3 0歳児事件簿 その2 (三歳児の回想)
想い出の氾濫編 侯爵襲来
うん。
普通、新生児がいる家族って
ホラ、何と言うか・・・
ほんわかしてるっつうか、
もっとゆったりした幸せ空間が広がっててもいいんじゃないかと
・・・思うんだが・・・
生後1カ月を過ぎたころ、
だいたい「お家事情」が分かってきた。
我が家はけっこう来客が多い。
短い時間だが専属メイドのマーサに抱かれて
ベランダで日向ぼっこを楽しんでいると
結構な頻度で来客が来る。
まあ、ただのお茶会だったりもするが・・・
ただの茶会?
・・・なんだろう・・・
前世の小説やらマンガやらの知識から乖離してる気がする?
すんげ~違和感・・・
まあ、毛布に巻かれて動けない身で情報収取なんか出来っこないから、どうしようもないんだが。
・・・しゃべれるよになったら聞いてみればいいか。
お茶会はともかく
大抵、身なりの良い服を着た商人のような者たちが大きなトランクを幾つも抱えて来るようだ。
もしかして裕福なのかね?
贅沢しとるのかね??
羽の付いた趣味の悪い扇子広げて「おほほ♪」なんて
やっとるのかね???
育児放棄はイカンよ????
前世63歳の新生児がギャン泣きしちゃうよ?????
などと臨戦態勢に入ったころ・・・
「旦那様!奥方様!! もう領内に入ったとの連絡が!!」
執事のセバスの声が響いてきた。
「なに!もうか!!あと3日は余裕があると・・・」
うろたえる父上の声。
「あなた様。食器の選定がまだ・・・」
母上の声も余裕がない。
「ええい!仕方ない!おい、その食器全部買う!置いて裏口から出ろ!!」
「は、はい!ありがとうございます!!」
バタバタと屋敷内の足音が小さくなるころ・・・
今度は正面の門がにぎやかになった。
「うはははは、来たぞ!ホウレイ!!」
豪快を絵にかいたような大声。
、
ガシャガシャという音と「侯爵様!お待ちください!!いま旦那様をお呼びいたしますのでぇ!!」
と、聞きなれた門番の余裕のない声。
いきなり煩い。
・・・ってか、お馬さんの鼻息が荒いんだが?
どんだけ急いでんだよ!
お馬さんの代わりに俺が泣いてやろうか?
「サルムンド侯爵!お早いお着きで!」
「うむ!次男坊が生まれたそうだな!健勝か!?」
「それはもう。よく乳をのみ、よく泣きます!」
「それは重畳!どれ!顔を見せてくれぬか!」
「その前に叔父様。お召し物を着替えてくださいませ!そのような埃だらけではグレイが病気になります!」
母上、ナイスアシスト!
おおよその事情は呑み込めたが、時間稼ぎはした方がいい。
ついでに父上と風呂にでも入っててくれ。
俺は逃げも隠れもせんよ。
逃げようがないし・・・
「やれやれ・・・いきなり賑やかになってしまいましたねぇ。」
マーサは俺を抱いたまま、ゆったりと席を立つ。
今、この屋敷で一番落ち着いているのはマーサではなかろうか。
「グレイ坊ちゃま。サルムンド侯爵様がお着きになられたようです。御挨拶に参りましょう。」
慈母の顔だ。
間違いない。
母上は美人だし、優しさにあふれている。
が
俺はこういう顔が一番好きだ。
なんというか・・・童心に帰れるというか・・・
赤子だけどな、
バタバタと右往左往するメイド達を横目で見ながら、
マーサは静かにロビーを目指す。
そこでは執事のセバスが忙しく支持を出していた。
「セバス様、奥様はどちらへ?」
「マーサか、今は応接室に居るはずだが。くれぐれも失礼のないように。」
「承知いたしました。」
軽く会釈をして応接室へ
「失礼します。グレイ坊ちゃまがおいでになりました。」
「マーサ!?まって、いま開けます。」
応接室には兄のサスカスが、そわそわとソファに座っていた。
姉のマリアは少し不機嫌そうだ。寝起きか?
マーサは丁寧に俺を母上の胸に抱かせた。
やわらかい香りが鼻腔をくすぐる。
これはこれで至高・・・新生児の特権だ。
呆けた顔がふやける頃、廊下から重々しい足音が近づいてきた。
サルムンド侯爵だっけか?
うるさいなぁ。
帰ってくんないかなぁ。
俺の至福の時間が・・・
「おお!皆揃っておったか!」
侯爵が父上を引き攣れてやってきた。
お?服が豪奢になってないか?
ってかボリューム壊れてんのか?
ビックリしてしゃっくり出たわ!
「叔父様、もう少しお声を抑えてくださいまし、グレイが驚いております。」
「おお!すまんすまん!つい癖でな!」
だ~から煩いって!
「サルムンド様!お久しぶりです!!」
お!兄上が負けじと大声で挨拶する。
元気があってよろしい。
アストラス領の未来は君に掛ってるぞ ( ´∀` )
俺は自由を謳歌する予定だ ( ´艸`)
「うむ!サルカスか!元気があってよろしい。聞けばもう剣を握ってるとか?」
「はい!剣士長に筋がいいと言われてます!!」
「うむ。重畳。励めよ。」
「!・・・はい!!」
けっこう結構。子供は元気が一番さ。
シャックリが止まらないけどな!
「んもう・・・ほらマリア、叔父様にご挨拶なさい。」
「・・・こんにちは・・・」
「うむ、変わりないか?」
「・・・ひゃい・・・」
おいこら!あまり顔を近づけんじゃねえ!
怯えてんじゃねぇか!
「うむ。で・・・その子が次男か、」
前言撤回。こっち見んな!
「はい、グレイと名付けました。」
「うむ。グレイか・・・よい名だ。」
サルムンド侯爵が、まじまじと俺を見る。
近い近い!
よく見りゃ顔中傷だらけじゃねえか!!
あ、シャックリが止まった・・・
「・・・いかがでしょう・・・。」
おん?
母上の声が少し固い。
どういう意味だ?
「うむ。魔力値が妙に高いが普通だな。鍛えれば良き魔術師になるだろう。」
サルムンド侯爵は鷹揚に頷いた。
「・・・そうですか・・・」
母上の声が和らぐ。
もしかしてステータスを覗かれた!?
あっぶね~~~
「偽装さん」と「隠蔽さん」グッジョブ!
0歳児レベルMAXなんて、国をあげて大騒ぎじゃね?
下手すりゃ解剖モンだよ!
俺だって興味湧くモン!!
家庭崩壊の一助だよ!!!
カミサマバクダンだよ!!!!
ワケわからんよ!!!!!
「気が弛んだか。・・・良い顔になった。」
サルムンド侯爵の頬が弛む。
そんなに大変なコトかね?
俺には大変な出来事だが?
「はい。この子には普通の人生を歩んで欲しいので・・・、」
「・・・そうか・・・・」
「しかし、本当でしょうか。魔王復活と共に勇者も現れるとは?」
なぬ?
父上、いまなんと??
「うむ。正確には魔王ではない。」
ほい?
侯爵。いまなんと?
「え?違うのですか?」
「うむ。正確には魔王復活と共に魔神も復活するらしい・・・。」
「なんと!魔神が!?」
「うむ。この情報は教会の一部と上位貴族」の者達しか知らんが、いずれ他の貴族にも噂として流れるだろう。」
「そうですか。で、巫女様はなんと?」
「新たな巫女様はまだ何も言ってないらしい。が、一昨年亡くなった巫女様は『強き勇者』が生まれるとおっしゃってたらしい。」
「・・・強き勇者・・・」
強き勇者・・・ねぇ・・・確かにレベルは上限突破してるけど・・・
「儂と、その他数名の鑑定士は王命を受け、生まれた強き勇者を探しておるのじゃ。」
「それて我が家にも・・・」
「うむ。まずは貴族の新生児から、それで見つからねば市井の者達や孤児院、スラム街も・・・隈なくな。」
「そこまで・・・」
本気だねぇ・・・
「記録に残る魔王復活ならば、自然発生的な勇者でも対処できたやもしれん。しかし、より上位の魔神復活となれば捨て置けん。」
「心中お察しいたします。」
「そこで・・・だ。祝詞を呼んでもよいか?」
「は?・・・祝詞ですか?」
「うむ。巫女様が国王陛下に是非にと渡された祝詞がある。儂には理解不能な言語だが、全ての勇者候補に聞かせて欲しいとのことじゃ。」
ふ~ん。
「別に構いませんが、先ほど侯爵が自ら鑑定なされたのでは?」
「うむ。じゃが儂より高レベルの者や隠密スキルの持ちなどは鑑定ができぬ場合もある。そのための保険のようなモノじゃ。」
・・・寝たふりしよう・・・
侯爵の咳払いが緊張を呼んだ。
野太い声が室内を満たす。
ヤバいよヤバいよ魔神がヤバいよ
ヤバいよヤバいよ大地がヤバいよ
ヤバいよヤバいよ海の中~
目覚めておくれよ強き人~
ヤバいよヤバいよ教会へ~
ヤバいよヤバいよ来ておくれ~
ホ~ホケキョ~の季節だよ~
ヤバいよヤバいよ来ておくれ~
・・・なあ、今すぐ起き上がって巫女さん殴りにいっていいか?
ってか!
まんま日本語じゃねぇか!!
寝た子も起きるわ!!!
「どうじゃ?何か変化はあったか?」
「・・・いえ、これといって・・・。」
「・・・そうか・・・。」
変化・・・ありますよ・・・
未発達の脇の汗腺から冷や汗がダラダラと・・・
SUN値もガッチリ削られた気がする・・・
もう泣きたい・・・
とりあえず
しょげた侯爵を慰めるように、父上は別室へと案内した。
これから飲むんだろうなぁ~
サルカス兄も一緒だ。
武勇伝を聞きたいらしい。
おべっかとも言う。
あんま邪魔すんなよ~
てか、俺も混ぜてくれ~
酒よこせ~
ヤバいよヤバいよ魔神がヤバいよ♪
ヤバいよヤバいよ大地がヤバいよ♪
ヤバいよヤバいよ海の中~♪
目覚めておくれよ強き人~♪
ヤバいよヤバいよ教会へ~♪
ヤバいよヤバいよ来ておくれ~♪
ホ~ホケキョ~の季節だよ~♪
ヤバいよヤバいよ来ておくれ~♪
マリア姉の声!?
「あら、マリア?もう覚えたの?」
「はい。なんとなく・・・間違ってるかも・・・」
間違ってねぇよ!
一語一句完璧だよ!!
あったま良いなマリア!!!
てか、止めてくんない?
不幸の手紙よりタチ悪いんだが!?
奇跡の児:0歳児レベルMAXのSUN値を削る祝詞爆誕!




