74 準備と詐称
まっすぐに進めば2日の行程を、4日もかかってしまった。
『肉』だよ『肉』。
市場で買うという選択肢もあるが、いかんせん “金欠子息” 。
おまけにアホみたいに広がった『気配探知くん』がハリキって仕事するんだもの。
「あ。コカ見っけ。」
「え?どこどこ!?」
「こっから7時の方向。直線で1キロくらい?」
「行ってきま~す♪」
「行ってら~w メルは3時の方向。オーク2匹よろしく。」
「うっし!今日は豚汁だな♪」
万事こんな調子だ。
ノワールをサポートに付ける時もあるが、レベル70を超えると単独で狩りに出ることが圧倒的に多い。
日が暮れたら『シェルタールーム』で、今日の獲物の解体作業。
もちろん『肉』以外にも、『毛皮』や植物系の “暖が取れそうな” 素材も採取。
『毛皮』は剥いでおけば店が処理するし、生の木材は『材木商』が喜ぶ。
伸縮自在の『神剣』が大活躍するのサw
『如意棒』顔負けだなww
“外野” が何か言いたげだが、知らんなw
クレームは受け付けんよww
だって切れ味いいんだものwww
“道具” は使ってなんぼさねwwww
実家に帰り着くころには、結構な量の『肉』と『毛皮』と『木材』が手に入った。
店の人が泣くかもしれんw
まあ、売った金で人数分の『防寒着』やら『野菜』を買うから勘弁して欲しいところだw
実家に戻ると、まず父の執務室に呼ばれた。
執務室には、父とセバスの他に、兄がいた。
「兄様。ご無沙汰しております。」
随分大きくなったものだ。
成長期ってヤツだなw
「久しぶりだな。グレイ。」
兄はソファーから立ち上がると、俺に近づいてきた。
ごいん!
いやぁ、いきなり “目から火花” が出るくらいゲンコツされたわ。
「に・・・兄様!?」
「馬鹿が!いかに次男とはいえ、アストラスの名を持つ者が他国へ不法侵入するなど何たることだ!!」
「そ・・・それにつきましては、言い訳のしようもございませんが、既に陛下には事後承諾を頂いておりまして・・・」
「関係ない!一歩間違えれば、貴様はアストラス家の看板に泥を塗るところだったのだぞ!それどころか『降爵』の憂き目に遭ってもおかしくない行為だ!分かっているのか!!」
「も・・・申し訳ございません」
言われてみれば、その通りだ。
思いつきもせなんだわ。
「陛下に事後承諾を頂いたと言ったな。沙汰は無かったのか?」
「いえ。これと言って・・・」
「・・・そうか・・・」
ってか、久々のタンコブが疼くんだがw
父上?楽しい??
「そのくらいにしてやれ、サルカス。やったことは犯罪だが、おかげで帝国の状況をいち早く把握することが出来たのは大きい。皇帝や、その血族が行方不明となった以上、帝国に飲み込まれていた各種族や王国が反旗を翻す可能性がある。内紛の可能性が出てきた以上。我が国をはじめ周辺国家も巻き込まれぬように準備を整えねばならん。サルムンド閣下は何も言ってなかったか?」
「いえ、これと言って・・・」
「そうか。ならばお前のやるべきことは・・・解っているな。」
「はい。可能な限り急いで準備をして、ダンジョンに潜ります。」
「その前に、第三王女だろうが。馬鹿者。」
セバス?楽しい??
「まったく!これがアストラス家の誇る『勇者』とはな・・・」
兄様? 頭痛いのかな??
「それにしても、この時期に家にいるのは珍しいですね。学園は大丈夫なのですか?」
俺の問い掛けに、兄様は心底呆れたような顔をした。
「なにを言っている。もう卒業したぞ。」
「え?」
「卒業したと言ってるんだ。知らないのはお前だけだろ。」
速いな!
・・・って?・・・あれ?・・・
「お前なぁ・・・俺の誕生日に『ミスリルの剣』を送ってくれたろう。俺は感激したんだぞ。幼いお前が危険なダンジョンに潜って、滅多に手に入らないプレゼントを用意してくれたんだって・・・なのにお前は俺の卒業式はもちろん、自分の誕生日にも家を留守にして出歩いている。俺がお前の誕生日プレゼントに、どれだけ頭を悩ませたと思ってるんだ?」
「あ・・・あははは・・・」
そうだわw
俺の誕生日はとっくに過ぎてたわww
7歳になってたわwww
いつの間にやら “年齢詐称” してたわwwww
流石は “詐欺師スキル”・・・って違うわ!!
兄様の目が、胡乱な色に染まった。
「まさか、自分の誕生日を忘れてたわけじゃあるまいな・・・」
「ははは・・・失礼します!」
ダッシュで部屋から逃げたね!
「あ!まて!こら!話はまだ終わってないぞ!!」
「ゴメンナサイ兄様!反省してますぅ!!」
「反省してるなら逃げるなぁ!!」
「セバス。紅茶が溢れているぞ。」
執務室に残されたホウレイが、執事の手元を見ていた。
「!・・・失礼を。・・・仲が良いですな。」
「落ち着きがないともいうがな・・・後でクレアリス様は『ダンジョンの屋敷』に滞在していると伝えてやってくれ。」
「御意」
まあ、どんなに旨く逃げおおせたとて、夕食時には食堂で顔を合わせることになる。
「おまえという奴は・・・」
「あだ・・・あだだだだ!」
父が席に着くまでの短い時間ながら、蟀谷をグリグリされながらの説教はなかなかに斬新な体験だった。
◆◆
「そうですか。ご無事で何よりです。」
その日。
ダンジョンの『勇者屋敷』では、クレアリスが執事のロデムからグレイが帰ってきたという一報を聞いた。
明日には屋敷に戻るという。
「フェルは、いま何処に?」
クレアリスは直立不動の執事に聞いた。
「フェルナ様は研究室にいらっしゃいます。お止めしたのですが・・・」
執事は。少し困ったような顔をしていた。
「知らせたのですか?」
「はい。」
「・・・そう・・・」
「お知らせしなかった方が良かったでしょうか?」
「いえ、勝手に研究室を占領して。グレイ様がお怒りにならなければ良いのですが・・・」
「まずは、その御心配はないかと・・・」
「そうですか?」
「他人様に見られては不味い重要な “資料” などは、グレイ様ご自身が『アイテムボックス』に入れて持ち歩いておられますので。」
「慎重な方なのですね。」
「・・・僭越ながら・・・」
「なんでしょう?」
「あまり先入観を持たれない方がよろしいかと・・・グレイ様は、その、イロイロ規格外な御方ですので・・・」
「まあ。楽しみですねw」
◆◆
早朝から町に繰り出し、店の倉庫がほぼ満杯になる程度に、素材を放出した。
本来なら『商業ギルド』に売却するのが筋だろうが、ドンビシャスの町は顔見知りが多い。
直売することで店舗側は “中間マージン” を取られずに済むし、その分 “色” を付けて買ってもらえる。
その金で必要品を手に入れる。
WIN-WIN の関係だ。
「グレイ様。この後、少しお時間よろしいでしょうか?」
「ん?」
珍しくスズネさんが、遠慮気味に話しかけてきた。
「支部の・・・私の師匠が、御挨拶をしたいと・・・」
「いいの?僕に顔を見せて?」
「問題ないかと・・・」
最寄りのカフェに足を運ぶことになった。
とはいっても、最近オープンしたばかりのカフェらしい。
愛想の良い、黒髪のオネーサンが案内してくれた。
カフェの個室に通されると、白髪の女性が待っていた。
「初めまして。マーガレットと申します。この度は御足労いただき、ありがとうございます。」
丁寧に頭を下げる。
鑑定:おりん。66歳。 “草”マスター。鎖帷子、仕込み杖、苦無、
暗器多数。毒使い。
『毒使いマスター』ときたか。
“偽名” と “フル装備” は “草” の生業なのかね?
俺も現状、似たようなもんかw
最近は少し背が伸びて、鎖帷子が窮屈になって来たけどww
「ご丁寧に、ありがとうございます。アストラス家が次男、グレイ・アストラスです。」
「早速ながら、里の者が大変ご迷惑をお掛けしたようで面目もございません。」
再度、深々と頭を下げた。
「すでに謝罪は受けております。どうぞ。お気になさらず。」
食べた “しびれ薬” も “弱毒性” だったしね。
あれが “中” だの “強” だったりしたら、箸もつけなかっただろう。
今更ながら、俺の勝手な想像だが・・・
おそらく『左衛門くん』は俺との “決闘” を見越して、手を打っておきたかったんじゃないかな?
転んでも『勇者』だしねw
「ご迷惑をお掛けした者に関しては、我々に一任する・・・ということで?」
覗き込むように、訪ねてきた。
これが聞きたかったんかね?
「その話も受けています。全面的にお任せすることで話は付いています。」
「畏まりました。重ね重ね申し訳ございません。以後、こういうことがないよう、周知徹底させます。」
「そうしていただけると幸いです。ところで、話は変わりますが・・・」
「何か?」
「このお店の出資者は “お里”で?」
「そうです。よくお判りで。」
「スタッフが黒髪の女性ばかりでしたからね。外部の者を入れるご予定は?」
「あります。開店したばかりなので、一時的に手伝わせていますが、徐々に入れ替える予定です。」
「『ネコマス』は用済みですか?」
『ネコマス』。
俺がちょいちょい厨房を借りていた、街はずれの小さな食堂だ。
あそこの厨房は、俺の身体のサイズに丁度いい広さなんだよな。
マーガレットさんは、眼を開いた。
「ご存知でしたか。」
「 “目配り” と “体幹” がね・・・そうではないかとカマをかけてみましたw」
ウッソでえ~すww
『鑑定くん』で初日からバレてま~すwww
「流石のご慧眼。御見それいたします。お邪魔でしたでしょうか?」
「いえ。その逆です。あそこの厨房は使いやすいし、マスターの人柄も気に入ってます。御迷惑でなければ、また利用させていただければ。」
「畏まりました。マスターも喜ぶでしょう。物資の受け渡しなども、そこで?」
「問題ありません。メンバーの誰かが行くと思います。新作思いついたら、また厨房を借りますよ。」
「伝えておきましょう。今日は、この後のご予定は?」
「ダンジョンの屋敷に戻る予定です。」
「クレアリス様をお待たせするわけにはいきませんね。本日はありがとうございました。」
“お見合い” バレて~ら~w
「あっと・・・それから。」
「はい。」
「『野球』は御存じですか?」
「野球・・・ああ、そういえば。神父やら子供達が、毎日のようにボールの投げ合いをしていましたね。何でも野球の練習だとか・・・それが何か?」
「『サラフィナ神』様の御意向により、ボールを使ったゲームを流行らせることにしました。ご協力いただいても?」
「サラフィナ神の・・・解りました。手の空いてる者に参加するように伝えましょう。」
流石『マスター』。
一存で、ある程度は “草” を動かせるのかw
これはこれで心強い。
逆に、親密になるほど “情報” を抜かれやすいが・・・今更かw
グレイを見送った『おりん』は、足音が遠ざかるのを確認すると大きく息を吐いた。
ポケットに忍ばせていた酒瓶を取り出し、一気に煽る。
手が震えていた。
冷や汗が止まらない。
生き延びた。
その実感が。ジワリと身を包んだ。
とんでもない “子供” だ。
まるで、本物の『魔王』と対峙したような・・・
『気配』は完璧にコントロールされていた。
他の三人もそうだ。
だが二人。
『グレイ・アストラス』と奴隷勇者の『メイ』は別格だ。
“本能” が、そう告げていた。
『左之助』が仕込んだ “毒” もそうだ。
アレは『おりん』が手ずから作った自慢の『毒』。
“効き” は弱く “遅効性” だが、無味無臭。
服用量次第では、数日後に原因不明の『心臓麻痺』を起こすことも可能だ。
だが盛られた本人は、平然と帰ってきた。
穏やかに。
『サラフィナ神』の意向まで伝えてきた。
「規格外すぎる。」
『おりん』はポツリと呟いた。
さて、大体の用事は済んだ。
あとは第三王女と侯爵子女と・・・
気が重いね。
できれば嫌って欲しい。
嫌われるついでに “婚約解消” まで持って行けないかな。
ぱっかぱっかと馬車を操り、屋敷に向かったのだが・・・屋敷の外壁を囲むように、テントが乱立しとるがな
何故に?
「あ!グレイ様が帰られたぞ!」
真っ黒な『G』のような集団が・・・いや失礼。
『神父』達が、わらわらと集まってきた。
「こんにちは。中に入られないのですか?」
「いえ、その・・・王族の方が、居られるので・・・」
ああ~そゆこと・・・
「ここは危険です。僕が許可しますので庭にお入りください。」
「宜しいのですか?」
「構いません。王女には僕から伝えておきます。」
馬車から下りた俺は、門を全開にした。
不審人物の侵入を許してしまいかねない行為ではあるが、疑い出したらキリがない。
“草” も紛れているはずだし、変なヤツは彼らが防いでくれるだろう。
『神父』達はホッとしたように、次々と庭に移動した。
って、『シスター』さんも混じっとるやん!
気合入ってんな~
宿舎作った方が良いかな?
おっちゃん「100話まで、6歳のまま引っ張りたかったんだが・・・」
相方 「いや、さすがに無理があるっしょ?どんだけ濃密な幼少時代を送ってんすか?」
おっちゃん「だって面白いじゃん。天下無双の6歳児」
相方 「『じさま異世界』の物語はどこ行った?」
おっちゃん「気のせいだった・・・ということでw」
相方 「タイトル詐欺、ここに極まれり・・・」
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次回: 9月23日(水曜日)は諸事情によりお休みさせていただきます。
相方 「・・・といいつつ、ウッキウキで温泉旅行の準備をしてる ”おっちゃん” ww」
おっちゃん「しー!!」
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次々回更新 9月27日(日曜日)




