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77 説得と素


 『パーフェクト・ヒール』

 以前、メルロスさんの欠損した手足を復元させた『治癒魔法』だ。


 魔導書にもほんの一行しか書かれておらず、過去の症例がないという、伝説級の魔法だったりする。

 複数の知り合いの冒険者や錬金術師に聞いてみたが、総じて首を横に振るという “やっちゃった感” がハンパないシロモノだったりする。


 んで案の定、現在進行形で貴賓室(きひんしつ)の皆さんが “固まる” というオチに繋がってるんだがw


 「・・・どういうことでしょう?」

 クレアリス様が再起動。


 うん。美女は再起動しても絵になるねw

 顔色悪いけどww


 「言った通りです。クレアリス様の御病気に関しては、陛下から直接お伺い致しました。ダンジョンを探索し。『エリクサー』を手に入れるように依頼されています。」


 「・・・そうですか。」

 迷っている・・・というより、戸惑っているようだ。


 そりゃそうだわなw


 「『パーフェクト・ヒール』が使えるといったわね。前例はあるの?」

フェルナ様が胡乱(うろん)な目で聞いてきた。


 うん。美女のこんな目はクセになるかもw

 スズネさんの視線が痛いけどww


 「手足と目の欠損を復元したことがあります。」

 正直に答えた。


 少々、命懸けだったと思うがね。

 スズネさんがいなかったら、HP枯渇で “めでたく昇天” してたかもしれんw

 いけね。思い出しちまったww


 「証拠はあるの?」

 ですよね~


 フェルナ様。

 試しに手足、ちょん切ってみる?


 「証拠はないが、証人ならいるぞ。」

 メルさんが、スックと立った。

 メルさん?


 トラウマダイジョブ??


 《 問題ないかと。》

 コクウさんが囁(ささや)く。


 強い女性だね。


 「あなたは?」


 ここにきてまだ気づかないクレアリス様w

 そんなに変わったかねww

 『戦闘民族』にはなったがwww


 「久しいなクレア。ボクを顔を忘れたかい?」


 「・・・フィーネ・・・様?」


 「大きくなったな、クレア」

 愛称で呼ぶほど親しい間柄だったか。


 「フィーネ様! その眼は!?」


 「いろいろあってな。手足と片目を無くしたんだ。死にそうになっていたが、旦那様に助けられたって所だな。ちなみに、今は『メルロス』と名乗っているよ。」


 「え?どうして?」


 「70年近く、教会に引き籠(こも)っていたからな。外の世界を見たくなったのさ・・・おっと、教会には黙っておいてくれよ?また連れ戻されたりしては、かなわんからな。秘密だw」


 ワイルドだな~

 自称『深窓の令嬢』が『魔剣使い』な件w


 「てっきり、お亡くなりになったのかと・・・」

 周りにそう言われたのかね?


 ま、メルさんにその気がないなら、敢えて追及はしないが・・・

 俺も教会本部や、王宮の魑魅魍魎(ちみもうりょう)なぞ相手にしたくないし。


 「ボクはオバケじゃないぞw タチの悪い連中に連れて行かれただけさ。」


 「よくご無事で。」


 「無事・・・とは言えなかったな。死にかけてたしw だが、おかげで旦那様に出会えた。 無くした手足や目も戻った。 目の色は違うがね。 これはこれで気に入っているw」


 「クレアリス様。こちらのエルフは?」

 フェルナ様は初対面か。


 「幼い頃に ”教会の教義” を教えて下さっていた先生です。お変わりなく、嬉しく存じます。」


 「長寿種だからな。君達より成長が遅い。もっとボンッキュッボンなナイスバディになりたいんだがw」


 いや、言い方ぁw

 教会で何学んできたのサww


 「ともあれ、今は旦那様と一緒にダンジョン攻略を目指せるくらいには回復している。『治癒師』としての腕前は一流だと保証するよ。ご納得いただけたがね? クレア。」


 「・・・そうですか。」


 さっきから気になってたんだがね。

 俺の呼び方が「グレイ君」から「旦那様」に昇格してるんだが・・・


 まだ結婚してないよね?

 ね??


 まあ “ぶっちゃけ” てしまったものはしょうがない,


 「こほん。本人のプライバシーもあるので、僕の口から言うのは憚(はばか)られましたが・・そういうことです。クレアリス様。単刀直入にお伺いします、僕の治療を受けますか?」


 「それは『エリクサー』の探索はしない・・・ということでしょうか?」


 「依頼である以上、探索はするつもりです。しかし、アストラスのダンジョンに必ず “ある” という保証は、どこにもありません。加えて『エリクサー』にも種類があることは。ご存じですか?」


 「種類?初耳ですが?」


 「フェルナ様は?」


 「・・・知らないわ。そもそも市場に出る事自体がないもの。」


 「そうですか。僕の知る限り『エリクサー』は三つの等級に分類されます。 三等級の『エリクサー』は。ほぼ『ハイ・ヒール』や『エクストラ・ヒール』のように傷を治しますが、欠損部の復元はしません。治療される側の寿命にも作用しないと言われています。 二等級の『エリクサー』は欠損部の復元はしますが、寿命には作用しない。 一等級は『エリクサー』の中の『エリクサー』とも呼ばれ、肉体を完璧に修復し、尚且つ永遠の命を授けるそうです。 こうなると、もはや笑い話ですがw」


 「永遠の・・・よくご存じで、何の書物に書かれていたのでしょう?」


 「秘密です。まだ打ち明けるつもりはありませんし、不必要な情報を抱(かか)えさせるつもりもありませんので。」


 ”前世の記憶で~す” なんて言えるワケね~べw


 「魔法契約をしていても・・・ですか?」


 しれっと “爆散ネタ” 増やしてど~すんのさww


 「そうです。むしろ魔法契約をした今だからこそ、守るべき秘密は最小限に留(とど)めておいた方がよろしいかと・・・」


 「そうですね。では結婚すれば、その秘密も明かしていただけるのでしょうか?」


 ぐいぐい来るねw


 「どうでしょう。知らない方が良かったと思われるかもしれませんし・・・それに・・・」


 「それに?」


 「謎多き男性の方がモテそうでしょうwww」


 ちょ!

 三人娘(メンバー)の皆さん!?

 視線が痛い! 痛いってば!!


 束の間

 俺の冗談に、呆気にとられたクレアリス様が口元を覆った。


 「面白い殿方ですね。分りました。フィーネ・・・いえ、メルロス様の言葉を信じましょう。グレイ様の治療をお受けします。それで、すぐに始められますか?」


 「この場所では、支障があります。そこでお願いがあるのですが、僕達と共にダンジョンに潜っていただけませんか?」


 「なにを言ってるんだキサマ!」

 サフリー嬢、吼える。


 だよね~


 「これは冗談ではありません。必要だと思っているからこそ、お誘いしているのです。」


 「・・・理由をお伺いしても?」

 流石クレアリス様、キモが据わってらっしゃるw


 「ダンジョンには魔力が溢れています。 “良い意味でも悪い意味” でもです。 そして『パーフェクト・ヒール』は、僕の魔力のほぼ全部を使います。 いわゆる “一発勝負” というヤツです。」


 「一発勝負・・・なるほど、治療の成功をより確実なものにするために、ダンジョンの魔力を利用すると?」


 「御明察の通りです。」


 「ですが、意図的に外部の魔力を利用するのは、簡単な事ではないと思われますが?」


 「そのための訓練はしておりますので。」


 「訓練?どんな?」

 フェルナ様が身を乗り出した。

 気持ちは解るがねw


 「秘密です。余計な情報は持たない方がよろしいかと・・・」


 シブい顔をするフェルナ様に対し、クレアリス様がクスリと微笑んだ。


 「謎多き殿方ですか・・・確かに魅力的かもしれませんね。 分かりました。方法については全面的にお任せします。良きようになさってください。」


 「姫様!」

 サフリー嬢が泣きそうだ。

 だが知らんなw


 「良いのですサフリー。最近では立つこともままならず、目のかすみに加え、心(しん)の臓(ぞう)も怪しくなってきました。 寿命が近いかもしれないと、半(なか)ば諦(あきら)めていたのです。 ならばここで、グレイ様の言う “一発勝負” というものに掛けてみたくなりました。 これは私の我儘(わがまま)です。お許しいただけませんか?」


 「我儘(わがまま)など!・・・畏まりました。どこまでもお傍にいます。」


 しおらしいね~w

 従者の鑑だね~ww

 視線が痛いね~www


 「では、明日、神父様達との話が済んだら、お迎えに上がります。ごゆっくりお休みください。ロデム。僕達の食事は、食堂へ頼むよ。」


 「畏まりました。」




 「あ~あ。本格的なハーレムになっちゃったね~」

 食堂へ向かいながら、メイさんが盛大に溜息(ためいき)を吐いた。


 全く持って同感だが・・・

 救える患者を放っておくのも、寝覚めが悪そうだしな。


 「仕方ないよ。クレアリス様という “とっておき” を使ってでも国に繋ぎ置きたかったんじゃないかな?陛下は『勇者』という称号に御執心(ごしゅうしん)のようだし。」


 「病気持ちの王族が “とっておき” ですか?」

 スズネさんが不満気だ。


 「たとえ身分を剥奪(はくだつ)しても、陛下の血を受け継いでいることに変わりないからね~ 治療に失敗して死なせてしまったら、責任取れって言いだすだろうね。」


 「・・・だろうな。彼奴等(きゃつら)の考えそうなことだ。」

 メルさんも同意見かね?


 「称号ねぇ・・・もう一人の “称号持ち” には興味ないのかな?」

 そうだ、忘れてたよw


 「スズネ。もう一人の『勇者』の情報って手に入る?」

 「 “北のザブズクルのダンジョン” にまだ居るようです。なんでも70階層を走破したとか・・・そのあとは身を持ち崩しているようですね。」


 「持ち崩す?何ヤラかしたの?」

 「特定の娼婦(しょうふ)に入れ込んでるとか・・・調べてみたら ”オセニア帝国の間者” でした。」


 おいおい大丈夫かよ・・・

 思い切り “毒牙” にかかっとりません?


 「他のチームメンバーは何も言わなかったの?」

 「彼は最初から単独(ソロ)で潜っているようなので、いろんな意味で有名人ですね。」


 一人(ソロ)で70階を走破か・・・相当なモンだな。

 自由奔放が強さの秘訣かね?

 羨ましい。


 「なに変なコト考えてんのよ?」

 メイさん鋭いw


 「別に?自由な人だな~ってね。」

 いいよね~

 パッフパフのウッハウハw


 「君も自由に振舞っても良いんじゃないか?実家には十分貢献したろうにw」

 おう。

 メルさんが珍しく過激な事をおっしゃるw


 「成人したら、アストラスの名を返上するつもりだったんだけどね~」


 「私達が邪魔ですか?」


 「邪魔ならとっくに逃げてるよ。むしろ傍にいて欲しいからココにいるんだけど。」


 「“たらし” ね~」

 「“たらし” だなw」

 「“たらし” な台詞ですねw」


 何でそうなる!?




 夕食後


 俺は自室で、魔導書を読んでいた。


 スズネさん達は、各自部屋に戻っている。

 どうせ寝静まった頃にココに忍び込むんだろうが、毎度のことだw


 『アシュタロ・ホロギネスの魔導書。初級。』

 実家にあった『魔導書』だ。

 サルムンド侯爵や陛下に下賜(かし)された『魔導書』も、同じ作者だったりする。


 魔法の祖(そ)であるらしい。


 どうせ写本だろうが。イロイロ書き足すと読み辛くなりそうだし。時間を掛けてこの本を作ってくれた人に申し訳ないので、ノートに書き写していたんだが・・・今はフェルナ様の手元にあるという “つまらないオチ” になっている。


 では、アシュタロ氏以前には魔法は無かったのか・・・


 それはないだろうな。


 この世界はまだ2000年程度と、出来立てホヤホヤの世界だが、この過酷な世界に何ら対策もなしに『ヒト種』が生き延びてきたとは考えにくい。


 時代背景も、俺の知る “中世ヨーロッパ” の時代と酷似しているし、スズネさんの話を聞く限り、東国も江戸時代を匂わせる。


 要所要所の時代に『創造神エルサデラ』様をはじめとする高級心霊が、異世界からこの『ヘマ』という未熟な世界に『人』を送り込んできた・・・と考えるのは、無理があるだろうか?


 なんせ最初にサラフィナ様に呼ばれた時の『天上界』が、“あんな状態” だったもんな。


 『魔神』だの『魔王』だのもちょくちょく出てきてるみたいだし、『勇者』なんていう馬鹿げた “称号” も普通に使われているようだし・・・思いきし “はずれクジ” を引かされた気分だ。


 ん?

 ロデムの気配が近付いてきているな。

 今日の仕事が終わったか。


 ロデムには、しばらくの間一緒にダンジョンに潜るように言ってある。

 サフリー様だけでは、歩けないクリアリス様の世話は大変だろうからな。


 俺達が作る “ダンジョン飯” が口に合うかどうかも判らないしw


 部屋の扉がノックされた。


 「入れ。」

 短く答えた。


 「失礼します。」


 「仕事は済んだか?」


 「はい。」


 「何故呼ばれたか、分かっているのか?」


 「『魔法契約書』の件でしょうか。」

 さらっと答えやがったよ。


 「そうだ。躊躇(ちゅうちょ)なくサインしやがって、あんなモノ俺に持たせて楽しいか?」


 「いえ。ご不満なら破棄(はき)されても構いません。」


 「馬鹿か貴様。迂闊(うかつ)に破棄(はき)すればどうなるか、分かって言ってるのか?」


 「私の拙(つたな)い知識によれば、私とクレイ様、双方に “天罰(てんばつ)” が下るかと・・・」


 「並の契約書ならまだいい。アレは俺の “血文字” で書いてある。つまり二人揃って仲良く “爆散(ばくさん)” だ。俺は貴様と心中する趣味はないぞ。」


 「左様ですか。」

 他人事かよ!


 「・・・ここを辞める気はないのか。」


 「ここを辞めて、どこへ行けと?」


 「契約書にサインした以上、破棄(はき)は許されん。だが、貴様は優秀な執事だ。今なら最低限の秘密を保ったまま、他所(よそ)でも働けるはずだ。」


 「困りましたね。私はここ以外で働く気はないのですが・・・」


 「さらに “秘密” を抱え込むつもりか? 身動きが取れなくなってしまうぞ。」


 「それもまた一興かと・・・」


 盛大に溜息(ためいき)が出た。


 「セバスといい、貴様といい・・・なんで俺みたいなガキと正面切って渡り合おうとする? 適当に流していればいいものを・・・」


 「グレイ様・・・だからですよ。」


 「おちょくっているのか?」


 「とんでもございません・・・お分かりになりませんか?」


 なんか、馬鹿らしくなってきた。


 「もういい・・・コレをやる。」


 「これは?」


 「ミスリルの魔法剣。俺の予備の剣だ。セバスにもくれてやったが、これはアレの改良版だ。ダンジョンに近いからな。より実践に堪え得るようにしてある。」


 「・・・よろしいので?」


 「契約書にサインしたからな。代償としては安すぎるが、何もないよりはマシだろう。セバスには見せるなよ。ゴネられても困る。」


 あらら?

 跪(ひざまず)きやがったよ?


 「グレイ様に永遠の忠誠を・・・マイ・ロード。」


 「もういい。下がれ。・・・たく、”クソ重い荷物” を持たせやがって・・・」


 「一つだけ、質問が・・・」


 「なんだ? 面倒なことには応えんぞ。」


 「その口調。それがグレイ様の “素” で?」


 「知るか。下がれ。」



おっちゃん「昔のヒーローもの見てたら、面白い発見した。」


 相方 「はいはい。何ですか?」


おっちゃん「頭部が肩幅に対してやたらデカい。肩パッド入れる予算もなかったのかな?」


 相方 「知りませんよ、だから何なんです?」


おっちゃん「・・・それだけ・・・」



えも言われぬ悲しみと空虚感に、苛まされつつ、次回更新10月7日・・・

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