73 神剣と案件
翌朝。
目が覚めたら暗かった。
何のことはない。
ノワールが俺の顔面に腹ばいになって寝ているからだ。
モフモフは嫌いじゃないんだがねw
キミ “女の子” だろ?
メル・メイコンビも、いつの間にか俺の両腕をロックしてるし・・・
ってか、69歳エロフ君?
いたいけな6歳児の右手を。股間に挟むのはやめていただけません?
教育委員会に訴えちゃうぞ。
作者の夢の『アニメ化』に「待った!」がかかっちゃうぞw
起こしに来た割烹着のオネーサンが呆然としてるしww
これでスズネさんが乱入してたら、確実に “もう一騒ぎ” 起きてたなwww
朝食を頂いた後、里の重鎮らと共に外に連れ出された。
スズネさんの『神剣』を鑑定したいのだそうだ。
校庭のような庭には、数本の『杭』が打ち込まれている。
昨日は無かったものだ。
おそらく “試し切り” 用だろう・
まあ、室内で振り回したら迷惑以外の何ものでもないだろうがw
「スズネ。見せてくれるかい?」
『しずさん』が穏やかに問いかける。
「はい。」
スズネさんがポシェットから『アダマンタイトの杖』を取り出し。『しずさん』に渡した。
「ほう。これが『神剣』・・・」
「美しい『仕込み杖』ですな。」
「うむ。風変りな杖だね」
『しずさん』が素直な感想を口にした。
いやさ、素材が『異世界のエンジン』だからねw
こっちでは手に入らない代物だからねww
素材そのものは『ガラクタ市』で、二束三文で手に入るかもしれんがwww
抜刀した『しずさん』が、しげしげと『刀身』を眺めた。
細身の刀身だ。
パッと見た感じでは『実践』に使えるかと聞かれれば、首を傾げるしかないだろう。
二、三回、軽く振ってみる。
流石。
何気なく振ってはいるが、綺麗な太刀筋だ。
「・・・どうだい?」
重鎮の一人に尋ねた。『東栄』という ”鑑定持ち” の一人だ。
「間違いなく『神剣』かと・・・」
「ふ~ん・・・」
抜刀したままスタスタと近くの杭まで歩き、スパッと切った。
続いて、二回、三回。
「ほう。見事な切り口ですな。」
昨夜、しきりに俺に『酒』を勧めてきた重鎮の一人が声を上げた。
『しずさん』に一喝されてたがねw
たしか、『恵之助』とか言ってたな、
「ふむ。切れ味も、耐久性も申し分ないが・・・」
納刀し、スズネさんに差し出した・
「スズネはコレを使いこなせるのかい?」
「・・・失礼します。」
『アダマンタイトの杖』を受け取ったスズネさんが、前に出た。
納刀したまま、杖の先を一番遠くの『杭』に向ける。
「ふっ!」
バン!っと『杭』が弾けた。
「おお!」
「なんと!」
歓声が漏れた。
続いて抜刀。
軽く『杭』に向かって、振る。
触れてもいないのに、二本の『杭』がスパン!と切れた。
これには流石の『しずさん』も目を丸くしていた。
「あんた “魔法” が使えるようになったのかい?」
「グレイ様に “ご教授” していただけましたので。」
スズネさんの言葉に、今度は俺に視線が集まった。
「驚きました。スズネには “魔法の才” は無いものだと思っておりましたが。」
「彼女の努力の賜物です。ちなみに、その『神剣』を手にした後の主な “戦歴” を並べるなら、ダンジョンの50階層での『キラービー』の殲滅。51階層のボス部屋では『ミノタウロス』の足首の切断と討伐・・・あと『魔族の兵士』との ”戦闘“ を複数回でしょうか。」
「51階層・・・」
「『魔族』の兵士との戦闘も・・・」
口開けっぱなしだと、喉乾くよ~w
「・・・この短い間で、それだけの “戦歴” を上げているとは。グレイ様はこの娘の “才” を引き出すのが御上手なようで・・・」
「すべて彼女の努力によるものですし、僕は “きっかけ” を与えたに過ぎません。それに、すでに彼女は『チーム』にとって、なくてはならない存在でもあります。加えて言うなら・・・」
「言うなら?」
「彼女にはまだ “伸びしろ” があります。」
ここは “断言” しておくべきだろう。
実際、“戦闘” 時においても余裕があるように見えるしなw
「「「「おお!」」」」
ご納得いただけたかね?
これで「スズネさんを返せ!」などとごねる様なら・・・泣いちゃうよ??
泣いちゃうついでに、暴れちゃうよ???
『神剣』の鑑定と検証を終えた俺達は、室内に戻った。
にしても・・・
差し出された『和食』やら『和菓子』が旨いんだが・・・
《 解析完了してます。》
コクウさん有能w
程よく、場が落ち着いたところで『しずさん』が口を開いた。
「グレイ殿はこの先、どうなさるおつもりでしょう?」
「とりあえずは “チームでのダンジョン踏破” を目指します。北のザブズクルのダンジョン。西のラッテルの町のダンジョン踏破や “魔の森の縦断” なんかも視野に入れていますが、まず優先されるべきは、僕の『師』となるべき人に認められることでしょうか。」
「師・・・とは?」
「『英霊ソリアン』様です。」
「は?」
『しずさん』の目が点w
「英霊・・・と申されたか?」
重鎮の皆様も呆気に取られてらっしゃるw
俺は言葉を続けた。
「先の “王都の教会での騒動” をご存じでしょうか?」
「はい。スズネから報告を受けています。」
『しずさん』の耳にも入っていたか。
“地揺れ” と ブラフェアス・オクリヌス教皇が行方不明になった事件は有名だもんね。
「その際に、教会に現れた『天使』が『ソリアン様』です」
じゃじゃ~ん♪
騒めくね~ww
「・・・その、『英霊ソリアン』様に修行を付けていただけるということでしょうか?」
「僕だけじゃありません。その場で『ソリアン様』の声が聞こえた全員に資格があるかと。」
全ての視線がスズネさんに集まった。
「・・・聞いたのかい?」
「はい。はっきりと。」
おお!
盛り上がるね~w
昨日の酒が残っているのかねww
「なるほど・・・それで “伸びしろ” があると・・・」
「そういう意味では、当面の目標は “アストラスのダンジョン踏破” と言えるでしょうか。」
俺の言葉に『しずさん』は居住まいを正した。
座布団を脇に除け、三つ指を付いて深々と頭を下げる。
「ふつつかな孫娘ではございますが、なにとぞ末永く可愛がっていただけますよう。」
これにはちょっとビビったが、礼には礼を尽くさねばなるまいよ。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
俺はそう答えると、アイテムボックスから包みを取り出した。
「どうぞ、お納めいただきますよう。」
「・・・これは?」
包みの中身は、魔族の兵士『ダル―』の真紅の『魔石』だ。
前世では『ペアシェイプ (涙型)』と呼ばれた形らしい。
「先日、捕獲しそこなった『魔族』の魔石です。正式な結納は僕の両親が執り行うと思いますが、僕はこの石を『慟哭』と名付けました。」
「慟哭・・・」
「何と美しい・・・」
「この原石だけでも、いかほどの・・・」
「名の由来をお伺いしても?」
『しずさん』が石を手に取りながら聞いてきた。
「その石の持ち主は、将来を約束した相手と幸せな未来を勝ち取るために、あえて無抵抗を選びました。残念ながら “魔力の暴走” により殺害せざるを得ない状況に陥ってしまいましたが、彼の恋人を思う気持ちは本物であると判断しました。」
「・・・そのようなものを、なぜ我々に?」
「僕はスズネを愛していますが。同時に、未熟な “称号持ち” でもあります。彼女の力が無ければ『ダンジョン踏破』などと口にすることは出来ないでしょう。それは同時に、最愛の人を危険な領域に誘うことにもなります。」
「それで、この石と相通じるものがあると・・・」
「資金繰りに困るようなことがあれば、売り払ってしまっても構いません。」
俺の言葉に、誰もが口を閉ざした。
「解りました。これは我々が大切に保管させていただきます。」
『しずさん』は丁寧に包みに戻した。
さらにもう一泊するよう勧められたが、流石に辞退した。
早く帰る必要があったし、なにより賑やか過ぎたからだ。
何がって?
そりゃ『左衛門くん』が目を覚ましたからさw
スズネさんにノされた『左衛門くん』は、そのまま地下の個室に放り込まれたようだった。
んで、陽が暮れるころに目を覚まして大暴れ。
暗器やら鎖帷子は没収されていたんだろう。
随分身軽に動いていたからなw
俺達が寝室に案内され、床に就いた後も大勢が地下で右往左往する気配が途切れることはなかった。
ちょっと面白かったので、しばらく様子を伺っていたが、『しずさん』の気配が地下に乱入したした時点で少し様相が変わったようだ。
よほど頭にきたようで。高齢とは思えぬ速度で『左衛門くん』に接近したかと思えば、急速に彼の気配が薄れて行った。
おそらく叩きのめされたんだろう。
容赦ないなw
気を失った『左衛門くん』は別室に運ばれ、しばらく数人の気配が彼の周りをウロチョロしていたから、たぶん縛られたんだろうな。頑丈にw
そんなワケで “騒動のタネ” と共に、早々に村を出ることにした。
しっかり “調教” してくれることを願いながらw
平原を『バギー』がひた走る。
ナビはスズネさんだ。
メル・メイコンビは『シェルタールーム』で寝ているらしい。
昨夜の “騒動” が気になって寝付けなかったようだw
つまり二人きりの『ドライブ・デート』なのだが・・・
こういう時に限って “邪魔” が入るのは・・・定番っちゃ定番か・・・
「 “はぐれ” のようですね。」
スズネさんが空を見上げた。
「一人で行けそう?」
「お任せを。」
『バギー』を止めて結界をバラ撒くと、ひょいひょいと軽やかに登っていく。
目標を改めた『ワイバーン』が、凶悪な爪をスズネさんに向ける。
その爪がスズネさんの身体に接触する寸前に、すれ違うようにジャンプ。
哀れ “はぐれ” のワイバーンの首は、自身の胴体とも “はぐれ” ることになった。
「お見事w」
「ワイバーンは、そこそこ使い道があります。『魔石』はもちろんですが、『羽』は高級マントになりますし、『爪』は鍛冶で使われるようです。『尻尾の毒』は錬金術。肉で評判なのは『胸肉』と『モモ肉』ですね。」
「詳しいね。食べたことある?」
「屋台では。滅多なことでは出回るようなモノではありませんので。」
『素焼き』と『唐揚げ』を試してみるか。
ちょっと甘めの『和風ダレ』と・・・『カレー粉』を塗してみてもいいかな?
旨かったら “乱獲対象” になるかw
結論:乱獲決定!(反対意見は皆無)
ハラマッツォ伯爵が泣いて喜びそうな “案件” が出来たww
とりま、急いでハラマッツォ領から出なければならない。
『検問所』通ってないからね。
現時点ではチーム全員が『犯罪者』だ。
俺は『バギー』の速度を上げた。
“お見合い” の話も進めなきゃならない。
『将軍家の末裔』『奴隷勇者』『元巫女』などという多彩なメンバーに『王族』だの『侯爵』だのが加わると、シャレにならない気がする。
父上達も、呆れを通り越して裸足で逃げ出したくなるかもw
「ふふ。“お里” に身を隠しますか?今なら皆歓迎して迎え入れてくれますよ?」
スズネさんの提案が魅力的すぎる。
「まだ、アストラスの人間だからね。陛下との “約束” もあるし・・・」
「 “お約束” ですか?」
俺は王宮での出来事を話した。
「そういえば、クレアリスは幼少のころから足を引きずっていたな。」
目を覚まして、貪るように『唐揚げ』を食べて満足したメルさんが、後部座席から思い出したように発言した。
「お知り合い?」
メルさんに負けない食欲を見せたメイさんの『クエスチョンマーク』は、『バギー』の風の影響を受けないようだ。
二人とも ”頑丈な胃袋” をしてらっしゃるw
「『教義の授業』を担当していたからな、素直な良い子だったぞ。」
あ~らら~
顔バレ確定だな。
「それにしても、陞爵後に『ドンダリデ領』を希望するなど・・・」
スズネさんが呆れてらっしゃるw
まあ、現状『ドンダリデ領』は『アンデッド』の巣窟だからね。
土地の “魔力過多” の状態が解消するのは当分先の話になるだろうし。
「生きて帰って来られたらの話だよ。それに、全く手が無い訳じゃない。」
「『神聖魔法』? レベルカンストしても難しいんじゃない?」
メイさん。いい線いってるw
「未来の話をするのは楽しいけど。現状、僕に出来ることは何もない。希望や願望を実現するためには、いま汗を掻かないとね。」
「 “見合い” に汗かくの?えっち!」
「エッチだな」
「最初は私ですよ?」
何故にそうなる!?
無事、ハラマッツォ領を抜けて街道に戻った俺達は馬車に乗り換え、のんびりと進んだ。
“お見合い” が終わったら、即ダンジョンに潜るからね。
『肉』と『毛皮』の確保は最優先事項なのだよ。
「毛皮?」
メイさん。忘れたかね?
『ジャングルフィールド』の次は『砂漠フィールド』。
ならば『極寒フィールド』があっても可笑しくないが?
「そうでした。でも “対策済み” じゃなかったっけ?」
「念には念を・・・だよ。『極寒』という言葉は知ってるけど、体感したことはないからね。使わなかったら売り払えばいいしw」
前世では東北で “氷点下8度” を体験したことはあるが、所詮『暖房』という “文明の利器に守られて” という条件付きだ。そういった恩恵のない状態で何日も過ごすのは、どう考えても分が悪い。
大袈裟なくらい準備をしておいた方がいいだろう。
『魔石』使った暖房器具作ってみるか?
『クズ魔石』で『カイロ』作れるかな?
《 ロングコートタイプなら、以前作ったことがありますが?》
コクウさん。kwsk。
《 面白い表現ですねw 要は絹糸に砕いた『クズ魔石』を塗して定着させた物ですね。定着剤には数種類の薬草が必要ですが。マスターの魔力量なら必要ないでしょう。動きやすいですよ。》
熱源はどうやって?
《 羽織った人間の魔力です。基礎代謝と同じで、ヒトも魔力を自然放出していますから。放出される魔力を外に逃がさず、人肌の温度を保つんです。》
採用w
「何か思いつきましたか?」
スズネさんが問い掛けてきた。
「まあね。解っちゃった?」
「解るよ。御主人様の “百面相” w 大概ロクなコト考えてないけどねww」
失礼だな!
相方 「あたしと仕事とどっちが大事!?」
おっちゃん「なにその ”廃棄処分” されそうな捨て台詞?」
相方 「・・・っていう ”昼メロな会話” をコンビニで耳にしたんですが・・・」
おっちゃん「昭和の御夫婦かな?」
相方 「ラジオでしたw」
次回更新 9月20日(日曜日)っす。




