不動産屋
「さあ、着きましたよ」
道は整備されているところとされていないところがあった。
しかし、街へと出ると、やはりしっかりと道は作られていて、揺れるということが少なかった。
「不動産屋ですか」
大河内ジェームズに聞く。
「そうです。ちなみに言いますと、ここでグッディ卿のすべての土地の売買が行われております。契約によりまして、ここで全ての土地の管理も行っておりますので、もしも他の土地に興味がございましたら、どうぞご高覧ください」
「分かりました」
不動産屋は、土地と小麦が生えているという看板で、これで土地を現しているらしい。
今では土地と建物はセットで売られており、土地を買うことは、そのまま土地についている建物も買い取るということになるそうだ。
「ランドさん。ランドさんいますか」
ジェームズが木でできたドアを開けて、すぐに事務所へと聞く。
事務所の中は、カウンターが一つ、他には3人ほどの事務員が働いている。
そのうちの一人が、ジェームズへと近づいて、応対していた。
「所長ですか」
「そうです、ヴィラ・ランド所長です」
「少々お待ちください」
すぐに事務室の奥にある3つの扉のうち、一番左へと入っていく。
それから1分ほどで、書類のファイルを抱えた初老の男性がやってきた。
みためでいえば60にそろそろ踏み入れているような感じの、白髪の男性だ。
灰色のスーツをきっちりと着こなしていて、それなりに中流階級のいいところの人という感覚を受ける。
「ジェームズさん、そろそろと思っておりました。さあ、どうぞ中へ」
「ええ」
事務所の中の通路を通る。
事務所は12畳ほどの広さで、中心に通路、左右で通路に向かうように机が4つ並んでいる。
机同士の間にはさらにサイドテーブルが置かれていた。
机の上にはいま作業中のようだ、山と積まれた書類が、次々と処理されていく。
3つの扉のうち、今度は右へと入る。
「さあどうぞ、お二方も」
誘われるままに、まずジェームズが、次いで従者が入り、最後に大河内が入った。
そして、締めとしてランドがその部屋の中へと入る。
「いや、お待たせしました。すでにお話はジェームズさんからうかがっておりますが、今一度お尋ねします」
ソファに腰掛ける。
ランドは一人で、大河内らは従者が後ろに立って、大河内とジェームズが座った。
「大河内卿、本当に買いたいと思いなのですね」
「ええ、昨日泊らせていただきましたが、あれは歴史です。だから、誰かの手に渡るよりも先に私の手の中に入れたいと考えています。ただ、金銭的な折り合いがつけば。ということにはなりましょうが」
「正しく、それが最大の問題となりましょう。それで、土地、建物、その他諸々の不動産。これらを合わせて2500ポンド。いかがでしょうか」
「あの家の様子でしたら、本来はもう少しばかり安くても構わないでしょう。私は専門家ではありませんが、申し訳ありませんが1500ポンド、それと現在いる使用人の最低15年間の継続雇用とその分の費用もつけましょう」
「……ジェームズさん、いかがですか」
難しい顔をしてランドがジェームズへと話を振る。
「少しばかり高くはなりませんかねぇ。2000ポンド、使用人は10年間の継続雇用」
ちなみに、現在1年間に使用人らの費用としておおよそ120ポンドを必要としている。
これでも7割減った結果なので、元は400ポンドはしていたということになる。
つまり10年間で1200ポンド、合わせると3200ポンドということとなる。
「……1800ポンド、10年間の継続雇用では」
「いいでしょう。全権を委任されておりますので。これで契約成立となります」
ジェームズと大河内が握手を交わし、それを従者とランドが見届けることとなった。
契約書はその日のうちに完成し、大河内は手野家当主代理兼砂賀家当主代理という肩書で、ジェームズはグッディ子爵代理という肩書で、それぞれサインをする運びとなった。
また契約書原本はランドが保存し、その土地登記は土地所有権の登記ということとなり、それはジェームズがランドとともに行うこととなった。
登記書類の原本はランドが保存し、契約書の写し2通、陶器書類の写し2通はそれぞれジェームズと大河内が持つこととなる。
そして、英語を正文とし、従者が訳した日本語を公定訳文と定めた。
これらについて疑義があった場合は、英語の解釈を優先としたうえで、さらに互いに話し合うこととなった。
この契約書と登記書類の写しについては、大河内本人が帰国した際に当主へと手渡すこととなった。




