63 密入国
まあ・・・
なんというか・・・
警戒心が無いというか・・・
欲望に忠実なのか・・・
旅用のマントを脱いだ美少女がフラフラと街を歩いただけで、あっという間に8人もの野郎どもを捕まえたんだが・・・
“入れ食い” ともいうw
「女の魅力よね♪」
メイさんが得意げだ。
獣人も居るんだが?
まあ、ただの “ロリコン” だと思うが・・・言わないでおこう。
騒がれるのも面倒なので、簀巻きにして『シェルタールーム (別室)』へご案内。
もちろん全員、瞼は縫わせてもらっている。
自白魔法を使うまでもなく、イロイロとゲロってもらった。
大したことはしとらんよ。
チョイと糸で締め上げただけ。
口汚く罵る輩と、正面切って会話する気はサラサラないのでねw
他人の痛みは “笑え” ても、自分に降りかかる “災難” は受け入れ難い連中だ。
コイツ等の辞書に “共感” の文字はないんだろうな。
きっとマジックで塗りつぶしてあるに違いない。
「この地区の領主がグルね・・・」
「灰色の領主ね。」
聞いてもないのに、ペラペラと喋るヤツいて助かったよ。
楽にはしてやらんがねw
「これからどうする?」
「まず “元締め” 叩いとこうか。地図を手に入れないと。」
「了解。」
明け方近くに、屋根を走る二人の子供。
「先輩達起こさなくていいの?」
「4人で動くとね・・・なるべくコッチの情報を与えたくないし。」
「不法入国者だもんね。」
「そゆことw」
6歳の密入国者か。
後でしこたま怒られるだろうなぁ
石造りのデカい家がアジトらしい。
3階建ての立派な造りだね~
戦争でもするのかね?
「ん~と、18人くらい?」
「正解。うち二人は女性。元締めは最上階か・・・お楽しみの後で寝入ってるみたいだね。」
「変態。」
「俺!?」
理不尽な罵倒に憤慨しつつ急襲。
片端から殴り倒して、締め上げて “別室” に放り込んだ。
子供に寝込み襲われる気分はどうヨ?
ちなみに。
室内で魔法なんか使えないからね。
威力ハンパないし・・・
家が崩壊するならまだしも、ヒトをミンチにする趣味はございません。
「地図めっけ!」
静かになった部屋で、やたらデカい地図を見つけた。
ついでに隠し金庫も発見!
地図には所々に記号らしきものが書き込んであるが、“元締めさん” に聞こうかね。
「捕まえたヤツ等どうするの?」
「次の町で降ろすよ。スッポンポンでw」
「悪趣味~」
「やくざの世界はナメられたら終りだからね。大いに恥を掻いてもらうさ。町の外に出て『シェルター』に入るよ。」
スズネさん達は、すでに起きていた。
ってか
メルさんが、やたら眠そうなんだが?
事情を話して、二人の女性を尋問してもらうことにした。
仲間だったら・・・スッポンポンの刑?
流石にヤりすぎか・・・
後で相談しよう。
その日の移動はせずに、1日待つことにした。
んで
寝て起きたらメルさんと抱き合ってた件・・・
しかもネグリジェなんだが?
いつ買った!?
「むふふふ・・・こういうのも悪くないな・・・」
ニヤけてらっしゃるんだが。
「何がお気に召したのかな?」
「なんだろうなww」
まあ、御機嫌ならいっかw
「坊ちゃま。二人の女性は借金のカタに売られたようですね。」
「そう。」
アイテムボックスから拝借した金庫を出す。
少し大きかったからね。
壁ごと抉り取らせてもらった。
鍵は頑丈そうだが電子制御されてるタイプではないので、開けるのはそう難しくない。
結構ため込んでらっしゃるw
ビンボー人には目の毒だww
「借用書っと、これかな?他にも被害者が居そうだな・・・全部渡すから持たせてやってくれる?あと日が暮れたら釈放するから、俺達のことは忘れるように。」
「畏まりました。」
《 忘却魔法使わないので?》
《 頭の中を弄る魔法でしょ?被害者相手じゃね。野犬に噛まれたと思って我慢してもらった方が安全かも・・・野郎どもに・・・いや、“元締めさん”に実験台になってもらおうか。》
結果として
『自白魔法』も『忘却魔法』も、俺には使えないことが判明した。
いや、使えるっちゃ使えるんだがね。
ほれ、俺の魔力密度って濃い方じゃない?
濃密な魔力が術式通ってノーミソ直撃するワケだから、被験者はたまったもんじゃないワナ・・・
ついさっきまで元気よく捲し立ててた “元締めさん” が、『自白魔法』で気持ちよくなりすぎて “アッパラパー” になっちゃうしw
情報聞き出すのに苦労したよ。
普通に締め上げた方が早かったかも。
忘却魔法もしかり・・・『記憶中枢』壊れちゃったかな?
白目剥いてらっしゃるし・・・
得られた情報を整理すると、コイツ等は他国まで行って “人攫い” はしていない小さな組織のようだ。
ただ、ウワサ程度は耳にしているらしく。
領主が関わってるらしい。
幅広く手掛けてんな~
ちょいと “キツメのお仕置き” が必要かな?
「危険な魔法だな。」
二人の被害者女性と共に見ていたメルさんが呟いた。
「コントロールが難しいね。ま。悪党の末路なんかロクなもんじゃないってことで。」
「ボク達も今や『同類』だがなw」
「否定はしないよ。巻き込んでゴメンね。」
「今更さww」
怯える二人の女性を何とか宥め、数枚の金貨を持たせて開放した。
満天の星空の下を『魔導式バギー』がひた走る。
最初は怖気付いていたメルさんも、今は大はしゃぎしている。
適応力高いな!?
「次の町まで一本道って言ってたよね。」
「そうだな。この速さならすぐに着きそうだ。」
「あ、篝火見えた。すぐそこだね。」
「もう着いたのかい!?」
『バギー』なめんなよww
『バギー』を一旦収納して、『結界』をバラ撒いて壁越え。
眼と口を縫った野郎どもと、ノーミソ弄られて役に立たなくなった “元締めさん” を、スッポンポンの簀巻き状態で中央の広場に解放。
後は “この国の法” が何とかするだろう。
放置? 丸投げ? 無責任? 何とでも言ってくれ。
俺は “聖人君主” になった覚えはないのだよw
『詐欺師』だがなww
一気に身軽になったので、とっとと退却。
「寄らなくていいのかい? この町にも “悪党” が居るかもしれないぞ?」
メルさんが聞いてきた。
「この国の “正義” は『勇者』に任せるよ。今は “人探し” 優先。」
「帝国の『勇者』か・・・パチモンでなければいいがなw」
そんな言葉、何処で覚えたか聞いていい?
想像つくけどw
◆◆
「あんのバカ!何考えてやがる!!」
ベルトナラキウス・フォン・ヨーデル国王は、ノワールが運んできた手紙を握り潰した。
『拝啓。敬愛なる国王陛下様。
ヨーデル王国の娘が攫われたので、取り返しに行ってきます。
敬具。デビルスマイル』
「『デビルスマイル』とは、確かグレイ君の二つ名でしたか。冒険者として動いているということですね。」
ノルグナー・エイトラディス公爵は冷静だ。
「それ以前の問題だ!おい!」
国王は、ドアの両側に立つ二人の護衛兵に声を掛けた。
「は!」
「国境警備に通達しろ!グレイ・アストラスを見かけたら城に呼び戻せ!国外に出してはならん!!」
「はは!」
一人を残し、バタバタと駆けていく。
「まあ、捕まらないでしょうね。」
ノルグナー公爵は冷静だ。
「どういうことだ。」
「この手紙を出した時点で、グレイ君は行動に移しています。どこへ行くとは書いていませんが、おそらく既に国境を超える算段は付いているのでしょうね。」
「警備の目を欺けるというのか?」
「50階層突破の『勇者』ですからね。」
「・・・なんて小僧だ・・・」
◆◆
「クレアリス殿下。フェルナ様。」
ホウレイ・アストラスは、妻のミレイと庭先で談笑する二人の少女に声を掛けた。
「あら、ホウレイ伯爵様。ごきげんよう。いかがなさいましたか?」
風の悪戯か、黄金色の髪が少しだけ棚引く。
とび色の瞳が、朝日に照らされて透き通るようだ。
「愚息が、少々遅れるようです。」
「遅れるとは・・・どのくらい?」
ノルグナー公爵の姪である、フェルナ・ノーティラスが問い掛けた。
自慢の赤髪を結い上げ、侯爵から頂いた誕生石のネックレスをしている。
両者とも上級貴族然とした佇まいだ。
「申し訳ございません。不明です。」
両脇に、どっと冷や汗を感じた。
「差し支えなければ、理由をお聞かせ願えますか?」
クレアリスがやんわりと微笑んだ。
「は。実は・・・」
ホウレイは正直に話した。
だが、全てではない。
どのような魔法を使ったのか知らないが、既にグランパス帝国に潜入しているらしい。
実はあなたの未来の夫は “密入国者” でした、などとは口が裂けても言えない。
「では、今はその “誘拐組織” の足取りを追ってると・・・」
「クレアリス様を差し置いてですか?」
「まことに申し訳なく・・・」
冷や汗が、さらに増えた。
「フェル。良いのです。事前に連絡もなしに、勝手にグレイ様の御実家へ押し入った私達にも非があります。それに民の安寧を願い、問題を解決するのも『勇者』としての役割のはずです。」
「御意に。」
クレアリスは、微笑みを崩さない。
「ホウレイ卿。御迷惑でなければ、グレイ様がお戻りになるまで待ちたいと思いますが、滞在の御許可を頂いても?」
「このような何もない田舎町で長期の滞在など・・・陛下が御心配になられるのでは?」
「父には手紙を書いておきます。それに、結構楽しんでいますよ?明日も “茶会”に呼ばれていますし。」
「 “茶会” ですか。」
ホウレイは妻の顔を見た。
「町を見て回るだけでは退屈でしょうから、お誘いしてみました。」
にっこりと微笑んでいる。
「下々の者と “茶会” など・・・」
「ホウレイ卿。いずれ私達は身分を剥奪される身です。明日の “茶会” もそのための予行練習・・・と言ったところでしょうか。それに少し楽しみでもあります。明日はどのようなお話が聞けるのでしょう。」
「は。畏まりました。では、そのように。」
「御迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。」
クレアリスが、やんわりと頭を下げた。
「殿下ともあろう御方がそのような・・・どうぞお気遣い無く、楽しんでいただければ幸いです。では。」
颯爽と踵を返すホウレイの心が悲鳴を上げていた。
《 さっさと帰ってこい!この大馬鹿者!!》
◆◆
はっと目が覚めた。
ベッドの上だ。
右を見ると、スズネさん。
左を見るとメイさんがしがみ付いている。
腹の上にはノワールが居て。
股間にはメルさんが顔を埋めている。
いつもの光景だ。
今はまだ、昼前。
密入国を果たした俺達は、日中の目立つ馬車移動を止め、夜間の移動に切り替えた。
っつっても、ライト付けてかっ飛ばすから、目立つっちゃ目立つんだがねw
気配探知で盗賊の塒を見つけては急襲し、情報と金品を強奪。
ついでとばかり、“親分さん” と “用心棒さん” さんには率先して『自白魔法』と『忘却魔法』のプレゼント。
気分よく “アッパラパー” になってもらった。
苦情は50階層の『コールセンター』へドゾw
まだ建ててないけどww
「だいぶ “簀巻き” にも慣れてきたなw」
メルさんが、頼んでもないのに張り倒した子分達を “スッポンポンの簀巻き” にしてらっしゃるんだが・・・
踏み込んではイケナイ領域に目覚めちゃったかな?
ケンカしないようにしよう・・・
「どうかなさいましたか?」
スズネさんが目覚めた俺の気配に気づいたようだ。
「父上に殴られた夢を見た。」
「きっと御心配なのでしょう。早く終わらせて帰りましょう。」
「そうだね、」
少々気が重いが仕方ない。
横っ面の二、三発は、甘んじて受けるしかないかな。
俺は目を閉じて力を抜いた。
「や。久しぶり」
「就寝中の子供を “引っ張り” 上げないでくださいよ。背が伸びないじゃないですか。」
「そんなツッコミしてくれるのは、君ぐらいなものだよw。」
サラフィナ様は嬉しそうに笑った。
白い世界。
もとい、今じゃすっかり色付いて賑やかだ。
サラフィナ様は街のカフェテラスに腰掛けて寛いでいた。
「信者様方は、頑張っているようですね。」
俺は素直な感想をもらした。
「君のお陰だよ、街がどんどん発展していってるからね。おかげで “てんてこ舞い”さ。」
「とてもそうは見えませんが?」
「努力は見せないものだよw」
・・・さいですか・・・
「で。今日はどういった御用件で?」
「相変わらず “せっかちさん” だね。少し肩の力抜いたら?」
「密入国の犯罪者なのでw」
「どこにいてもキミはキミだねw いいよ。今日は一言 “忠告” を、と思ってね。」
「帝国に何かありました?」
「そうだね。もう “帝国” であって “帝国” じゃないかな?引き返した方が良いかもね。」
「『魔族』に乗っ取られたとか?」
俺の不穏な推理に、紅茶を傾けるサラフィナ様の笑みが深くなった。
ナンテコッタ・・・
「『帝国の勇者』は何してたんですか?」
「不慮の事故・・・と、言うべきかな?『覚悟』が足りなかったとも言えるけど。」
志半ばで逝っちゃったか~
ちょっと残念。
「“人探し” してるんですけど?」
「あの娘ね。コッチで御両親と楽しくやってるよ。」
遅かったか・・・
「せめて遺留品だけでも?」
「是が非でも『帝都』に行くつもりかい?」
「たっての願いですので・・・」
「行けば何か見つかるとは思うけど・・・忠告はしたよ。」
「感謝します。」
「簡単にコッチ来ないでね。」
「まだ “馬車馬” になるつもりはありませんよw」
「そうであって欲しいね・・・期待してる。」
ふと目が覚めたら、みんなが俺に注目していた。
ちょっと照れるw
「どした?」
「御主人様、光ってたよ?」
「『サラフィナ神』様に会ったのかい?『神気』に溢れているが・・・」
《 サラフィナ様ぁ。就寝中の子供に “信号機扱い” しないでくださいよ。》
「大丈夫。ちょっと『情報』貰って来た。みんな聞いてくれる?」
次回更新 8月16日
物語が意図せぬ方向へ (;'∀')




