58 転移魔法と押しかけ〇〇
一度。ダンジョンの屋敷に戻ってセルア商会長へと連絡を走らせたが、残念ながら行き違いになったようだ。
ま、忙しそうで結構w
そのまま屋敷で一泊。
寝て起きたら、例によって女性陣に囲まれていた。
『シェルタールーム』かよ!
いや『シェルタールーム』にも各自の部屋があるんだが・・・
鍵かけてもスズネさんが “ニンニン” しちゃうし・・・
てか、当初俺の股間で “仰向け” になって寝てたエロフが、大胆にも“俯せ” になってるんだが?
しかも両足をガッチリロックしてやがる。
どんなプレイだよ!
齢79歳が小児襲ってんじゃねえよ!!
世が世なら “虐待” 事案だよ!!!
『オマワリサン』と『検事さん』と『裁判官さん』がスクラム組んで突撃してくる事件だよ!!!!
少年誌から “待った” がかかる案件だよ!!!!!
左腕はメイさんがしっかりロックしているので、右手でポカリ!
「いた!・・・む~・・・」
涙目で睨んでくるのも、いつもの風景だ。
無駄に可愛いから困るんだよな・・・
「おはよう。日に日に大胆になってない?」
「そうかい?いい匂いがするからなw」
「どこが!?」
「どこだろうなww」
身を捩ってベッドを降り、さっさと着替える。
「町に出るよ。食料の買い出しとセルア商会・・・かな?スズネ。里の食材頼める?あと王都の情報も欲しいかな?」
「“球技” とやらを作るのかい?」
「そうだね、野球、サッカー、バレーボール、あたりが無難かも・・・」
「それぞれ違うのかい?」
「そう。 “球技” ではあるけど、道具もルールも違うよ。まずはルールを憶えてから試合を楽しむのさ。そのための道具をまず作らないとね。」
パッカパッカと荷馬車が歩く。
大した距離でもないんだけど、たまには “お馬さん” に運動させないとね。
屋敷の食糧の買い出しに毎日使ってるようだけどw
ダンジョンの町。
通称 “勇者の町”は、ほぼ冒険者で埋め尽くされている。
もともと『不毛の地』ではあったが、俺が偶然にも水源を掘り当ててしまったため、徐々にではあるが緑が増えてきたようだ。
父も希望者を募って、農地を広げる計画を立てているらしい。
何よりだw
そんなワケで、ダンジョン2階層から30階までの魔石をゴッチャリと放出し、ギルドの受付のオネーサンを発狂させたあと、買出しに出た。
悪気はないんだよ~w
物価の面で言うなら、ドンビシャスの町で買った方が安いんだけどね。
経済は回してナンボ。
農地開拓が落ち着くまでは、積極的にお金を落としてやんないとねw
露店を巡り、魔道具店や薬師の店を巡り、“店仕舞い” に追い込まない程度に買い物をする。
ガラクタ市で『4人乗りバギー』が置いてあったのを見つけた時は、メイさんとズッコケそうになったがねw
《 ソリアン様ぁ・・・なんつ~モノを出しとるん・・・・》
《 ( ´艸`)wwwwwwwww》
コクウさんが大爆笑しとるんだが・・・
ってか、
ダンジョンから、どうやって運んできた!?
勿論、言い値で買いましたよ。
ちょっち弄れば使えそうだったしw
ガソリン? オイル? キャブレター??
んなもん魔法と魔道具でなんとかなるっしょ?
ファンタジーなめんなよ!
《 なめんなよwwww》
コクウさんが激しく同意しとるw
「今日は商会長いるかな?」
俺はドンビシャスの貸し倉庫へと、荷馬車を操りながら呟いた。
「毎日忙しそうに動き回ってるそうだからな。」
「捕まらなかったらどうするの?」
「諦めてデランテ領とホウリム領に行くよ。侯爵閣下待たせるわけにもいかないからね。」
壁を作るなら、まずデランテからだろう。
欲張ってドンダリデ領を侵略しようとして、手痛い “しっぺ返し” 喰らってるからなw
昼間は荷馬車で移動して、陽が暮れたら荷馬車ごとシェルタールームに収納して俺が走れば、1~2日で到着する計算だ。
面倒だけどなw
《 どっかに『転移魔法』転がってないかな~》
《 できますよ?》
脳内で~♪ シレっと呟く~♪ コクウさん?
《 いま何と??》
《 だから出来ますよw 転移魔法ww》
なんてこった・・・
《 早く言って欲しかったよ。》
《 マスターの記憶にある『転移魔法』とは条件が異なりますし、今の魔力では全員は無理かと・・・》
・・・さいですか・・・
《 シェルタールームに収納したら可能?》
《 その方が安全かと・・・どのみち、一度、転移先に行って『マーカー』を付与する必要がありますが?》
《 もそっと詳しく・・・》
「御主人様。どした?」
手綱を握ったまま固まっている俺に、メイさんが覗き込みながら訊ねてきた。
「ああ・・・ごめん。ちょっと考え事をね。御者変わってくれる?」
御者を交代し、隣に座り直した俺は『コクウ』の説明に集中し直した。
残念ながらセルア会長は捕まらなかったので、野球のグローブとボール、バットとベースの設計図と簡易的なルールブックを置いて、出発することにした。
ま、ルールなんぞ向こうの世界の “丸パクリ” しなくてもいい。
命張るわけじゃないからな。
少々荒くなっても “楽しんでナンボ” の世界だ。
細かいルールは “後付け” でいいだろうw
「ということで、ノワール。お願いできる?」
「にゃ!」
アストラルの領内ではあるが、人気のない場所を選んで荷馬車を止め、ノワールを先行させた。
「なにすんの?」
姦し娘たちが興味深げだ。
「転移魔法の実験。」
「なんだと!?」
「お~w」
予想通りの反応だなw
「『転移魔法』なぞ、ボクの知る限りじゃ『伝説級』の魔法じゃないか!?」
メルサンオチツケww
「人知れず使ってるヒトもいるかもしれないね。」
「そうかもしれないが・・・」
「僕も初めてだから、まずは一人でやってみるよ。」
「危険なのでは。」
スズネさんが心配げだ。
「安全を考慮して、ノワールに手伝ってもらうんだ。まあ、見ててよ。」
『空間魔法』で目の前の空間に干渉して、すぐに閉じないように結界を張る。
これだけでも結構『魔力』を持って行かれるな。
固くなったドアノブを回すように、グリンと捻る。
ポッカリと穴が開いた。
1秒ごとの “魔力消費” がハンパない。
慌てず、ゆっくりと “穴” を潜った。
「ぬおう!」
思わず呻いた。
一気に魔力が持ってかれた。
枯渇ギリギリだ。
《 成功ですね。》
コクウさんが呟く。
ノワールが足元に懐いてきた。
「ノワール。ありがと。」
1㎞くらいか・・・こりゃ先が長いな・・・
《 いまの魔力量ではこの程度でしょう。あとは “慣れ” ですね。気分は?》
「生まれて初めてジェットコースターに乗った気分だよ。」
《 馴れない移動で三半規管に影響が出たんでしょうね。練習あるのみです。》
コクウさんが楽しそうだ。
《 坊ちゃま!どこです!?》
スズネさんの念話だ。
《 成功した?》
《 信じがたいものを見た・・・》
混線しとるww
《 道なりに居るよ。休んで待ってる。》
とりあえずは成功か・・・条件が面倒だが、使いようによっては便利な移動手段になりそうだ。
条件その1:マーカーに向かってでしか移動できない。
この場合、ノワールが俺とシンクロしてくれるので、影移動で先行してくれれば問題ない。
条件その2:膨大な魔力消費。
これはレベルを上げるしかない。目標が出来たなw
条件その3:空間を無理矢理捻じ曲げるので、日に何度も跳ぶと “魔力溜り” ができやすいらしい。
つまり、回数制限付き・・・尚且つ、人里やその周囲では使えない。
「転移痕の魔力を散らす方法ってないかな?」
《 難しいですね。出発地点に戻って散らすのが一番でしょうけど・・・》
世の中そう上手くは行かないモンだw
◆◆
「・・・不思議な空間ですね。」
サフリー・ドアトリスは、王家専用馬車に広がる空間を呆れたように眺めていた。
馬車という常識からかけ離れた広さを持つ室内は、一流の大工によって王室内の重厚な華やかさと高さを揃えた家具が、奥行き感を演出している。
「そうですね。とても快適です。少しも揺れを感じないのも良いですね。」
クレアリス第三王女は、向かいに座る少女に柔らかく微笑んだ。
「叔父の馬車も見せていただきましたが、本当に常識はずれな力ですね。この力だけでも警戒するには十分な価値があります。」
フェルナ・ノーティラスは、自慢の赤髪をかき上げながら呟いた。
魔法省が大騒ぎするのも頷ける。
“空間魔法”自体は古い文献に散見しているが、実現不可能な夢物語として片付けられていた。
その常識を容易く覆し、実用可能なレベルに押し上げるとは・・・
フェルナ・ノーティラス。宰相であるノルグナー・エイトラディス公爵の姪である。
本来ならば学生として “学園” に通ってしかるべき年齢ではあるが、わずか一年で卒業過程を終了させ、学院生として魔法研究科に身を置いている “才女” である。
現在 “魔力動態” をテーマに研究を進めているが、ノルグナー公の馬車に衝撃を受け『勇者』に並々ならぬ関心を寄せていた。
「警戒ですか?ならば余計に “仲良く” ならねばいけませんね。」
クレアリスはゆったりと微笑み、紅茶を傾けた。
「クレアリス様は不安ではないのですか?これほどの力を示しながら『爵位』も『名誉』も求めず、『冒険者』などという職業に邁進するなど・・・国に対する “裏切り” のように思えてならないのですが・・・」
「あら?フェルは『勇者』様の真意をご存じないと?」
「知っています。ノルグナー様に教えていただきましたから、でも考えが矛盾しています。」
「矛盾?」
「たった一人で『魔族狩り』などできるワケがないじゃないですか。それこそ国をあげて対処すべき問題ではありませんか?」
「・・・そうですね。確かに “矛盾” した考えだとも捉えられます。フェル。『魔族』の弱点はご存知ですか?」
「はい。『ヒール』ですね。魔法省に運ばれた『魔族』の亡骸で証明されたとか・・・」
「そうですね。では見方を変えて、この国における “治癒魔法の使い手” はどの程度の数がいるでしょうか?」
「それは・・・」
言葉に詰まったフェルナに、クレアリスがクスリと笑った。
「ごめんなさい。意地悪な質問でしたね。実は私も正確な数は把握していませんが、おそらく千人にも満たないでしょうね。」
「・・・千人・・・」
「もう一つ、『魔族』には弱点があるのはご存じ?」
「え?・・・いえ・・・」
「『笑顔』・・・だそうですよ?」
「・・・笑顔・・・ですか?」
「はい。聞いた話によると『サラフィナ神』様の “啓示” により、多くの笑顔がある国には寄って来ないそうです。」
「そんな、曖昧な・・・」
「そうですね。研究者であるフェルには、何ら根拠も確証もない絵空事にしか聞こえないかもしれませんね。しかし統計的には、例年に比べて『魔族』の出現回数が大幅に減ってきているのです。」
「・・・笑顔が増えたからですか?」
「はい。アストラス家が公開した農法が大成功をおさめ、市井の暮らしが豊かになり、国中のいたるところで “笑顔” が見られるようになった・・・これは偶然でしょうか?」
「・・・」
「誰だ!」
フェルナが口を開こうとしたとき、クレアリスの後ろに控えていたサフリー・ドアトリスが、部屋の奥に向かって鋭く叱責した。
つい先ほどまで毛ほども感じられなかった気配が、整然と並べられた家具の片隅にあった。
少し腰を落とし、右手を腰の剣の柄に当てる。
びくりと身を震わせたフェルナが、思わず身構えた。
「な~」
家具の足の下から、小さな鳴き声と黒い影。
「・・・猫?・・・」
「な~」
小さな影はトテトテと部屋の中央に歩き、姿勢よく座った。
漆黒の毛並みに黄金色の目が、やや光量を落とした部屋によく光っていた。
「どうしてこんなところに猫が・・・」
「猫ですか?」
「はい。真っ黒な子猫のようです・・・いつの間に・・・」
唖然とするサフリーとフェルナをよそに、漆黒の子猫は、思わぬ身軽さで足元を駆け抜けた。
そのまま、クレアリスの膝の上に飛び乗る。
「あ!・・こら!・・・」
「あらあら。」
「不敬な!すぐ降りなさい!」
慌てる二人を手で制したクレアリスは、そっと膝の上に寝そべる子猫を撫でた。
「・・・神気を感じますね・・・『神獣』様でしょうか?」
「え!?」
「神獣!?」
「先代巫女様と何度かお話したことがありますが、あのお方と “感じ” が似ています。『神獣』様。私の言葉が御分かりになりますか?」
「な~」
「ふふ。もしかして『勇者』様がお寄こしになられたのでしょうか?」
「な~」
「心強いですね。『神獣』様に守られながら “旅” ができるなど・・・『勇者』様に深い感謝を・・・」
◆◆
時は少し遡る。
「坊ちゃま。第三王女とノーティラス家の次女がコチラに向かっているそうです。」
のほほんとアストラス領の関門を通過した頃。
スズネさんが荷馬車の隅に停まった野鳥から文を受け取り、俺に報告してきた。
「・・・はい?・・・」
聞き違いか?
耄碌するには、まだ早いと思うんだが??
《 鑑定。全て正常値ですw》
コクウさん?
「おやおや。王族ともあろう者が王都にも呼ばず、アストラスに来るのか・・・まるで “押しかけ女房” だなwww」
メルさんが実に愉しそうだ。
笑い事なのか?
「御主人様が固まってる件www」
メイさん?
他人事かな?
スズネさん?
何か言って??
「ち・・・父上達は、今頃てんやわんや・・・だろうね。」
「そうだろうな。たかが僻地の伯爵家風情に『王族』が乗り込んでくるんだ。ハチの巣を突いたような騒ぎだろうさww」
メルさん楽しい?
「んで、見合い相手はナイスなタイミングでバックレちゃってるしww」
メイさん楽しい??
「ナイス?バックレ?・・・いえ、説明しなくても意味は解りました。どうなさいますか?」
スズネさん冷ややか・・・ってか、ゾワゾワするんだが・・・
「と・・・とりあえず、デランテ領が先かな?領民が大変な目に遭ってるみたいだし、サルムンド閣下を待たせるワケにもいかないし・・・」
冷や汗が止まらない・・・
現在進行形で、俺も “大変な目に遭ってる” んだが・・・・
おっちゃん「あぢ~~~~~~」
相棒 「・・・」
おっちゃん「俺も空調服買おうかな~」
相棒 「やめてくださいよ。お揃いなんて願い下げです。」
おっちゃん「では、どうしろと?」
相棒 「気合と根性で乗り切りましょう。」
おっちゃん「そ~いう問題!?」




