首都観光で大名行列モドキに遭遇
ウッカリ地震予知(?)をしたら、聖女見習いから代理聖女になりました、元事務員のミコです。
真・聖女様であるおねいさんの行方は知りません。
神殿は把握しているようなのですが、何しろ自由な人なので、行き先の予想が立たないらしいのです。
その後、大神殿の噂で聞いた話です。
おねいさんの周りにはギルド所属の勇者のほかに、神殿が派遣した偽冒険者(聖騎士)がうろついているらしい。
判明したおねいさんの名前は『ミカ・ブルーマンス』。
どこの国の人なんだろう?
この世界に召喚される前、わたしはごく普通の事務員でした。埋没度すごかったです。
新しい国での新たなお仕事とは――。
神殿組織の本部、大神殿における『なんちゃってドクター』です。
もちろん医師免許なんて持っていません。看護師免許も。ですがそれは元いた国でのお話でしたね。
神聖国の医療は神殿が担当していて、それぞれの神殿には『治療院』という施設があるそうなのです。温泉施設も充実しているとか。
N県の鹿教湯温泉みたいな感じでしょうかね。
それなら事務のスキルを生かして、例えば参拝に来てお布施をし、怪我や具合の悪い所を癒した人のカルテを作ってみては? のちのち参考になるかもしれない。
病院では患者と診察内容、処方箋のデータを控えているものね。
そのことを神官長様に提案したら、『そのような予定はありません』と即答された。
仕方なく巫女長様に相談して参拝者を書き記そうとしたら、まず用意する紙の選定からはじまり、次に聖女塔付き書記を誰にするかで揉めた。
さらに、どこに保管するかでまた揉める。
困ったことに、『恥ずかしいから自分のことは書かないでほしい』という神官さんや巫女さんが続出した。
なんで?
『ケガをした理由を知られたくない(大神殿内で禁止されているケンカをした)』
『病気の原因を知られたくない(大神殿に黙って変なものを食べた、不健康なことをした)』
『しょうもない相談を知られたくない(離婚させられそうになっている)』
……個人情報なのか。
ラノベやマンガで活躍している聖女様は、元看護師だったり元薬剤師だったり……うわっ、わたし全然使えない!?
事務のスキルは聖女とは関係ありませんでした、残念。
思い返してみれば、組織では『デキる』必要はなくて、『そこそこデキる』ことを望まれていた。
わたしはあくまで『代理聖女』。
有能である必要はないわけだ。
無能のくせに余計なことをするんじゃなかったわ。
❖ ❖ ❖
『ミコ様、首都観光へ行きましょう。案内します』という、茶髪ロン毛のエリートイケメン副神官長様のお誘いの日がやってきた。
待ちに待った首都観光の日。
ヨーロッパというよりはビザンチン世界っぽい、エキゾチックな国を見学するのだ。
わくわくするね!
(まさかの副神官長様とデート?)と思ったら、護衛として黒髪短髪のマッチョイケメン聖騎士副団長様が付いて来ました。双子巫女ちゃんまで。
「お前たちは呼んでいませんよ?」
「コイツと二人だけなんて危険すぎます、ミコ様が女に刺されます、俺も同行します!」
「「男はみんな嘘つきなのですぅ、ミコ様をお守りするのですぅ」」
「……」
五名様ご一行になりました。
首都の繁華街へは地味な神殿用の馬車で。
この国の身分は王族とその他のみ。ただし名家(地主や要職を受け持つ家系)がある。
官吏・神官・騎士団の要職は名家の出身。
警察・防衛・娯楽などを担うギルドは実力主義。
わたしたちの服装はちょっと身なりの良い平民風。
❖ ❖ ❖
「ミコ様、こちらへ。あれが昨年設置されましたアリシオンの神像です」
副神官長様がさりげなくわたしの腕を引いて、アパートらしき建物のエントランスにある彫像を指さした。
「なるほど、分かりました(分かってない)」
「アンドレアス、ミコ様に勝手に触れるとは!」
「お前こそ、呼んでいないのに勝手に来たじゃないか、イアソン!」
この二人、名前で呼び合う仲だったのね。対抗意識でもあるのかしら。
腕を引くくらいなら全然構わないんだけど。二十五歳目前のわたしは男性慣れしていないわけではないし。
「「ミコ様、男どもに心を許してはなりませんですぅ」」
今度は双子巫女ちゃんに両腕を引っ張られた。
男性に恨みでもあるのかな。
前に副神官長様、うしろに聖騎士副団長様、左右に双子巫女ちゃん。
誰の言うことを聞けばいいというのか。
木々が並ぶ石畳の街路、テントを連ねた露天商、買い物をする人たち、店先や集合住宅の入り口には生花。
丈の長い衣服の上にマントをはおった人、ズボンにチュニック姿の人。
交差点にはガーゴイルみたいな彫像。
わぁ〜。
本当に異世界に来たんだなぁと実感する。
比較的豊かな国なのかな。
温泉やお風呂はあるし、水に困ることはない。
行きかう人たちは……何というか、ラテン系っぽいというか、濃いというか。
そのとき、ラッパの音や号令とともに、奇妙な一団が大通りを行進して来た。
「ミコ様、顔を下げてください」と、副神官長様に言われた。
「はい?」
周りを見ると、みんな一斉に顔を深く下げている。
ダイミョウギョウレツデスカ?
「陛下の巡回行列です。十日に一回はこのように首都中を回るのです」
な、なるほど? それなら仕方ないね。
すっごいカルチャーショック。
郷に入れば郷に従えと言うものね。
下を向きながら上目遣いで行列を見た。
先頭の楽団に続き、赤い羽根飾りのヘルメット、黒ズボンにロングブーツに赤いチュニック、背中に槍、腰に刀剣を装備した、白馬に乗った何十人もの騎士団。
圧巻だわ!
本当に異世界なのね!
スマホを持ってくれば良かった――もう使えないけれど。
中心にいるのは――羽が生えた馬――ガラスのペガサス馬車?
シンデレラのガラスの靴を馬車にしたような。
ガラガラプップッ~と、人が歩く速度で騒々しく進む。ときどき騎士団が右手の小指を立てながら。
(変なポーズ……)
貴重な体験をさせてもらったわ。
今日の日記に書いておこう。
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大股で歩く女装男子、真・聖女ミカ・ブルーマンス。向かうところ敵なし。
隣にはギルド最高の勇者。
「あsdfghjkl;:! イツマデツイテクンダヨ!」
「オマエさぁ……許可もナシに神聖国を勝手に動き回るんじゃないぞ? ギルドに登録した?」
「あsdfghjkl;:! ジャマスンナ! オレハイキタイトコロエイク!」
「仕方ねえなぁ……しばらくオレが護衛してやるよ、高くつくよ?」
赤銅色の髪をした、二メートル近い体躯の勇者が真・聖女を担ぎ上げた。
「ヤ、ヤメロー!」
「ちょっとあなたたち、わたしも混ぜなさいよ!」
そう言って近付いたのは、三つ編みの黒髪を腰まで垂らした、高貴な面持ちのアラフォー女性だった。
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※次回、代理聖女ミコに危機が?




