39 イロイロあったんですw
朝・・・だと思う・・・
フィールドタイプでないシェルタールームに陽の光はない。
体内時計が頼りだ。
弱いライトの魔法で、部屋を見渡す。
女性陣はベッドで寝かせて、俺はソファーで寝たはずだが?
なぜかベッドで身動きが取れない状態でいる・・・
なぜか?
理由は明白だ。
右を向けばスズネさんの寝顔があり、左を向けば野生児が腕にしがみ付いている。
お腹の上にはネコマタ・・・影の中は飽きたか?
・・・で・・・
おいエロフ!
6歳児の股間を枕代わりにするな!!
ふてぇ野郎だ!
ソコはグリーン車だぞ!!
予約制なんだ!!!
売約済みなんだぞ!!!!
くノ一に縊り殺されるぞ!!!!!
ってかなんで一つのベッドに集まってんのさぁ!!!!!!
気が付くとスズネさんが俺をじっと見つめていた。
「おはようございます (浮気はダメですよ)」
「お・・・おはよう (存じております)」
「う~ん・・・おかわり・・・」
何の!?
急いで個室を作らねばならない気がした。
◆◆
時は過ぎ・・・
ドンビシャスの冒険者ギルド長、コッカスは焦っていた。
アストラス家の次男が王都から帰って来て、早々にダンジョンに潜ったとの報告を受けたのが2か月前。
いままで長くても1~2週間に一度は帰還して大量の魔石を持ち込んでいたが、今回は未だ報告が上がってこない。
8階層で突如出現したサイクロプスを撃破したとの報告があり、そのまま異変の調査に向かうと言ってたようだ。
後日。
他の中級クラスの冒険者達からは10階層、および15階層で魔物相手に無双していたと立て続けに報告があったため、異変はなかったか、もしくは解決したんだろう。
現在上級クラスの冒険者チームが30階層にチャレンジしているはずだが、帰還までにもうしばらく掛かりそうだ。
1カ月を過ぎた時点でアストラス領主に面会を申し出て、捜索隊の結成を進言したが、「問題ない」の一点張りだった。
どういう方法か知らないが、定期的に連絡を受けているらしい。
「気にする必要はない。全ての責任は私にある。」
「しかし・・・」
「万が一、アイツの亡骸を見つけても放置して構わない。」
そう言われると、ぐうの音もでない。
嫌われてはいないはずだ。
かりにも『勇者』の称号を持ち、数多くの発明や発見で領の財政と発展に貢献し、国を富ませた天才児。
類まれな戦闘力に助けられた冒険者チームも少なくない。
思い切って教会に現れた奥方様にも声を掛けてみたが・・・
「心配して下さっているのですね。ありがとうございます。ですが大丈夫ですよ?むしろダンジョンを楽しんでいるようですしw」
ころころと笑われた。
「・・・楽しんでるのですか?」
「そのようですね。」
「宝石の入った宝箱を見つけたそうよ。お土産に持ち帰るんですって。」
と、声を上げたのは御息女のマリア様だ。
「あ、これ!ソレは内緒の話でしょ!?」
「あ・・・こめんなさい。」
「聞かなかったことにして下さる?」
「は!勿論です!」
万事この調子だ。
あの神童にとってダンジョンは “遊び場” なのか?
「・・・たく・・・居ても居なくても人騒がせな次男坊だな・・・」
ガシガシと頭を掻いたコッカスは・・・考えるのをやめた。
◆◆
「・・・そろそろ一回帰ろうか? みんな心配してるみたいだし・・・」
ノワールから受け取った手紙を読んだ俺は、バカでかいハチの巣から取れる蜂蜜の採取に精を出す女性陣に声を掛けた。
採取・・・というより “つまみ食い” だな。
50階層のジャングルフィールドで3階建てのビルみたいにでかい『クワガタ君』と出くわし、野生児が48階層で手に入れたミスリルソードで、かったい外装を “なます切り” にしたついでに、近くにあった『ジャイアントキラービー』の巣を傷付けてしまったのだ。
8階層のフィールドは ”ちょっとした森” 程度で ”森を抜ければまたトンネル通路” が続くようなフィールドだったが、ここには『疑似太陽」もある。
加えてココの魔物の発育具合はどうだ。
木一本取っても樹齢千年は越えてそうな大木がジャングルを形成し、俺達が小人になった気分だ。
50階層で最初に出会った『ムカデさん』なんて悪夢のようにデカくて長かった。
おまけに外骨格も固くて野生児の剣しか通らないから、上半分を結界で固めて焼くしかなかった。
それでも全体に火が通るわけじゃないから、まあ暴れる暴れる・・・
昆虫の生命力半端ないよな。
そんなワケで・・・
文字通り “ハチの巣を突いた騒ぎ” になったワケで・・・
スズネさんの倍くらいある『蜂さん』が、数百という団体で襲い掛かられた。
「『良い武器』手に入れてはしゃぎたい気持ちは解るけどさ・・・もうちょっと周り見ようよ。」
以前より強固になった『結界』でチームをガードする。
怒ってんな~
「ゴメンて・・・けど。おっきなハチの巣だね。蜂蜜いっぱい取れそう・・・」
メイさんヨダレw
「そうだね~とりあえず、一匹ずつ中に入れて撃破しようか。おっと?手紙?」
多重思考で一匹ずつ結界内に入れ、女性陣が各個撃破してる間に手紙を読む。
そっか、もう2か月過ぎてんだっけw
『シェルタールーム』をチマチマ改装し、快適になった空間で十分すぎるほど休息を取りながら攻略を進めていたので、ほとんど疲れが残ってない。
水と食料も、まだ余裕があるので日付の感覚がマヒしていたらしい。
「なんて書いてあるんだ?」
スキあれば俺の股間を枕にしたがる『エロフ』が声を掛けてきた。
「じきマリア姉の誕生日だから帰ってこいってさ。お土産が待ちきれなくて騒いでるらしい。」
「それは大変だな。キミの姉は良きも悪きも素直だからな。」
「誉め言葉と捉えておくよ。早く帰らないと根に持たれそうだwww」
「しかしこの数だと・・・いつ迄かかるか・・・」
苦無でキラービーの脳天をブッ刺しながら、メイドが周囲を見渡した。
すかさず野生児が翅と首を刎ねる。
昆虫系はしぶといからね。
しかし、スズネさんの言う通り数が多すぎて疑似太陽の光が射してこないんだが・・・
「しゃーない。全員、最大魔法の準備。結界解くと同時に四方に発射。ノワール。サポートよろしく。空中は僕が引き受けるよ。巣を傷付けないように気を付けて。」
「「「了解!」」」
結界を解くと同時に空中に飛び出し、適当に切り裂きながら巣とは反対方向に誘導する。
足元では、火と風と水と影の魔法が入り乱れて渦を巻いている。
《 壮観・・・というより・・・エグイな・・・》
まるで小規模な爆発だ。
いや、持続時間がある分もっとタチ悪いか・・・
《 ・・・怒らせんトコ・・・》
俺の方は、というと・・・
陽動に引っかかったのは、半数に満たないか・・・
まあいい。
”空飛ぶガキ” 一人何とでもなると思ったんだろうw
ギリギリまで引き付けて・・・パクリ技の『太〇拳』!
某アニメの『太〇拳』はピカっと光るだけだが、俺のはアレンジバージョン。
多重思考と並列思考で、火魔法を乗っけている。
《 寄らばもれなく燃えますヨン♪》
ペカリンコと輝けば、余すことなくファイヤーランスの餌食である。
悪く思うなよw
大量の『丸焼き』が、燃えカスとなって落ちた。
「・・・こんなモンかね・・・あ、帰還石めっけw」
少し距離があるが『気配探知さん』が見つけたようだ。
魔物の反応も多い。
「こりゃ、頑張らないと間に合わないね~」
周囲の様子を見ながら戻ると、すでに女王蜂が倒されていた。
お腹空いてたのかな?
「うまいな」
「おいし~」
「このまったりとした甘みが何とも・・・」
口のまわり汚れてるよww
スズネさんの唇の端に付いた蜂蜜を指でぬぐって舐めてみる。
確かに旨い。
メニューの幅が広がりそうだw
《 今度カレーにアッポと蜂蜜加えてみようかな。》
ダンジョンに入る前に仕入れた香辛料をシェルタールームで調合して作ったカレーライス。
ちょっと辛めだが女性陣には好評だった。
辛さの好みは分かれるところだな。
俺辛いの苦手だしww
「ローヤルゼリーお土産にする?」
口の周りをベッタベタにした野生児が聞いて来た。
「そうだね。みんなで頑張りましたって報告しよう。食べなくても高値で売れるしw」
「問題ないさ。ダンジョン産のローヤルゼリーは長寿の妙薬として貴族の間では引っ張りだこだ。小瓶一つでもオークションに出せば金貨の雨が降るとも言われている。」
エロフ君の豆知識ww
「そうなの?」
メイさん。鵜呑みにしちゃイカンよw
鑑定では・・・やめとこ・・・夢見る貴族のヒンシュクを買いそうだww
「ま、あって損するもんじゃなきゃいいさ。量はどのくらいありそう?」
「軽く見積もって、樽一杯分はあるかと・・・」
スズネさん。相変わらすクールですね。
「領や学校、飛び地の運営にはもってこいだね。」
「一度に出したら値崩れ起こすぞ?」
「その辺は父上に頑張ってもらうさ。売らずとも利用価値はありそうだしw」
「腹黒だな。」
「世渡りさ。誰かが悲しむわけじゃないしね。それより回収を急ごう。帰還石の方角が判ったんだ。ちょっと魔物が多いけど。」
◆◆
アストラス家。
執務室。
グレイへの手紙を出して三日目。
従魔のノワールが、直接執務室にやって来た。
いつもなら分身体のシャネリーに転送してくるはずだが、今回は小包を運んできたようだ。
開けてみると手紙と幾つかのアクセサリーが入っていた。
『拝啓。現在50階層を探索中。帰還石の位置は掴めましたが昆虫型の魔物が多く、少々手古摺っています。姉様の誕生日までには戻るつもりですが、もし間に合わなかった場合、いくつかのアクセサリーを見繕っておきましたので渡していただけないでしょうか。・・・』
「・・・セバス。50階層は昆虫型の魔物だそうだ。戦ったことはあるか?」
私は、常に傍に控える執事に聞いてみた。
「いえ。しかし冒険者の話によると、異常なまでに生命力が高く、首を切り落としても安心できない相手だと聞いたことがあります。」
「・・・だな。」
私も聞いたことはある。
切った首が冒険者の腕を噛みちぎった話だ。
「50階層を攻略中で?」
「そのようだ。ジャングルフィールドというらしい。人の何倍もデカい昆虫系の魔物が多いようだ。」
「それはまた・・・」
「まともに戦えば、お前でも敵わないかもしれないな。」
「・・・でしょうな。さすがはアストラス家の『勇者』と称えるべきでしょう。」
「アストラス家の『勇者』・・・か・・・」
「ご不満でも?」
「・・・いや・・・」
いずれアイツはこの家を出て行く。
グレイ・アストラスは、ただのグレイになる。
そう望んだのだ。
『勇者』として『魔神』と戦い、勝利するために。
自分と関わりを持つ人間を最小限にし、『魔族』からの報復を最低限に抑えようと画策しているのは、目に見えている。
そのための『魔族狩り』なのだ。
勝利を勝ち得た後も、あえて冒険者になることで『魔族』の矢面に立つために・・・
優しすぎるほど優しい子供なのだ。
自慢すべき我が子なのだ。
知らず、握りしめていた手紙を見る。
落ち着いた、丁寧な字だ。
過酷な環境で、このような字を書けるまでに成長したのか・・・
「ノワール、少し待て。返事を書く。セバス、このアクセサリーを包んでくれ。なぐべく豪華にな。」
「は。」
アストラス領主=ホウレイ・アストラスは新しい紙を取ると、すっかり馴染んだ机の上でペンを走らせた。
◆◆
「どっか~ん!た~まや~~!(笑)」
「か~ぎや~ (呆)」
「? 合言葉か?」
「どういう意味です?」
野生児の『新技』と俺の『合いの手』に、メイドとエロフが首を傾げる。
ったく、聖〇士〇矢の見過ぎだっつ~の!
ジャイアントマンティスの刃が固すぎるからって、咄嗟に魔力砲で天高く打ち上げて『爆裂魔法』で吹き飛ばしやがった。
俺の『パクリ太〇拳』も大概だが、野生児のはマンマやん!
美形か?
美形が好きなのか!?
ってか、『爆裂魔法』なんていつ憶えた!?
「いや~ ヤって見るモノよね~ できちゃったw」
できちゃったんかい!!
〇ンジャー戦隊も裸足で逃げだすワ!!!
あ・・・双子座のクロ〇とか似合いそうw
「今の魔法は初めて見るな。どういう魔法なんだ?」
エロフ君が興味津々だ。
「そーね~ ドンダリデ領の魔族から喰らった魔法をアレンジした・・・みたいな?」
苦しい言い訳だな!
「ほう。あの一度っきりの魔法をモノにしたのか・・・天才だな。」
「へへ~ それほどでも~」
メイさん、鼻高々w
「で? 本当のトコロはどうなんだ?」
さすが年の功w
通用しませんでしたww
「遠い異国の魔導書だよ。僕が教えたんだ。」
うん。俺の言い訳も大概だったw
「ほ~?主人が『奴隷』にか? 随分大事にされてるんだな?」
エロフの疑惑の目が拭えないww
「まあね。メイも『勇者』だからね。」
こうなりゃヤケだwww
「なんだと!?キミも『勇者』なのか?」
「イロイロあってね。いずれ解放するつもりだけど。」
ホント、イロイロあったんですwwww
「国は知っているのかい?」
「国王陛下と、その他数人は知ってるよ。いたずらに騒がれても迷惑なだけだから黙ってるけど。」
「・・・そうか・・・キミも苦労してるんだな・・・」
お? 視線が和らいだか?
「そ~ね~ もっと同情してくれてもいいんダヨw」
そこで胸を張るの?
「・・・何と言うか・・・君たちは『同類』なんだな。」
「「何で!?」」
お~!
累計ユニークアクセスが1000人ぽっきりw
あざ~すw




