朝
翌日、部屋にはすでに起きて準備をしている従者と、ベッドで寝起きの大河内がいた。
「おはようございます。本日は、街へと向かい、不動産業者と会う予定です。また、ジェームズさんが、同行するとのことです。新聞はいかがしましょうか」
「英字新聞ならば、やめておこう。朝食は」
「間も無く連絡が来るはずです。連絡後に移動する手はずとなっています」
目覚めの紅茶は、前日に断っていた。
「今日は素振りをすることはできないようだな」
その時には、代わりに昼間に簡単に素振りを行うことにしている。
大河内は、今日はその方式でいくつもりのようだ。
「まことにその通りでございます」
その時、ドアがノックされる。
そして執事が扉の向こうで声をかけた。
「朝食のご準備が整いました。どうぞ、大広間へと御参上ください」
「分かりました」
こちらもドア越しに、従者が声をかけた。
足音もなく、どうやら執事はどこかへと去ったようだ。
「いかがいたしますか」
「起きるとしよう。どうやら朝がきたようだしな」
それはすでに来ているのだが、従者は何もいうことはなかった。
朝食は、ワンプレートで、豆の煮たもの、焦げ目がない炒り卵、薄切りトースト、しっかり焼いたベーコンが、一つの皿に乗せられていた。
子爵は姿がなく、食べているのは大河内と従者だけである。
モソモソと食べ終わると、入れ違いにジェームズがやってきた。
「おはようございます、大河内卿」
「おはようございます、ジェームズさん」
お辞儀をして挨拶をするジェームズに、大河内は挨拶をした。
「後で伺う予定ですが、いつごろがよろしいでしょうか」
「ご随意に。こちらはいつでも構わないので」
客分としている大河内は、ジェームズへとそう答えた。
「分かりました。では、朝食を食べてから、すぐに伺います。おそらく15分ほどと思うので、よろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ」
そして、二人はいったん別れた。
部屋へと戻ると、すぐに準備へと入る。
少しの間はここを拠点とすることができるようなので、荷物は今日使う分の最低限だけでいい。
従者が次々とカバンへと入れていく横で、大河内は辞書を開けていた。
一つずつでもいいから、英単語を覚えているようだ。
「大河内さま、まもなく時間となります」
「そうか」
フワリと辞書を閉じ、それを机の上へと置く。
従者が持っている懐中時計は、部屋に戻ってからすでに15分すぎたことを示していた。
ピッタリに、ノックが3回。
「大河内卿、ジェームズです。お迎えに上がりました」
「今行く」
大河内は返事をして、従者を先にしてドアを開けさせた。




