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27 盗賊


 俺の名はグレイ・アストラス。

 6年前に、ここアストラス領の領主ホウレイ・アストラスの次男として生を受けた。


 つい先日までは 『そんじょそこらの次男坊』 だったが、3年ほど前に王宮の故意的な “やらかし” に腹を立てた俺は、父を巻き込んで 『ちょっとしたイヤガラセ』 を敢行した。


 結果、『陞爵(しょうしゃく)』という盛大なオチが付いてきたが・・・


 まあ、アストラス家としては悪い事ではない。

 母の軟禁も完全解除されたし、領民も “子爵領” から “伯爵領” になって商売がしやすくなるだろう。

 “飛び地” ではあるが、領地も増えたしな。


 喜ぶべきなんだが・・・





 「おじさん達も懲りないね~」


 旅費の節約とばかり、乗合馬車でアストラス領に帰る途中の “盗賊イベント”。


 寝起きの “野生児” はすこぶる機嫌が悪く、加減が出来そうもないので俺が対処した。


 水風船と、気圧操作。

 8人が仲良く 『お縄』 になった。

 野太い酒焼け声に興味ありませんw


 「これジャイアントハンティングスパイダーの糸。細くても頑丈だから暴れると怪我じゃすまないよ?」

 かろうじて意識のある髭面に忠告。


 貴族の子供が乗る馬車を襲ったんだから、首と胴が泣き別れしても文句は言えないのだが・・・乗り合い馬車じゃなぁw


 他の乗客に感謝されつつ次の町まで連行することになった。


 ヒマなので、引き摺られる “8人の盗賊さん” と並んで歩きながら情報収集。


 「お名前は?」

 「へ!・・・いでででで!!」


 「魔物の糸だからね~ 手足の1,2本千切れても知らないよ? お名前は?」

 「ぜ・・・ゼルデってんだ・・・なぁ、(ゆる)めてくれよぉ。痛くて歩け・・・あだだだだだ!!!」


 「質問にだけ答えようね?」

 「わ・・・わかった!!!」


 「じゃあ、ゼルデさん。この道、ちょくちょく盗賊に襲われるんだけど・・・なんで?」

 「し・・・知らねぇのか・・・ごぼぼぼぼ!」


 あまり(うるさ)いと乗合馬車の乗客が恐がるので。水風船で口を塞いで右手の小指を切断。

 激痛で叫び終わった頃に魔法を解除した。


 「質問にだけ答えてって言ったよね。指全部なくなっちゃうよ?」


 さりげなく “ヒール” で血を止める。

 メイが「うわ!エゲツな!」とか言ってるが、知らん。


 ひとしきり咳込んだ “自称ゼルデ” が青い顔で頷いた。


 「んじゃ、もう一度聞くね?この道は盗賊が “商売” しやすい道なのかな?」

 「そ・・・そうで、す。・・・近くの山の斜面に、ちょうどいい洞窟があって・・・」


 「山?魔物出て来ないの?」

 「ま・・・“魔物除けの香” を炊いとけば、滅多には・・・」


 「スズネ~! ノワール付けるから、この人達、連行してくれる?」

 「御一人では危険です!」


 「メイ~。一緒に行く?」

 「いく~!」

 「じゃ、あとヨロシク~!」


 俺は返事を待たずに駆け出した。

 背後からメイが付いて来る。


 「めずらし~ねー 積極的に “盗賊退治” なんて。」

 「被害もそこそこ出てるって話だからね。洞窟潰しておこうかと思って。」

 「そゆこと。」


 「そゆこと♪ ついでに戦利品も頂戴しましょうか。」

 「俄然やる気出た!」

 「現金だね~w」


 明言こそしてないが、俺のレベルはもうすぐ35になる。

 メイは40。

 スズネは42で、数字的にはセバスと肩を並べている。


 冒険者ギルドの評価では、30台後半で “英雄” の領域に片足を突っ込んでるそうだ。


 それでもレベルMAXには程遠い。

 『成長促進さん』 働こうよ。




 しばらく走ると、メイが反応した。


 「ナニコレ?懐かしい匂い?」

 「声抑えて!・・・風下に入ったかな?・・・カレー?」


 俺とメイは顔を見合わせた。

 ()る気レベルMAX!


 グレイ6歳。

 メイ8歳


 二人の子供が “獣” になった。





                 ◆◆





 「へ~ これが “魔物除けの香” か~」


 賊は見張りも含めて4人。

 叩きのめして、締め上げて、カレーの香りの正体を突き止めた。


 「これ何処で手に入るか。教えてくれる?」

 でかいタンコブと青タンを作った “賊のオニーさん” に聞いた。


 「普通に・・・魔道具店で・・・売ってます・・・」


 気になる匂いがカレーでないと知った “野生児” は、しょげながら洞窟の奥へと探索している。


 「どうやって作るか・・・知ってる?」

 諦めの悪い俺は、ダメもとで聞いてみる。


 「い・・・いえ・・・」

 「・・・だろうね。在庫はまだあるの?」

 「山を下りた仲間が管理してて・・・」


 仕方ない。魔道具店に行ってみるか。

 もしかしたら “ターメリック” くらいは手に入るかもしれないし・・・



 そんなことを呑気に考えてたら・・・洞窟の奥から複数の気配が・・・


 《 メイ? 増殖してるw・・・いや・・・》




 案の定と言うべきか・・・


 メイが洞窟の奥にいた盗賊の他に、複数の女性と子供を引き連れて戻って来た。

 子供は衰弱しており、女性の衣類は破れている。


 全部で7人。

 被害者は全員、裸足だ。


 「メイ・・・回収済んだ?」

 無言で頷く。

 殺気が目に見えるようだ。


 「・・・立て・・・」

 俺は糸を()めた。


 「ま。待ってくれ!俺は・・・ぐぅお!!」

 「二度は言わん。」


 《 イカンな・・・加減を間違えそうだ・・・》

 だが反省はしない。

 するべきなんだろうが『後回し』だ。


 「俺がいいと言うまで喋るな。地獄を見たくなければな・・・」


 捕まえた “4人の賊” を適当な木に縛り、ついでに口も縫い合わせた。

 ジャイアントハンティングスパイダーの糸は魔力の通りが良い。

 魔力を通せば自在に操り、針もいらないので口を縫うなど造作もない。


 町に着くまで、水の一滴も与えるつもりはない。


 「まず。食事にしようか。」

 被害者に “エリアヒール” を掛け、体力を向上させた後シートを広げた。




 食事を済ませ休憩している間に、“賊” の靴を脱がせて女性達に与える。

 サイズが合わないのは勘弁して欲しい。

 残りは、適当な葉を何枚も重ねて、即席の靴で我慢してもらおう。


 「町道で馬車に出会えればいいけどな~」

 「こいつらも連れて行くの?」

 メイの殺気が収まってない・


 「気持ちは解るけどね。裁くのは司法の仕事だし情報も取れてない。賞金首が混ざってるかもしれないしね。」


 首だけ “アイテムボックス” に入れるのも気持ち悪い。


 「・・・賞金出たらどうする?」

 「多かったら、賠償に当てようか。戦利品は?」

 「多少はね、食料とお酒はたっぷりあった。」

 「全部売り払おうか。」

 「・・・そうね。」


 洞窟入口を “土魔法” で丁寧に固め、俺達は黙々と山を下りた。




 山沿いを歩く。

 魔物は、メイがいち早く察知して威圧したり切って処分した。


 お荷物(加害者)を切れないからイライラしてるんだろうな。

 魔物はいい迷惑だw


 残念ながら、通りすがりの馬車は・・・満席でした。


 《 マンガのようには、いかんね・・・》


 ちょくちょく休み。水と食料を与え、“エリアヒール” で体力の回復を図りながらの行進。


 《 本気で、“転移魔法” 憶えてみるかな・・・》


 少なくとも最寄りの町村で馬車を借りるくらいは出来るだろう。


 空間魔法は、文字通り “空間に作用する魔法” だから怖いんだよな。

 ダンジョンで “局所的空間歪曲” 使ったときなんか、エリアボスが原型を(とど)め切れなかったし・・・

 レベル関係なく、ダンジョン最下層でも通用しそうな勢いだもんな・・・


 それにしても・・・

 後ろを歩かせる盗賊共が煩い。

 口は開かないが、鼻で呼吸できるから「ムームー!」と合唱してる。

 品性の欠片もない鼻声(びせい)だ。


 無視して夕方まで歩かせ、適当な場所で休む。

 女性と子供達に食事と水を与える。

 昼間、休憩の合間に何度か “エリアヒール“ を掛けたせいか、疲れてはいるが顔色は悪くない。


 俺は少し離れえて『潰れたカエルの合唱団』のように唸る連中の前に立った・

 よく見ると、弱冠一名、薄汚れてはいるが身形(みなり)の良い奴が混じってる。


 仕方ないので、口の縫合を(ほど)いてみた。


 「き・・・きさま!こんなことが許されると思っているのか!俺はサムデソン・ドンダリデ!ドンダリデ子爵の息子・・・ぐえ!」


 うるさいので片手で喉元を締めあげて黙らせる。

 ついでに、口も再縫合。


 「自己紹介ありがとう。サムデソン・ドンダリデ殿。俺の名はグレイ・アストラス。父はホウレイ・アストラス伯爵。アストラス伯爵家の次男坊だよ。ヨロシク。」


 顔が青くなるのを確認してから、その場を離れた。


 「貴族だった?」

 メイが歩み寄ってきた。


 「サムデソン・ドンダリデ。ドンダリデ子爵家の息子だってさ。イヤガラセついでにノルグナー公爵に手紙でも書こうかな・・・」

 「まだ仕事増やす気? タチ悪いわね~。根に持ってんの?」


 「いまだに『勇者屋敷』とか言われてるんだよ?しかも俺の二つ名が “デビルスマイル” って・・・なにがどうしてこうなった?」

 「日頃の行いじゃない?」


 「・・・反論できん・・・」





 翌朝


 馬車の足音と気配で目が覚めた。

 スズネだ。


 「帰りが遅いので馬車を借りてきましたが・・・」

 「ありがとう。助かったよ。」


 女性と子供達を馬車に乗せる。

 当然。“賊” 連中は歩きだ。

 裸足だろうが関係ない。

 破傷風にでもなったら、“ミドルキュア” くらい掛けてやる所存だ。


 「そういえば、ここドンダリデ領だっけ?」

 「いえ、検問所はまだ先です。ここはアルアス領ですが。何かありましたか?」


 「ドンダリデ子爵のサムデソン・ドンダリデを名乗っているのが盗賊の頭みたいだね。アルアスって男爵領だっけ?」

 「はい。アルアス男爵は武闘派でサルムンド侯爵と非常に仲が良いと言われています。」

 「あ、そっか。聞いたことある。戦場仲間だったっけ。」


 予定変更。

 いそいそとサルムンド侯爵に手紙を書いて、ノワールに咥えさせた。


 「侯爵閣下の居場所分かる?よろしく。」

 大きくなったネコマタが、するりと陰に入った。


 ノワールは影移動が出来るんだよな。

 教えてもらえないかな?


 俺は検問所への道を逸れ、アルアス男爵の住む町へと急いだ。





 「久しぶりだな。サムデソン・ドンダリデ。」


 事情を聴いたアルアス男爵が、血相を変えて屋敷から飛び出してきた。

 サルムンド侯爵にに負けず劣らすの体躯。

 怒りに顔をゆがませた男爵が、身動きが取れず、口を縫われたドンダリデ子息を睥睨(へいげい)していた。


 「六年ぶりか・・・以前からクソ生意気な小僧だと思っていたが・・・よりにもよって我が領内で “盗賊稼業” とは、いい度胸しておる。」

 威圧がハンパない。


 「男爵、まだ手は出さないでください。サルムンド侯爵に手紙を出してますから、処分はその後で・・・」


 「何から何までかたじけない。グレイ殿、歓迎いたしますぞ。小さな屋敷ですが是非泊って行ってくだされ。」

 「感謝いたします。ですがまず、被害者たちを・・・衣服と履物、あと身体を休める場所を貸していただけないでしょうか。お金は払いますので。」


 「ご心配なく。被害者たちは私が責任もって家に帰しましょう。」

 「重ね重ね感謝いたします。ではこれを・・・」


 俺は金貨十枚を男爵に渡した。


 「・・・これは?」

 「盗賊の(ねぐら)にあった物品を私が買い取らせていただきます。これはその代金です。被害者への賠償金としてお役立てください。」

 「グレイ殿がそこまで気を配らなくとも・・・」


 「貴族は国民に生かされている。よって、我々はこの身を(てい)して国民を守らねばならない・・・母の教えです。どうぞ、お受け取り下さい。」

 「・・・すばらしい母君ですな。分かりました。全てこのトリアンテ・アルアスにお任せを。」

 「お願いいたします。」






 翌朝


 「グレイ!無事か!!」

 屋敷中に響くサルムンド侯爵の声で目覚めた。


 《 マジか・・・昨日の今日だぞ・・・》


 手早く着替え、ドビーに出る。

 アルアス男爵が対応していた。


 巨漢二人が揃うと圧がすごいなw

 てかノワール・・・なぜに公爵の肩に乗ってんの?


 「おはようございます。サルムンド侯爵閣下。お早いお着きで。」

 「うむ。ちょうど王都に帰ったばかりでな。」


 ひょいとノワールの首根っこを掴むと、プランとぶら下げた。

 「陛下との会議中にコヤツがお主の手紙を咥えて現れよった。」


 《 ありゃ~ バッドタイミングだったのね・・・》


 「あ~ では国王陛下もご存じで?」

 内々に片付けるつもりが・・・おっきくなっちゃったw


 「うむ!怒り狂っとったぞ!あのような陛下を見るのは久しぶりじゃ!」

 にっこにこだよ!

 嬉しそうだな侯爵w


 「ウチの()が申し訳ございません。もう少し言い聞かせるべきでした。」

 公爵の手の中でジタバタと暴れるネコマタに、少しほっこりしながら謝罪した。


 「よい。貴族の息子が盗賊のマネゴトなど、あってはならん事態だからな。家の取り潰しも検討されておる。ところで被害者も居ると書いておったが?」


 「被害者については儂が責任をもって家に帰します。グレイ殿から賠償金も頂きましたしな。」

 アルアス男爵がフォローしてくれた。



 「グレイが?どういう事じゃ?」



 サルムンド侯爵が驚いているが、ここは俺が説明すべきだろう。


 「盗賊の(ねぐら)に保管してあった食料や物品を買い取りました。それを賠償金にしてもらうよう男爵にお願いしています。」


 「・・・筋が違うのではないか?」


 「差し出がましいとは思ったのですが、被害者にとっていつ来るか分からない金品より、つらい思い出を忘れる為の即金が必要でしょうから・・・ダメでしょうか?」


 「む・・・いくら出した?」


 「金貨十枚です。」

 「・・・大金だな。」


 「助けた時、女性達は衣類が破られていましたので・・・」

 「そうか・・・解った。立て替えた賠償金はドンダリデからしっかり巻き上げてやろう。楽しみにしておれ。」


 《 ドンダリデ卿・・・ごめんねw》


 「ところでコヤツ。魔獣か? このような魔獣は初めて見るが?」

 脱出を諦めてだらりと力を抜いたネコマタをくるりと返し。しげしげと見る。


 「あ。その() “神獣” です。“闇の神” 様から頂戴して契約しています。」


 「なんと!!サラフィナ神様ばかりではなかったと!?」


 「サラフィナ神様が言うには “恥ずかしがり屋” の神様だそうで、一度しかお会いできてません。その娘もサラフィナ神様から “闇の神” 様のペットだとして頂戴(ちょうだい)いたしました。」


 「なんとなんと!“闇の神” の神獣であったか。」

 驚愕した侯爵のスキをついて。するりと逃れたノワールが俺の陰に戻った。


 「陛下に土産話が出来たわい。」

 それは何よりw


 「それで閣下、下手人(げしゅにん)はどういたしましょうや?」

 アルアス男爵が聞いてきた・


 「うむ。王都に連れ帰る。余罪を吐かせねばならんからな。地下牢か?」

 「左様で・・・口は聞けませぬが・・・」

 「なに!?」


 《 あ・・・糸・・・》

 すっかり忘れてた。

 

 「あ~ 閣下。申し訳ございません。ここまでの道中、(うるさ)かったので “ジャイアントハンティングスパイダーの糸” で口を縫い付けたままでした。」


 少しの間、呆気にとられた侯爵が破願(はがん)した。

 「・・・がっはっはっはっは!そうか!口を縫ったままであったか!」


 お?ウケた?


 「すぐ解きますか?」


 「いや、そのままでよい。王都までの道中に騒がれても困るでな。そのまま連れて行く。」


 人間三日間くらいなら水飲まなくても生きて行けるらしいからな。


 サムデソン頑張れw




 朝食を共にした後

 四人の盗賊を鉄錠とロープで縛り、サルムンド侯爵が颯爽と馬に(またが)る。


 口は縫ったままだ。

 ってか、牢馬車まだ着かないんだね。


 「もう行かれるのですか。」

 アルアス男爵は名残惜しそうだ。


 「うむ。余罪の追及やらが忙しくなりそうでな。牢馬車つかまえたらコヤツら放り込んで報告書も書かねばならん。ドンダリデが無駄な足掻きを見せる前に早く動かねばな。」


 「侯爵閣下。父は見かけませんでしたか?」

 俺はサルムンド侯爵に聞いてみた。

 几帳面な父のことだ。

 飛び地の領地の視察などを早く終わらせたいのではないか?


 「屋敷の前を通るとき荷造りしておったようだが?ミレイの茶会の後帰るつもりかの? ドンダリデ領は避けて通るように言わねばならんな、」

 「それは僕がやっておきます。ノワールなら父の居場所が判ると思うので。」


 「頼む。それからグレイよ。お主の献上品気に入ったぞ!」


 アイテムボックス気に入ったか。

 わざわざ “(くさ)” を使って屋敷の大きさを確認してもらったんだ。

 しかも “魔道鎧” を収納しておけば、手を突っ込んで念じるだけで『自動装着』できるという 特注品(おまけつき)だ。


 気に入ってもらわなければ困るw


 「それは何よりです。」


 「ではな、トリアンテまた飲もう。」

 「はい。是非に。」


 囚人となり果てた盗賊らが、侯爵の馬に引き摺られてヨロヨロと歩く。


 《 口縫ってるから飯抜きだったか・・・サムデソン! ファイト!》


 ゆっくりと出て行く侯爵を見送った後、アルアス男爵に振り替える。

 「僕達もそろそろお(いとま)します。」


 「ここでホウレイ伯爵を待った方が良いのでは?」

 「どのみちドンダリデ領を避けて帰るつもりですから、アントラの町で合流しようかと考えてます。」


 アルアス男爵は少し考えた後、首肯した

 「なるほど・・・その方が良いでしょうな。グレイ殿、この度はお世話になり感謝に堪えません。どうぞ父上にもよろしくお伝えください。」


 「はい。必ず。」




 基本。俺達の荷は少ない。

 ほぼ全ての武器や生活必需品はアイテムボックスに放り込んでいるからだ。


 スズネやメイのポーチも同様。

 ポーチに付与した結界が良い仕事をして、いまだ新品のように見える。

 むしろ強請(ねだ)られてポーチの容量を大きくしたくらいだ。


 いま、二人のアイテムボックスの内容量は体育館並みだ。

 メイ曰く、女の子は何かと入用らしい。


 何が?と聞くな。

 俺は知らん!




 ダミーの荷物を馬車に放り込んで出発する。


 被害者の皆が無事に帰れますように・・・


 「スズネ。この馬車どこから借りた?」

 「アルアス領の検問所近くの村からです。」

 「買い取るか。近く?」

 「はい。お任せを。」


 「ノワール。この手紙、父上に送れる?」

 陰からにゅっと出て来たノワールが、咥えさせた手紙を荷台に置いた。

 その前足でテシテシと叩く。

 シュっと手紙が消えた。


 「おお!テレポーテーション!」

 見守っていたメイが興奮する。


 「そっか、マリア姉に預けた分体に送ったか。便利だね~」


 馬車の行く先は、アントラの町だ。




次回投稿予定日は 4月8日です。

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