烏賊退治に参加します
現在、我が艦隊唯一の艦艇である駆潜特務艇。史実では全て番号制だったが、戦後残存艇が海自に引き継がれて艇名を付けられている。
実際、隊員たちに意見を聞いたところ、番号より名前が良いという意見が多勢だったので、名前を付けることにした。
結果付いた名前は「みさご」。実際に海自の駆潜艇にあった名前だし、魚をとる鳥と言うことで、こうなった。
で、今日も「みさご」は、大漁の魚を水揚げしたわけだけど、この魚を直接「みさご」で売りに行くわけではない。
と言うのも、この世界の船は未だに帆走がが主流で、動力船の姿はない。だから、帆柱もなく動き回る船で行くと、要らぬ誤解を受けるかも知れない。
加えて、沿岸部で使われる漁船や貨物船の多くはせいぜい全長10m程の小さな船ばかりで、そうなると30m近くある「みさご」はそれなりに大きい。
そんなわけで、直接着けられる埠頭や桟橋がないのも理由だ。
と言うわけで、採った魚は半分程度は持って帰って乾物にしたり、自分たちの食料にして、残る半分をボートに積み替えて売りに行くことになる。
副官の晴香に、大柄で腕っ節も強く、頼りになる武器長の小田島二等兵曹と彼が指揮する5名の兵隊と共に、帆柱を立てたボートで漁港に向かった。
「今日も高く売れるといいですね」
「そうだね」
などと小田島兵曹と暢気に話していられたのは、漁港に着くまでだった。
「なんだか騒がしいですね」
「何かあったのかな?」
とりあえず船を着けて、小田島兵曹たちに魚を市場に卸しておくよう命じて、俺は晴香と一緒に情報収集。
程なく、漁業の幹部の顔を見つけた。
「やあ、ギールさん。何かあったんですか?」
「お!ケン船長じゃないか!?あんたら無事だったのか?」
「その口ぶりだと、海賊でも出たの?」
「海賊なんて目じゃない厄介なのが出てな。クラーケンだよクラーケン」
「クラーケン?烏賊の?」
クラーケンと聞いて思い浮かぶのは、バカでかい烏賊。
「そうだよ。昨日ここからちょっと東に行ったところで目撃されてね、おかげで漁船は皆出港できなくて、商売あがったりだ」
「退治できないの?」
「おいおい!バカ言っちゃイケナイよ。相手は10m以上あるデカ物だぞ。俺たちの船じゃ叶わねえよ」
確かに、この漁港にあるのはいずれも10mもない沿岸漁船ばかり。太刀打ちできないだろうな。ちなみに、この世界独特の単位とかは、転生特典で地球のそれに置き換わるので、全く不便がない。
「とにかく、そういう訳で今漁協も大騒ぎでな。俺も今から会合に出るんだ」
「ああ、引き留めて申し訳ない。情報ありがとう」
ギールさんを見送り、頭の中で考える。
(そのクラーケン退治すれば、経験値貯まるかな?)と。
魚を高値で(他の船が出漁してないので、当然高値で売れる)売っ払って「みさご」に乗り込んで拠点に戻ったところで、主立った幹部(といっても俺含めて5名だけどな)を呼び出して、クラーケン退治の是非を協議した。
「このまま何もしないとじり貧ですから、やってみる価値はあるでしょう」と言うのが、晴香や艇長の大槻兵曹長の意見。これに益子機関長(一等兵曹)が賛成した。
対して反対、というより懐疑的なのは小田島武器長と水戸通信長(二等兵曹)の2人。
「クラーケンは、大型の個体になると全長が20m近くに達するとのこと。25mmと爆雷でやれますかね?」
「返り討ちの危険だってあります」
そこなんだよな。我が「みさご」の武装は96式の25mm単装機銃が一挺に、あとは艇尾の爆雷が20個。他に艇内にあった96式の軽機関銃1挺と4挺の三八式歩兵銃に、拳銃、手榴弾だ。
相手が中世の騎士相手なら、これで無双出来るかもしれないけど、相手は全長が20mを超えるクラーケン。この武装が通用するかわからない。
でも、リスクをとらなければ前には進めない。
「懸念は当然だけど、このまま何もしないと艇長の言うとおりじり貧だ。将来のためにも、敢えてここは挑戦してみたい」
「提督が決定したのであれば、我々は従うのみです」
こうして、烏賊退治をすることが、正式に決まった。
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