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43 壁 その4


 さて一気に人が増えたので、俺の負担も大分楽になるはずだ。


 何せ領界を(また)ぐごとに領主へのお伺いを立てなきゃならないという手間暇を代行してくれるってんだから、そりゃストレスも軽減するわw


 代行者の皆様に感謝ww



 300メートルほど先に、トリアデ子息が白旗を持って立っている。その周囲にはダースさんや、数人の戦闘のできる神父様達が控えている。


 メイとメルロスは馬に跨り、検問所の壁の上端で待機している。

 作った壁を上からチェックする係だ。


 スズネは馬車で俺と並走。

 疲れたらその都度休憩と、ポーションの補給係だ。


 「じゃ。行くよ~」

 俺は北東に向かって一枚目の壁を伸ばした。




 結界でイメージを作り、内部を土で満たし、水分を抜いて固める。

 さんざんやって来た作業だ。


 見る見る壁が形作られる。

 そしてダッシュ!


 《 スズネ。先は長いから “お馬さん” に無理させないで・・・程よいところで休憩して待ってるよ。》


 《 畏まりました。》



 300メートルという距離が、あっという間に詰まった。


 「す・・・すさまじいですね。」

 流石の子息も引き気味だ。


 さもありなんw


 「手っ取り早く済ませてしまいたいのでw 次は・・・アレですね?」


 返事を待たず壁を作る。

 で、ダッシュ!


 「メイ!メルロス!ちゃんと出来てる?」

 「問題なし!排水口の位置もバッチリよ!!」

 「無理するなよ!君が倒れたら元も子もないからな!!」


 「了解!」


 次の目標(白旗)まで、400メートルくらいか・・・


 うんざりするようなインターバルが始まった。




                      ◆◆




 「なに!もう出来ただと!?」


 王都。

 執務室。


 報告を受けたベルトナラキウス国王は、手にした羽ペンを思わず落とした。


 「そのように報告が上がってます。」

 ノルグナー宰相が、冷静にペンを拾い上げた。


 「まだ2カ月も立ってないぞ。本当か?」

 「ただいま確認に行かせていますが、間違いないかと。」


 「・・・化け物だな。」

 「今更ですね。」


 「完全隔離できたのか?」

 「いえ、2カ所ほど許可が下りなかったそうです。」


 「・・・ホウリムとデランテか・・・」


 「はい。ホウリム領は独自に壁を作るようです。おそらく、アストラス家に借りを作りたくないのでは・・・」


 「何もせぬよりマシか。デランテは?」

 「ドンダリデ領の汚染されてない領地が欲しいのではないかと・・・密かに侵攻の準備を進めているようです。」


 「馬鹿が!欲に目が眩んだか。状況は?」

 「間もなく軍を進める頃かと・・・どういたしますか?」


 「サルムンドを行かせろ。ただし、手出しはするな。」

 「高みの見物を?」


 「そうだ。アンデッドどもが他領に入り込むようなら阻止しろ。隣接する領にも警戒を促せ。グレイは何してる?」

 「アストラスの実家でシバかれてるそうです。」


 「しば?・・・どういうことだ?」

 「魔法は超人的でも近接戦闘はまだまだだそうで、家の裏にある森では。毎朝グレイ君の叫び声が響いているとか・・・」


 「それは・・・笑うべきなのか・・・嘆くべきなのか・・・」

 「さあ?私には何とも・・・」




                        ◆◆




 「もう少し手加減してよ。」

 実家に戻って数週間。



 一通り壁を作った後ダンジョンの屋敷に戻り、預かっている馬車の “魔改造” に着手した。


 面倒ごとは一気に片付ける。


 ってか、ほどんど気分転換だ。

 1カ月以上も壁ばかり作ってたからな。


 大概飽きたよ。


 “馬車の魔改造” が、こんなに楽しく思えるとはねw

 王家の馬車なんか “調子ぶっこいて” めっちゃ広々と作っちゃったし・・・


 苦情来るかな?

 ま、いいやww



 んで・・・

 アストラス家の裏の森で現在・・・



 俺はタンコブにヒールを当てながら、恨めし気に野生児を睨んでいた。


 「な~に寝言言ってんの。訓練になんないでしょ?」

 手にした木刀の感触を確かめつつ、ナイフで手直ししながら答えた。


 レベルも50を過ぎると並の木刀では、すぐ折れてしまうので、余計な出費を抑えるため、木の枝を削いで使ってたりする。


 すぐ折れるけど、しなるんだよな。生木だから・・・


 しなる分、当たるとめっちゃ痛い。


 「文句あるなら『杖』使ったら?動きがぎこちないよ?」

 「お国の機関と言えど手の内を晒すつもりはないよ。」


 「ドンダリデの壁作っといてよく言うわ。」

 「だからさ。“奥の手” は最後まで取っておかないとね。」


 「あ~・・・」

 思い当たるフシがあったようだ。


 「あのエグいヤツね。」


 「レベルが上がって “進化” すれば、もっとすごいかも。某漫画の “ア〇ザーディメンション” みたいな?」

 「それいいかも・・・教えて?」


 「まだ未完成だし、適正ないデショ?」

 「完成してからでいいよ。気合で覚える。」


 ・・・ホントに覚えてしまいそうだな・・・


 「さ。タンコブも引っ込んだようだし、メルロスは?」

 野生児が木刀で示した先に、使い古されたゾウキン・・・もとい、エロフがいた。


 うちの “ワケありメイド団” はレベル関係ないからね~


 まぁ。元気そうで何よりwww


 「んじゃもう一本。メイ先生。よろしく!」

 俺は森の奥にいる『観察者』を無視すると。思い切って木刀を構えた。


 《 程よくイジメてもらわないとな。しっかり見とけよww》


 「こりないわね~ww」

 野生児がチラリと奥を見ると、ため息を吐いた。





 「今日は、この後教会へ?」

 ぱっかぱっかと馬車の荷台に揺られながら、スズネが聞いてきた。


 「行かないと暴動起きそうだからねww」


 ボロソウキンとなり果てたエロフに『ヒール』を当てた俺は、メイと共に『シェルタールーム』に放り込んだ。


 今頃は一風呂浴びてる頃だ。


 「そういえば、神父連中にも “草” はいたっけ?」

 「そうですね。今更ですが・・・」


 「そか。んじゃいいや。」

 「何がです?」


 「同じ話を何度もするのは飽きるからね。記録取ってるんでしょ?」

 「はい。」


 「矛盾を見つけたら教えて?いや、後日でもいいから皆の前で質問してくれた方が手っ取り早いか。」

 「良いのですか?」


 「構わないよ。その方が緊張感でるし、天上界も何か計画立ててるみたいだし・・・」


 「計画?どのような?」


 「さあね。最近『啓示』が降りて来ないからね。何かあるのかも?」


 空を見上げる。

 本日も快晴だった。





 教会の前が黒服で “ごった返し” ていた。


 《・・・神父が増殖しとる・・・》


 「おお!『勇者』様がおいでになられたぞ!」

 「勇者様!」

 「グレイ様!!」


 《 野郎どもに連呼されてもな~》

 とりあえず、スマイル~(汗)


 「皆様?どうされました?」

 手近な神父に声を掛けてみた。


 「はい!『勇者』様の奇跡を耳にし、強固な壁を目にした者達が、あなた様の『教え』を是非にと集まったようです。しかしながらこの街の教会がいささか小さく、立ち見すら許されぬ状況でして・・・」


 「・・・そうきたか・・・」


 「はい?」


 「いえ、こちらの話です。皆様は『お宿』は取れていますか?」


 「いえ。他の『冒険者』も居るのでなかなか・・・ですが御安心を!町長に頼んで、町の外にテントを張らせてもらっています!」


 《 町の外かよ!?》


 「・・・フランネ神父はどちらでしょう・・・」

 頭を抱えたいところだが、まず現状を何とかしなければ死人が出そうだ。


 「呼んでまいります!すこしお待ちを!!」




 「大変なことになってしまいましたね。」

 スズネさんが涼しい顔だ。


 「町の外なんてね。生き餌バラまいてるようなものなのに・・・」

 この世界の常識が通じないのかコヤツらは・・・




 間もなく・・・

 フランネ神父が息を切らして走って来た。


 「フランネ神父。コレはどういう事態でしょう。」


 「はい。壁が完成した後、我々はグレイ様のおっしゃられたとおりに各地に散って『伝道』を始めたのですが、壁を見た者達が、ぜひお話を聞きたいと集まりまして・・・」


 原因は俺でした・・・


 「・・・で、町の外にテントを?」

 「『不毛の地』なので問題ないかと、町長と話し合いまして。」


 「不毛の地といえど、人が集まれば魔物が寄ってきます。この世界の常識では?」

 「は、はい。私も説得を試みたのですが・・・どうしてもと・・・」


 「王都の教会は何と言ってますか?」

 「意見が分かれているようです。『原初の経典』の “教え” を広めるべきという意見と、『勇者』でありながらサラフィナ神様の啓示を受けられるグレイ様を支持するべきという意見とで分かれているようです。」


 なんてこった・・・


 「・・・わかりました。とりあえず僕は、これからダンジョンに向かう予定です。町の外にいる方々は、ダンジョンの町にある僕の屋敷に向かってください。少なくとも外より安全ですし、お話もそっちでしましょう。」


 「おお!「勇者の屋敷」にご招待していただけると!?」


 「全員を受け入れるのは無理があります。ドンビシャスの宿を取ってある方はそのままで・・・よろしいですか?」


 「はい!」




 “ちょっと変わった荷馬車” を先頭に、黒服の集団がぞろぞろと歩く。


 うん。恐い・・・


 「・・・どういう状況かな?」

 ようやく手に入れた灰汁石鹸でさっぱりしたエロフが、黒いゾンビのような集団に顔を引きつらせている。


 野生児も呆れ顔だ。


 「ドンビシャスの宿に泊まれなかった連中だよ。町の外にテント張ってたんだって・・・仕方ないから屋敷の敷地に移ってもらおうと思ってね。」


 「・・・馬鹿なのか?彼らは・・・」


 「そう言うなよ。軽々しく『伝道しろ』って言った僕にも責任あるしね。」


 「・・・そういうことか・・・王都の教会は何と言ってる?」


 「『原初の経典』の支持派と、意見が分かれてるってさ。」


 「・・・だろうな。で、どうするつもりだ?」


 「もちろんダンジョンが最優先。彼らも解ってると思うよ。ま、屋敷に着いたら少し話はするけどね。何を話すかは考え中。」


 「・・・穏便にな。」


 「教会を敵に回すつもりはないよ。それより、食糧の補給はできてる?」


 「問題ない。日持ちするものはシェルタールームに置いてるしな。半年ぐらいなら余裕だろう。」


 「・・・マジですか・・・」


 「たっぷりシゴいてもらったからな。ここらで鬱憤(うっぷん)を晴らさないとなww」


 「その(たくま)しさが羨ましいよ。」



 “お馬さん” は我関せずと、ぱっかぱっかと歩いていた。



次回 6月7日 日曜日に投稿予定です。


予定は確定にあらず!


ウソです。ちゃんと投稿します(汗)

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