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68 報告2


 「落ち着いたか、グレイ。詳細を聞こう。」

 サルムンド侯爵が、俺の頭に手を乗せながら口を開いた。



 「閣下。その前に自己紹介をさせていただきたく・・・初めましてグレイ君。私はエイトラディス家が嫡男。ラパン・エイトラディス。父の名代として前線(ココ)に参加させてもらっているよ。フェルナは私の従妹にあたるね。」


 おっと?

 前世の記憶にあるぞ、その名前w

 エンブレムがウサギなら笑えたのにw


 《 保存しましたw》

 さいですかw

 てか、フェルナ嬢の・・・エイトラディス家って美男美女揃い?



 「コラスター・サンデラである。此度は “義” により参戦しに参った・・・とはいっても『帝都』が壊滅したとあっては、腕の振るいようがないがな。」


 あ~

 サンデラ侯爵家といえば。ドンダリデ子爵の『寄り親』でしたっけ?

 しかも “強硬派” だとか??

 “血生臭い” のがお好き???

 俺は No thank you だけど。



 「私はコアック。ドアトリス家の嫡男だよ。君の母君は私の叔母にあたるね。父からよく君の話を聞くけど、なかなかの “やんちゃ” ぶりだねw」


 いや~

 好きで “やんちゃ” してるワケじゃないんですがね?


 《 そうですか?》

 コクウさん? 余計なツッコミせんでよろしい。



 「コサック・ノーティラス。フェルナの父だ。」


 うん。

 美男美女の家系だね。

 てか、それだけ?



 「サムスン・コロエイドという。私の町が『魔族』の被害に遭った時、君の父には随分世話になった。」


 あ~はいはい。 アストラス家がまだ “子爵” だった時の・・・

 復興進んでます?



 「ハリデイ・タラギュースだ。君の父には恩義があるのでな。」


 あら?

 ここにきて『ザッカ・タラギュース』の父上登場ときたか・・・



 「上位の貴族はこんなものか。あとは・・・アルアスとナルスキュールは知っとるな。その隣に居るのが、フォルナ―・フォラデウス男爵とハラバス・ロドリゲス男爵じゃ。名前くらいは聞いたことがあるじゃろ。」


 「あ、はい。メイサ嬢とローラ嬢には、剣と槍の師として鍛えて頂きましたから。」



 「師などと・・・もったおないお言葉です。」

 「左様。娘の拙(つたな)い剣技が『勇者』様の参考になるとは、光栄の至りにございます。」


 あれれ?

 過小評価しとりません?

 俺は未だに “あの二人” に勝てる自信ないんだけど?


 《 呆れるほど “引き出し” が多いですからね。あの二人はw》

 スズネさんが認めるほどだよ?


 「ラパン様、サンデラ侯爵閣下、サルムンド侯爵閣下、コアック様、ノーティラス侯爵閣下、コロエイド伯爵閣下、タラギュース伯爵閣下、サニエル男爵様、トリアンテ男爵様、フォラデウス男爵様、ロドリゲス男爵様、トリュデア男爵様。僕のような爵位も持たぬ若輩者の為に遠路はるばる兵を引き連れてお集まりくださり、重ねて御礼申し上げます。」


 「ほう。」

 「なかなか・・・どうして・・・」

 「流石アストラス家は教育が行き届いていますな。」


 一度で覚えられたのが不思議かね?

 コクウさんのおかげだよw


 《 疲れましたw》

 嘘つけww



 「ではグレイよ。詳細を聞こう。」

 サルムンド侯爵に促され、俺は詳細を語った。


 もちろん『バギー』と『シェルタールーム』の存在を伏せた上でだ。


 幸いにもトリアンテ男爵は、ドンダリデ領の一件で、俺とメイが馬より速く走れることを知っている。

 俺は夜闇に紛れて、『魔族』を襲っていったことを話した。


 「・・・つまり、夜襲を繰り返して敵勢力を削っていったと・・・」

 コアック子息が信じられない顔をしてらっしゃるw


 「総勢・・・80体を越えるくらいでしょうか?途中で数えるのをやめてしまいましたが・・・」


 「80・・・それで彼奴等は恐れをなして逃げ出したのでしょうか?」

 サニエル男爵の期待が重いw


 「いえ、夜間の襲撃と撤退は無関係のようです。」


 「ほう?そう言い切れる根拠は?」

 サルムンド侯爵が聞いてきた。


 「彼らの仲間意識は極端に薄いようです。その証拠に、たった数日で何十人もの仲間が死んだり行方不明になっても、騒ぎになることはありませんでした。むしろ『帝都の勇者』が亡くなったことに、浮かれているようでしたし。」


 「なぜ直接『帝都』に乗り込まなかった。」

 サンデラ侯爵の質問だ。


 「死地に向かうようなものだと判断したからです。相手は『魔族』。しかも地の利は向こうにあります。もし僕が100人の『魔族』相手に戦える力を持っていたとしても、罠を仕掛けられていたり、建物の影や空中、もしくは地面に穴を掘って急襲されたりすると生還は難しいかと・・・」


 まあ、なにより『帝都の民』を人質に取られたりすると・・・ね・・・


 「うむ。」

 どうやら、俺の答えに満足したようだ。

 さり気にイジワルなオッチャンだね~


 「では、その80人分の『魔石』は?」

 コアック子息の質問だ。


 「ここではちょっと・・・外に出ていただいても?」


 俺はテントの外に、ゴッチャリと『魔族』の遺体を重ねた。


 念のために、銭袋から出すフリしたがね。

 『ダンジョン産の銭袋でごぜぇやすよ。』っつ~フリざんすw


 遺体に関しては。スズネさん達(パートナーズ)がポシェット(アイテムボックス)に収納するのを嫌がったからね~

 王都に持って帰れば『研究者さん』達が涎を垂らすだろうし、小遣い稼ぎにもなるしw


 こうしてみると『レベル酔い』対策とはいえ、我ながらヒドイことをしていたな。



 あちこちから息を飲む気配がした。


 「これほどとは・・・」

 「我が町を襲った『魔族』は、たった一人でしたぞ・・・それをこんなに・・・」


 「『魔石』は、それなりの値段で買っていただけるようなので、遺体ごと持ってきましたが・・・」


 「冒険者の発想よな・・・いかに『魔法省』とて、これだけの数を買う予算は無かろう。残った『角』と『魔石』はオークションだな。」


 ですよね~


 「では、コレをもって、今回の費用に充てることは・・・」


 「どうかの?足りぬと思うが?」

 閣下?

 楽しい?


 「ダンジョン踏破・・・・頑張ります・・・」


 「それがよかろうw ちなみに、お主『レベル』は今どのくらいだ?」

 引っ掛け問題ですかい?

 侯爵、鑑定眼持ちのはずだが??


 「さあ・・・前回潜ったときは “魔物部屋の異変” で『レッサードラゴン』が出てきましたが・・・」


 ヘーパイストス様に『神器』作ってもらった直後に、魔物部屋で “出くわした” んだよな。

 スズネさん達(パートナーズ)にはまだ早いって思って、ソッコーで首切っちゃったんだけど。


 メル・メイコンビに「経験値横取りされた!」って騒がれたんだっけw



 「・・・は?」

 「レッサードラゴンだと!?」

 お~

 騒(ざわ)めくね~www


 「いや~ 流石に死ぬかと思いましたが・・・何とか・・・」

 嘘です。

 空間魔法で即時終了させました。

 詐欺師スキルのせいです。

 なんかスンマセン。


 あ・・・『魔石』あったわw


 「レッサードラゴンとは・・・ではその『魔石』は・・・」


 「忘れてましたw コレですね。」

 特大の『魔石』を出した。


 「おお!コレは美しい!」

 「見事なものですな!」

 「なんとも・・・これなら今回の費用は十分に賄(まかな)えるかと・・・」


 「そうですか?では、これら全てサルムンド閣下にお預けいたします。」

 「む、良いのか?」


 「皆様がご納得いただけるのでしたら。父上もそうしたでしょうし。」

 「つくづくホウレイ殿は、良き子に恵まれたようですな。」


 納得してくれたなら何より何よりww


 おかげでホントにスッカラカンだけどねw

 『ハウンドドック』の『魔石』は “学校運営” に使いたいし・・・

 ダンジョンガンバロ・・・


 「あ、それからもう一つ。」

 「まだあるのか?」


 サルムンド侯爵が遺体と『魔石』を自身のポシェット(アイテムボックス)に収納するのを見計らって、付け加えた。


 サンデラ侯爵やらノーティラス侯爵が、モノ欲しそうに見てたのは笑えたがねw

 何も言ってこない所を見ると、陛下に何か言われたか?

 もしくは、製作者が俺とは知らないか?


 ま、どっちでもいいが。

 知らんふりしとこw


 「帝都の『謁見の間』にあった巨大なヒト型の骨と腐った卵が・・・陛下に見て頂こうと持って来たのですが、御覧になりますか?」


 「うむ。見せてみよ。」

 「では、少し大きいので皆様お下がりください。」



 呼ばれて飛び出てデデデデ~ン♪

 皆さん顎はずさないでね~


 「なんだ・・・これは・・・」

 デすよね~w


 「これも『魔族』か・・・」

 デデすよね~ww


 「角がある・・・間違いないかと・・・」

 デデデンスヨネ~www

 あ、夕日がきれいwwww


 サラフィナ様? ウケた??



 「コレは、お主がヤッたのではないのか?」

 お?

 サンデラ氏再起動ww


 「いえ。最初から “この状態” でした。転がっていた『卵』も腐っていましたし。」


 「腐った『卵』か・・・産卵に失敗したか?」

 「それでこのような状態になるでしょうか?」

 「解らん。『魔族』の生態は不明なことが多いからな。」


 「コレの『魔石』は無かったのか?」

 「残念ながら・・・とりあえず、この遺体だけでも王都に運ぶつもりです。もしかしたら何か判ることがあるかもしれませんし。」


 「解った。陛下の驚く顔が楽しみだな。」



 王都から『撤退命令』の書簡が来たのは、それからさらに数日経ってからだった。




                   ◆◆




 クレアリス第三王女は、日々充実していた。


 王都では、あまり外出を許されず、移動は全て窮屈な馬車であった。

 窓から見えるのは、物珍し気に眺める民と無遠慮に指差す子供達。

 それを咎(とが)める大人達くらいなものである。


 買い物は全て、商人が揉み手をしながら登城し、検閲を受けた最高級の品を買うことができた。

 最高級と言われるだけあって、使い心地に文句はない、

 だが、それだけだ。


 ドンビシャスという町は小さい。


 だがそこで、生まれて初めて自分の意思で買い物をするという “冒険”

 ミレイの提案による、市井の御婦人達との楽しい会話。

 仲良くなった “市井のお友達” との忌憚(きたん)のない “お付き合い”。


 先日からアストラス家のメイドが “案内役” として付くようになったが、これもまた気さくに接してくれる。


 彼女の案内で、町のはずれにある小さな食堂にも行ってみた。

 そこで食べた『勇者のオムライス』は、とても美味しかったのを憶えている。

 他にも勇者の考えたメニューがあるらしい。


 また、

 「新しくできた “勇者の町” に行ってみませんか?」


 『ちょっと “お庭” に出ませんか?』くらいの気軽さで提案してくる。


 もちろん王都から着いてきたメイド達や、警護を担当するサフリーは “目くじら” を立てるが、気にする様子もない。


 「せっかく “見知らぬ町” に来たのならイイじゃないですか。」

 悪びれることもなく、言ってのける。


 共に『勇者』様の帰りを待つフェルナは、ひたすら呆れているようだ。


 町中で喧々諤々(けんけんがくがく)と議論を交わし、

 「私が誘ったのはクレアリス様です。ならば “行く行かない” は、クレアリス様がお決めになれば良いことじゃありません?」


 決定権は彼女にあるが、このような形でバトンを渡されるのは初めてだ。


 「不敬にも程があります。」

 サフリーは御冠(おかんむり)だったが、このメイドは気にする様子もない。


 「旅は楽しむものですよ?」

 にっこりと微笑むだけだった。




 翌日、クレアリスとフェルナは馬車に乗って ダンジョンのある“勇者の町” に足を延ばすことになった。


 「そういえば、貴方のお名前を聞いていませんでしたね。」

 クレアリスが問いかけた。


 「これは失礼を・・・アストラス家の侍女を努めます。ミセアと申します。」


 「ミセア様は、どこぞの家の御方ですか?」

 フェルナも彼女が気になるようだ。


 「とんでもない。私は只の庶民ですよ。ちょっと前までは『冒険者』で食べてましたけど。」


 「まあ!冒険者の?ぜひ御話を伺いたいですわ。」

 クレアリスは少し興奮したようだ。

 いずれは身分を剥奪される身ではあるが、いまではそれも悪くないと思い始めていた。


 「冒険者の話ですか?う~ん。」

 ミセアは少し戸惑っているようだ。


 「何か言いにくいことでも?」


 「いえ、『冒険者』と言ってもピンキリですからね。ましてや私は『C級』でしたし・・・そだ。ギルマスに頼んで経験豊富な冒険者を紹介してもらいましょうか?きっと面白い話がきけますよ? 差し支えなければグレイ様のお屋敷にお泊りになってみられても良いのでは?」


 「まあ、宜しいのでしょうか。」


 「大丈夫ですよ。旦那様には一報を入れますし、ダンジョンのお屋敷は別名 “勇者屋敷” とも呼ばれるくらい、警備がしっかりしています。グレイ様の “研究室” なんかも覗けますよw」


 「研究室?何か研究をなさっているのですか?」

 研究者でもあるフェルナが食い付いてきたようだ。


 「イロイロなさってるみたいですよ。魔法文字の解読だとか、農業用水の活用だとか・・・あ、ご存じです? これから行く町の近くにあるオアシス。あれ、グレイ様が掘り当てたんですよ。」


 「まあ!本当に?」


 「そうです。グレイ様が魔法でオアシスと作った際に掘り当てたとか・・・ゆえに “勇者のオアシス” とも呼ばれています。」


 「多才な御方なのですね。御会いするのが益々楽しみになってまいりました。」


 ミセアはニッコリと笑った。


 「ああいう殿方は自ら刺激を求めるモノです。そういう御方との付き合い方はご存知ですか?」


 「・・・?・・・」


 ミセアは得意げに人差し指を掲げた。

 「ズバリ!自分の意見はハッキリと言うことです。頭でも、生まれの良し悪しでもありません。自分の考えをしっかり相手に伝えないと、どんどん置いて行かれてしまうということです。」


 「自分の意見ですか。ミセア様は御結婚なされているのですか?」

 フェルナは冷静に意見を述べた。


 「いいえ?」

 きょとんとした顔で、返す。

 それが無性に可愛かった。


 「でも、結婚も『チーム』ですよ。冒険者は基本『チーム』で動きますから。最終判断はリーダーがしますが、メンバー同士のコミュニケーションは “チームの結託” には欠かせないものです。」


 「そういうものでしょうか?」


 「そういうものです。そしてチームリーダーは、メンバーの意見を取りまとめ、尚且つ最適解を出す。これは家族であっても領主という仕事であっても冒険者であっても変わらない・・・と、グレイ様がおっしゃってました。」


 ズッコケそうなオチだが、言いたいことは解る。

 事実、グレイには共にダンジョンに潜る複数の婚約者がいることは知っている。

 ならば、彼女らと誠実に向き合い “仲間” として認めてもらうことが “最適解” なのだろう。


 「貴重なご意見。大変参考になりました。ミセア様とグレイ様には深い感謝を。」

 クレアリスは優雅に頭を下げた。


 王族という立場であれば、そう簡単に頭を下げるものではないと教えられてきたが、市井の暮らしや “友達” と話すうちに自然と頭が下がる思いをすることが何度もあった。


 そうしているうちに自然と、感謝と共に頭を下げることが苦ではなくなっていた。


 「いや~ははは。おっと、そろそろ到着したみたいですね。」


 馬車は、いつしか出来上がっていた “勇者の町” と書かれた門を、ゆっくりと入って行った。



ちょいと問題発生。

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