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66 予定外


 ガルダが国境を越えて5日目。


 『ロマック』とかいう街に着いた時、鳥の羽を持った『魔族』が空から下りてきた。

 名前は忘れたが、ガッサスの部下だ。


 「伝令です。『帝国の勇者』は死んだそうです。」


 それだけ伝えると、さっと飛び去った。


 「帝国の勇者?」

 「ああ、アレっすね。たしか『魔王』様を殺すために特別な訓練を受けたとか言う人間のことっス。」


 たまたま傍にいたヤツが教えてくれた。


 「魔王・・・様を殺すのか・・・」

 「みたいっスね。ま。人間ごときに殺せるワケないっスけどw」


 「・・・そうか・・・」


 それだけだ。

 死んだ奴に興味はない。


 「さっさと終わらせろ。」

 「うぃっす。」


 野宿生活にもそろそろ飽きたので、帰りたかった。

 焼いただけの『魔物肉』が不味く感じるのも、『宿舎』という “贅沢” に慣れたせいか。



 気が付いたら『白い部屋』に寝転がっていた。


 《 おかしい。屋根の上にいたはずだ・・・》


 “掃討戦” にも飽きてきたので、部下に任せて適当な民家の屋根の上で寝転がってたはずだ。


 「上手いことバラけてくれて助かったよ。」

 「屋根の上でサボりとは、いい御身分だな。」

 「瘴気でぼやけてますね。そこそこ強そうです、」

 「そう?イケると思うけど?」


 部屋の隅で、四人の人間がガルダを見て喋っていた。


 「ここは何処だ?」


 一人の女と三人の子供(ガキ)

 脅威にすら感じなかった。


 「おはよう。ここは『閉鎖空間』って言えば分かるかな?」

 小さな子供(ガキ)が答えた。


 「・・・知らん。」

 聞いたこともない言語だ。


 「そう、まあいいや。僕達を殺せば出られるかもね。」

 子供(ガキ)が事も無げに言った。


 「・・・殺せばいいのか。」


 「出来るならね。誰がやる?」

 子供(ガキ)が他の三人に聞いた。


 「ボクが行こう。」

 耳の尖った子供(ガキ)が前に出た。

 その手には、黒い鞘に納められた奇妙な形の剣が握られていた。


 「・・・お前から殺せばいいのか。」

 ガルダは両の腰に下げた『ショートソード』を抜いた。


 右手は順手。

 左手は逆手に構える。


 いつものことだ。

 迷いはない。


 「ほえ~」

 「技巧派か~」

 「大した殺気ですね。」


 外野の三人が、暢気(のんき)に喋っていた。

 参戦する気はないらしい。


 即座に駆けだした。

 右手の『ショートソード』を、耳の尖った子供(ガキ)の顔面に突き出す。


 《 終わりだ。》

 駆け抜けたついでに、他の三人も血祭りに上げればいい。

 横に逃げたら逃げたで『空中浮揚』で上空を陣取れば、背中を見せずにすむ。


 ショートソードが、子供(ガキ)の顔面を捕える瞬間。

 顔がブレた気がした。


 サクっと右手が落ちた。


 《 !?》

 叫ぶ前に、咄嗟(とっさ)に左手の『ショートソード』を眼前に振った。


 サクっと切られ、『ショートソード』と共に左手も落ちた。


 ガルダは、耳の尖った子供(ガキ)の持つ剣を見ていた。

 まるでスローモーションのように。


 研ぎ澄まされた刃が自分の首に掛かった時、死を覚悟した。


 冷たい刃がガルダの首を落とす。

 世界がグルリと回った。


 「お疲れ~ 間一髪(ギリギリ)だったね~」

 「うぉえ! きぼち悪い・・・」

 「けっこうクるでしょ。レベル酔いw」

 「次は私ですね。」


 これがガルダの聞いた最後の言葉だった。




                     ◆◆




 「・・・あれ~?・・・堕ちちゃったよ。」

 何気に紅茶の水面を覗いてた『サラフィナ神』が、奇妙な声を上げた。


 「堕ちちゃったって・・・何が?」

 たまたま帰って来て報告書を読んでいた『ソリアン』が、優雅に茶を傾ける(あるじ)に聞いた。


 「・・・『ルシ―ちゃん』が、堕ちちゃった・・・・」


 「・・・はあ!?」

 驚天動地(きょうてんどうち)とはこのことである。


 「ちょっと待って! いま確認を!!」

 ソリアンが慌てて、ボードを空中に出した。


 「地獄の第一層・・・二層・・・三層。あった!第三層の下部で引っ掛かってる・・・まだ発芽前じゃないか!?」


 「だね~ 宿主が死んだときに一緒に堕ちちゃったんだね~」

 「何を暢気(のんき)な・・・どうする?第三層程度じゃ、すぐ復活するぞ?」


 「そうだね~ ソリアンちゃん。最下層まで蹴っ飛ばしに言ってくれない?」

 「阿呆かキサマ!!私にその権限があるワケなかろうが!貴様が行ってこい!」


 「え~やだよう。アソコ昏いし、臭いし、ヌメヌメベトベトだし~」

 「なに寝言いってる!地獄の管理も貴様の仕事だろうが!!」


 「え~」

 スパーン!とハリセンが鳴った。


 「痛いよソリアン君?」

 「痛くない!仕事サボったって上に言いつけるぞ!!」


 「ええ~ それは勘弁してよ。仕方ないな~」

 「さっさと行け!」


 再び振り上げられたハリセンから逃げるように、サラフィナ神が消えた。


 「・・・たく・・・いったい何が、どうやって・・・フィーネ? いや、今はメルロスか・・・あの子がヤったのか・・・くく、グレイじゃなく、メルロスが・・・はっはっは!こりゃ傑作だ!」




                    ◆◆




 「・・・なんか、すんごい笑われてる気がする・・・」


 グレイは天井に目を向けた。


 「笑われてるって、『サラフィナ神』様に?」

 「ん~この感じは・・・『ソリアン様』かな?」


 「ソリアン様!?まさか『ソリアン様』とも会ったことがあるのかい!?」

 「言ってなかったっけ? ダンジョン踏破したら『ソリアン様』に稽古つけてもらう予定なんだけど?」


 「なんだと!?・・・・なんて(うらや)ましいことを・・・」

 メルさん顔真っ赤w

 『レベル酔い』はどこ行ったww


 「お知り合い?」

 メイさん久々の『はてなマーク』w


 「知り合いも何も・・・ボクが巫女(みこ)やってた時に『啓示』を下ろしてくれた神様だよ。」


 あ~そういえばそうだった。

 メルさんの前職は “巫女さん”だったっけ。


 例の『祝詞(呪言)』ぶちかましてたんだよな~

 いまだに時々メロディーが聞こえてくるけどww


 ・・・たく!

 誰だよ!広めた奴ぁ!!


 って、姉様か・・・


 「ま・・・まあ、”ダンジョン踏破” が絶対条件だけどね。一緒に踏破すれば頼んであげるよ。弟子にしてくれってね。」


 「本当かい!?」

 メルさんの笑顔が眩しいザンスw


 俺も一人っきりより、大分マシになるしねww


 《 構わぬぞ。》

 《 ソリアン様!?》


 「聞こえる!ご無沙汰しております!『ソリアン神』様!!」


 《 私は神ではないと、何度も言ってるだろう・・・まぁいい。お主らも希望するなら稽古をつけてやろう。》


 「ありがとうございます!!」

 おお!花咲く笑顔のメルロスさんwww


 通信はそこで途絶えた。


 そして、メルさんが虹を吐いた。

 気が弛んだなww



 続くスズネさんも、順調?に『レベル酔い』を体験した。

 対する『魔族』が弱かったせいか、三人目でようやく症状が出たがねw


 一度経験すれば。後は楽になるはずだ。


 俺達は『一人一殺』を心掛け、数日かけて急激なレベルの上昇に身体を慣らしていった。




 一方。

 帝都の城では。


 「一体何事だ!」

 「わからん!ヘラキュート大将軍様がいきなり苦しみだした。産卵が近いあもしれん。」


 「バカな!予定日までは、まだ間があるはずだぞ!」

 「知らんよ!とにかく腹抱えて転げ回ってんだ!手ぇ貸せ!」


 「それこそバカいうな!あんな巨体どうやって押さえろってんだ!!」


 城内の『魔族』は混乱していた。




                     ◆◆




 地獄『第三層』

 薄暗い極寒の荒野に、巨大な穴が開いていた。


 穴の直径は数キロメートルに及び、その衝撃を物語るように大きな岩石が飛び散り、周囲の枯れ果てた木々はメラメラと燃えている。


 穴の周囲は山のように盛り上がり、その頂上からは内部の超高温に耐えきれない土砂が溶けて溶岩となり、巨大な蜘蛛の巣のように外面へと流れていた。


 天上界から派遣された調査団は距離を取り、結界の中にテントを張っていた。



 「や、お疲れ。調子はどう?」

 「サラフィナ様!?」


 結界をするりと通り抜け、気軽に声を掛ける上司に驚く。


 「かなり派手に落ちたみたいだね。」

 サラフィナ神は何事もなかったかのように、テーブルの上に映し出される検証中のモニターを覗き見た。


 「はい。第三層全体に激震が続いています。このままでは持たないかと・・・」


 「(はた)迷惑な話だね。我儘な種子だことw で? 落とせそう?」

 「現状では無理かと? 誰かが、一緒に堕ちる覚悟で抱えて行けば・・・あるいは・・・」


 「だろうね。だから僕が来た。」

 「サラフィナ様が?」


 「そ。君達は即時撤退してくれる?巻き込まれたらシャレにならないからねw」

 「よろしいのですか?」


 「よろしくないけど、ソリアン君に『ハリセン』貰っちゃったからねww」

 「ソリアン様に感謝を・・・」


 「何か言った?」

 「いえ別に。では、すぐ撤退します。」


 「うん。ご苦労さん。あ、コレ手土産。」


 サラフィナ神は。両手から(まばゆ)いばかりの “光” を放出した。

 天上界の “光” は、そこに住む者にとっての ”活動エネルギー” でもある。


 「おお!!感謝いたします!」


 「気を付けて帰ってね。二層や一層にも “跳ねっ返り” がいるから。」

 「ありがとうございます。サラフィナ様もお気をつけて。」


 「うん。じゃね。」



 調査団を見送ったサラフィナ神は、巨大な穴の中心へと向き直った。


 「さて、何と言ったか? 『地蔵尊菩薩』だっけ? 僕は彼ほど優しくないけど、こんな世界(地獄)は無くなればいいとは思ってるよ。管理も大変だしね。君も判っているだろう?」


 「結局、君を助けるのは、君自身でなきゃダメなんだよ。そのために世界(地獄)がある。・・・ふふ “釈迦に説法” だったかな?」


 サラフィナ神は散歩でもするように、穴の中心に歩みを進めた。


 「まあ、僕達の “手落ち” もあったことは認めるよ。君が『彼ら』の甘言(かんげん)に乗せられるなんて思いもしなかったしね。だけど君も理解していたはずだよ?『彼ら』と僕達の “思想” が()()だってことは・・・」


 サラフィナ神の歩みは止まらない。


 「・・・そうだね。 “自由” であることは大事だよ。だが、君の言う “自由” は、ただの “混沌(カオス)” でしかない。そこには “愛” も “智” も “反省” も・・・ましてや “発展” なんか望めやしないよ。」


 ただ歩いているだけなのだが、その身体はスルスルと “穴” の中心に移動していた。


 「ん? ココは君が望んだ世界だよ? 言っただろう? 君は最初から “自由” だって・・・だけど君の主張する “自由” を振り回して、天使達(他の子)に “不自由” な思いをさせたくないから『境界』を設けているだけだよ。 君ほどの “力” があれば、その気になれば『第三層(ココ)』を “お花畑” にするくらいは訳ないだろう? むしろ、そうしてくれると僕も随分助かるんだけどww」


 いつしか、サラフィナ神は中心に埋まっている『種子』の前に立っていた。


 「ははは。 僕が嫌いかい? 僕は君が好きだけどね・・・ いい迷惑か ・・・でも繰り返すようだけど、『地獄(ココ)』は君達が作った “世界” だよ。 いわば君達の “理想郷(ユートピア)” でもある。 だったら『地獄(ココ)』で思い切り “自由” を満喫すればいい。 ただ僕達には “迷惑” をかけて欲しくはないかな?」


 そのとき『種子』が、パカリと開いた。

 無数の『(つた)』が伸び、サラフィナ神の全身に絡みつく。


 「おっと。熱烈な歓迎っぷりだね。 一緒に堕ちて欲しいのかい? お申し込みは有難いけど、丁重にお断りするよ。 こう見えても忙しい身でね。 あまり “遊んで” いるとソリアン君に怒られてしまうんだ。 遊び相手が欲しいなら、下層の住人に頼んでみたらどうだい? ・・・その前に・・・ もう一本『霊子線』があるね。どういうことかな?」


 サラフィナ神は、絡み、締め上げる『(つた)』をものともせず『種子』と繋がる細い『線』を見つけた。


 「『霊子線(コレ)』は一人一本と決まっているのにねぇ。 君が、生まれてすぐ『闇落ち』した赤子の魂と強引に『霊子線』を結んだことは解っていたけど・・・」


 サラフィナ神は、優しく『霊子線』を手に取った。

 どす黒く汚れた『霊子線』が、七色に輝き始めた。

 その輝きは見る間に、天空へと伸びていった。


 「苦しいかい? ゴメンね・・・なるほど、地上の『魔族の卵』と繋がっているのか・・・ふ~ん。君、自分の魂を分割してまで『複数』の固体と繋がろうとしてたのかい?・・・つくづく器用だねぇ。 そんなに『地上』が恋しかったのかな?」


 輝きが増した。

 『霊子線』と繋がる『種子』が悶える。

 『(つた)』の圧力が激減した。


 「コレが “本命” か。 確かに母体から生まれた方が “本来の力” を取り戻しやすいだろうからね。 『フィーネ』? いや今は『メルロスちゃん』か・・・ が、倒した相手は “予備” か、 “フェイク” ってところか。」


 腐れ落ちる『(つた)』に見向きもせずに、サラフィナ神は『霊子線』を愛おし気に撫でた。


 「ん?・・・なにって? 『祝福』しているだけだよ? 生まれてくる赤子に『罪』は無いからね。 本来は『この子』の『霊子線』も『天上界(僕等)』が管理することになっているからね。 “あるべき所にあるようにある” のが普通(常識)だよ。」


 震える『種子』から『霊子線』がブツリと切れた。

 切れた『霊子線』が、光の粒となって消えた。


 「おや? 切っちゃったのかい?せっかく “仲良く” なれると思ったのに・・・頑固だねぇ。仕方ない。」


 ふと、大地が消えた。

 『種子』が声にならない叫び声を上げながら落ちていく。


 「残念だけど、君は幾つも “法” を犯してるからね。 その分、”霊体” が “重く” て飛べないだろう? 今しばらく “最下層” で『反省行』をしてみるといいよ。 また機会があったら “話し” をしよう・・・何千年先になるかは判らないけれど。」



 しばらくそこに(たたず)み、『種子』が “最下層” に堕ちたのを確認すると、サラフィナ神は天上を見上げた。


 「さて、これで最悪の『魔神復活』は、当面の間は『なし』になったんだけど・・・グレイ君に何て伝えようか・・・『君の役目は終わったよ。バイバイw』じゃ納得してくれそうもないし・・・ソリアン君に『丸投げ』しようかな・・・あ、報告書も書かなきゃ。『霊子線』の管理も厳重にしないと・・・となると、『転生システム』からの見直しからか・・・うう、仕事が増えた・・・」



おっちゃん「サラフィナ様の仕事が増えた。オレの脳内 『どどめ色』♪」


 相方「素直に ”ネタ” が尽きたって言えないんですか?」


おっちゃん「頑張って絞り出す!・・・予定・・・」


 相方「予定は未定であって確定ではないのですが?」


おっちゃん「何で追い詰めようとすんの?」


 相方「面白いからに決まってるじゃないですかwww」


おっちゃん「・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 蟀谷こめかみを両のこぶしでギリギリされながら、次回更新 8月26日ナリ(´;ω;`)ウッ…

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