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49 クランとハリセンと立場


 「1階層はゴブリンとスライムだっけ?こんなにいたんだね~」

 メイさんが影から襲い掛かるゴブリンや、天上から垂れて来るスライムを切り裂きしながら、能天気に呟いた。


 「日頃は沢山の冒険者が常駐してるからね~。湧いて出た端から駆除されてるらしいし・・・」


 「放っておくとスタンピードを引き起こす原因にもなりますから、1、2階層の『掃除』はギルドでも推奨されています。」

 スズネさんの経験談w


 「へ~、ただの魔石の取りあいじゃなかったのか。」

 メルロスが、杖の先で床から滲み出たスライムの核を潰す。


 「低級の冒険者の小遣い稼ぎになってるのは確かですね。経験も積めますし。」

 ひょいと出て来たゴブリンの頭を、スズネさんの “糸付き苦無” が貫いた。

 結んだ糸を手繰り寄せて素早く回収。


 「生活そのものがインターバル(1階からの繰り返し)になってるんだね。命懸けだけど・・・」

 俺は・・・のほほんと歩いている。

 出番ないんだよな~



 「そろそろボス部屋だ。」

 先頭のアッサムさんが声を上げた。


 「じゃあ皆さん。ここらへんで予行演習です。散開しましょう。金糸鳥の皆さんはボス部屋前で待機。他の皆さんは各自チームごとに身を隠して、合図を待ってください。リサさん『ハリセン』は持ってますね?」


 「大丈夫よ。」


 「じゃあ、始めましょう。散開。」


 「「「「おう!」」」」




 「・・・コゼフ。どうだ?」

 1階ボス部屋前で待ち構えるアッサムが訊ねた。


 「いやな気配がぞろぞろ集まってきやがる。そろそろいいんじゃねぇか?」

 「よし。リサ。合図だ。」


 「はいよ。せーの!」

 神官のリサが振りかぶり、思い切り『ハリセン』でボス部屋のドアを叩いた。


 スパーン!という小気味よい音が、1階層の通路に響く。


 「・・・来るぜ!頼むぜ!ゼアル!」

 「おう!!」

 通路のあちこちで怒声と斬撃の音が鳴り響いた・


 「リサ!もう一発だ!いつでもボス部屋に飛び込めるようにしておけ!」

 「解ってる!」


 リサの『ハリセン』が軽快な音を鳴らした。


 斬撃の音が、一層激しくなる。



 やがて、豪快な笑い声とともに、各チームのメンバーがボス部屋に集結した。


 「がははは!魔石拾いがこんなに楽しいと思ったことはないぜ!」

 グレップが豪快に笑う。


 「なんだ。おまえらだけで殺っちまったのか?少しは残しとけよ。」


 「悪ぃ悪ぃ!リサのネーちゃんがボス部屋叩いた音が響いたら、ゴブリンの野郎どもが一斉にボス部屋のほうを向きやがってよ。儲けモンだったぜ!」


 「だな。切ってくださいとばかりに背中向けやがったから、バッサリ殺っちまった。」

 「俺もだ。スキだらけだったな。」


 「どうやら上手くいったみたいですね。怪我人はいませんか?」

 俺はぐるりと見まわした。

 

 「おうよ!ピンピンしてるぜ!」

 グレップが豪快に笑う。


 「何よりです。では『金糸鳥』の皆さんは、予定通りにボス部屋に入ってください。その後は順番通りに・・・」


 「分かった。しかし『ハリセン』というのか?よく響くな。」


 「もともとは、遠い国の玩具だったようですよ?音の割にはそれほど痛くないので、よく子供たちが作って遊んでたみたいですね。」

 詐欺師が(うた)っておりますw


 「そうね。これなら私にも作れそうだし、魔物の気を引くにはいいアイテムね。」


 「甲高い破裂音は魔物には聞きなれないでしょうからね。ボス部屋でそんな音がすれば気になるでしょう。」


 「流石に目の付け所がちがうな・・・そろそろ行くぞ。向こうで待ってる。」


 「ご武運を。」



 「なあグレイ様。アレ、俺達にも作れるのか?」

 「簡単ですよ。紙とヒモさえあれば・・・折りたためば携帯もできますし。今回の実験で有効性が実証されれば、無料で作り方を教えますよ。」


 「そりゃありがてぇ。さすがグレイ様だ!」


 ホックホクのグレップをよそに、コクウが話しかけて来た。


 《 サラフィナ様の “爆笑ネタ” が増える可能性 “微レ存” ですね、マスター。》

 《 そう? “サラフィナ様 笑い死に計画” に光明が差した気でいたけど?》


 《 インパクトが弱すぎます。やはり “ツッコミ” には “ノリ” がないと!》

 《 いきなり “高度な笑い” 求めないでくれる?プロじゃないんだから。》


 《 良いかもしれませんよ?『魔神』倒して大道芸人w》

 《 一人でやってね。僕は普通の『冒険者』希望なんだから。》


 《 普通の冒険者は、いきなりB級スタートしませんよw》

 《 ほっとけ!》



 ボス部屋前で十分に休憩を取り、順番通りに2階層に降りた。


  「欠員はいませんね?では、2階層も同じ作戦で攻略していきます。目標は8階層です。」

 「10階層ではないのか?」

 俺の発言にアッサムが異を唱えた。


 「全チームが10階層経験者ですから、その気持ちは解りますが、今回はあくまで “実証実験” です。確実に帰還できる階層で()めるべきですし、今後も『金糸鳥』の皆さんや僕達が共に行動できるワケではありませんから、チームを変えてチャレンジすべきでしょう。」


 「うむ・・・そうか。」


 「では進みましょう。2階層はコボルトでしたね。今度はグレップさんのチームが(おとり)になってみます?」





 夕方

 グレイとアッサムはギルマスの執務室にいた。


 「では、今回の実証実験は成功とみて間違いないか?」


 コッカスの問いかけに、アッサムが答える。

 「そうだな。多少の怪我人はいたが、足を滑らせた拍子に魔物の爪が当たった程度で、あれは “事故” とみていいだろう。それ以外は全員無傷だ。あの作戦なら10階層より下に潜っても問題ないと思う。」


 「そうか・・・グレイ様『ハリセン』の作り方は公開していただけるので?」

 「勿論です。誰でも作れますし、ギルドで販売してもいいですよ。コレに関しては『無料』で公開させていただきます。あ、ただ条件が一つ」


 「何でしょう。」


 「今回の実験は、僕達や『金糸鳥』の皆さんが参加したからだと思われるかもしれません。面倒でしょうがメンバーを入れ替えて複数回、同様の実験を繰り返していただけないでしょうか?」


 「なるほど・・・解りました。日を変えて何回かやって見ましょう。グレイ様は参加されますか?」


 「申し訳ございませんが、さらに下の階層を狙いたいので・・・」


 「そうですな。わかりました。ご協力、大変感謝いたします。今回の件も含めてすべて王都のギルド本部に報告させていただきます。」


 「大袈裟にしなくていいですよ。ただの思い付きでしたし・・・B級ライセンスのお礼だと思っていただければ・・・」


 「それでもです。冒険者の死亡率を下げ、全体の実力の底上げを狙うために苦心していただくその姿勢には感銘(かんめい)を受けました。このコッカス。グレイ様の為に出来ることがあれば何でもおっしゃってください。微力ながらお手伝いさせていただきます。」


 「お心遣い感謝いたします・・・ではそろそろ、チームの打ち合わせがあるので、お先に失礼いたします。」





 「で・・・どうなんだ『勇者』チームの実力は・・・」

 退出するグレイを丁寧に見送り、席に着いたコッカスがアッサムに問いかけた。


 「底が知れんな・・・実際今回の実験では戦闘には参加しなかったが、他のチームメンバーの実力は相当なものだ。B級などという枠には収まらんだろうな。」


 「それほどか・・・A級・・・いやS級も狙えそうか?」


 「S級か・・・どうだろうな。本人が喜ぶかどうかは別だが。」


 「どういうことだ。」


 「普通の冒険者として世界を見て回ることが夢らしい・・・『魔王』討伐が終わった旅がしたいんだそうだ。」


 「S級だと国に縛られるか・・・」


 アッサムがふと笑った。

 「そのための商人ギルドらしいぞ・・・世界を見て回るのに冒険者に拘ることはないとも言ってたしな。」


 「・・・抜け目のないお方だw」




                      ◆◆




 「ところでさ、2階層の『立ち入り禁止区域』。誰かチャレンジャーいた?」


 ダンジョンの屋敷。

 いわゆる『勇者の屋敷』に戻った俺は、居間で寒冷地の装備チェックの最中に、ふと気になってスズネに聞いてみた。


 「何組かいたようですが、全て帰ってこなかったようです。最下層に繋がってるんじゃないかともウワサされてますね。」

 シナモンティーの香りに顔を綻ばせながら答えた。


 実は。採取した『ダンジョンのシナモン』の全てを送っていない。

 せいぜい半分程度だ。

 老後資金などと言うには早すぎるが、驚きの鑑定結果が出て来たので残しておくことにした。


 素材が揃ったら、改めてみんなと相談しよう。



 「最下層ね。おっかないなぁ」


 「いずれは行くつもりだろう? そんな引け腰では話にならないぞ?」

 メルロスがソファーに寝そべって、クッキーを頬張りながら揶揄(からか)って来る。


 いや、だからソレ非常食なんだが?


 「いずれはね。けど今最下層に行ったら悲しい運命に嘆く未来しか見えないよ。」


 《 ソコは “おいしく頂かれる” の間違いでは?》

 《 コクウ君。一言多い。》

 《 失礼w》


 「でも『あるある』っちゃ『あるある』よね~ スタンピードの “引き金” になるヤツ。」


 「? そんなのあったっけ?」


 「知らない? 『おっさんのアナザーワールド漫遊記』。ステータスがバグったまま転移しちゃったの。アニメにもなったんだよ?」


 《 転生したバグのジサマならココにいますけどね。》

 《 コクウの脳内音声スイッチをOFFにしたい件・・・》

 《 こりゃまた失礼ww》


 「ああ、キミ達の前世の話だな。到底信じられんが、その発想や深い造詣(ぞうけい)はキミ達の年齢や環境を(かんが)みても、他に説明が付かんしな・・・」


 話を聞いた時のメルロスの百面相もなかなかのモンだったけどねww


 「おっさんが転移する物語は、吐いて捨てるほどあったからね・・・ってか、おっさんがおっさん主体(メイン)の物語読んでもな~って話さ。」


 「それもそっか・・・面白かったけどね。けっこうハチャメチャでww」


 《 ココにも一人・・・》

 《 うるさいってば!》


 『仮想自我(コイツ)』。

 バグってないか?



 「いつ出発なさいますか?」

 スズネが食器を片付けながら聞いてきた。


 「寒冷地対策はこんなもんかな? もっとイロイロ欲しいトコだけど、キリがないからね。イザとなったら『シェルタールーム』で対策を考えよう。出発は明日でいい?」


 「りょうか~い。」

 「頼りにしてるよ。」

 「(かしこ)まりました。」




                      ◆◆




 数日後。


 「あなた様。ノルグナー公爵閣下からお手紙が・・・」


 アストラス家。

 執務室。


 もうすぐ昼になるころ、ミレイが一通の手紙を持って来た。


 「公爵閣下から? なんだ?」

 ノルグナー家の紋章を確認し、丁寧に封を開く。


 読み進めるうちに、ホウレイの眉間に深い皺がよってきた。


 「公爵様は何と?」

 言い知れぬ不安を抱いたミレイが聞いてきた。


 「王家の第三王女と閣下の姪との見合い話だ・・・」

 「まあ!お二方から!? サルカスったら、いつの間に・・・」

 ミレイの顔が花開いたように輝いた。


 「いや、サルカスではない・・・グレイだ・・・」

 「グレイに?」


 「危惧(きぐ)してはいたがな・・・どうやら本気でグレイを取り込みたいらしい。」

 「・・・どうなさるおつもりですか?」


 「どうもこうもない。受けるしかあるまいよ・・・幸か不幸か、アイツはまたダンジョンに入ったばかりだ。しばらくは出て来ないらしい・・・その間にサルムンド侯爵閣下に相談してみるか・・・」




                     ◆◆




 俺の名はサルカス・アストラス。


 アストラス家の嫡男で、もうすぐ10歳になる。

 今は王都にある『学園』の寮に住んでおり、来年には卒業予定だ。


 あくまで “予定” だがな。



 学園の卒業試験は厳しい。


 入学は、魔法と学費が払えれば身分に関係なく入学できるが、卒業試験はこれまで学んできた全てが試される。

 学問、魔法、武術、全てだ。


 どれも一定以上の成績を納めねば卒業できないし、留年は3回まで。

 3回目の卒業試験で合格できなければ即『退学』となり、学歴も “白紙” になる。


 学園では “秀才” などと評価されてはいるが、気を抜けば来年もこの寮の世話になりかねない。


 しかもつい最近、我が家は “陞爵(しょうしゃく)” したばかりだ。


 上級貴族の仲間入りをしたばかりの嫡男が留年などという汚点を残す訳にはいかない。


 加えて “陞爵(しょうしゃく)” のきっかけ” を作ったのは、弟のグレイらしい。


 父上は何も言わないが、噂ではどうやら王宮側が弟に “ちょっかい” を仕掛けたらしい。

 それに怒った弟が、税収を “爆上げ” することで、王宮をパニックに(おとし)めたとか・・・


 スケールが大きすぎて笑うしかない・・・


 学園で “秀才” などと持て(はや)されているのが恥ずかしいくらいだ。



 弟には『勇者』という称号が付いている。


 それが発覚したのは3歳の時。

 俺が6歳の誕生日を迎えて間もない頃だ。


 弟が生まれた時はうれしかったが、すぐその “異常性” に気付いた。

 人の話に耳を(そばだ)て、顔色を(うかが)(はか)ったように泣き出す。


 まるで “すべてを理解” しようとしているかのように・・・


 俺はいつしか、弟を警戒するようになった。


 決定的なのは “ビート粉” の発見だ。


 きっかけはメイドのマーサだが、飢饉(ききん)の際の非常食でしかないビートを、少しの工夫で甘味に化けさせた手際は、俺には人の皮を被った “別の何か” でしかないように思えた。


 気持ち悪かった。



 以前から俺は父上には何度も進言していた。

 追い出すべきだと・・・

 さもなくば亡き者にすべきだとも・・・


 最初は馬鹿を言うなと怒られもしたが、マーサの報告を受ける度に、少しずつ考えが変わってきたようだ。


 そして、

 ついに「お前は何者だ」と、父上自らグレイに問いかけた。



 その答えが『勇者』などとは・・・

 しかも『神子』でしか、その啓示を受けることができない『サラフィナ神』と会ったなどとは・・・


 荒唐無稽にも程があるというものだ。


 だが、その後の弟はまるで “水を得た魚” のように生き生きとしていた。


 嫡男である俺を盛り立てるべく、水車小屋の実験を俺にまかせ、風車小屋の設計のアドバイスを繰り返した。



 奇跡を何度も起こした。



 ドンビシャスの教会で “地揺れ”を起こし、王都の教会では “天使” が舞い降りて『勇者』であることを示したという。

 父上も目の当たりにしたという。


 こうなると受け入らざるを得ない。


 俺は他の同年代の貴族子息より、ほんの少し “出来が良かった” ため、学園入学のために王都に旅立ったが、その後もグレイの噂は俺に耳に入って来た。


 曰く、『不毛の地』に難攻不落なダンジョンを作った。

 曰く、ダンジョンの近くに湖を作った。

 曰く、王宮を脅し、ダンジョン近くに『勇者の屋敷』を作らせた。

 曰く、『デビルスマイル』を名乗り盗賊狩りで名を馳せている。

 曰く、美女と美少女を侍らせて遊び歩いている。


 話半分にしても “どこの化け物だ” と言いたくなる。


 もはや “アストラス家の跡目争い” どころではない。

 国家を巻き込む騒ぎだ。


 先日のマリアの誕生会で問いただそうとしたが、アイツが “ダンジョン産のネックレス” を妹にプレゼントしたおかげで大騒ぎとなり、それどころではなくなった。


 (けむ)に巻かれた気分だ。



 「兄様?どうなさいました?」


 妹のマリアが俺を見つけて声を掛けてきた。

 伯爵家になったせいか、常に数人の女子を引き連れている。


 妹は性格的に実家の権力を(かさ)に横暴な振舞いをするようなことはないだろうし、ついて回る女子の中に、隠してはいるが手の平に剣ダコを作り、隙のない身のこなしをする男爵家の子女もいるので護衛にはなるだろう。


 「いや、グレイのことをな・・・お前はどう思う?」


 廊下でする話ではないが、学年も違うし、こういう時でなければ話す機会もあまりない。


 「グレイ?」


 マリアは何が言いたいのかよく解らないとでも言いたげに小首を傾げた。

 だが、周りの女子には伝わったようだ。


 「弟様のことですね?お噂はかねがね・・・」

 「『勇者』様の称号をお持ちとか、学園には入学されないのでしょうか?」

 「ダンジョンの攻略にお忙しいのでは?先日のお誕生会のプレゼントは素敵でしたわ。」


 キャイキャイと在らぬ方向に話題が向いたようだ。

 聞くべきではなかったか・・・


 「いや。何でもない。邪魔したな。」


 「兄様。」


 (きびす)を返そうとした俺に、妹が声を掛けてきた。


 「何だ。」


 「グレイはグレイ。紛れもなく私達の弟よ。」

 妹は自信に満ち溢れたように断言した。


 「・・・そうだな。」


 俺はそう答えると、今度こそ(きびす)を返した。



おっちゃん「ネタが~ネタが~~~」

相方 「がんばれ~ww」


おっちゃん「日本語忘れたい・・・」

相方 「協力しましょうか?」


おっちゃん「ちょ!ちょっと待って!!その手に持ってるのナニ!?」

相方 「ナニって、先日の日曜大工の端材ですが?」


おっちゃん「やめて~~~~!」

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