表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/67

64 帝都異変


 「・・・帝都が『魔族』に侵略されたか」

 メルさんが呟いた。


 事態は思ったより深刻だ。


 「加えて言うなら “姪子(めいご)さん” はもう亡くなってるみたい。」


 「そう・・・残念ね・・・」

 メイさんが目を閉じる。

 黙祷(もくとう)してくれているようだ。


 「これからどうなさいますか?」

 スズネさんが聞いてきた。


 「まずは次の町に行こう。スズネ。帝都の “草” と連絡取れそう?」

 「生きていれば・・・」


 「まずは帝都とその周辺の “草” に避難を呼びかけて、可能な限り距離を置くように・・・あと陛下にも知らせなきゃね。」


 「(かしこ)まりました。」


 「帝都に行くの?」

 「せめて遺留品だけでも届けてあげたくてね。危険だけど一緒に来てくれる?」


 「もち♪」

 「言わずもがな。」

 「お供します。」

 心強いパートナー達だ。



 夜闇を疾走する『バギー』。

 ライトは消している。

 月と星灯りのみの危険な走行だが、不思議とよく見えた。

 ステータスには『サラフィナ神の加護』が付与されている。


 ペッカペカに光ってたのはコイツのせいかね?

 “信号機扱い(イタズラ)” などと愚痴ってスミマセンでしたw

 海より深く反省しますww


 「ノワール。出来そう?」

 ハンドルを握りながら、聞いてみる。


 「にゃ!」

 神獣の尾が三つに分かれ、スズネ達(パートナーズ)の胸に吸い込まれた。


 「お?」

 「なに?」

 「急に力が漲ってきたぞ?」」


 「ノワールに加護を付与してもらったよ。『神獣の加護』ってやつ。」

 俺の能力上昇にリンクして、ノワールも出来ることが増えたようだ。


 「それはいい。『魔族』対策だな。」

 メルさんが上機嫌だ。


 「そういうこと。指輪の防御だけじゃ心許ないからね。」

 相手が『魔族』じゃね。


 「そんなことできるなら、早くやってよね。」

 メイさんのおっしゃる通り。


 「サラフィナ様が能力アップしてくれたから、出来たんだよ。」

 「『サラフィナ神』様に感謝だな。」

 「ノワールにもね。」


 「にゃ!」

 ふんぞり返ってらっしゃるww



 「篝火(かがりび)。もうすぐだね。」

 「相変わらず早いな。」

 「結局、キャラバンいなかったね。」


 その通りだ。


 単独で動く『商人』は “自殺行為” に等しい。

 『魔物』や『盗賊』対策として、出向く方向が同じなら可能な限り固まって動くのが鉄則(キャラバン)だ。


 『商人』を護衛する『冒険者』もパーティーごとに雇われているが、他のパーティーと行動を共にすることで、夜間の見張りの分担や、戦闘時の戦力の分散を防ぐことができる。


 結果として大所帯(キャラバン)になるのだが、『盗賊』達は『商人』の目的地ごとに散っていくのを待つしかないのが現状だ。


 おそらく襲われた『商人』家族も、そういった団体行動から外れ、バラけた所で襲われたのだろう。


 今は天国で家族仲良く暮らしているというが、残された親族の為にも、何か持ち帰ってやりたいものだ。



 『バギー』を収納し、壁を乗り越える。

 

 人気が極端に少ないことに、違和感を覚えた。


 「・・・気配がないな。」

 メルさんが呟く。


 「逃げちゃったかな?」


 「どうやらそのようです。」

 スズネさんが一点を指差した。


 「あの宿の窓にある『黄色いリボン』は “緊急”と “脱出” を意味します。おそらく異変を感じて逃げたかと・・・」

 「いち早く逃げてくれたか。他の町もそうかな?」

 「おそらく・・・生きて情報を持ち帰るのが “草” の存在意義ですので。」


 逞しいね。


 「じゃあ、残ってるのは一般庶民と・・・」

 「 “悪党” みたいだな。」


 夜の夜中に大声で笑いながら、頭陀袋(ずだぶくろ)担いで歩く5人の不審者。

 堂々と、町の “ど真ん中” を歩いてらっしゃる。


 「どう見ても善人には見えないね。」

 メイさんに激しく同意。


 「スッポンポンにして、事情を聴いてみるか。」

 メルさん?

 なぜに “スッポンポン” が前提なのかな?


 俺が何か言う前に、二人の少女が我先に飛び降りた。

 思わず “彼ら” に同情してしまうのは、俺の悪い癖か?


 あっという間に、5人の野郎どもをノした少女たちは、手早く武器や衣類を()いでいく。

 メイさんも “スッポンポン” にジョブチェンジしたのかな?


 「暗器の類は・・・なしと。ただのチンピラか。」

 パンツは残したようだw


 「コッチは・・・毒針か・・・用心深いが、刃先の管理が杜撰(ずさん)だな。」

 メルさんはパンツも()いだか・・・容赦ないねww


 「袋の中身は、子供ですか。」

 スズネさんは冷静だ。


 うん。

 俺が全面的に悪かった。

 『スッポンポン + 吊るし上げ』の刑かな。


 いや面倒臭いから、全員 “アッパラパー”にしよう。

 新スキルも『アッパラパー』になってるしww


 人畜無害にな~れ~♪


 「容赦ないなw」

 メルさんも笑ってらっしゃる。


 「悪党限定ってことでw」


 「御主人様が、ある意味 “凶悪” になってる件w」

 そういうメイさんも笑顔じゃないかい?


 「この子達はどういたしましょう。」

 当然のように受け入れるスズネさんが恐ろしいw



 男女の子供か。

 抱き合って怯えた目で俺達を見ているが・・・


 「教会に、複数の人が隠れてるみたいだね。あそこで保護してもらおうか。希望者は帰りに拾ってヨーデル王国に連れて行こう。」


 「し~!安全な所に連れて行くから泣くのは後でね。ご飯食べよう。」

 メイさんが “お姉さん” してらっしゃる。


 大人だねぇ。

 子供だけどww


 「なによ。」

 「別に。」



 教会の扉を開けると、一組の男女が待ち構えていた。


 服装からするに “神父さん” と “シスターさん”かな?


 うん。

 危ないから手にしてる『果物ナイフ』を仕舞って欲しい。

 震えてるんだが。


  “シスターさん” も落ち着いてくれないかな?

 ゴミじゃないから(ほうき)を下ろしてほしいんだなw

 『バギー』かっ飛ばしてきたから(ほこり)(まみ)れてるけどww


 「夜分に失礼します。ヨーデル王国の『勇者』グレイと言います。彼女達は、僕の仲間です。敵意はありませんので、武器を下ろしていただけますか?」


 あえて『勇者』を名乗った。


 「『勇者』様・・・ですか?」


 「そうです。」


 「おお!神よ!」

 いや、祈るのは後にして欲しい。

 気持ちは解るが・・・


 「神父様・・・で、(よろ)しいですか?なんとお呼びすれば?」


 「失礼しました。私はこの教会を預かるノデラと言います。ヨーデル王国の『勇者』様とおっしゃられたようですが?」


 「グレイです。ノデラ神父様に落ち着いていただくために、あえて『勇者』を名乗らせていただきました。今は只の『密入国者』です。」


 「密入国・・・」


 「そうです。誘拐組織を追うために、あえて法を犯した愚か者です。ですので、これからのことも内密にしていただければと思います。」


 「愚か者などと・・・解りました。神の名において決して口外しないとお誓いします。」


 「感謝します・・・ところで、地下にも子供たちが?」


 「よくお判りで。確かに地下室で子供達を避難させています。」


 「水と食糧は足りてますか?」


 「それが・・・外に買い物に出ることもできず・・・」


 「とりあえず、1か月分ほどの水と食料を置いていきます。引き換えに。知ってる限りの情報を頂けませんか?」


 「おお!有難い!!」



 俺達は、可能な限りの情報を聞き出した。


 ノデラ神父の話によると、数週間前に空を飛ぶ『魔族』が現れ、兵士達を次々に血祭りに上げていったらしい。


 そして悠々と正門を開けて他の『魔族』を引き入れ、町人を次々と連れ去ったとか。


 神父は孤児たちを地下室に隠すことで難を逃れたが、『魔族側』についたヤクザ達が町人を捕まえては『魔族』に引き渡しているらしい。


 我が身可愛さに寝返ったか・・・

 まとめて『アッパラパー』だな。

 それにしても、空飛ぶ『魔族』か・・・


 「ノデラ神父様。『帝都』はどうなったか解りますか?」


 「なんとか逃げてきた商人の話によると、『帝都』もここと同様だとか・・・残念ながら亡くなられてしまいましたが・・・」


 『魔族』にも『アッパラパー』効くかな?

 否。

 『ヒール』の方が早いか・・・どうせ向こうも “問答無用” だろうし。


 「『帝都』に行かれるのですか?」

 ノデラ神父は心配そうに聞いてきたが。その目には期待感があるように思えた。


 「そうですね。野暮用もありますので。道なりに進めば良いですか?」

 別に戦争(ガチンコ)しに行くわけじゃないんだが・・・

 遺留品ゲットしたらソッコー帰るしね。


 「はい。途中に幾つかの村と、『ロマックの街』がありますが、おそらく・・・」

 「領主様は『ロマックの街』に?」


 「そうです。とても穏やかな方だったのですが・・・」

 「解りました。お気遣いありがとうございます。」


 それから俺達は用が済んだら必ずここへ戻ることと、希望者はヨーデル王国に避難させることを約束した。


 それにしても・・・灰色の領主・・・ねぇ・・・



 「悪党はどうする?」

 教会を出るとメイさんが聞いてきた、


 「当然、簀巻(すま)きにしてアッパラパーさ。寝返った代償は安くないからね。二手に分かれようか。ノワール。サポートよろしく。」



 1時間もしないうちに、あらかた簀巻(すま)きにされた野郎どもが集められた。

 女性もいたが、とりあえず毛布で包んである。


 だって『ノワールさん』が容赦ないんだものw


 『鑑定』使って “悪党めっけ” って思ったら、俺が動く前に『ダークホール』で吸い込んで、スッポンポンにしてペイと吐き出す。

 吐き出された悪党は、俺に張り倒されて “簀巻(すま)き” にされる。


 なにこの “いやがらせ” みたいな単純作業。


 総勢18人。

 まったく楽しくないんだが・・・



 一人で不貞腐(ふてくさ)れていたら、スズネさん達が帰ってきた。


 メイさんがオンブされてるんだが?


 「メイ?」

 「すまないな。『魔族』に遭遇して戦闘になったんだが、切って捨てた途端に、メイ君がこんな状態に・・・」


 あらら・・・“へべれけ” ですやん。


 「病気でしょうか・・・」

 「いや、ただの『レベル酔い』だね。寝かせておけば治るよ。」

 「『レベル酔い』?初めて聞くな。」

 「後で説明するよ。先にコイツ等を片付けてしまおう。」


 人畜無害にな~れ~w



 町から少し離れて『シェルター』に入った。


 メイさんをベッドに寝かせて、脈を診る。


 鑑定:レベル酔い


 「大丈夫。このまま寝かせておこう。」

 『レベル酔い』の症状は個人差があると思うが、まずは大丈夫だろう。


 「メイはどうなるのでしょうか?」

 スズネさんが心配そうだ。


 「どうにもならないよ。強くなるだけ。説明する。」


 俺はスズネさんとメルさんに説明した。



 この世界には、魔法が存在する。

 魔法の源は魔力とされているが、俺達は前世の知識から魔力を形成する『魔素』という概念を知っていた。

 つまり、この世界には『魔素』が(あふ)れていると言っていい。


 その証拠に『魔物』は森の『魔力溜り』から生まれるという。

 その核となる『魂』には地獄からの脱走者が憑依(ひょうい)しているようだ。

 なれば『冒険者』や戦闘力を持つ『兵士』の役割は、可及的速やかに『魔物』を退治して『脱走者』を地獄へ送り返すべきなんだが・・・


 「ここまでは理解できてる?」

 「ああ。グレイ君が。以前神父たちに話していたことだな。」


 「そう。そして僕達は、全てではないけど魔物の肉を食べて、それを活動エネルギーに変換できる。早い話が “肉に変質した『魔素』を食べることができる” んだ。」


 「それで強くなれるのかい」


 「潜在的にはね。だけど僕達はその潜在的なの能力を解放する手段を知っている。」


 「チャクラですね。」


 「正解。詳細は省くけど、肉だけじゃなく、チャクラを回すことで空気中の『魔素』を直接吸収して、より効率的に『魔法』を行使できるようになったと思っていいよ。」


 「それと『レベル酔い』との関係は?」


 「『魔物』や『魔族』は体内に『魔石』を持っているね。『魔石』はいわば『魔素』が凝縮したモノだよ。つまり『魔法』が行使できるできないに関わらず、『魔素』を内包していると考えていい。それらを倒すことで、僕達は無意識に『魔石」から解放された『魔素』を吸収してレベルを上げているんだよ。」


 「・・・なるほど、メイ君は『魔族』を倒したことで、魔族の持つ『魔素』を吸収したというのかい?」


 「そういうこと。例えるなら、すきっ腹に強い酒を流し込んだみたいな感じかな?特に僕達みたいに『チャクラ』という概念を持ち、実践していると、他のヒトより吸収率が高いからね。」


 「ではいずれ私達も?」


 「十分あり得るね。『帝都』に着く前に判明して良かったよ。戦闘中に『魔力酔い』なんて目も当てられないからね。」


 「う~・・・ひどい目に遭った・・・」

 メイさんが起きたようだ。


 「メイ。体調はどう?」


 「軽い頭痛と、眩暈(めまい)かな?これが『レベル酔い』ってやつ?」

 聞いてたか。


 「じき落ち着くと思うよ。これからは “戦術” を変えていこう。」




                     ◆◆




 「むう!!」

 サルムンド・ドアトリス侯爵は、ベルトナラキウス・フォン・ヨーデル国王から手渡された手紙を食い入るように見ていた。



  拝啓 ベルトナラキウス・フォン・ヨーデル国王陛下。

      現在、グランパスの帝都は『魔族』の支配下にある模様。

      確認のため帝都に向かいます。

      早まった決断をなされぬことを祈ります

                        サラフィナ神の伝道者 敬具



 「コレを・・・グレイが・・・」


 「グレイ君が契約している神獣が運んできました。間違いないかと。」

 ノルグナー・エイトラディス公爵が、冷静に告げた。


 「陛下!すぐ進軍の準備を!」


 「まあ待て。」

 (いきどお)るサルムンド侯爵を制し、両手を組んだ。


 「その手紙は確かに小僧が書いたものだが、確証ではない、」

 「それはどういう・・・」


 「手紙には “支配下にある模様” とあります。つまりまだ確定ではありません。」

 ノルグナー公爵は、サルムンドの持つ手紙を指差しながら補足した。


 「それに “サラフィナ神の伝道者” としてある。つまり『グレイ・アストラス』としてではなく、『使徒』として動いているということだ。」


 「ならば!なおのこと!!」


 「助けが欲しければ、まず、お主に手紙をよこすだろうよ。だが、俺に手紙をよこした。ご丁寧に『早まるな』などと生意気な忠告を付けてな。」


 「陛下の気質をよく理解していますなw」

 ノルグナー公は、(たの)し気に揶揄(からか)った。


 「ほっとけ!」

 的を得た評価に、国王は仏頂面をするしかない。


 「・・・では、いかがすれば・・・」

 いつもなら楽し気に眺めているサルムンドも、この時ばかりは余裕がなかった。


 「国境に兵を置き、『サラフィナ神の伝道者』の帰りを待て。」

 「陛下!!」

 「王令である!!!」


 気合の入った国王の(かつ)に、サルムンドは固まった。

 破れんばかりに手紙を握りしめる。


 『王令』を出されれば。是が非でも従わなければならない。

 でなければ王国の命令系統が破綻するからだ。


 「サルムンド侯。事実確認が取れてない以上、迂闊な進軍は『侵略行為』とみなされます。そうなると周辺国も黙ってはいないでしょう。ここは一時的にせよ『勇者』の役割を放棄したグレイ君に任せるしかありません。」


 そう。

 事実確認もせず、独断で兵を動かせば近隣諸国が黙ってはいない。

 明確な “侵略行為” などの『大義名分』がなければ、周辺国からなる『評議会』を説得するどころか ”格好の餌食” になる。

 そうなると『同盟国』からの支援も難しくなるだろう。


 『魔神』や『魔王』の脅威が迫る中、新たな『戦争』の火種を撒く行為を強行することは出来ない。


 「・・・ミレイに何と言えば・・・」


 「アストラスにはクレアリスが居る。グレイが帰ってくるまで待ってると手紙をよこしてな。現状は俺が伝えておく。」



おっちゃん「キャラクターが勝手に動いて、あらすじをぶっ壊していく件・・・」


相方 「すべて煩悩のなせるワザでは?」


おっちゃん「煩悩万歳!!」


相方 「作者ただいま迷走中ww」


次回更新は、迷走しながら8月19日予定w

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ