69 報告3 と ダル―
王都からの『撤退命令』を受けたサルムンド侯爵率いる軍は、一部を残し王都へ帰還することになった。
帝都が崩壊したいま、生き残った貴族が『旗揚げ』するだろう。
“権力” の奪い合い。
十中八九『内乱勃発』だな。
となると、戦火を逃れて避難民が押し寄せることも考えられる、
帝国との国境に領地を持つ『エノサック・イアノサート辺境伯』が “後衛” に控えてくれてはいるが、人出はあった方が良い。
ノデラ神父と子供達は “俺の荷馬車” でアストラス領の協会へ、トリアンテ男爵が送ってくれるという。
ノデラ神父の町で見つけた “お馬さん” が、ちょっと面白かったんでね。
コクウさんも少し興奮してたみたいだしw
後で活用させてもらおう。
神父と子供達の保護は、手紙で父上に報告しておけば悪いようにはしないだろう。
俺もさっさと帰りたいのだが、帝都で見つけた『巨大な骨』と『腐った卵』を持っている。
80を超える『魔族の遺体』と共に王都に丸投げすれば、もしかすると “何か” が解るかもしれない。
俺はサルムンド侯爵の馬車に同乗させてもらいながら、優雅に茶を傾けていた。
侯爵は机に向かい、嫡男のコアック子息と報告書作りに夢中だ。
スズネさんとメイさんは “本職?” に立ち返り、俺の背後で静かに立っている。
メルさん?
さっき覗いたら、クッキー片手に爆睡してたよw
自由だな! “深窓の令嬢”!! などというツッコミはしないよww
《 ついでに “能力の統合” を続けています。》
コクウさんの呟きだ。
ん?
メルさんの?
《 元巫女ですからね。神聖魔法には特化しているのですが、バランスが・・・》
あ~
より “戦闘民族” らしくしたいのね。
やり過ぎじゃない?
《 素地は悪くないですからね。マスターの『パーフェクトヒール』の影響でしょうか?》
俺のせいかよ!
「御主人様。どした?」
メイが囁いてきた。
「メルさんが寂しくないかな~って・・・」
爆睡中だがねw
「後で覗きに行くよ。」
仲間思いだね~
馬車の窓から外を見る。
景色が結構な勢いで流れていた。
センダン川から王都までは、俺の荷馬車で2週間程度。
『バギー』なら、1~2日?
“お馬さん” は休ませなきゃいけないからね。
サルムンド侯爵の軍馬はよく鍛えられていて、後続する貴族たちの兵は完全に “置いてけぼり” 状態だ。
それはそれで俺の知ったこっちゃないんだが、メルさんを『シェルタールーム』に入れっぱなしってのもな・・・
俺は『カード』を一枚切ることにした。
いつまでも、 “彼” を放置しておくのもどうかと思ったからだ。
「閣下。次の休憩場所でメイとスズネを別行動させたいのですが?」
報告書の作成が一段落ついたころ、俺はサルムンド侯爵にそっと囁いた。
身内とはいえ。コアック子息の耳に入れるのは宜しくないと思ったからだ。
「メイを?」
「“密約” です。国境を越えた理由の一つでもあります。」
ここで『詐欺師』発動~
楽しくねぇ。
「ほう?」
「ザッカ・・・閣下が紹介してくださった『元タラギュース家のザッカ』を探しています。」
「アヤツか・・・何故じゃ。」
「失礼。お耳を・・・」
俺は、ザッカが『真の勇者』であることを明かした。
同時に俺は『代理勇者』であることも・・・
驚愕の事実だ~ね~w
「・・・なんということだ・・・」
茫然自失。
これはこれで珍しいねww
「陛下がコレを知れば、どう動くでしょうか?」
「もちろん国をあげて捜索するであろうな・・・」
立ち直り早いね。
「となると、さらに “地下に潜る” か “国外へ逃亡” もあり得ますね。」
「まだ国内に居ると思っているのか?」
「ヨーデル王国は “豊か” になりつつあります。そう簡単には出て行かないのでは?」
「・・・うむぅ。」
「メイとスズネは、僕と共にダンジョンを攻略できる “実力” を持っています。 特にメイは “称号持ち” です。 食糧の調達ついでに情報を集めてもらおうかと。」
「アテはあるのか?」
「いえ、現状では全く。ですが、こればかりは陛下に頼るワケには行きませんので・・・」
「何故じゃ?」
「陛下が動けば『国』が動きます。国が動けば “法” が付いて回ります。そうなると “彼” の運命は最悪『死刑』になることも考えられます。」
「そうだな。それではイカンのか?」
「『サラフィナ様』は “彼の回心” を願っています。」
「む!」
これは本当。
「サラフィナ様は『地獄に落とす勿体ない人物』ともおっしゃってました。よほど期待されていたのでしょう。」
「・・・むう・・・」
「それに、これは “私怨” でもあります。」
「お主のか?」
「僕はまだ6歳ですよ?彼が “本来の役目” を果たしてくれてれば “出番” がなくなって、今ごろは両親や兄弟に囲まれて『日向ぼっこ』を楽しんでてもおかしくないハズなんです。シバキ倒すくらいのことはさせてもらわないと割に合いませんよ。」
これが本音w
「お前が? シバキ倒すのか・・・クック・・・くはははは!!」
お?
ウケたかね?
「くくく・・・そうよな。グレイは “まだ子供” よな・・・話してると、ついソノ事を忘れてしまう。お主、年齢を偽ってはおるまいなw」
「ひどいですよ!どこからどう見ても “可愛らしい男の子” じゃないですか。」
俺はお道化てクルリと回って見せた。
「坊ちゃん詐欺師・・・」
メイの呟きが侯爵の耳に入ったようだ。
「くははは!『坊ちゃん詐欺師』か!言い得て妙だわいwww」
ひどすぎる・・・
「しかし儂の耳に入った以上、陛下に報告しないワケにはいかぬぞ。」
「かまいません。直接的に動かないで頂ければ、僕達で何とかするつもりです。・・・それに・・・」
「それに?」
「相手は腐っても “称号持ち” です。いたずらに兵を動かしても死傷者が増えるばかりかと・・・」
“灰色表記” だがね。
潜在能力は計り知れない。
「・・・なるほどな・・・」
「任せていただければ・・・」
「うむ。進言しよう。良く明かしてくれた。」
納得してくれたようだ。
次の休憩場所で、スズネさんとメイさんを解放。
『バギー』で距離を取って追従させつつ、就寝前にメルさんを解放した。
目的は、『食糧調達』と『残された遺品』の受け渡し。
それとザッカの情報だ。
ついでに “運転技術” も収得してもらおうw
これで “ヨーデル王国を疾走する化物” の噂が、俺と離れて “独り歩き” を始めるだろう。
《 悪知恵ですねw》
コクウさんが何か言ってるが、聞こえんなw
◆◆
「うむ。サルムンド閣下と無事合流したか。」
「何よりでございます。」
手紙を読んだホウレイ伯爵が、ほっと一息ついた。
いつもは無表情なセバスの顔も、心なしか綻んでいるようだ。
「・・・ったく、ダンジョンから出てきても心配ばかり掛けさせおって、少しはサルカスを見習って欲しいものだ。」
「それはそれで問題なのでは?」
「わかっておる。現在の地位にいるのもアイツのおかげだということもな。」
何より。
三年前のあの日。
『ダンジョン』を見つけたという報告を聞き、グレイと現地に向かったその時。
名も知らぬ『魔族』の襲撃に遭った。
『ヨーデル王国の英雄』と評されるサルムンド侯爵もいたが、巻き込まれて死ぬ可能性は十分すぎるほどあったのだ。
それを、わずか三歳の『我が子』が粉々に吹き飛ばした。
命拾い・・・というより、助けられたと言っていい。
隣に立つセバスも同じ思いだろう。
誇らしくもあり、哀しくもあった。
自ら『勇者』を名乗り、実証して見せたのだ。
可愛らしい笑顔を見せながら、過酷な運命を受け入れていたのだ。
じき、サルカスが学園を卒業して帰ってくる。
領内で運営のイロハを憶えたら『飛び地』の管理を任せてもいいだろう。
そうしたら『アダマンタイトの剣』と共に、これらの手紙を読ませよう。
アイツの力になってやれと・・・
お前のできる範囲で “弟” を守ってやれと・・・
◆◆
「どうやらグレイ様は、今しばらく帰って来そうにありませんね。」
国王からの手紙を受け取ったクレアリスは、溜息を吐いた。
「そうですか?」
フェルナは、夢中になって読んでいたグレイのノートから顔を上げた。
渋る執事のロデムを何とか説得し、研究室から持ち出したのだ。
「文には密命により大事な仕事がある・・・と書かれていますが、おそらく “嘘” ですね。いかに『脳筋なお父様』とはいえ、わずか6歳の子供にそんな大事な仕事を押し付けるはずがありません。ましてや “見合い” 相手の私達がここにいるというのに・・・フェル?おもしろいですか?」
クレアリスは呆れたように。ノートに釘付けになっているフェルナを眺めた。
「はい! これは画期的とも言えます! 一見、無意味とも思える魔法文字にこのような解釈があるとは! しかも繋がっているのですよ! 一文字一文字に意味を見出すのではなく、点と点を線で結ぶような独自の解釈! これなら『タランティナの積層法による魔法展開』も可能かもしれません!」
「そう・・・良かったですね。」
「はい!!」
決して悪い子ではないのだが、根っからの学者肌のフェルナに少しだけ同情を覚えるクレアリスであった。
「この文は昨日届いたのですか?」
クレアリスは再びノートを読みふけるフェルナを放っておいて、紅茶のお代りを淹れているメイサに声を掛けた。
「はい。昨日、旦那様のお屋敷に届いたそうです。」
「そう。」
アストラスの屋敷に世話になって、もう10日余り。
王都からアストラス領までは、早くて5日。
その間に、何か状況が大きく変わったのだろう。
しかも手紙には “グレイが戻るまでそこに居よ” と、暗に示している。
王都に帰ると危険なのだろうか・・・
「ダイジョウブですよw」
思考の海に溺れそうになるクレアリスに、メイサが朗らかに声を掛けた。
「え?」
「坊ちゃまが御心配なのでしょう?問題ありませんよ。」
メイサの言動に王都の侍女たちが目くじらを立てているが、気にもしていないようだ。
「・・・どうしてそう言い切れるのですか?」
「その子、坊ちゃまの契約獣なのでしょう?」
メイサはクレアリスの膝の上で寛いでいる子猫を指差した。
神気を放つ漆黒の子猫は、片時もクレアリスの傍を離れようとしない。
朝になれば影に潜み、自室では部屋の隅で大人しくしている。
お茶の時間や誰かと対談するときなどは。クレアリスの膝の上で丸くなっている。
短い時間ながら、すっかり “懐かれた” 感があった。
「・・・そのようですね。」
「契約獣とその主人には “密接な繋がり” があると言われています。もし坊ちゃまの身に危険が及ぶなら、その子が黙っていないでしょう。つまり、心配するだけムダってことですよw」
メイサはニカっと笑った。
「・・・お強いのですね。」
グレイの無事を信じて疑わないメイサに、クレアリスは素直に感嘆した。
「こと坊ちゃまに関してはですね。あのお方は私達が思っている以上に強かですよww」
◆◆
なんとなく・・・・なんとなくだが・・・・
ひどいことを言われてる気がする。
《 うつ病ですかww》
コクウさんがヒドイ。
馬車の休憩中。
例によって “お馬さん” を一カ所に集めて『エリアヒール』を掛ける。
当然のようにモッテモテになるのだが、それはいい。
カワイ子ちゃんだろうが “お馬さん” だろうが、好意を持たれて悪い気はしない。
ベロンベロンに舐められるがなw
頭をガジガジするのはやめて欲しい。
「いつもありがとうございますw」
馬の世話をする兵士さんがニッコニコだ。
「いえ。お気になさらず。」
顔中ベッタベタになりながら、アホみたいに精度が上がった『気配察知』に集中する。
《 魔族ですね。一定の距離を開けて着いてきているようです。》
このペースに着いてくるのか・・・大した体力だ。
襲ってくる気はないのかね?
《 その気はなさそうですね。弱そうですしw》
このままだと王都まできちゃうか・・・
《 可能性は大ですね。》
俺は『兵士さん』に休憩時間の延長を申し出た。
同時に、侯爵への伝言も頼む。
血相を変えて走り出した兵士を見送り、結界をバラ撒いた。
空中から見下ろすと、一人の『魔族』がぽつねんと立っていた。
両手を上げ “無抵抗の意” を示しているようだ・
背後には、サルムンド侯爵とコアック子息がフル装備で俺を見上げている。
俺は手で “待て” の合図を出し、警戒しながらゆっくりと『魔族』へと降りて行った。
「・・・器用だな。」
『魔族』がぽつりと呟く。
浅黒い肌。
まっすぐに伸びた2本の角
顔立ちは・・・整っている方か。
手足は細く長いが、この距離を走って来て息が上がっていないのは『身体強化』の恩恵か?
背負っているロングソードは、それなりに使われているようだ。
レベル34は人間なら “英雄” クラス。
前回、侯爵が倒した『魔族』が40後半だったか?
どちらも弱いどころか “十分な脅威” だ。
「そりゃどうも・・・何の用?」
周囲に仲間の気配はなし・・・か?
「遺体を返して欲しい。」
短く答えた。
おんや?
“仲間意識が薄い” という評価は、俺の勘違いだったかね?
「遺体?」
「しらばっくれるな。お前たちが仲間の遺体を持ち帰ろうとしているのは分かっている。」
毛穴から『瘴気』がにじみ出ていた。
頭にきているようだ。
「ふ~ん。で?」
「俺が欲しいのは恋人の遺体だ。将来を約束していた。」
驚きの告白だ。
「恋人? “戦闘員” しか狩ってないつもりだったが?」
「俺達は “人数合わせ” にムリヤリ参加させられたんだ。人間殺せば出世させてやるってな。」
「人間?」
「いや待て。俺が言ったんじゃない。『十人兵長』がそう言ってた。」
聞きなれない単語が出てきた。
思うに、十人単位の兵をまとめる班長みたいなものか?
「そこら辺の話を、もっと詳しく聞きたいな。協力してくれたら考えよう。」
「遺体が先だ。」
「『アイテムボックス』に保存してる。アレなら遺体が傷むことはないからね。相談して来るよ。ノワール。」
俺の影から出てきた漆黒のネコマタが、行儀よく『魔族』の前に “お座り” をした。
「う!」
思わず、たじろいだ様だ。
“神気” は苦手かねw
「妙なことは考えないように。この子はキミより強いよ。ここで待ってて。」
踵を返そうとして、ふと立ち止まった。
「そういや、名前を聞いてなかったな。」
「・・・ダルー・・・」
「僕はグレイ・アストラス。上司に聞いてくるよ。」
おっちゃん「ぬおおお!腰が・・・背中が・・・立てぬぅ」
相方 「ま~たストレッチですかぁ?曲げちゃイケない方向に曲げちゃったと・・・」
おっちゃん「なぜ判った!?」
相方 「こないだの痛みが引いたから、またヤったんでしょう?『学習能力』がないから・・・」
おっちゃん「どうして解かった!?」
相方 「・・・(殴りてぇ)」
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何気にフミフミされながら次回更新 9月6日・・・やめてケロ・・・




