↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

15・魔王戦?

「どうした、ボケた顔をして?」

「ボケてないわ、失礼な!」


 どうやらエーコと再会をしたら、昔のことを思い出して思いに耽っていたようだ。

 しかし、ボケはないでしょが、ボケは!


「貴方と始めて会った時のことを思い出していたのよ」

「あー、お前凄ぇ弱かったもんな」

「仕方ないでしょ、それまで戦いと縁のない生活をしていたんだから」

「そうだったな、お前と盟約を結んで、それから鍛えてやったんだったな。お前弱過ぎて鍛えがいがあったぞ」

「私は何度も死ぬかと思いましたよ。本当はただ殺すのがつまらないから特訓と言っていびり殺すつもりなんじゃないかってね」

「……成程、その手もあったか」

「おーい、勇者さん?」

「冗談だ」

「貴方の場合、冗談に聞こえないのよ!」


 エーコは相変わらずだ、敵対すれば一切容赦しない人だが、仲間と認められれば気の良い姉御肌の少女……私より年下なのに姉御肌ってなんだかなぁと思うが、まぁいいか。


「ふ、ふははは」

「な、何どうしたの。遂に頭にきちゃった?」

「何でだよ!」


 いきなりエーコが笑い出したので冗談半分で思ったことを口にしたら、思いっきり反論された。自分は冗談を言うのに、全く持って解せぬ。


「出会った頃と言ったら思い出したんだよ。私がお前の配下の者を全員倒した後、言い残すことはあるかと聞いたろう、その時お前なんて答えたか覚えてるか?」

「ええっと、確かピザをお腹一杯食べてから死にたかった、かな」

「ぷっ、あははははっ!今際の際に言う言葉かよ、思わず二度聞きしてしまったぞ」

「いや、正直に答えただけなんですけど?」

「今から殺されようとしてる奴がピザだぜピザ。しかも真剣な顔で冗談でもない、これが笑わずにいられるか。殺すには面白すぎる奴だって思うだろ? あははははっ!」

「笑いすぎです、エーコ!」


 私には理解できないがエーコは笑いのつぼにはまったらしく、その時の私は殺されずにすみ、その後エーコに協力していくこととなる。

 しかしエーコは思い出して爆笑するくらいに今も可笑しいらしい。そんなに面白いこと言ってる私?

 ちなみにピザは人間領から伝わったレシピで魔族領でも普通に普及している。敵対してるのに何故って? そんなの答えは簡単だ、美味しいものには国境はおろか敵味方なんて関係ないんだよ!

 屋敷で働いていたころは料理長ではなく、メイド長が趣味でピザを焼いてくれたことが何度もあったなぁ。屋敷を出た後でも色々な店でピザを食べたけどメイド長が焼いてくれたピザが一番美味しかったと思う。

 私がメイド長と共にピザの味を思い出して、ちょっとだけ懐かしく暖かい気持ちになっていると、エーコが爆弾発言を私に告げた。


「そんなことより、またお前を鍛えなおさないとな」

「へ、何で?」

「いや、だって今お前が魔王ってことになってるだろ、そしたら来るだろ勇者って奴が、今の勇者がどんな奴かは知らんが」

「ええええええっ――!」


 そうだよ、勇者が私を倒しに来るじゃん! そうシオン達がさ!

 いや、そうだ、そもそも何で私が魔王ってことになってんのよ!


「いや~すまん。魔王軍の残党共が押し寄せて来やがってな。その、何だ、ノリで……」

「ノ、ノリ~?」

「お前の体を借りるまでもない雑魚ばかりだったからさ、お前の体を玉座に座らせといたまま、文句を言ってくる奴を何人が魔法でぶっ殺したら大人しくなってな。知らん間にお前が魔王ってことになっていた。あはは、まいったねこりゃ」

「あはは、じゃないでしょ!」


 信じられない、なんてことをしてくれんのよ、エーコは!

 どうでもいいが、聖剣に憑依したあの光の人型の状態でも魔法は使えたんだ。

 あ~そうか、私がエーコの体に入ってた時に魔法が使えなかったのは、魔力の殆どが聖剣と一体化したエーコに流れていってたからなんだろう。

 あっ、魔力が身体に宿るか、精神体に宿るかとかの難しい質問をされても私はわからないからね、あしからず。


「まぁなんだ、こうして身体も戻ってきて魔力のロスも無くなったし、魔界門の封印もあと少しで完了する。これで心置きなく鍛えてやれるぞ。お前も勇者に倒されたくはないだろ?」

「うう~、お、お手柔らかにお願いします……」


 シオン達と戦わなくて良い方法はないのだろうか? 元の姿に戻った今の私を見てもエリーだとは思わないだろうしな。いや、間違いなく信じてもらえないだろう。

 それにしてもエーコが凄くノリノリでやる気満々なんだけど? シオン達と戦う前に特訓でエーコに殺されるんじゃないだろうか私……。


 <>


 三年後、来ないでほしかったのにやっぱり来たよ、勇者一行が。

 私は今までエーコが宣言した通りスパルタで鍛えられ、そこそこは強くなったと思う。以前エーコと協力した頃に鍛えられた時より格段にハードでしたよ、そりゃあもう。


 エーコは私が特訓後に寝込んでいる間、私の部下のふりをして魔王軍の編成や、勇者支援部隊の対策を嬉々として行っていたらしい。

 時折、兵士達に実戦での経験を積ませる為に、小競り合い程度の戦闘などをさせていたと実に楽しそうに語っていた……もう、エーコが魔王でいいんじゃないかな?


「来たぞ来たぞ現勇者共が、しかしお前大人気だな。私が魔王討伐に来た時より大規模な軍勢だぞ」


 エーコがニヤリと笑って私に話しかける。そんなエーコの言葉を平然と聞ける程、私は肝は座ってないよ! 


「えええ――っ! ど、ど、どうしよう、私、殺されちゃうよ! そうだ逃げよう、うん逃げるよ私!」

「待て待て待て、私が間引き……ゴホン、人数を調整してやる。どうせ魔王の間に来るのは勇者率いる一部だけだ。だからちゃんと戦ってやれ、あいつ等お前に会いに来たんだぞ」

「勇者シオンは今の私の姿を知らないでしょ! 会いに来たのは間違いないけど、その実は討伐じゃん!」

「ええい、女々しい、それでも魔王か!」

「好きでなったわけじゃないわぁ――! エーコが私を魔王にさせたんでしょ!」


 不毛な言い争いが続いたが、私がエーコに口で敵うわけがなく、結局私は魔王城の魔王の間で玉座に座り勇者達を待つことになった。

 まぁエーコには口だけでなく戦闘面でも敵わないんだけどね。

 その当のエーコは嬉しそうに勇者の一団に向って行った。仮面とマントを付けて「どうだカッコいいだろう?」とノリノリでだ。

 そういえばさっきポロッと間引きとか言ってたな……殺すのか追い返すのかは怖くてあえて聞かなかった。聞きたくないよね、最早人外の戦闘力を持つエーコだよ、どんな惨状が広がることになるか想像するのも怖いよ。


 エーコが去った後、一人魔王の間に残された私。ううう、胃が痛くなってきたよ……。



<>


 魔王の間の扉が開かれる。


「よく来ましたね、勇者シオンそして勇敢な従者の方々。私が魔王エリー・エメロードです。」


 本当はエーコが用意してくれた勇者にかける台詞が用意してあったのだが、あまりにも高圧的で相手を馬鹿にした台詞だったので、私なりにアレンジして台詞も大幅にカットした。

 だってさこの後「我の片腕となれば世界の半分をやろう」だよ? いつの時代の魔王だよ!


「エリー……エリー・エメロードだ……と?」


 私が魔族として生まれ、名付けられた本当の名前はエレノアと言い、愛称が偶然にもエリーで、幼い頃からそう呼ばれて育ったのだ。

 ちなみにエレノアという名前はメイド長の可愛がってた年の離れた妹と同じ名で、その人は経緯は知らないが人間領で行方不明になったらしい。

 その妹さんも普段自分のことを愛称のエリーで名乗っていたとか……そういやエスナの町で働いていた時、私の前に住み込みで働いていた人もエリーさんだったと店長が言ってなぁ。そのせいで私もエリーと呼ばれるようになったんだっけ……今思い返しても店長の考えが理解できない。当時私は記憶を失いエカテリーナ名乗っていたのだが。自分と同じ名前が嫌だからって人に前に働いていた人の名前を名乗るように命令する? まぁ今となってはどうでもいいんだけど。

 しかし私の名前、エリーことエレノアから始まり、記憶を失いエカテリーナと名乗り再びエリー、そして次にエーコに間違わられ、また三度エリーに戻ってきた。都合四つの名前を持つとか、ちょっとカッコよくない? え、ややこしいって? うるさいわ!

 私の一人ボケ一人ツッコミも絶好調だった。

 おっといけない、話がずれてしまった。今はそれどころじゃないよね。

 私があえてシオン達にエリーと名乗ったのは、無意識に私は貴方達が知ってるあのエリーなんだよって気付いてほしいと淡い期待があったのかもしれない。まぁわかってるよ、気付くわけないってことはね。


「顔色が悪いですよ勇者シオン。このまま帰られるのなら追いはしませんよ」

「な、何でもないさ、俺はある人の仇を討たねばならないんだ、大恩があり俺の……俺の大切な人になるはずだったあの人の!」

「勇者が世界平和の為ではなく、敵討ちとは驚きました」

「笑うか、それとも蔑むか、だがそれが俺の原動力なんだ」

「いえ、何を糧に成長をするかは人それぞれです。私は人らしくて好きですよ勇者シオン」

「っ!」


 シオンは私を見て緊張で強張っていた顔を僅かに崩した。

 本当に私と戦わないで帰ってくれないかなぁ、今私が貴方達の知ってるエリーなんだよって言っても絶対信じてもらえないだろうし、彼等の知ってるエリーは魔王の私ではなく前勇者エーコのなのだから。


「しっかりして下さいシオン、エリーさんの仇をとりにきたのでしょう!」

「そうです惑わされてはいけません、エリーさんはもういないのですから!」

「あの魔王はエーコ様だったエリーさんより強いんだよ、ボク達のやることはわかるよねシオン!」


 懐かしい聖騎士キースと聖女アリスそして賢者クリスが勇者シオンを叱咤した。あ~あ、シオンがやる気出しちゃったよ……やっぱりやるのね。

 彼等の中ではエリーは魔王に倒されたことになっているらしい。本物のエーコなら魔王の私が相手でも瞬殺するだろうけどね。

 それはそうとシオンの仇って私のことだったんだね、会話で何となくそうじゃないかなって思ってたけどさ。私の仇で私を討つ……意味わかんないよね?

 しかし俺の大切な人になるはずだったって、私とシオンってそんなに親密な仲だったけ? シオンの本命はアンジェラちゃんじゃなかったの?

 まぁ好かれるのは嫌じゃないけどさ。


 勇者のパーティには新たに剣士と斥候が加わっていて六人パーティになっていた。だが勇者の仲間はそれだけではない、更に六人一組のパーティが二パーティ加わり計十八人の精鋭達が私の相手である。

 ずるい、ずるいよ! エーコが魔王と戦った時は一パーティ六人で戦ったって言ってたよ、私の時は三倍になってんじゃん!

 ちなみにここまで来る時に一緒に連れてくる勇者支援部隊は、エーコの時は百五十人程の規模だったのだが、今回は最低でも千人以上の規模らしい。どうなってんのよ?!

 まぁあっちの方はエーコが何とかしてくれたみたいだけれど。


 <>


 そんな訳で戦闘は開始された。

 予想はしてたけど痛い、しんどい、辛い、何で私こんなことしてるんだろう? そもそも一対十八対って不公平でしょ!

 戦闘中そんな余計なことを考えていたからだろう、結構ヤバいダメージをくらってしまった。どうも私の行動パターンを推測して的確に指示を出している者がいるようだ。そう勇者以外に。

 勇者パーティ以外のサポートに回っている二パーティの内の一つ、そのパーティのリーダーっぽい目深にフードをかぶった小柄な女性、彼女が怪しい。

 そもそも現状、サポートパーティを先に潰さなければ勇者パーティに致命傷を与えても回復させられたりして埒があかない。

 長く辛い戦闘を耐え凌ぎ、ようやくサポートパーティ自体の魔力やポーションが尽き始めたようだ。

 彼等の動きが鈍くなってきたのだ、よしチャンスだ、反撃に転じるよ! 今までよく耐えた私、頑張ったよ私!

 自分で自分を褒める不毛な考えを巡らせながら広範囲攻撃を連発させる。私の方も体力と魔力がヤバいけど、もう少しくらいなら何とかなりそうだ。

 案の定戦列が崩壊し、俄然私の方が有利な展開に、流れを切らすことなくサポートパーティの壊滅を図る。

 例の私の行動を読んで指示を出していた女性は戦闘力があまりないらしく、他のパーティメンバーに常に守られていたが、今は私の連続攻撃で盾となり守る者はいなくなっていた。


「きゃっ!」


 短い悲鳴を上げ彼女のフードがめくれると、私の目に懐かしい顔が映し出された。

 今まさに彼女の首元に迫った私の武器がピタリと止まり、つい彼女の名を呼んでしまった。


「アンジェラちゃん?」

「え?」


 あああっ、しまったよ!

 私はつい呆けてしまい動きが止まってしまった。隙だらけになった私の身体に勇者達が襲いかかる。


「今がチャンスだ!」

「覚悟しろ魔王!」


 油断した。

 でもまぁ、最後に勇者パーティに、そう勇者シオンに倒されるのはきっと必然だったのだろう。

 身体を切り裂かれ、床に崩れ落ちる私。身体はもう動かない、目を閉じ最後の時が来るのを待つ。

 ……。

 …………。

 ………………あれ?

 いつまで経ってもとどめがこない。

 本当は目を開けるのも辛い状態だが、根性で瞼を開けた。するとそこには……。


「エリーさん!」


 シオンが叫ぶ。

 勿論、私にではない。シオンの視線の先にはエーコの姿があったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。