表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/51

50 『ミノさん』の災難と王家の覚悟とレジェンド級


 「ぷぎゃ!」

 踏みつぶされたカエルのような悲鳴と共に、目にも止まらぬ勢いで壁に激突するメルロスさん。


 「あ~らら、言わんこっちゃない。」

 「近過(ちかす)ぎだよ!メル!」


 (まぶた)の上を切り裂かれた『ミノさん』の怒りの巨剣が、見事にヒットしたのだ。



 51階層ボス部屋。


 指輪の防御機能を信じ、空間魔法は最後の手段とした “ボス戦” は予想通り苦戦した。


 「強いね~」


 《 皮膚が固いですからね。全身(よろい)(まと)ってるようなものです。》

 コクウが他人事のように呟く


 これで “手練れ” だってんだから気が滅入る。


 所々小さい傷は付けているが、行動を阻害するには至ってない。

 メルロス渾身の『サイクロン』の一点集中で、やっと(まぶた)の上を出血させた程度だ。


 出血は派手だが、視界を奪うほどではない。


 指輪の防御で死んではいないが、まだ目を回しているメルロスさんを放置して、足場となる結界をバラ撒く。


 この手合いに “空中戦” は避けるべきだろうが、メイさんのミスリルの剣も通らないんじゃ終りが見えそうもない。


 ランダムに跳ねまわり、俺に注意を向けさせる。


 《 行きます!》

 《 もらい!》

 スズネさんとメイさんの念話だ。


 スズネさんが背後から、壁を利用して跳んだ。

 同時にメイさんが足元に飛び込む


 注意が逸れた。


 ジャイアントハンティングスパイダーの糸が『ミノさん』の眼球ごと瞼を縫い付けた。


 右目の視界が塞がれ、ジワリと襲い来る痛みに『ミノさん』が咆哮を上げる。


 「ここ!」

 メイさんが内踝(うちくるぶし)の下に思い切り、魔力を込めた剣を突き立てる。


 《 あこりゃ痛そうだw》

 コクウの呟きが漏れた。


 「同感w」


 ヒトの場合『太谿(たいけい)』は、特に腎の働きを整えるツボとされるが、あそこ(えぐ)られると一時的に立てなくなるんだよな~


 『ミノさん』の咆哮が一段と大きくなった。

 背中が丸見えだ。


 「おまちど~」


 苦しませる趣味はないので、前回よりさらにデカイ『巨岩』をプレゼント。


 ごつごつとした岩肌が背中に当たり、ベキリと圧し折った。



 「・・・即死・・・かな?」

 《 まだですね。剣を手放してません。》


 仕方ないので『空間斬』で首を刎ねた。




 「お疲れ~ こりゃもう一回だね~」

 「うええ!まだ()るのかい!?」


 俺の提案にメルロスさんが悲鳴を上げる。

 元気そうで何よりだw


 「()るよ? とどめは空間魔法使ったしね。武器も何か考えなきゃ。」

 「だよね~ 一振りで手足をスパっと切れるようなの作れないの?」


 メイさんのその剣 “ダンジョン産” だが?

 無体な事おっしゃる。


 「ダンジョン産のミスリルを上回る武器ね~」

 天井を見上げながら呟いてみる。


 《 出来るのでは?》

 《 出来るの?》

 《 私を誰だとお思いで?》

 《 コクウさん。好き♪》

 《 ご都合主義な “告白” ですねw》


 「やってみようか。全員の武器強化」

 「やた!」




 それから俺達は『帰還石』を使って1階層に戻り、休む間もなく31階層へと潜った。


 「何故に31階層?」

 「30階層までの『お宝』は発掘し尽くされてるだろうからね。ここからは素材探し。じっくり探そう。」


 「「「了解」」」


 他の冒険者の “夢と希望” を奪うようで気が引けるが、この際だ。

 涙を呑んでもらおうかw


 ついでに “シナモンの原木” も補充しておくかw




                       ◆◆




 「陛下。お戯れが過ぎるのでは?」

 サルムンド侯爵が王宮の執務室の扉をあけるなり、そう問いかけた。


 警護の者達がワタワタしているが、一切気にかけない・


 「何の話だ。」


 ベルトナラキウス・フォン・ヨーデル国王は、着替えを進めながら答える。

 デスクワークに嫌気がさしてきたので、近衛兵の修練場で汗を流すつもりだ。


 「グレイの婚約の話です。3年前の話をお忘れか。」


 国王との面談の時に “アストラスの名を捨て、冒険者になる” と明言したのだ。

 地位も名誉もかなぐり捨て “魔族狩り” をすると。


 それは取りも直さず己と関わりのある人間を最小限に抑えつつ、『魔族』の報復を一身に受けるという覚悟でもある。


 いたいけな幼児の覚悟。

 “勝つために生きる。生きる為に勝つ” という言葉が、いまだ心に刺さっている。


 「憶えておる。」

 国王は短く答えた。


 「!」

 サルムンドは息をのんだ。


 グレイを王家に迎える。

 これは『魔族』の標的が王家に向く可能性があるということだ。


 侯爵や公爵ならまだいい。


 私財の全てを投げ打ってでも『魔族』と戦う気概があるならば、一族総出で迎え入れるのもアリだ。


 替えは幾らでもいる。


 だが王家は・・・


 「魔族と全面戦争をなさるおつもりか・・・国が潰れますぞ・・・」

 サルムンドが絞り出すように訴えた。


 「ならばどうする? 幼子(おさなご)に全てを押し付けて、黙って見てろというのか?」

 静かに、怒りを込めた国王の視線がサルムンドを捕えた。


 「・・・グレイの覚悟を無碍(むげ)になさるおつもりか・・・」

 サルムンドが真っすぐに見返す。


 「お主は既に覚悟はできておろう。」

 「・・・ご存知でしたか・・・」


 「ドアトリス家が賑やかになって来たからな。」

 「敵いませぬな。」


 サルムンドは正直に答えた。

 いずれはバレる事だからだ。


 グレイがアストラスを出るならばと、自らも “引退”をと考えていた。


 『魔道鎧』を捨てた身では、足手まといにしかならないだろう。

 だが、この身を盾にくらいはできよう。


 ともに “旅” を楽しみ、旅先で野垂れ死ぬのも良いかもしれぬ・・・

 惚れた・・・と言っても良い。


 ただ一人の若者に国の未来を背負わせる気は、さらさら無かった。


 「跡継ぎは決まったか。」

 国王は視線を外すことなく聞いた。


 「難しいですな。先日アストラスのダンジョンに放り込んでみましたが、30階層止まりでしたからな。」


 「ほう。Aクラスに紛れ込ませたか。大したものよ。」


 冒険者のA級となれば、近衛兵の実力に近いと言われている。

 だが、数多の『魔族』との戦闘を経験したサルムンドに言わせれば ”跡継ぎ“ には程遠いらしい。


 「立ち振る舞いだけで引いてくれるような “相手” ではありませぬからな。」


 ドアトリス家の後継者争いは熾烈(しれつ)だ。

 “才” を持つ者は徹底的にその才を伸ばし、国に貢献させる。


 市井に降りて一流の職人になった者もいれば、サルムンドのように “英雄” と評されるまでになる者も数多くいた。

 そういう意味では、ドアトリス家自体が “肩書き” をあまり気にしない一族とも言える。

 国の秘宝ともいえる『魔道鎧』をドアトリス家が所持し続ける理由でもある。



 「『魔道鎧』を継がせるにはまだ早いか。」

 「グレイには今しばらく踏ん張ってもらうしかないようですな。」


 「儂も同じよ。」

 「なんと!?」


 「三女には “王家を捨てて野垂れ死ぬ覚悟はあるか“ と聞いた。」

 「・・・正気ですか・・・」


 「“お国の為になるならば” と即答しよったぞ。」

 「・・・」


 「ノルグナーの姪も同じように答えたらしい。」

 「・・・あのお転婆が・・・」


 「そう言うな。外ではヒステリックに振舞っているが、身内には理知的に接しているようだ。」

 「・・・何のために。」


 「“婿探し” の為だそうだ。地位や名誉の為に()り寄ってくるアホども(貴族子息)を遠ざけるためらしいぞ。」

 くくと笑うと、国王は新調した “愛刀” を手に取った。


「話の続きはノルグナーを交えてやろう。今日明日は外交で出ておるからな。修練場に行くぞ。サルムンド。付き合え。」


 「はは!」





 「そういえば、デランデはどうなった?」

 近衛兵達の見守る中、木刀を交えて汗を流す国王が、サルムンドに問いかけた。


 デランテ領の領主はドンダリデ領の壁の構築に反対し、私兵を集めて侵攻したはずである。

 王令に逆らう形ではあるが、強制ではないので ”魔石に侵されていない土地" を略奪するためであった。


 「お話になりませんな。アンデッドに混じって『リッチ』が出てきた途端に敗走の一途でしてな。止むを得ず撃退いたしました。」

 「さもありなん・・・か・・・壁の構築は?」


 「功を焦った嫡男が戦死しましたからな。しばらく揉めるやもしれませぬが “王令である壁の作成が最優先” と釘を刺しておきました。ついでに “倉もひっくり返して” おきました。」


 「・・・出たか。」


 「壁の構築には十分かと。我が家の文官達に精査させております。」

 「自業自得か・・・よかろう。ホウリムはどうだ。」


 「アンデッドどもが壁際に(あふ)れておるようです。神聖魔法が使える冒険者や教会に泣きついておるようですな。」

 「 ”『勇者』の壁” の安全性が証明される形になったか・・・グレイは・・・まだダンジョンか?」


 「そのようですな。ですが全く “連絡” が取れないこともないかと。」

 「ほう?・・・どうやって?」


 「分かりませぬ。しかしミレイが妙に落ち着いておるようで。」

 「お主の姪か・・・我が子がダンジョンに潜っている最中にか・・・」


 「相変わらず “市井の者達” と茶会を楽しんでおるとのこと・・・」

 「・・・そうか・・・」


 「如何なさいますか?」

 「ここは何処だ?」


 「修練場・・・なるほど、全て聞かなかったことに・・・と・・・」

 「金は回すものよ。不要に貯め込めば国が衰退する・・・両者には “見せしめ” になってもらう。」


 「ノブレス・オブリージュですな。では、グレイには何と?」

 「ダンジョンから出てきてからで構わぬか・・・いや、彼奴等(きゃつら)が王家に泣きついて来てから・・・か・・・アルフレッドと文官を差し向けてやろう。」


 国王は楽し気に呟いた。


 「第一王子を・・・何ゆえに?」


 文官は分かる。

 ホウリム家の財政状況を精査し “痛くない腹を探る” ためだ。


 噂が広がり、ホウリム家の立場が危うくなるのを見越した処置だ・

 だが、わざわざ第一王子を差し向けるほどではない。


 「壁を見せるためよ。グレイと会っておくのも良かろう。アヤツめ、最近少し少子に乗っておるからな。」

 「文武の才に(ひい)でたお方ですからな。次期国王との噂もありますし。」


 「それでも51階層には遥かに及ばぬよ。上には上がいることを知らねばなるまい。」




                    ◆◆




 マイショナー・ウラバス侯爵の思考は停止していた。


 豪華な部屋だ。


 それはいい。


 『グランパス帝国の外交兼特使』として、交易の優位性を勝ち取るためだ。

 立場としては公使となるが、帝国の代表を無碍(むげ)にはできまい。


 そのために数多くの優秀な文官と共に、何年も前から入念な下調べと準備を進め “交易に有利な穴” を探っていた。


 結果、ここ数年のヨーデル王国の税収は爆発的に増加し、尋常(じんじょう)でない量の魔石が(ちまた)に溢れているという。


 『魔族』の襲来も他国に比べて少なく、被害も最小限に食い止めているらしい。

 珍しい “新商品” や “特許“ が市井の暮らしを豊かにしているという。


 『魔族』の支配する『魔国』がすぐ近くにあるにも関わらず・・・だ。



 “その秘密を探れ”



 皇帝陛下直々の命であった。



 「マイショナー殿。どうかされましたか?」

 国境から迎え入れたノルグナー・エイトラディス公爵が、優雅に紅茶を傾けながら尋ねた。


 「え?・・・いや・・・これは、馬車・・・ですよね?」

 我ながら呆けた質問だ。


 荒れた道でも微動だにしない。

 窓の外の景色だけが流れて行く。


 ただ広く、豪華絢爛(ごうかけんらん)な “部屋” が移動中の馬車の中とは・・・冗談にしてはタチが悪すぎる。


 「これは失礼。()()()()()のほうが良かったですかな?特使殿に窮屈(きゅうくつ)な思いをさせるのもいかがなものかと、王宮のものを用意させていただいたのですが?」

 緩やかに微笑む。


 「と、とんでもない!このような立派な馬車をご用意いただき、身に余る光栄というもの。帝国への自慢話となりましょう!!」


 「それは何よりです。奥の部屋は寝室となっております。不安であれば護衛の者の寝台もございます。その他必要なモノがあるなら、その都度おっしゃっていただければ可能な限りご用意させていただきます。」


 「て、丁寧なご配慮、痛み入ります・・・失礼ながら。公爵殿は・・・」


 「私ですか? お気になさらず。個人の馬車を同行させておりますので。」


 「個人の・・・コレと同じような馬車を?」


 「コレほど広くはありませんが・・・このような言い方は無作法かとも思いますが、敢えて言うなら “私の秘密基地” のようなもの・・・でしょうか。」

 微笑みが深くなった。


 「ひ、秘密基地・・・ですか・・・いったいどのような・・・」


 ノルグナー公爵は人差し指を唇に当て、囁くように呟いた。

 「秘密、基地・・・ですよ。」




                       ◆◆




 ダンジョン45階層。


 前回は見過ごした迷路の中間あたりに見つけた “魔物部屋”。


 『ゴブリンジェネラル』やら『ゴーレム』やら『吸血オオコウモリ』やら『アイビーテンタクルス』やら『グレムリン』やら『サイクロプス』やらが満員電車のように詰まった部屋だ。



 ・・・中間層だぜ?



 流石にちょっと引いたが、すかさず “結界” で三分の一ほどを拘束し、そのまま “空間魔法” で “ひき肉” にしてから突入した。


 《 こんなのが出て来たら、この階層は『モンスターパレード』だ!ヘタすれば『スタンピード』だな。みんな踏ん張れ!!》

 《 了解!》

 《 ほいよ!》

 《 もうヤダ~!》

 《 にゃ!》


 なんか泣き声が聞こえたが、気にしない。

 俺も遠慮せず、能力を全開放した。


 ・・・ってか、こいつら “ケンカ” しないのか?

 さすがダンジョンww




 小一時間ほどだろうか。


 流石に体力も魔力もエンプティだ。


 《 みんな・・・生きてる?》

 《 はい・・・かろうじて・・・》

 《 生きてるよ。疲れたけどね・・・》

 《 死む・・・もう死ム・・・》

 《 にゃ》


 無事で何よりw


 「部屋の中央に集まって・・・シェルター開けるよ。」

 全員 “血まみれ” だ。


 ダンジョンの魔物の返り血は放っておけば消えて無くなるが、 “全力疾走を繰り返した後のような汗” はそのままだ。


 はやく風呂に入りたかろう。


 風呂・・・もう一つ作ろうかな・・・

 湯舟は広いが、一つしかないからな・・・


 俺も風呂に入りたい・・・


 なけなしの魔力で我が身を『クリーン』したあと、空腹を埋めるべく台所で湯を立てた。




 体感で翌日。


 ゆっくり疲れを癒し、足の踏み場もないほどの魔石が転がる “魔物部屋” に戻った俺達は、まず回収に精を出した。


 女性陣のポシェットが限界に近いので、さらに “拡張” したがね。


 ・・・陛下に献上したヤツと “同程度” か?


 気にしまい・・・気にしたら負けっていうヤツだw



 目敏いメイさんが、最奥の宝箱を見つけた。


 「おっき~ね~w」

 「ってか、デカ過ぎでしょ。」

 「スズネの背の倍以上はあるんじゃないか?」

 「・・・ギャップ萌えと言うものでは?」

 「にゃ。」


 出て来たのは特大のハルバード。

 普通のハルバードは2メートルくらいだが、コイツは3メートルをゆうに超えている。



 鑑定:古代神ヘーパイストスの失敗作。超高密度ミスリル性。神級に一歩及ばずレジェンド級。残念。



 いやイロイロ突っ込みたいんだが・・・


 ヘーパイストスって、ギリシア神話の?

 実在したの??


 超高密度?

 何ヤらかしてんの??


 残念?

 『鑑定君』??

 キミいつから『仮想自我』持つようになった???



 「・・・ともあれ回収しとこうか。新しい武器の素材になりそうだし。」

 

 《 俺の魔力通るかいな?》


 《・・・ やればできるのでは?・・・たぶん・・・》

 脳内のコクウが、そっぽ向いてやがる。


 《 たぶんって・・・》



 「だね。」

 軽々と持ち上げ、ポシェットにしまい込むメイさん。


 「・・・大した筋力だな。」

 メルロスさんが関心しきりだった。


 その気持ち解るよw


おっちゃん、三点倒立中・・・


相方 「犬〇家の一族w」

おっちゃん「勝手に殺さないでくれる?」


相方 「血圧上がりますよ?」

おっちゃん「心配してくれてんの?」


相方 「ご冗談をww」

おっちゃん「おい・・・」


次回更新 7月1日(爆泣)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ