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45 悪夢のようなソレと現実


 「んぎゃ~~~!!」

 「く、くるな~~~~!!!」


 野生児とエロフがパニックだ。

 神獣であるノワールも、とっくに “影” に非難している。



 ここは50階層。



 一度は通ったルートなので、ジョギング感覚で各階層を突破し、な~んも考えずに到達したのだが・・・


 いや・・・考えなかったワケでもないな・・・


 巨大怪獣みたいな昆虫型の魔物が生息するフィールドで、いないほうがオカシイ。


 むしろ、

 いて欲しくない・・・

 いないで欲しい・・・


 などという、そこはかとない願望が “ソレ” の存在を否定していたんだよな~



 で。

 イザ出会ったら、このザマだ・・・


 スズネさん気絶してるしww


 「二人ともコッチおいで!シェルタールーム開けるよ!!」


 「びゃ~~~!ちょっとまって~~~」

 お~野生児パニックww


 「まqいp@おspね!!!」

 宇宙人かなwww


 結界を広げ、黒々とテカる “ソレ” の侵入を防ぎ、転がるように逃げ込む二人を見届けて閉じた。


 《 さすがにコレは引きますね。マスター》


 ポツネンと残る俺の結界に覆うように群がる『G』



 こうして見ると、一匹一匹がでかい。

 今は亡き『ジャイアント〇場』さんの靴底よりデカいんじゃないか?


 しかも、その後ろにドンダリデの壁を倒したような “黒々とテカるG” が、どこぞののオヤブンみたく居座っちゃってるし・・・


 「う~ん。前回は見なかったんだがな~ 生態系が崩れちゃったかな?」


 《 ありえない話ではないですね。『G』のスタンピード》


 「ソリアン様が見たら卒倒しそうだな。降りて来ないかな~」


 《 その前にシバかれますよ?ボロゾウキンになりたいですか?》


 「うん。さっさと終わらせよう。どうやって倒すかな~」


 《 単純に焼き払っては?》


 「森の中で?ほかの冒険者はいないみたいだから構わないけど、魔石残るかな?」


 《 物欲に支配されてません?》


 「金欠だからね。今は鉄銭一枚でも惜しいんだよね。」


 《 食材の貯め込み過ぎですよ。今すぐ飢えて死ぬわけじゃないんですから、さっさと片付けてしまいましょう。》


 「? もしかしてコクウも苦手?」


 《 今見えてるのは全て『G』の腹側でしょう?気持ちのいいものじゃないですね。》


 「・・・たしかに・・・」


 仕方ないので “デカいファイヤーボール” を数個作り、真上から結界に向けて落とした。


 「うは~ 地獄絵図・・・」


 《 言い得て妙ですね。クサイです。》


 「ちょっと我慢。“親分さん” 焼いてから避難しよう。」


 《 さっきので、ちゃんと焼かれてくれてるといいんですが・・・》


 「あの程度で? 期待できないね~」


 結界で階段を作り、上空へ移動。


 思った通り、元気そう。

 ってか、まだ “ちっさいの” が目一杯残っとるがな!

いや十分デカイんだけども・・・


 数百?・・・千はいるか?


 「コクウ。『ナパームの魔法』作れそう?」


 《 イメージ下さい・・・ああ、ハイ。少々お待ちを。》


 飛んでくるヤツラを『ウインド・カッター』で切り裂いて時間を稼ぐ。



 空間魔法・・・だめだな。効果範囲が狭すぎる。

 中途半端な傷じゃ、暴れてくれって言ってるようなもんだ。



 げ!

 “親分さん” が羽を広げやがった!!

 根本へ『ファイヤーランス』の乱れ打ち!!!


 飛んでくれるなよ~

 流石に空中戦じゃ分が悪い。



 《 出来ました! 少々反動があるのでご注意を!》


 「おっしゃ!ナパーム!」

 《 そのまんまやんww》


 仮想自我のツッコミに答える余裕もないほどの反動。


 「んが!あっつ~~~~~!!」

 手の平焦げとるし!


 《 結界で保護した方がイイみたいですねw》


 「先に言ってよ!ったく!」


 結構な魔力消費だ。

 ヒールによる治療は後回しにして、結界で手の平を保護。

 “ナパームの乱れ打ち” を決行した。


 《 こんがり焼けたようですね。早く非難しましょう。クサイです。》


 「・・・同感・・・」


 “親分さん” が燃えながら腹を見せ、ピクピクと痙攣しているのを確認してからシェルタールームに飛び込んだ。




 「うああ~ん!」

 「怖かったよ~!!」

 「ぐへ!」


 シェルタールームに戻った途端に、飛び掛かってくる二人の女子。

 わかったから、頭突きはやめて欲しい。


 「と・・・とりあえず、燃やせるだけ燃やしといたから、少し休もうか。スズネは?」

 「あっち。」


 ソファーの上で頭抱えてらっしゃるw

 ま、無事で何よりww


 「すみません。お役に立てず・・・」

 「気にしなくていいよ。得手不得手は誰にでもあるもんさ。」


 「アイツちゃんと死んだ?」

 「しっかり焼き尽くしたんだろうな。」

 こういう時だけは、しっかり “女子” なんだな。


 発言は物騒だけどw


 「問題ないよ。まだちょっと臭いから、今日はココで休もう。」


 「さんせ~」

 「はやくこの階層から出ないとな。」


 そうだな。

 三人そろって気絶でもされたら、目も当てられん。



 翌朝


 渋る三人を残して。俺一人が外に出た。

 またパニックを起こされるのは、ちょっと危ない。


 空中から、出口を確認。


 「ノワール。コクウ。サポートよろしく!」

 《 了解!》

 「にゃ!」


 結界を並べ、全速力で駆け抜けた。




                ◆◆




 私の名は『マリア・アストラス』9歳


 アストラス伯爵家の長女よ。


 お父様の名は、ホウレイ・アストラス伯爵。

 お母様は、ミレイ・アストラス。

 お兄様は、サルカス・アストラス。

 弟は、グレイ・アストラス。『勇者』の称号を持った有名人よ。


 伯爵家と言っても、ついこの間 “陞爵(しょうしゃく)” したばかりの “新米” なんだけど・・・

 上級貴族でも最下位なんだけど・・・


 でもいいの。


 他の上級貴族様方も納得して下さっているもの。

 むしろ「遅い」と囁かれているほどよ。


 だって税収が例年になく増大したんだもの。

 過去最高らしいわ。


 その “きっかけ” を作ったのが、私のお父様であるホウレイ・アストラス。

 当時子爵だったお父様は、その立場を利用して周囲の “男爵家” や “子爵家” に弟が考えた “新農法” を広め、その効果に確信を得た上級貴族の皆様方がマネしたそうよ。


 しかも無料で公開したんだって!

 『無料』よ!

 そのおかげで、国は例年にない大豊作!


 税収も爆上がりして『王宮』はてんてこ舞いだったらしいわ!


 その恩恵もあって「アストラス家の陞爵はまだか」とか「陛下の目は節穴か」とか囁かれていたんだけど、ようやく重い腰を上げてくれたわ。


 私が学園に通っているうちに ”陞爵(しょうしゃく)“ の吉報を受けて、心底安心したのよ。

 だって学園の皆様の私を見る目が変わったもの。


 一目も二目も置かれるようになったんだもの。

 私も鼻が高いわ。


 その分 “マナーのレッスン” が厳しくなっちゃったんだけど・・・

 それは仕方ないわね。


 だって “上級貴族の仲間入り” をしてしまったんですもの。


 お昼ご飯も “上級貴族ご用達” のメニューなのよ。

 とっても美味しいのよ。


 諸先輩方の “マナーの目” がキビシイけれど・・・


 でもいいの。

 オイシイは “正義” なのよ!



 オイシイといえば、先日御呼ばれした “王宮の茶会” も美味しかったわ。

 見たことも無いキレイな茶菓子が沢山あって、どれから食べたらいいか迷ってしまうほどだったわ。


 王妃様は「遠慮なく食べなさい」とおっしゃって下さったけど、アレは引っ掛けよ。

 食べ方や作法を見て、教育がちゃんとできているかチェックしてるんだわ。


 そのくらい私にも解るわ。


 厳しくなった “マナーの先生” の “いいつけ” を守って、美味しく頂いたわ。

 お母様は何故か苦笑してたけど・・・


 でもいいの。


 弟が『お土産』にくれたネックレスをしていったから。

 ダンジョン産のネックレスよ。

 とてもキレイなのよ。


 流石の王妃様も目を()いてたわ。

 とっても欲しそうだったもの。


 でもあげないの。


 だって『勇者』である大切な弟が、ダンジョンから持ってきてくれた『お土産』なのよ。

 とってもとっても大切なモノなのよ。

 私の “お気に入り” なのよ。


 “お気に入り” はそれだけじゃないわ。

 先日頂いた “王宮のお菓子” だってそう。


 あの甘さは『ビート粉』を使ってるわ。

 香りで隠しているようだけど、あの優しい甘さは絶対そうよ。

 お肌にも良いしね。


 アストラス領の一番の “売れ筋” なのよ。



 売れ筋といえば『水車小屋』も大人気らしいわ。


 川の流れを利用した機械なんですって。

 お兄様と『勇者』である弟が二人で作ったのよ。


 よく解らないけど、農家のお仕事が(はかど)るようになったらしいわ。

 税収が爆上がりした原因の一つでもあるそうよ。


 とってもとっても嬉しいわ。


 だって皆様が笑顔で話しかけて来るんですもの。

 「おかげで楽になった」とか「父が(よろ)しくと言っていた」とか・・・


 領地に戻っても、いろんな人が笑顔なのよ。

 私も嬉しくなってしまうわ。



 先日の “お誕生会” の時もそうだったわ。

 右も左もわからない “陞爵(しょうしゃく)” したての家の、私の “お誕生会” に沢山の人が来てくれたの。

 皆 “笑顔” だったわ。


 “侯爵子息” や “公爵子息(次男)” もおいでになってくださったわ。

 とってもキレイだったの。

 零れるような “笑顔” がとっても素敵だったわ。


 でも知ってるの。

 彼らが欲しいのは “私” じゃないんだって。


 彼らが欲しいのは “血” 。

 『勇者』を生んだアストラス家の “血” が欲しいのよ。

 国を富ませた “優秀な血” が欲しいの。


 そのくらい私にも解るわ。


 だから私も笑顔を作るの。

 ”私はそんな安い女じゃありません” って、にっこり笑うのよ。


 言葉にはしないわ。

 ニッコリ笑うだけ。

 それだけよ。


 だって “マナーの先生” が言ってたもの。

 上級貴族はいかなる時も笑顔でいなさいって・・・


 疲れるけど、そういうものだって言ってたもの。

 お母様も笑顔を絶やさないもの。

 私にもできるわ。


 だから・・・


 “私の王子様” はまだ現れないけれど、きっとどこかで見守ってくださってるわ。

 お兄様のように頭が良くて、弟のように『勇敢』な “私の王子様” が・・・


 きっと私が “成人” するのを待ってくれているのよ。

 きっとそうよ。


 だから私は笑顔でいるの。

 立派なレディーになれるように。


 弟がココにいないのが、ちょっと寂しいけれど。

 きっと “素敵なお土産” を持って帰ってくるわ。


 そうしたら “とびきりの笑顔” でこう言ってあげるの。

 「ありがとう。」って




◆◆




 「姉様のお土産探さなきゃ。」


 なんとか50階層を突破した俺は、階段の途中でスズネ達と合流した。


 「どしたの?急に?」

 「何か思い出したのか?」

 半べそ二人組が思い思いに話しかけて来るが・・・


 「いや、なんかそういう感じがした? “おねだり” されてるような?」


 「キミの姉君だからな。そういう不思議な力を持っていても驚かないが・・・」

 エロフが揶揄(からか)い気味に口角を上げた。


 「気のせいかな?いや・・・あながちそうとも言い切れないような・・・」


 「50階層には戻れないよ。戻りたくもないけど・・・先に進むしかないんじゃない?」

 そうだな野生児君。俺も嫌だww


 「そうですね。とは言っても、そうそう都合よく出てくるものでもありませんが・・・」

 スズネさんの正論が、現実を突きつける。


 「だよね。とりあえず “ダメ元” で探してみるけど。イザとなったら町で何か探すかな?」


 「あたし『ロザニーのケーキ屋』がいい!あそこのパイが絶品なんだよね。」

 「ボクも賛成だ。サクサクの歯触りとアッポとシナモンの相性が抜群にいい。」


 「自分のお金で買ってね。今 “金欠” だから。馬車の工賃入ってくるのは、しばらく先の話になりそうだし。」


 「ちぇ!ケチー!」

 「借金は貴族の特権だろ?」


 「そんな特権ないよ。逆はあるけど。」

 「逆? 知らないな」


 「ノブレス・オブリージュ。貴族や上流階級とかの財産・権力・地位を持つ者は、それ相応の社会的責任や義務を負うという道徳観のこと。早い話が “借金するくらいならガマンしろ” っていうことを遠回しに言ってるんだよ。」


 「そうなのか? 貴族の借金は踏み倒すのが常識(セオリー)のようだったが?」


 「ヨソはヨソ。ウチはウチさ。父上も不要な借金は嫌ってたしね。少なくとも今ある魔石が(さば)けるまでは “お土産” は期待できないな。」


 「あー。ギルマス頭抱えてたもんね。魔石の多さに・・・」


 「値崩れ起こしても困るから、半分も出さなかったけどね。森で掘り返した木は『材木商』さん達が喜んだけど、原木のままだって買い叩かれちゃったし・・・売ったお金も調味料とかでほとんど消えたし・・・どっかに金貨落ちてないかな・・・」


 「夢見るようになったらオシマイだな。せめて何か珍しい素材でも探そう。」


 エロフの(あわれ)みの籠った視線が痛い・・・



次回投稿は・・・6月14日のヨテイ・・・


おっちゃん「って、この日ってさ・・・」

相方 「がんばれw」


おっちゃん「いや、がんばれって・・・」

相方 「聞こえません。」


おっちゃん「聞こえませんって・・・温泉は?」

相方 「だから書いといてくださいよ。予約投稿があるでしょ?」


おっちゃん「・・・どうやんの?」

相方 「(呆)」

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