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29 満員御礼


 「狭いよう・・・」

 「我慢しなさい!」


 俺達の馬車は6人の誘拐犯が転がっている。

 何かと煩いので、全員『口縫い』の刑だ。


 それはいいんだが・・・

 おかげで俺が狭い思いをしている。


 『美魔女さん』の上に乗っかってもいいんだがねww

 『野生児』やら『鬼スズネ』の眼が恐くてさ・・・


 そんなわけで

 検問所で思い切り問い詰められたりしたんだが、身分を明かしサニエル男爵へ伝言を頼んだ。


 こんな時ぐらい『勇者』の称号に役に立ってもらわなくてはw

 王様に感謝ww

 許さんけどねwww


 ともあれ、コイツ等を男爵邸に連行してドンダリデの企みを聞き出さなければならん。

 面倒なことこの上ない。



 途中


 一度だけ、馬を狙って矢が落ちて来た。

 おそらく索敵圏外から放物線を描くように飛ばしたんだろう。

 いい腕だ。

 風魔法かもしれない。


 ノワールが対処しなければ、俺達は歩くハメになっていただろう。

 残念だったなw


 「しつこいわね~」

 メイも呆れ顔だ。


 「馬車に乗ってるうちは、もう仕掛けて来ないと思うよ。」

 俺は荷台の隅っこで “体育座り” をしながら慰めた。


 「どうして?」


 「さっきのは『お試し』ってヤツ。防御がしっかり出来てるかってね。僕が同乗してるのがバレてるね~」


 「『勇者』にケンカ売る気かしら?」


 「どっちかっていうと、僕よりコイツ等だろうね。口封じしたいんじゃないかな?」


 「まだ情報が取れてないと思ってる?」


 「生かされてるから、そう思ってるんじゃない?実際、犯人は分かってても計画の詳細は聞き出してないからね~ コイツ等がどこまで知ってるかは不明だけど・・・」


 “お馬さん” は、いたって呑気にぱっかぱっかと歩いていた。




 町の入り口が見えてきたところで、私兵の皆さんと合流。

 大袈裟なくらい守られて、男爵邸へ誘導された。



 「いや、かの名高い『勇者』様をお迎えできるとは! このナルスキュール・サニエル! 後世の自慢話が出来そうです!!」

 屋敷の前では、男爵が飛び掛からんばかりの勢いで出迎えられた。


 「て・・・手厚いお出迎え、恐縮の極みです。」


 「何をおっしゃいます!アストラス領のダンジョンの踏破を目指す『勇者』でありながら、『ビート粉末』を発見し、さらには『マッチ』や『水車小屋』の特許を収得されたというヨーデル王国の麒麟児!また『魔石農法』や『ポーション農法』を開発し無償で各領地に広めるなど!!その人徳には国中の貴族が・・・」


 カエリタイ・・・・


 全力で愛想笑いを維持し、唾を飛ばしながら講釈を続ける男爵に申し訳ないと思いつつ、話の腰を折らせてもらった。


 「ナルスキュール・サニエル男爵様。有難いお言葉の数々、誠に有り難く存じますが、まずは誘拐犯を・・・」


 「・・・こいつ等ですな。」

 おっと雰囲気が変わったぞw


 「僕を誘拐して “洗脳” したかったようです。女性の方は “淫靡(いんび)のロザリー” という二つ名が付いてるようで・・・」


 「“淫靡(いんび)のロザリー” 指名手配犯ですな!よもや『勇者』様を洗脳しようとは!身の程知らずめが!!」


 《 おんや “有名人さん(指名手配犯)” でしたかw》

 《 上に乗っからんでよかったww》


 「目がやらしいよ。」

 しつこいなキミもw


 「とりあえず、情報を引き出したいので・・・牢屋をお借りしても?」


 「もちろん!地下室ですが。」


 「ありがとうございます。スズネ。嫌な役回りだけど、お願いしてもいい?口が聞ければナニしてもいいから・・・ヒールが必要な時は言ってね。」


 「お任せください。」


 《 ・・・悦んでない?》


 「あたしも手伝おっと♪」

 「やめといた方がいいんじゃない?」

 「いいじゃん。興味あるしw」

 「・・・そう?」


 《 ま、頑張ってくれたまえww》


 俺は手厚い歓待を受けることになった。




 深夜

 万一を考え男爵邸の周囲に結界を貼っていたが、バリっと壊れたのを感知した。


 寝巻のまま窓から飛び出し、走る。


 靴代わりに、足に結界を張ったままだ。

 こうしておけば、地面に足を付けずに立体起動できるという『ダンジョン生まれ』の便利機能。

 階段状に結界を張っておけば『空駆ける小児』だ。


 屋根と同じ高さまで登り、周囲を見る。


 《 バリスタぁ!? 本気だねぇ・・・》


 どこから運んで来たのか知らないが、あんなの(バリスタ)喰らったら男爵邸もタダでは済むまい。


 ちょっとばかり本気の『ストーンアロー』を百本ほど見舞ってやった。


 マジックボックスには、手に負えない魔物の不意打ち用に『巨岩』を常時収納しているが、流石に後味が悪そうだ。


 《 死にませんように・・・》


 次弾を装着中の『黒尽くめ』達が、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。

 何人か、肩や足に喰らったようだが、死んではいないようだ。


 そのうちの一人が『ウインドカッター』を放って来た。


 《 んじゃ。『ウインドカッター』で相殺し・・・・あれ?》


 俺の放った魔法は、下の『黒尽くめ』より強すぎたらしい。

 下からの『ウインドカッター』を飲み込んだ俺の魔法は、下のヤツの魔法杖と手と足の甲をを切断し、地面を深く切り裂いた。


 《 あ~~・・・何かメンゴ・・・》


 今更ながら、ヒトに向けるのは危険だなと再認識しつつ・・・

 さらに百本。

 狙いを付けずに適当に『ストーンアロー』放った。


 《 もう来るなよ~w》



 地面ギリギリまで降りて『賊』を回収。

 『ヒール』で出血だけを止めた。

 痛みは『そのまま』だ。


 夜中に『バリスタぶっぱ』する(やから)だ。

 子供の安眠を邪魔しちゃイカンよ?



 こんな時でも『ジャイアントハンティングスパイダーの糸』は大活躍だ。


 《 こんど本気で狩りに行こうかなw》


 ついでに『バリスタ』も回収させてもらった。

 ・・・にしても・・・


 闇ギルドって『お金持ちさん』なんでしょうかねぇ?

 本部どこでしょうかねぇ??

 お邪魔してもよろしいでしょうかねぇ???

 オイラのマジックボックスには、たっぷりと余裕があるんですがねぇ????


 『巨岩』と交換しません?????


 などと良からぬことを考えてると、サニエル男爵と数人の私兵が慌ててとび出してきた。

 男爵の手にはハルバートが握られていた。


 「勇者様!今の音は!?」

 「男爵。ご心配なく。もう終わりました。」


 糸で縛られ、呻く数人の『黒尽くめ』を指し示した。


 「後でこいつ等の話も聞きたいので、一緒に牢屋に入れてもらってもいいですか?」

 「勿論です。オイ!連れて行け!」


 引っ立てられた『黒尽くめ』は覆面を剥がされ、引き摺られて行った。

 どれも若く、知らない顔だ。

 大した情報は取れそうにないな。


 《 あの人が来ると思ったんだがな・・・見込み違いか・・・》


 まあ、それはそれで良しとしよう。



 夜中にも関わらず、サニエル男爵は興奮しきりだった。

 「しかし流石は “勇者” 様ですな。いとも簡単に “賊” を捕まえてしまうとは。」

 「今回は運が良かっただけです。」


 「お怪我はないですかな?裸足のようですが?」

 「ご心配なく、地に足は付いてませんのでw」

 俺はちょっとだけ浮いて見せた。


 「おお!流石 “勇者”様!常在戦場とはこういう事を言うのでしょうな!」

 「あの・・・その “勇者” というのを止めていただくと非常にうれしいのですが・・・」


 連呼されると嫌味に聞こえてしまうんだよな。

 『勇者』ってガラじゃないし・・・


 「おや?好まれませんか?コレは大変失礼しました。では “グレイ” 様と?」

 「グレイでいいですよ。貴族の子供ですのでw」


 「いやいやいや!数多の特許を持ち、国王陛下の憶えも良いお方を呼び捨てになど出来ましょうや。」

 「その話はまた後程・・・夜も更けてますので、もう寝ませんか?」


 《 悪い人じゃないが・・・こういうやり取りは苦手だな・・・》


 少しだけ疲れを憶えながら、部屋に戻った。




 朝食後

 明日にはサニエル領に到着するという旨の手紙を受けた俺は、男爵の勧めるままに町を散策することになった。


 馬車を借り、街に出る。

 同乗者はスズネと、メイ。

 それと、トリアデ・サニエル子息。21歳。案内役だ。


 どうやら、朝まで飲み歩いてたらしくい。

 ぐでんぐでんに酔っぱらって帰ったら、いきなり男爵に殴られて水浴びさせられてた。


 左目の青タンが痛々しいw

 今度俺も誘ってもらおうww


 ともあれ。男爵の気持ちは嬉しいが、今はちょっと困る。

 サニエル子息はスズネが気になるらしく、酒臭い息を吐きながらチラ見してるしw


 対するスズネは無表情だが、御機嫌だ。

 一晩中 “淫靡(いんび)何某(なにがし)” と遊んでたんだろうね。


 長い付き合いだ。

 すぐに判るさ。

 お肌ツヤッツヤだしw


 「何か聞けた?」

 「はい。後ほど・・・」


 《 おや? 幹部だったのかね?》

 《 それは重畳w》


 んで?

 何やらメイさんが大人しい。

 どした『野生児』w


 「メイ、元気ないね~」

 「・・・とんでもないモノ見てしまった・・・あんなこと・・・」


 トラウマになっちゃったかな?

 詮索する気はないけど、気にするなw



 サニエル子息が思い切ったように口を開いた。

 「あの・・・ご趣味は?」


 《《 いまソレ聞くぅ!?》》


 空気を読まない子息の言葉にメイが唖然とし、俺は笑いを堪えた。




 「あ、ここで降ります。止めてください。」


 町の中央で、御車に声を掛けた。


 素早く降りて、周囲を見る。


 《 まあ・・・こんなもんか・・・》


 「スズネ、メイ。手出し無用。子息まだ酔ってるから護衛ヨロ。」


 いたってノンビリと歩みを進める。


 人通りはそこそこ多い。

 人族ばかりだな。


 もふもふ系が見当たらない。

 サニエル領の政策かね?


 ま。他所(よそ)ん地のやり方にとやかく言うつもりはない。

 コッチも暇じゃないんでね。



 のほほんと歩き、人通りが(まば)らになったところで薄い結界を張っておく。


 「おい!そのまま行くと町の外だぞ!」

 サニエル子息が声を掛けて来る。


 「そうですよ。危ないので離れないでください。」

 返事はシンプルだ。


 「どういうことだ!?」


 《 ただの害虫退治ですよ。》

 のてのてと歩きながら外に出た。


 門兵は(いぶか)しんでいたが、すぐに戻るとだけ伝える。


 町の外は高原が広がっている。

 外敵を見つけやすいように、無理な開拓はしてないようだ。



 ぴろ~ん♪と頭の中で鳴った。


《 ?・・・なんじゃらホイ?・・・お? “威圧” スキル? サラフィナさま??》


 どないせ~っちゅんじゃろうねぇ?

 魔物除けか?



 「どこまで行くつもりだ!説明しろ!」

 サニエル子息がイライラと声を荒げている。


 「昨夜、屋敷に “賊” が入りました。」

 「なに!?」

 「サニエル殿は飲みに出歩いてたようなので、ご存じではないでしょうが、奴らはバリスタで屋敷を破壊しようとしてましたよ。」

 「バリ・・・バカな!?」


 「これが証拠です。」

 ドデン!と凶悪な武器を出して見せる。


 あんぐりと口を開けた子息が固まった。


 「男爵は御存じありませんが、これが使われる前に阻止できたのは不幸中の幸いでした。」

 ほんとは一発喰らってたんだがね・・・ま、知らぬが仏っつ~ことでw


 「というワケで、()()退()()です。」

 にこやかに言ってのけた。


 「こ・・・これだけでか!? 兵士はとうした!?」

 だよね~


 「無駄な犠牲を出すつもりはありませんし、大勢で押し寄せても奴らは隠れるだけでしょうね。それに現状、僕達がこの周辺の最高戦力だと自負していますので・・・」


 「バカな!?女子供だけで何が出来る!」

 それも『だよね~』ww


 「帰りたければ御勝手にどうぞ。無事に帰り着ければいいですがね。」

 朝から開いてる飲み屋があればいいけどねw


 子息は口を閉じた。

 無視して歩く俺達に、黙って着いてくる。

 興味あるんかねw





 しばらく歩くと雑木林が見えて来た。


 男が立っている。

 待ち構えていたようだ。


 「ザッカさん。奇遇ですね。」

 こんな所で会いたくなかったよ。


 ザッカ・タラギュース。

 タラギュース伯爵家三男。騎士団所属(諜報部)。

 アストラス領の “不毛の地” のダンジョンでで監視役 兼 荷物持ち(笑)として同行するはずだったが、直前でメンバーから外された人物。

 数日の付き合いだったが “同類” を匂わせる親近感を持った男だ。


 「いや~ご無沙汰していますグレイ殿。三年ぶりぐらいですかね?御立派になられたようで。」

 ザッカは “人好き” のする笑顔で頭をボリボリと掻いているが、その場から動こうとしない。


 気配は・・・消しているがザッカを除いて五人。

 ()(だれ)れだがセバスには程遠い。


 ズボンの裾から “糸” を垂らした。

 魔力を帯びた “糸” がスルスルと動く。


 「こんな所でどうしました?おエライさんから何か言われましたか?」

 ザッカと俺の中間地点にも違和感。

 “落とし穴” か?


 古典的で有効な手口だ。

 後ろの二人に “動くな” のハンドサイン。


 「ま、そんなところでしょうかね。“賊”がサニエル男爵に押し入ったという情報が入ったんで引き取りに来たんです。」


 「ずいぶん早いですね。昨夜の出来事ですよ?」


 「そこはね?仕事ですからw」

 ザッカは笑みを崩さない。


 鑑定。

 お! 鎖帷子(くさりかたびら)にミスリルの細剣か!?

 武器屋以外では初めて見るな。


 「それは “表” の仕事ですか?それとも “裏” の “闇ギルド” の御仕事ですか?」


 「おや? ご存じでしたか?」

 ニヤけた笑みの質が変わった気がした。


 「いいえ。当てずっぽうです。」


 俺は無造作に歩く。


 この辺りかな?


 ザッカの笑顔が凍り付いた。


 「ザッカさん?どうされました?」

 平然と立っている子供に、ザッカは笑みを凍らせたまま、左手を剣の柄にかけた。


 「落とし穴ですか・・・古典的だが効果的な手段です。後片付けが大変ですけどね。」

 「・・・なぜ落ちない。」

 「ダイエット中なのでw」

 俺はニッコリと笑って見せた。


 《 おっと、こんなタイミングで笑おうとから “デビルスマイル” なんて言われるんだっけ・・・》


 慌てて真顔になる。

 ・・・“後の祭り” かもしれんが・・・


 「いいのか?屋敷を留守にして・・・」

 笑顔が崩れたか・・・


 「構いませんよ?」

 ノワール置いて来てるからな。

 さっきから念話で『遊んでる』って来てるしw


 「ザッカさん。一度だけ見逃します。ギルドに伝えてください。この国から出て行けと。」

 他の五人は預かるがね。


 糸を伝って囲んだ結界を締める。

 くぐもった声が “草むら” のあちこちから漏れた。


 牢馬車満員御礼だw


 「・・・いやだ・・・と言ったら・・・」

 ど定番なセリフだねぇ。


 『威圧』スイッチON!


 「ザッカ・タラギュース。俺のケンカ相手は『魔神』であり『魔王』だ。その意味が解るか?」


 「・・・」


 「俺が死ねば『魔』の者がこの世を支配する。遅かれ早かれな。そうなれば『表』も『裏』もない。全てが『エサ』か『奴隷』だ。」


 「・・・」

 何か言えよ。


 「これは最終警告だ。この国から出て行け。さむなくば・・・」

 ここまで言い掛けて気付いた。



 ・・・気ぃ失ってるやん・・・



 《 “弁慶の立ち往生” ?・・・いや、失禁してるしw》


 振り返るとサニエル子息も倒れていた。

 ・・・泡吹いとるやんw


 「・・・やり過ぎた・・・かな?」

 反省。


 「オーバーキルね。連れてく?」

 メイは平気だったのね。

 スズネも平気・・・じゃないな・・・ダイジョブ?


 「連れてくのメンドイ。メイ。兵士呼んで呼んできて。落とし穴も埋めなきゃ。」

 「了解。センパイ休んでて♪」


 シートを広げてスズネを座らせてる間に、意識を取り戻したザッカは逃げたようだ。


 《 しまった・・・ミスリル・・・ま、いいかw》


 向かって来るなら遠慮なく頂戴したがねw



 《 捕らえたのは・・・15人越えるか・・・いや、ノワールも頑張ってたしなぁ、面倒くせぇ・・・》


 今日も快晴だった。




次回更新、4月15日予定です。

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