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【変転(?)の第二章完結】代理聖女ミコはわが道を行く――その辺にいる事務員でしたが間違って王妃になりました  作者: 赤城ハルナ
【第二章】代理聖女ミコの婚活

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代理聖女ミコ危機一髪

わりと動じない性格のミコでした。ある意味大物です。偉い人と結婚してもたぶん大丈夫だと思います。

「本日もよろしくお願いします、聖女ミコ様」

「かしこまりました」


 今日も聖女塔せいじょとうで参拝者をいやす。


 聖女塔へのお布施は最低限度額が決められている。最高限度額はない。

 さすが、ガメつい神殿ですね。

 貧乏人は来るなということでしょうかね、格差社会ですかね、国民健康保険はあるんですかね、税金はどのように振り分けられているんですかね。


 神聖国のやり方に口出しする気はありませんが。

 国は、栄えるときは栄え、滅びるときは滅びるのです。


「聖女様、先週から胃の周りがつらく、ドキドキして眠れないんですよ~」


『それは内科ですね』とも言えず、参拝者のお腹に手を当てる。なるほど、お腹に動悸どうきがあるわ。

 こんな風に手を当てると『聖なる力』が発動し、相手の具合が良くなるらしいのだ。いわゆる『手当て療法』ですかね。

 わたしはヒーリング療法士。

 真・聖女様ミカおねいさんではないから、少し気持ちよくなる程度だと思うけど。


「最近慣れない物を食していませんか?」

「う〜ん、そういえば、先週から外国土産のワインビネガーを毎日飲んでます。体にいいと彼氏に言われたから」

「水かお湯で薄めてますか?」

「少しだけ」

「少量のビネガーを十倍くらいに薄めるといいと思います。胃に負担がかかりすぎますから」


 この国に管理栄養士はいるんだろうか……その前に、わたしが勝手に栄養指導みたいなことをしてもいいんだろうか……この世界の人間はわたしがいた世界とは異なる存在なのだから、わたしの知る常識は当てはまらないかもしれない。


 ――責任を取ることができないのなら、勝手なことをするのはやめよう。


【 奥義おうぎ:保身+責任逃れ 】


 助言はほどほどにしておこう。



❖ ❖ ❖



「次の参拝者、どうぞ」と、後ろに控えている巫女さんが告げる。


 わたしは一段上にえられた、キングチェアみたいな豪華な椅子、名付けて『聖女座せいじょざ』で参拝者を待つ。


 な~んかすっごく偉そうだよね、わたし。

 その辺によくいる目立たない事務員だったのにね。

 1DKアパートに住んでいた、どうでもいい存在だったのにね。

 わたしがいなくなったら家族は悲しむんだろうけど、それでも会社は回るし、社会も回る。

 豪華な椅子に座っている得体の知れない小娘に頭を下げるって、どんな気持ちなんだろう。


 目つきの鋭い、四十代くらいのガタイのいい男性がやって来た。

 アスリートですか?


「あんたが聖女か?」

「代理聖女です」

「ということは、偽物なわけか?」

「いいえ、本物の聖女です」

「あんた、本当は治癒ちゆなんてできないんじゃないのか?」

「そんなことはありません。皆様を(それなりに)治癒しています」


 目つきが怖いオジサンだわ。

 ときどきいるのよね、ヤバそうな参拝者。そのために護衛のせい騎士きしさんが扉を守っているのだけれど……。


「ミコ様に向かって失礼ですよ!」

 背後に控えている巫女さんたちが騒ぎ出した。


「真実を言っただけだ」


 何だかネット小説みたいな流れになってない?

 わたしが偽物と告発されて処刑されるの、この国に死刑制度があるのか知らないけれど。

 これはヤバい状況だわ。

 いくら何でも死ぬのは勘弁して。


 冷静に対処しよう。表情を保つことは得意なのよ。

 オヤジギャグが飛んできても動じない自信はある。

 職場の上司がわたしを笑わせようとしていたけれど、結局諦めたし。ざまぁ。


「本日はどういたしました?」

「あんたが本物かどうか見に来た」

「はい?」


 理解に苦しむわ~。

 聖騎士さんに指先を切ってもらおうか?


 そのとき参拝者の手がすばやく動いたかと思うと、胸ポケットからナイフを取り出してわたしに飛びかかった。わたしは咄嗟とっさに両腕を前で交差し、胸を守った。

(ナイスブロック!)


 ズザッッ!!


「「キャーッ、ミコ様!」」


 えっ?

 ダラ~~~と赤黒い血が白い聖女服に飛び散った。


 えっ、えっ、わたしの血!?

 腕が痛いよ!


「「ミコ様!」」


 聖女塔内が騒然となった。


「この男を捕らえろ!」と叫び、聖騎士が参拝者を拘束こうそくした。

「ミコ様に何をしたんだ!」

「偽物を堂々と使う神殿なぞ、滅びるがいい!」

「うるさい、コイツを連れて行け!」

 二人の聖騎士が参拝者を連行した。


 黒髪短髪のマッチョイケメン 、聖騎士副団長様が飛んで来た。

「ミコ様、お怪我は!?」


 わたしはというと……切られた両腕から血が出ているではないか!


「ああっ、申し訳ありません、ミコ様。助けるのが遅れてしまいました……」

 今にも泣きそうな副団長様。

「いいえ、これくらいは自分で治せるので大丈夫ですので」

「ハァ……冷静なのですね」


 なんちゃってドクターをはじめて数カ月。切り傷擦り傷カブレ火傷やけどを見慣れたわたしは動じない。

 そうです、これくらいの切り傷ならスッとなでればそれなりに塞がるのです。聖女特権ですね。

 致命傷に関しては分からないですよ?


 ネット小説なら、さしずめわたしは『氷の(代理)聖女』とか言われるんでしょうかね。


「しばらく休憩にしましょう。あの者は地下牢に入れますので、もう安全です」

「はい……」


 地下牢があるのか。


「本日は聖女様の癒しを中止します!」


 ふぅ〜、命拾いした。


「二度とミコ様をあんな目に遭わせないようにします、聖騎士の位置を考え直します!」


 その後わたしは聖騎士副団長イアソン様にお姫様抱っこされ、宿舎の部屋に連れられたのであった。


「「だからミコ様、あれほど男どもに気を付けろと……!」」

 双子巫女ちゃんに何度もたしなめられた。


(あの状況では無理ですけど)



❖ ❖ ❖



「あの者は『アポカリプス教団』の一員でした」

 そう言ったのは、花束とお菓子を持ってお見舞いにやって来た、副神官長アンドレアス様だった。

「『アポカリプス教団』とは?」

「教団の神しか認めない集団です。多神教を認める神殿に嫌がらせをしてくるのです。神殿側も気を付けてはいるのですが、見分けが付かず……迷惑な連中です」


 なるほど、宗教対立ですか。巻き込まれたらやっかいだわ。


「ミコ様、聖騎士がいたにもかかわらずあんな事態になるとは……イアソンは使えない奴です。わたしがかたわらに控えてさえいれば、こんなことには……」

 切り傷は塞がったけれど、赤く腫れているわたしの腕に軟膏を塗りながら、副神官長様が言った。


 いや、あなたは大神殿、もとい神殿組織の神官ナンバーツーですよ、それは物理的に無理でしょう。

※次回は真・聖女様の後見先を巡る三者視点になります。

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