代理聖女ミコの奇妙な日常
【第二章】は『代理聖女』になったミコの奇妙な日常です。ミコが狙われたり、お見合い騒動が勃発したりします。
ほのぼのです。血圧は上昇しないと思います。
【第一章あらすじ】* * * * * * * * * * * * * * * *
『神聖国』大神殿の召喚陣によって召喚された、本物の聖女(欧米ヘビメタ系女装男子)がヒャッハーして大神殿から逃亡した。たまたま巻き込まれて聖なる力を少~しだけもらった某渋谷事務職員系ミコ・フジワラは、大神殿の思惑によって『聖女見習い』にさせられ、さらに『代理聖女』へアップグレードした。
意図せず代理聖女になったミコの希望は、適当に聖女の真似をしながら、波風立てず安定した生活を送ること。
しかし、いつまでたっても捕まらない真・聖女に業を煮やした大神殿によって、ミコは聖女として利用されることになるのであった。
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ガラ〜ンガラ〜ン。
「ミコ様、起床のお時間ですぅ」
早朝、大神殿の鐘の音とともに、隣の部屋から双子巫女ちゃんが起こしに来る。
おはようございます、某渋谷事務職員系聖女見習い改め、代理聖女ミコです。
長い肩書ですね、漢字が多くて読みにくいですね、申し訳ありません。
神聖国に召喚されて早くも数か月、真面目に代理聖女のお仕事をしています。
頑張るつもりはありません(過労で倒れたことはある)。わたしは真・聖女ではないから、そこそこの傷や不調をそこそこ治癒できればいいわけなので。
致命傷を負った人は首都のはずれにある大神殿まで来るのが困難なので、わたしが治癒するということはありません。それは真・聖女様の仕事でしょうかね、逃亡中ですけれど。
大神殿は、いわば高度なドクターもどき(わたし)がいる医療センターですかね。
元々コツコツタイプ(言われたことをソツなくこなす。事務系の創意工夫――書類整理整頓、ワード・エクセルはきれいに分かりやすく、手順の簡素化)なので、日々聖女業をしてはいるんだけど。
【余計なことはしない】
これ、前の職場で悟った自分が生き残るための鉄則ね。
通常とは異なることをするときは、必ず上司の許可を得る……これも職場での鉄則ね。
『出る杭は打たれる』と残念ワードで言うけれど、二人しかいない聖女業に『出る杭』は不要ですからね。
元いた世界と暦が似ているので、もうすぐわたしは二十五歳。
職場では『新人』と言える年齢ではない。お世話係の双子巫女ちゃんなんて十代だし。これからは将来のことも考えなくちゃ。
聖女の真似事を続けるだけというのも……。
「さぁ、ミコ様、朝食にしましょうですぅ、それからお着替えですぅ、まずはお口をすすいで顔を洗って……」
子供扱いか?
「今日はドライイチジクがあるんですよぉ、ミコ様お好きでしたよね」
わたしはドライフルーツ大好き。いずれ自分の果樹園が欲しいな。
――そもそもわたしは『聖女』とかいう大それた存在ではなかった。
仕事帰りに某渋谷のスクランブル交差点を渡っていたら、たまたま聖女召喚に巻き込まれただけ。同じ地点にいた本物の聖女様(欧米ヘビメタ系女装男子)が召喚後大神殿から逃亡したので(許せないわ!)、聖なる力をほんの少し分け与えられたわたしが、代理で聖女業をやらされているだけなのだ。
巻き込まれたわたしは、本来なら迷惑料とやらで細々と暮らせるはずなのに。
聖女業には、大神殿への参拝者の傷や身体の不調を治癒するほかに、年何回かの『巡礼』があるらしい。いずれ連れ回されることになる。
宿泊は宿屋ではなく地方の神殿だとか。
福利厚生(衣食住・お給料・休日・有給)がいいから辞められない……というよりは、辞めさせてもらえない。
人々を癒すといっても、聖なる力が弱いわたしは、傷口を指で撫でるとなめらかになって傷が塞がったり、身体の不調箇所に手を当てるとなんだか良くなるという程度。例えて言うと、わたしの指が強力なタイガー◯ームやオロ◯インや漢方薬になった感じ。
重度の火傷などは無理です。
聖女特典なのか、わたしの肌は二十代中頃でもぷるるんるん ♪
ということは、本物の聖女様であるおねいさんは、常に全身ツルピカなのでは? 初対面のとき見た足はスネ毛びっしりだったけど。
ただし、失った指や足は本物の聖女様でも元通りになるといった神業は持っていないらしい。
「お着替えができましたぁ、今日もバッチリですぅ。ささ、朝のミーティングに行きましょう」
今のところわたしの目標は、聖女業をしながら結婚出産して子育て。子供が独立したら完全に引退して、家庭菜園などをやりながらの、地方的で平凡なスローライフ。
地味で普通の生活、イイね!
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「神官長様、先月の新規神です」
朝の大神殿ミーティングでは、昨日の出来事や今日の予定が発表される。職場ミーティングと同じ。
茶髪ロン毛のイケメン副神官長様の報告タイムになった。
巫女さんたちが一斉に熱視線を送っているわ。
大神殿というか、神殿組織の神官ナンバーツーでありながら、まだ三十代で独身、エリートイケメン。
モテモテなのね、ウ〜ン分かるよ。
憧れは憧れのままで止めておいた方がいいね。本人はものすごく複雑な立場なのだから。
つまり――上司という立場にとどめて深く関わらない、周囲の思惑からさりげなく外れる、傍観者になる――これ、スローライフの鉄則。
結婚相手は気の合いそうなその辺の神官さんか聖騎士さんか官吏あたりにしよう。
しがらみ薄めの普通のサラリーマン。
「先月はどんな神が増えたのだ?」
「まず『奇術の神』、次に『王様が変形させた靴の神』……」
「『奇術の神』は前年追加されたのでは?」
「いいえ、前年追加されたのは『幻術の神』でございます」
「そうだったか、うむ」
(王様が変形させた靴の神!?)
「聖地は選定済み、彫像は発注済みとのことです。『王様が変形させた靴の神』については現物がありますので、像を造る必要はありません」
な、なんだかわたし、この国についていけるのか心配だわ。
※画像はミコがいる神聖国大神殿の全体像です。ヨーロッパというよりは、ギリシャ→ビザンチン的な中世世界です。ただし多神教国家です。
※画像は『プレヒストリック・キングダム (Prehistoric Kingdom)』で作成しました。何本かのぼっている黒い煙は、宿舎の厨房や温泉施設からの湯気や煙です。




