅れずについてきてくださいねw」
《 『デビルスマイル』が炸裂しとるがなww》
メイさんの『念話』が煩い。
クレアリス様の再診察まで、あと3日
52階層の攻略は後回しかな・・・
てな具合に、暢気に構えながら8階層に来てみたんだが・・・
「あら~」
「とんでもないことになってるな」
メル・メイコンビが呆れとるw
浅層の通路・・・というか迷路が消えて、フィールドになっておますがな。
しかも “不毛の地” ・・・いや、それよりタチ悪いか・・・
「あちこちに大きな “澱み” がありますね。」
スズネさんが、冷静に周囲を見渡している。
「そうだね。しかも10時の方向に強い瘴気がある。」
「魔族?」
「こんなところまで来てたか。」
「変動はアレの影響でしょうか?」
チームの警戒心が高まった。
「行ってみるしかないな。気を抜くなよ。」
「「「はい!」」」
慎重に、警戒しながら走る。
近くの “澱み=魔力溜り” に『神聖魔法』を放つと、見事に散っていった。
ちょっと前に、冒険者ギルドで『神官』の ”爆乳オネーサン” が言ってた通りだ。
今更ながら、オネーサンに感謝。
ついでに ”爆乳” にも感謝だw
「メル!戦闘の邪魔にならないように、『神聖魔法』を打ち込んどいて!」
「分かった!」
「追加の『肉』が来たか・・・」
「旨そうだなw」
瘴気の中央には、二人の『魔族』が相対するように座っていた。
その真ん中にあるのは、遺体。
腹を割かれて、”剥き出しになった中身” を綺麗に喰われている。
レベル72と76。
まずいな。
俺達も70を超えているが、『人間』と『魔族』では基本的な “身体能力” に大きな差がある。
先手必勝!エリアハイヒール!!
「おっと!」
「なんのマネだ?」
逃げやがった!
てか早い!
「面白いガキだな。キサマから喰うか。」
「俺にも寄こせ。」
うまいことヘイトが俺に集中した。
覚悟を決めるしかない。
『魔族』の一人が背後に回ったのを感じた。
思い切り後ろに飛びながら抜刀。
「おっ♪」
分厚い胸板が。俺の背中とぶち当たる。
油断したな。
『魔族』の胸にぶつかると同時に、自分の腹を “ぶっ刺っし” ながら『神剣』を押し込んだ。
背中から突き出た『神剣』の刃が『魔族』の腹を突き破る。
「エクストラ・ヒール!」
散り去さらせ!!
盛大に ”爆散” した仲間に、一瞬呆けた残りの『魔族』が叫んだ。
「このガキぃ!!」
「みゃ!」
「貴様の相手は私だ。」
「こっちにもいますよ。」
「も~らい♪」
怒りで『視野狭窄』に陥った敵を、ノワールが影魔法で足を拘束。
三人娘が三方から同時に攻めた。
『神剣』と『魔剣』が、『魔族』の両腕と首をほぼ同時に飛ばす。
わお!
Over Kill じゃね!?
・・・いつも思うんだが・・・
コイツ等との戦闘は、常に “短期勝負” だな。
互いに “名乗り合って” からのガチンコなんて、不利なだけだし。
体力的に持久戦は分が悪いから、意図的に ”そうしてる” だけなんだけど。
さっきみたいに避けられたら対処がムズいし・・・
ハライテエ・・・
「ムチャしすぎです!」
慌てて駆け寄ったスズネさんが、俺を抱き上げた。
そして嘔吐w
今朝の内容物が、俺の顔面を濡らした。
んで気絶・・・っとww
スズネさん久々の “レベル酔い” だなwww
俺もかなりキツイ。
メル・メイコンビも、目を回してる。
ここじゃマズイ。
『シェルタールーム』を開き、三人娘と『魔族』の遺体と、吹き飛んだ『魔石』を回収してから、意識を手放した。
目が覚めたら。いつものように『シェルター』のベッドで『拘束就寝』w
ってかパンツ一丁なんだが!?
君達、日に日に大胆になってません!?
「おはよう。気分は?」
「大丈夫です。」
「久々にクるものがあったね~ まだ少し気分悪いかも・・・」
「あんなキツイ “レベル酔い” は初めてだな、」
三者三様だなw
「でもおかげで、また強くなったね。被害者には申し訳ないけど。」
「そうかい?そういえば、ボクたちの『レベル』はどのくらいだろう?」
「メルは73。メイは79。スズネは75だね。」
「 そっか『鑑定スキル』持ってたんだっけ。今更だけど・・・」
「旦那様のレベルは?」
「僕は82だね。単独で一人ヤっちゃったし。」
『成長促進スキル』が今になって働いた気がする。
”発動条件” が不明なのがもどかしいが・・・
「さすがはグレイ様です・・・と言いたいところですが・・・」
あらら・・・怒ってらっしゃる・・・
「ゴメンて、もう無理しません。」
「約束ですよ。」
プリプリと怒るスズネさんが、可愛い件www
俺はベッドから下りて。服を着た。
「もう少し休んでく? 僕は “遺体回収” に出るけど?」
「お供します。」
「弔いか・・・気が重いな。」
「冒険者だからね。覚悟は出来てるんだろうけど・・・」
「うお!どっから出て来やがった!?」
ようやく追いついたらしい “救助隊” が、突然現れた俺達に警戒した。
「落ち着いて。『マジックアイテム』ですよ。避難してました、」
「なんでぇ。脅かすなよ。で? 何があった? 怖気付いたかw」
「『魔族』と戦ってました。これが『証拠』です。」
俺は ”首だけ魔族” を『アイテムボックス』から出して見せた。
角が奇妙な形に捻じれてるから、少し持ちにくい。
「ぬお!なんでぇ・・・脅かしやがる。ってか、コレが『魔族』か?」
「えげつねぇ角だな。よく倒せたな・・・さすがは『勇者』だ。」
近くにいた冒険者が、物珍し気に寄ってきた。
てか、警戒しろよw
「昔。聞いたことがあるぜ。捻じれた角の『魔族』はエグイほど強ぇってよ。」
「そうなんですか?」
あら『初耳』ざんす。
そういえば『ダル―』とかいう『魔族』も、 “魔力暴走” を起こしたときには『角』が捻じれてたな。
『パーサーカー』の前触れだったか・・・
今更ながら危ないところだった・・・
てか、得意げに “首を掲げる7歳児の絵面も” どうよ? ってな話だ。
俺が “ちょん切った” 首でもないしw
早々に『首だけ魔族』を仕舞い込んで、あたりを見回した。
「遺体の回収は?」
「アレ一つだけだ。あと『食い残し』と『遺留品』が幾つかな・・・何故か判らねぇが、吸収されずに残ったのは ”ラッキー” だぜ。他の奴らは『魔力溜り』の処置に回ってる。『神聖魔法』を使えるヤツがいるからな。」
いい判断だ。
『遺体』も全くないよりマシ・・・か・・・
『瘴気」の影響かね?
「遺体は僕が運びます。皆さんは撤収の準備を。」
「助かるぜ。」
夕暮れ時。
「・・・では、部分変動の原因は『魔族』のせいだと?」
冒険者ギルドの『会議室』に戻った俺達は、テーブルの中央に置いた『首だけ魔族』と『魔石』を囲んで、ギルマスである『コッカスさん』に報告した。
「その可能性が大きいと思います。どうやって ”入り込んだ” のかは不明ですが、」
「明日、再調査は・・・無駄骨でしょうね。」
「ダンジョンは少々傷付いても、一晩で “修復” しますからね。痕跡を辿るのは難しいかと・・・そこで提案なのですが、明日と明後日の二日間。7階層以降のダンジョンの探索を制限していただけませんか?」
「8階層を探索していただけるので?」
「期待はしないでください。8階層にフィールドが出てきた以上、それより ”下のルート” がどうなっているのか判りません。マップの大幅な修正が必要かも。」
「助かります。」
「メンバーは僕達だけで行きます。身軽な方が逃げやすいのでw」
「お願いします。ところで、『魔族』の遺体と『魔石』はどうしますか?『規定』では ”王都への報告” と ”買取” になってますが?」
「報告だけにしておいてください。現在、“魔族研究” 部門は手が離せないでしょうからw」
「手が離せない?それはまた、どうして?」
「ひょんなことから。大量の『魔族の標本』を手に入れたので、叩き売ったんです。買取予算がw」
帝都で “レベルアップ” してた件ww
「それはまた・・・解りました。報告だけに留めておきます。」
ノテノテと家路につく。
話を聞きたがる冒険者らが群がってくるが、適当に流した。
昼間の仮眠も邪魔されたせいか、妙に眠気が強い。
《 ・・・というより、今日は夕食抜いて寝てください。》
コクウさんが訴えてきた。
夕飯抜きですと?
成長期に??
何の罰ゲームかな???
《 『成長促進スキル』にバグが見つかりました。いま修正中です。胃袋カラにしとかないと、ご飯が逆流して『気管』を詰まらせても知りませんよ。》
バグの修正をしてくれていたのか。
道理で大人しいと思ったわw
バグか・・・生まれ変わるときに ”イロイロ 詰め込み” 過ぎたかね?
《 あり得ますね。生まれた時から “人間の範疇” 超えてましたからw》
バケモノですか!
不本意な!!
《 文句は後で聞きます。今マスターに死なれると、また “退屈な魔導書” に逆戻りですから、私も必死なんですよ。》
楽しんでいただけてナニヨリ・・・ってか死ぬの?
《 『ウル〇ラマン』で言うところの、『カラ〇タイマー』が点滅状態ですね。》
うん寝よう。
速やかに寝よう。
あの世で “馬車馬” は御免だ!
◆◆
「おはようございます。」
クレアリスが、”穏やかな表情” でアストラス家の食堂に立った。
以前は2階の貴賓室から出ることは無く、たまの散歩にも、車椅子での移動であったが、今は ”たった一本の松葉杖と自らの足” で、階段を上り下り出来るくらいになっている。
顔色もすこぶる良い。
「おはようございます。クレアリス殿下。本日もお変わりなく、何よりでございます。」
ホウレイ伯爵が、慇懃に頭を下げた。
妻であるミレイや、嫡男のサルカスもそれに倣う。
「ありがとうございます。これも グレイ様の治療のおかげですわ。グレイ様には 感謝してもしきれません。」
事実。
ダンジョンの屋敷から戻った クレアリスは、当初こそ2本の松葉杖で歩いていたが、グレイの示した運動と食事療法で、めきめきと力を付けて来ていた。
「愚弟がお役に立ち、何よりでございます。『アレ』でよければ、存分に ”使い潰して” いただければ幸いです。」
サルカスが胸に手を当て、丁寧に返した。
「まあ、サルカス様。実の弟を『アレ』呼ばわりなさるのですね。グレイ様は我が国が誇る『勇者』様であられますのに。」
「肩書はどうあれ、『アレ』は私にとっては “ただの愚弟” です。先日などは自分の誕生日を忘れて、家中を逃げ回っておりましたし。」
「まあ、サルカス様から 逃げておられたのですか? 仲の良い御兄弟なのですねw」
「お恥ずかしい限りで。」
「そのグレイ様は、いつお戻りになられるのでしょう?」
自慢の赤髪を緩くサイドに流したフェルナが、問いかけた。
「報告によると、ダンジョンに『部分変動』が起きたようで、いくつかの『冒険者チーム』が行方不明になったようです。息子は “救助隊チームの一人” として ダンジョンに潜っておりましたが・・・」
ホウレイ伯爵が答える。
「救助隊チーム?危険ではないのですか?」
「危険でないと言えば、嘘になります。ダンジョンそのものが “魔物の巣窟” のような場所ですからな。御存じなのでは?」
「そうですね。グレイ様 をはじめとするチームの皆様が “八面六臂の御活躍” をなさっておられるのを、この目で 拝見させていただきました。とても ”凛々しく立ち振る舞われて” おられましたわ。」
「過大な評価、痛み入ります。息子も そのお言葉を耳にすれば歓喜 するでしょう。」
「では、まだダンジョンに?」
「はい。救助任務の終了後に、異常がないか再度潜るようです。」
「大変なお仕事なのですね。」
「現時点で、51階層を踏破したチームは『アレ』だけですからな。ギルドが頼ってくるのも 無理からぬことかと。」
「じき殿下の診察日ですが?」
静かに後ろに立っていたサフリーが口を挟んだ。
「愚弟は愚かではありますが、約束を違えることはありません。御安心なされませ。」
サルカスが自信をもって答えた・
「長兄であられるサルカス様がそうおっしゃられるのであれば、間違いないですね。楽しみにしております。」
おっちゃん「おっしゃ!2キロ減量成功!!」
相方 「良かったですね(棒読)」
おっちゃん「おっと!今日は飲み会だったな♪」
相方 「三歩進んで五歩下がる~♪」
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不穏な『予言』を聞き流しつつ 次回更新 10月21日(水曜日)




