38 大物とシェルター
空間斬!
スパン!と小気味よい音と共に首と胴が泣き別れる。
空間ごと切ってしまえば、Lv50越えのサイクロプスも倒れるしかあるまい。
技名叫ぶなんてこたぁしないよ?
恥ずいしww
「おお~!」
逃げ惑っていた冒険者達から歓声の声が上がった。
ここは8階層、
教会から現実逃避とばかりに景気よくダンジョンに突入し、ひょいひょいと階層ボスを片付け、メルロスが程よくバテてきたところに、とんだ大物が “追い掛けっこ” していた現場に鉢合わせしたのだ。
《 何でこんな所に?》
《 受付では何も言ってませんでしたが・・・》
「スズネ!メイ!メルロス!魔法でも何でもいい!かすり傷でもいいから攻撃!経験値稼ぐよ!!」
「ほ~い!」
「行きます!」
「ま、待ってくれ・・・息が・・・」
息切れエルフが半泣きだが・・・知らんww
「泣き言は後回し!チャンスだよ!!」
懸命に逃げる冒険者チームを尻目に、暴れるサイクロプスに突っ込んだ。
大岩のような棍棒を軽々と振り回し、そこら中に穴を開けている。
「底が抜けたりしないよな?」
メイとスズネは華麗なステップで躱し、俺は小結界をそこら中にバラ撒いて ”立体起動“ で翻弄。
ちらりとメルロスを見たが、参戦する気はないようだ。
《 しゃーないww》
前衛の二人が一太刀入れたのを見計らって、首を刎ねた。
《 あ・・・やべ!》
気前よく血を吐き出しつつ倒れる先に・・・
「うわぁ・・・」
頭から血のりを被ったエルフがいた。
《 なんかあったな・・・こんな映画・・・》
「・・・ヒドイ・・・」
慌てて駆け寄ってクリーンの魔法をかける。
泣くなよ~
「ダメね~ こういうのはササっと避けなきゃww」
メイさんダメ出しw
「参戦しないのは自由ですが、周囲にもっと気を配らないと・・・」
スズネさん追い打ちww
女性陣は容赦ない。
「分かってるさ。ちょっと油断しただけだ。」
おお!
涙目の巫女さんカワユイw
おっと!
ハリセンの気配が!!
「次から気を付けよう。じき9階層への階段あるから、そこで休憩しようか。」
各層への階段には、魔物は近付かないらしい。
そこは “あるある” なんだなw
ボス部屋前には集まるくせにww
「さすがは『勇者』だな!助かったぜ!」
息を切らせた冒険者チームが、わらわらと集まって来た。
「けが人はいませんか?」
元気そうだが、一応聞いてみる。
「おう!走り回ってちょっと疲れたがな!・・・しっかし魂消たぜ!こんな浅い階層でいきなりサイクロプスに出くわすなんてヨ!」
「魔石は僕達が貰いますが、これからどうします?」
「一旦帰るぜ!ギルドに報告しなきゃなんねぇからな。『勇者』様はどうするよ?」
「出現位置を教えてください。他に異変がないか気になりますしね。」
「わかった。気ィ付けてな!」
「はい。お互いに。」
その場で別れた後、俺達はサイクロプスの “およその出現位置” を目指した。
「休憩するんじゃなかったのかい?」
メルロスが不満そうだ。
「調査が終わったらね。大した距離じゃないし、歩いて行くよ。」
浅層であんなのがウロついてたら、いい迷惑だろう。
大物が暴れて倒された木々が、やたらデカい獣道となっている。
「まあ、走らないならいいけどさ」
足取りも重くエルフが付いて来る。
この階層まで、ほぼジョギングだったもんなw
頑張れww
「もっと基礎体力付けなきゃね。」
「こう見えて “深窓の令嬢” だったんだぞ?」
《 “深窓の令嬢” w・・・自分で言うかねww》
「ほ~? その割にはエグイ魔法使ってたようだけど?」
メイさんのツッコミw
「あれは・・・ホラ!試したくなるじゃないか!?自分の魔法がどの程度通用するのかって!」
「そんなことで、魔法を乱発しないでくれる?危うくハゲるとこだったよ?」
後方からのエアカッターの乱れ打ちは肝が冷えるってw
リアルな異世界で『フレンドリーファイヤー』はシャレにならないヨンww
「悪かったって!何度も謝ったじゃないか!」
スズネさんにしこたま怒られてたもんねwww
「チームで戦ってること忘れないでいてくれたらいいよ。スズネ、もうちょっと先かな?」
「そうですね・・・気配はないようですが・・・」
『気配探知』にも引っかからない。
ちなみに俺の『気配察知』は性能を高める為に『創造魔法』で『気配探知』に昇格させている。
なんか『察知』から『探知』へとレベルアップさせる際に、ものすご~く面倒臭げに感じたのは “インテリジェンススキルの仮想自我” によるものか?
めっちゃ親近感ww
いや生存率上げるためだから!
働こうよ!
などと言う “ひとりノリツッコミ” の空しさよw
ともあれ性能は格段に上がったし、『鑑定』を併用すれば『敵』『味方』『魔物の種類』まで判るようになったのは嬉しい。
その『気配探知さん』が何かを告げている。
《 魔物・・・じゃないな・・・なんだ?》
見えない “何か” が渦を巻いてるような・・・
「『澱み』・・・ですね。」
スズネが呟いた・
「知ってるの?」
「はい。ザブズクルのダンジョンで見たことがあります。魔物が生まれる一因でもあるとか・・・これほど大きいのは初めてですが・・・」
「サイクロプスが出てきても不思議じゃないってことか・・・」
「消したりできないの?」
メイさん、当然の疑問だね。
「そういう話は聞いたことがありませんね。」
「また、あんなのが出て来るのか?」
メルロスさん。うんざり顔w
キミ何もしてないっしょww
《 そりゃメーワクな話だな・・・ん?『創造魔法』?・・・『創ざ衛門』何さw・・・ゴメン怒るなってww・・・んで?・・・ほ~ん?》
「何考えてんの?」
野生児が覗き込んできた。
「ちょっとね。みんな離れてくれる?試したいことあるからさ。」
「ご無理はなさらないように・・・」
「了解。念のためにポーション用意しといて。」
《 んで?コレ右回りだから、左回りで相殺してみろって?・・・デカいんだけど?・・・やればできるって、他人事みたいに・・・・》
とりあえず渦を囲むように『密な結界』を張り、“左回りの魔力” をぶつけてみる。
うおう!
強烈な反発!!
こりゃ力技だな!!!
「ぬぐう!」
変な声出た!
創ザ衛門!
笑い事じゃないんだが!?
「坊ちゃま!」
「御主人!」
「だ・・・いじょうぶ!」
まだ余裕はある。
こんニャロ!
抵抗すんじゃねぇ!!
バシュン!
唐突に渦が消えた。
魔力が拡散したようだ。
「・・・ぷはぁ・・・」
全力で腕相撲した気分だ。
「すごいな・・・本当に・・・」
メルロスさん。感嘆しきりだ。
もっと褒めていいんだヨww
「過去何人もの賢人が魔物を生む “魔力の渦” を消そうと試みたようだが、どれも失敗したらしい。そのため多くの文献では『 “魔力の渦” は消せない』と断言していた。キミは偉業を成し遂げたんだぞ?」
「見なかったことに・・・してもらえる?」
スズネから受け取ったポーションを飲み干す。
「何故だ?学会で発表すればいいじゃないか?」
「有名なのは『称号』だけで十分だよ。浅層で大物が出て来たらダンジョンに入る冒険者が迷惑するから消しただけ、僕は『掃除屋』に転職するつもりはないよ。」
「掃除屋か・・・有名になれば『学校』とやらの運営資金も集まりやすいだろうに?」
「学校は、いずれ僕の手を離れるさ。優秀な兄の領地内だからね。」
「丸投げか。無責任だな。」
「そう?優秀な人材が出れば領も有名になる。先行投資に手を貸してるだけだよ。」
「ふふ、モノはいいようだな。益々キミに興味が湧いて来たよ。」
「惚れちゃダメだよ?」
スパーン (ハリセン)!
冗談なのにぃ!!
「ソレがなければなwww」
とはいうものの、エルフさんの顔色がよろしくない。
魔力・・・というより体力の限界か・・・
《 しゃーない。お披露目しとこうかねw》
「今日はココで一泊しようか。」
幸い人の気配はないようだ。
「ほえ?ここで?」
メイさん?その目は何w
「危険すぎるのでは?」
スズネさん冷静ww
「いくら何でも突拍子すぎやしないか?」
メルロスさんに一票www
「まね。空間魔法と結界の応用でね。シェルタールーム作ってみた。」
「マジ!?」
メイさん良い反応w
真面目と書いてマジと読むww
『坊ちゃん』ウソつかないアルよwww
「浅層の階段は冒険者でごった返してる頃かな? もうちょっと下に行ければゆっくり休めるんだろうけど、メルロスの顔色悪いしね。お風呂入って疲れ取ろうかw」
「まさかの風呂付き!?」
「ベッドもあるでよw」
論より証拠の “開けゴマ” ww
三名様ご案内~♪
「規格外にも程があるな・・・」
ライトの魔法で明るくなったシェルタールームを見て、呆れかえったエルフの第一声がコレだ。
それ褒めてる?
広い立方体の部屋に、三つのベッドとソファーとテーブルとキッチン。
奥の扉にバスとトイレを設置してある。
取水は水魔法で何とかなるが、排水と換気は大分悩んだ。
異空間に放出しようとすると、宇宙空間みたいに空気ごと持って行かれるんだよね。
お尻が便座から離れなくなってしまうww
仕方ないから小部屋を作って、ある程度溜まったら切り離しって形にした。
まあ、
ダンジョン内なら、そこらへんにバラまいておけば吸収されるんだがね。
何でもエネルギーにしてしまう逞しさよwww
換気は周囲の環境にカモフラージュさせて風魔法で取り入れている。
サンマ焼いたりすると周囲に匂いが拡散するから、注意が必要だ。
換気口を移動させればいいだけの話なんだけどねww
「やた!ベッド!!」
メイさん素直。
いい娘だね~
「まだ改装途中だけどね。お風呂は突き当りを左にあるよ。汗流して来たら?」
俺は食事の下準備だな。
今日は何にしようか?
◆◆
「スズネはあまり驚かないんだね。」
ほんのりと顔を上気させたメイドが浅漬けを準備しながら、隣に立っている。
こだわって暖かいシャワーと湯舟を常時使えるように準備したからね。
これで石鹸とシャンプーがあれば完璧なのに・・・ま、そのうちそのうちww
シャワーを浴びたせいか。束ねた髪を下ろしているので妙に艶っぽい。
6歳児には目の毒だw
「十分に驚いてますよ?今更という感じがしないでもないですが・・・いつからこんなものを作っていたのですか?」
馴れた!?
早くない!?
「う~んと・・・灰汁石鹸を作り始めた時ぐらいかな?」
「あ~ そういえばメモに書いてたね~」
ベッドに身を沈めた野生児が声を上げた。
よく覚えてらっしゃる。
ソコ俺が寝る予定だったんだけど・・・
「キミといると僕の中の『常識』が覆されてしまうよ。」
メルロスさん?
それどういう意味かな??
俺って『非常識』なの!?
自覚あるけどww
「しゃーわせ♡」
メイさん。枕に頭突っ込んでグリグリしてるしwww
枕濡れちゃうよ?
「ま、冒険者は能力生かしてナンボだからね。利用できるものは何でも利用しないと勿体ないデショ?」
「そういうものか?」
「どうだろうね?眉間にシワ寄せて躍起になる冒険者の方がカッコイイかもしれないけど、僕のスタイルじゃないしね。」
「あたしご主人様に賛成!野宿って寝た気になれないし、周りを気にしながらの御飯なんておいしくないし!」
「ww・・・だそうだよ?」
「・・・それもそうだな・・・この部屋は大丈夫なのか?」
「ダンジョンと切り離してるからね。閉鎖空間だから外からの干渉は難しいかな?」
「・・・なら安心だな。」
やっと気が抜けたか?
少し眠そうだが、ご飯が先だよw
「食事しようか。ベッドに潜るのはその後で。」
俺は味噌汁の入った鍋の蓋を開けた。




