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62 魔道式バギー


 「おかえりなさいませ。」

 「おかえり~」

 「なんか久しぶりだな。」


 王都の宿屋で三人の嫁候補(パーティメンバー)と合流すると、やっと人心地ついた気がする。


 《 とりあえずは、お疲れ様ですw》

 コクウさんもお疲れ。


 「叙勲式はいかがでしたか?」

 スズネさんが俺のマントを受け取りながら聞いてきた。

 城からの念話が通じないので、手紙をノワールに持たせて送っていたのだ。


 「これ貰った。」

 勲章を見せる。

 こんなモンのために王都まで(さら)われるのも。割に合わない気がするが・・・


 「ほーほー」

 「これか。初めて見るな。」

 メイさんとメルさんも興味津々だ。


 「浮かない顔ですね。何かありましたか?」

 スズネさんが鋭い。


 「まね。貴族になれって言われたよ。」

 銀鉱脈の権利は固辞したがね。

 マジいらねぇし。


 「貴族に?」

 「なるのかい?」

 君達、息ぴったりだねw


 「考え中。父上と相談するって逃げてきた。」

 逃げたんだよな・・・逃亡・・・じゃないよなw


 俺が貴族・・・ねぇ・・・

 『魔王』だの『魔神』だのとガチンコ予定の阿呆に何言いだすのやら・・・


 《 ますます死ねなくなりましたね・・・ところで一つ提案なのですが。》


 なにさ。

 ・・・ほ~ん・・・そういう手もあるか・・・


 「御主人様、悪い顔になってるよ。」

 メイさんが囁く。


 「ああいう顔は、何かヤらかす顔だな。」

 メルさんが楽しげだ。


 「私達は着いて行くだけですけどね。」

 スズネさんは冷静だ。


 「あ~ コホン。ところで何か変わったことあった?」

 俺は室内でシートを広げながら聞いた。

 腹が減っては(いくさ)もできないからね。


 「少し時間が掛かってしまいましたが、“人攫(ひとさら)い” の情報を・・・」

 「ああ。何か分かった?」

 気にはなってたんだよね。


 「()の者の姪子(めいご)ですが、どうやらグランパス帝国に連れ去られたようで・・・」

 「グランパスから情報の入手は難しい?」

 「現在も足取りを追ってはいますが、事件発生から時間が経ち過ぎているようで・・・」


 「ココからグランパスへは・・・まっすぐ行くと “魔の森” 突っ切らないとダメか・・・どうやって運んだんだろ?」

 「おそらく南ルート。センダン川を下って、迂回するルートが一番安全かと。」


 「それでも一カ月以上はかかりそうだな。ただの商人の娘にそこまで金をかける必要があるのかい?」

 メルさんの至極まっとうなご意見。


 「多少の出費は目を瞑っても、余りある利益があるから “危ない橋” を渡るんだろうね。明日の日の出前に出るよ。」



 少しだけ・・・

 ほんの少しだけ “痛い目” に遭ってもらった方がいいか・・・


 ”バナナで足を(すべ)らせる” ようなもんだ。



 「え? もうデキたの!?」

 メイさんの目が、まん丸なんだがw


 「お城の生活は退屈極まりなかったからね。」


 夜な夜な『シェルタールーム』に潜ってたからね~

 メイドさんが居るときは、魔導書読んでイイ子にしてたしw

 “ヒマの極み” ってやつだww


 こんなに早く使うことになるとは思ってなかったがな。


 少し凶悪な顔になってるかもしれない。

 この世界じゃ “反則級” だしw


 「何が?・・・あ、イヤ解った。それほどのモノかい?」

 メルさん正解。


 「まね。急げば三日程度・・・かな?」

 「それほどか・・・」


 「ご実家へは何と?」

 何気に行く気マンマンのスズネさんw


 「手紙かな?少し遅くなるって・・・陛下にも伝えておこうかな・・・怒って爵位(しゃくい)が取り消しになればめっけもんかw」


 「貴族になりたくないの?」

 メイさん。貴族になりたいのかね?


 「面倒だしね。それに僕達は “B級冒険者” だよ?」


 「肩書きのない今なら、少々暴れても問題ないか・・・腕が鳴るな・・・」

 エルフが “戦闘民族宣言” しとるww


 「なるべく殺さないでね。『村雨丸』が泣いちゃうよ?」

 「む・・・そうだな・・・」



 翌朝。

 パッカパッカと荷馬車が歩く。


 御者は俺だ。


 日の出と共にしれっと王都を出た俺達は、人気がないのを確認して交代。


 俺とスズネさんだけが『シェルタールーム』に入った。


 「夜の移動は僕だけでもいいんだけど?」

 「御一人では危険です。」


 結界張って “走る” から、ドラゴンにでも遭遇しない限り問題ないと思うんだが・・・ま、いいか。


 「それじゃ、早めに寝とこうか。日の入り前には交代するよ。」

 「畏まりました。それと、もう一つご報告が・・・」


 ん?


 「“お里” から『神剣』の確認に何人か派遣されるそうです。」

 「へ~」


 初耳。


 「私の『元婚約者』も一緒だとか・・・」

 「婚約してたの?」


 またも初耳。


 「親が勝手に決めたことです。」

 「ふ~ん。知ってる人?」

 「幼馴染ですが・・・」


 またまた初耳。


 「対戦することになりそう?」

 「少し、気の荒い子でしたから・・・」


 「僕が相手していい?」

 「え?」


 「元とはいえ、婚約者と戦うのは男として気が引けるんじゃないかな? その点、僕は正真正銘の “恋敵” だしねw」


 「・・・よろしいのですか?」

 「お相手さんにも、そう伝えてくれる?」


 「はい・・・嬉しいです・・・」

 少し顔を赤らめるスズネさん。


 《 保存しました。》

 Gooooood job!!! コクウさん!!



 ・・・て・・・

 何故に同じベッド?


 「自分の部屋で休んでもいいよ?」

 「メイド(婚約者)ですので。」


 ・・・さいですか・・・



 寝て覚めたらスズネさんにしがみ付いてた件・・・


 顔に柔らかいモノが当たってるんだが・・・


 メイさんとメルさん(拘束ガールズ)が不在だったからな・・・言い訳のしようもない・・・


 「大胆ですねw」

 実に良い笑顔だったりする。


 元婚約者か・・・こりゃ負けられない戦いになりそうだ。



 「顔が赤いよw」

 交代の為に『シェルタールーム』から出てきた俺を見るなり、メイさんが揶揄(からか)ってきた。


 「夕日のせいだよ。荷馬車ごと『シェルター』に入ってくれる?」

 我ながら酷い言い訳だ。


 「はいはい。安全運転ヨロww」

 メイさん。一言多い。


 「ボクは明後日か。待ち遠しいなw」

 メルさん?

 ナニを期待してるのかな??



 シェルターに入った二人を確認して、ゴーグルとマスクを取り出した。


 「少し早く走るからね。」

 「大丈夫でしょうか?」

 「まあ、見ててよw」


 俺は『アイテムボックス』から『バギー』を取り出した。

 電動・・・ならぬ『魔導式バギー』だ。


 俺の記憶の奥底から引っ張り出した情報を元に、エンジン部を “魔改造(ヤらか)” しまくった優れモノ。

 油圧オイルやエンジンオイルなんかも、一旦取り出して不純物を除去してある。


 コクウさんが張り切ってたもんねw


 燃料は『ハウンド・ドッグ』の『魔石』だ。

 よもやこんな使われ方とするとは、夢にも思わなかったろうなww


 アクセルを少しだけ、踏み込む。

 反応は上々。

 エンジン音が、ほどんど無いのもいい。

 dirt road用の太いタイヤで、四駆のAT車なら、メイさんでも運転できそうだ。

 馴れれば他の二人も可能だろう。


 《 イけそうですねw》

 コクウ先生に感謝。


 《 先生に昇格した件ww》

 いやマジ感謝だよw


 『結界』を発動。

 “戦車のキャタピラータイプ” でタイヤを少しだけ浮かす。

 これで、滑らかな高速走行ができるはずだ。


 「シートベルト付けてね。舌を噛まないように。」


 俺は徐々に速度を上げた。



 当然だが、この世界に “道交法” などないwww


 早馬だろうがキャラバンだろうが、抜かせるものはヒョイヒョイ抜かす。

 何か後ろで喚き声がするが、気にしない。


 『ゴブリンの集団』だろうが『オーク』だろうが『ビッグボア』だろうが、ボーリングのピンのように()ねていく。

 ごめんよ~ww



 1時間後

 小休憩の為に、少しだけ脇道に逸れた。


 「道はこれで合ってる?」

 「・・・間違いない・・・かと・・・速い・・・ですね。」


 スズネさんの顔色が悪い。

 少し酔ったか?


 「無理しなくていいよ?『シェルター』で休んでたら?この手の乗り物は初めてでしょう?」

 慣れれば “楽” な乗り物だと思うんだけどね。

 『結界』の分、少々魔力を持って行かれるけどww


 「大丈夫・・・です・・・少し・・・お時間を・・・頂ければ・・・」

 頑固だね~


 《 先生。ポーション使って “酔い止め” できそう?》

 《 ・・・若干、眠くなりますが?》


 《 構わないよ、『虹』を吐かれるよりマシだからね。》

 胃液でタイヤが滑るとかシャレにならん。


 《 少々お待ちをw》



 少しだけ速度を落として走る。

 それでも、早馬より遥かに早いがねw


 何とか立ち直ったスズネさんが、星を見ながらナビをしてくれる。

 こればかりは俺にもできない芸当だな。


 空が若干明るくなるまで走り続け、再び『シェルタールーム』から荷馬車を出した。


 「お疲れ。どこまで行けた?」

 メイさんが、若干眠そうだ。

 夜更かししたか?


 「半分程度かな?思ったより早く着きそう。」


 「半分!?ボクの出番は!?」

 なんの出番かな?


 「国境越えたら情報収集しなきゃならないからね。しばらく続くよ。」

 「そうか。良かった♪」


 何が良かったのかな?

 かな?



 と、いいつつ寝て起きたら、メイさんにしがみ付いてた件・・・


 《 マスターも節操がないですねww》

 これまた言い訳でけん・・・


 「んもう!大胆なんだから♪」

 メイさんも御機嫌だ。


 恥ずかしすぎる・・・・



 昼間はスズネさんとメルさんが、何食わぬ顔でパッカパッカと荷馬車で移動。

 可能な限り距離を稼ぎ、日暮れ辺りから俺とメイさんが顔を隠して『魔導式バギー』ですっ飛んでいく。


 早い話が交代でナビしてもらうワケだが・・・

 結界を張れる俺が、夜通し運転することになる。


 んでまた “一匹” ()ね飛ばしてしまうw


 はぐれの『フォレストウルフ』かな?

 ちょっと、大きかった気もするが・・・

 ごめんよ~~~~


 「容赦ないわね~」


 メイさんが呆れてらっしゃるw

 コトが終わったら、君達にもハンドル握ってもらうかねww

 せっかくの『魔石』やら『肉』やら『毛皮』を、()きっぱなしってのも気が引けるしなwww


 ま、傍から見れば反則っちゃ反則技だが、苦情は “人攫(ひとさら)い” どもに言ってくれ。

 ついでに捕まえてくれりゃ、御の字だ。



 日が暮れて間もなく。

 センダン川の河畔(かはん)に着いた。


 船着き場は、目と鼻の先だ。

 向こう岸が帝国領か・・・



 実家にあった歴史書では、過去に “センダン川の領有権” を巡って何度か()りあったそうだ。


 スズネさんの話では『魔神』だの『魔王』だのの脅威がせまると、いきなり手を打ったらしい。

 現在では『魔物』の生息域以外での漁は、商業ギルドが管理しているとか。


 人類の敵が、思わぬところで “平和貢献” してらっしゃるんだがwww



 こちら側の船着き場には、人気は無い。

 気配探知には反応あり。

 寝てるか。


 “夜闇の川渡り” ほど危険なものは無いからな。

 本来なら夜明けを待って、船に乗って下るのだが・・・


 「どうすんの?」

 助手席のメイさんが興味津々だ。


 他の二人は『シェルタールーム』で休んでいる。


 結界で橋を作って・・・てのもな。

 真っ暗で向こう岸が見えないんじゃ危険極まりない。


 バギーのライトを消すと、川の下り側の向こうが、薄ぼんやりと明るい。

 篝火(かがりび)か?


 「あそこが船着き場?」

 「みたいだね。流れも穏やかみたい。舟遊びの経験は?」


 「舟遊び?前世は『鵜飼(うか)い』になら、ちょくちょく行ってたかな?」

 「結界の “エアーボール” で渡るってのはどう?」

 「な~る!面白そう!」


 バギーの重量もあるので、大きめのエアーボールを成型。


 多少、水の跳ねる音がするが仕方ない。

 見つからないことを祈ろう。


 川の中央辺りで、結界に何かがぶつかった。


 「魔物?」

 「みたいだね。無視するよ。」


 だが、相手は無視してくれなかったようだ。


 「なんか巻き付いてるんだけど?」

 「餌と間違えたかな?仕方ない・・・」


 結界に棘を持たせて貫いた。

 『バギー』を覆うデカいボールが、いきなり凶悪な『ウニ』になる。


 おっと?

 棘の先が川底に当たったようだ。


 流されずに済むかな?

 せっかくなので、そのまま進む。


 対岸に着くころには絶命したようだ。


 「川蛇の魔物か・・・食べれる?」

 「毒袋が破れてなきゃね。先を急ぐよ。」


 『鑑定』によると『ポイズンスネーク』の亜種らしい。

 “珍味” らしいが、お楽しみは後回しだ。


 帝国側の船着き場は静かだ。

 どうやら気付かれなかったらしい。


 結構、バシャバシャと賑やかに移動してたんだがねw

 寝てたかな?


 ほどよく、ゆっくりと移動して・・・

 結界の形を整えたら、アクセルを踏み込む。


 「お~!久しぶり~♪」

 メイさんがはしゃいでらっしゃるw


 「前世でも運転してた?」

 「まね。ダートコースは初めてだけど。思ったより揺れないね。」

 「結界で足場固めて走ってるからね。運転してみる?」

 「いいの?」

 「結界アリとナシ。どっちがいい?」

 「最初はナシで♪」


 眠気覚ましには、丁度いいなww


 交代で運転すると、小休憩が省略できる。

 当然のように『魔物』と接触事故を起こすが、その時だけ結界を張ればいい。


 まともにぶつかると折角の『バギー』がボッコボコになっちゃうからねww


 幾つかの分かれ道を適当に進むと、気配探知に何かが引っかかった。


 「町があるみたいだね。情報収集しようか?」

 「門が開くまで待つ?」


 ハンドルを握るメイさんが聞いてきた。

 何気に気に入ったらしいw


 「いや、このメンバーじゃ目立つからね。黙って入って、黙って出よう。」


 「悪いんだぁ♪」

 「何を今更w」

 楽しそうで何よりだ。



 ノワールに先導してもらって、石壁を乗り越え、屋根を走る。

 物音は(ほとん)ど立てない。


 足や手の平に “風魔法” を(まと)わりつかせてるからね。


 なんでそんなことが出来るかって?

 そりゃ目の前を走る奴隷少女が、現在進行形で実践してるからねw

 くノ一真っ青な技術だよww


 「暗闇を走り抜ける6歳児w」

 「メイも似たようなモンだろ?」

 軽口を叩く余裕もあるw



 さほど大きな町ではないようだ。

 中心街らしい場所に出た。


 「で? “悪党” 探すの?」

 「正解。こんな時間にウロついてるのって、そんな連中でしょ。」


 《 コクウ先生。自白とか忘却の魔法って作れる?》

 《 いつも通りの呼び名でいいですよ。先々代のマスターが使ってましたね。》

 《 何の目的で使ってたかは聞かないでおくよ。スタンバイよろしく》

 《 了解(ラジャー)。》


 「メイ。エラそうなの見つけたら教えて。『自白魔法』使うから。」

 「スパイ大作戦ww」


 キミ、歳ゴマカシテナイ?



次回更新 8月12日


明日、墓参り予定。


 相方「丑の刻参りですか?」


おっちゃん「何故に!?」


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