提督と呼ばれながら、今日も魚採ります。
思いついたネタを、とりあえず文字にしてみました。
連載にしましたが、続くかはわかりません。
現世で死亡し、神と名乗る超常的な存在に特殊な能力を与えられて、どことも知らぬ異世界へ行かされ、その能力や地球人としての知識を活かして無双する。
テンプレとも言うべき、異世界転生系物語。
それにまさか、自分が選ばれるなんて!
大卒まで順風満帆な人生を歩みながら、就職難でアルバイトにしか就けず、その後転職した正規職はブラックで、たった半年で病気して退職。その後も職を転々とし、アラフォー独身なミリオタ兼鉄オタの俺。
思った以上に早い夏の到来に、まだ大丈夫と無理して外を歩き回って、フラ~っとしたのが最後の現世での記憶。次の瞬間には、目の前に表現のしようがない、神々しい光を背にした女神様が立っていた。
そしてお約束の「異世界に転生させてあげましょう。何か希望があったら言ってください」
キタアアアア!!
「自分の理想とする艦隊を作って、指揮する能力をください!」
現実世界でそんなこと出来るはずもないが、異世界でそれが出来るなら、是非ともしたい。
俺はミリオタだけでも、その中でも第二次大戦中の艦艇と、海戦史が好きだ。高校生の時は、提督の~シリーズをやりこんでいたし、艦艇模型もそれなりに作ったぞ!
「わかりました」
「よっしゃああ!!」
「ただ無制限とは行きません。最初は小さな艦から始まり、レベルアップする毎により大きな艦を、より多く召喚できるようにしてあげましょう」
「お願いします!あ、あと乗員込みで。燃料と弾薬や必要な資材は、好きなだけ補充できるように!!それから、参謀役に美少女キャラお願いします!!」
「いいでしょう。それもオマケに付けてあげます」
やったぜ!これで異世界で、自分の理想とする艦隊で、夢想できるぜ!
・・・などと思っていた時期もありました。
「提督、今日も大漁ですよ」
過去に耽っていると、背後から女性の声が掛けられる。振り向けば、もう見慣れた旧海軍の第三種軍装風の制服を着た美少女。
我が艦隊の副司令官兼参謀長の大林晴香。魔王に希望したとおり、僕の好きなゲームのキャラをモデルにした美少女だ。
「ああ、ありがとう」
ああ、彼女と一緒にいられるのが、本当に癒やしだ。というか、彼女がいなきゃ、多分絶望しか残らなかった。
いやね、僕自身迂闊だったのは認めるよ。まず、転生先の世界がどういう世界なのか聞かなかったこと。
僕が転生したこの世界、より厳密に言うとこの国、カークラント王国の技術レベルはせいぜい中世、文化は日本人がイメージする中世ヨーロッパ風、ただし民族は白人とアジア人の中間風な感じ。
そして複数の国家と国境線を接し、少し前には大規模な戦争も経験しているそう。
その戦争に参戦すれば大活躍できる・・・と思ったら、戦争は基本的に内陸部で起こる陸戦とのこと。海の上での戦いはほぼ皆無で、海に接しているにも関わらず、海軍は皆無とのこと。
つまり、艦隊を率いて参戦する余地が現状ない!
さらに、その艦隊にも問題が!
女神の言った「最初は小さな艦から始まり」の言葉。自分としては少しくらいハンデがないと面白みがない、くらいに考えていたのだけど、最初に召喚できる艦艇を選択する際になって、愕然とした。
あ、ちなみに艦艇を召喚する際は、呼べば現れる分厚い「艦艇一覧図鑑」から選んで召喚するんだけど、これが今のところほぼ白紙。
最初の1ページに召喚できる艦艇としてあったのは、旧日本海軍の駆潜特務艇だけだった。
この艇、旧日本海軍が太平洋戦争中に近海での哨戒任務用に漁船をベースに建造した木造で、排水量も100トン程度しかない小型艇だ。
一応10ノットは出るし、召喚した艇は25mm機銃と爆雷を20個搭載した状態だったから、戦闘に使えないことはないんだけど。
ちなみに、この艇の乗員として男女合わせて30名が召喚されたけど、同時に副司令官兼参謀として召喚できたのが、晴香だった。
で、結局海戦が起こる可能性は低いし、そもそもレベル上げないともっと強い艦艇は召喚できないとなれば、艦隊を率いて戦うなんて夢のまた夢。
だから、手近な場所に拠点を築いて、先立つものを得る、つまりは金を儲けるために漁業を始めた。
近くの村に情報収集がてら、艇内から持ち出した缶詰やビールと物々交換して網を手に入れて、漁を始めた。
大艦隊を率いて無双が、漁師の真似事とはね。別に漁師の人をバカにする気はないけど、想像との落差に溜息しか出ない。
せめてもの救いは、召喚した晴香以下の乗員たちは、僕の命令には絶対服従。ついでに、船乗りとしての練度も充分。だから今日みたいに、手こぎや帆装の船では出漁しにくい沖合に出て、網を入れて大漁とすることができる。
彼らがいないと、本当におまんまの食い上げになってしまう。
女神が与えてくれた特典で、艇内の厨房に水と食料は補充されるんだけど、それも米と缶詰と日本酒とサイダーだけで、生鮮野菜や調味料(特に塩)は外から手に入れないとダメというのがわかってる。
これは僕自身の生命にも関わるし、乗員たちの生命にも関わる。そして、士気にも関わる!
召喚した乗員たちは、確かに僕の命令に服従するんだけど、やっぱり人間なせいか、例えば食事を一食抜いたり、おかずを減らしたりすると、途端にパフォーマンスに響く。
と言うわけで、拠点設定後真っ先にやったのは、兵舎、風呂場、食堂の建設。衣食住、本当に大事。自分も揺れない地面のありがたさを改めて認識したし。
で、この拠点とした場所は周囲に人気のない内湾の奥。周囲に人影はない。それはこの内湾が、海辺に平地はあるんだけど、そこから100mもすれば崖になっていて、内陸部との交通はほぼ不可能。つまり、陸の孤島だからだ。
あと、建物の建設に必要な資材は、転生特典で勝手に積まれていたんだけど、建設は自分たちでしなきゃいけなかった。
確かに必要な資材は無限に用意できるように頼んで、完成品を頼んだわけじゃないけどさ。
おかげで、俺も含む30名で力を合わせての建設になったし。
まあ、それでも住めば都。揺れない陸の上でゆっくり休める兵舎に、食事が摂れる食堂、そして疲れを癒やす風呂。
人間が生きる上で最低限のものが揃ったので、乗員の士気は維持できている。
とは言え、足りない食材や資材の確保、情報収集の意味もあって、今日もこうして漁して魚を近くの村に売りに行きます。
「は~。いつになったら、レベルアップできるやら」
御意見・御感想お待ちしています。




