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無能王女と最強勇者伯~無能王女は無能が無能らしく生きていける平和な世界が欲しい~  作者: たけすぃ


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私が貴方にできること2

「私が考えていたのは、盗まれたケミカ先輩の道具をどうやって取り戻すか、です」


 今度は俺が首を傾げる番だった。


「なんで?」


「魔物を召喚する道具がまだ三つも行方が分からないんですよ?」


 メフティアの顔が、さもそうするのが普通だと言いたそうな顔だったので、そういう物かと思おうとするが、納得が立たない。


「また暗殺されるかも、と思っているなら大丈夫だぞ。メフティアがそれで暗殺されそうになったら俺が助けてやるから」


「街中で使われたらどうするんですか!?」


 メフティアが大声を上げる。俺達が座るテーブルから離れた場所に立っている給仕の人が変な顔をしている。きっと大声を上げる王女という幻を見たからだろう。


「街の治安を預かってる連中が、それこそどうにかするだろ」


 なんでコイツは自分の責任の範疇でもない事に頭を悩ませているんだ? 不可思議な言動をするメフティアが、ちょっと分からない。

 立場で言えばメフティアは被害者側だ。


 彼女は怒って良いし、誰かに助けを求めて当然の立場で、救済される側の人間だ。

 それがどうして〝自分が解決せねば〟、みたいな顔をしているのか?


「そうであったとしてもです」


 メフティアが真剣な顔をして俺を見てくる。

 思わず「そんな顔もできるんだな」、と小さく漏らしてしまった俺の言葉を無視してメフティアが俺に言う。


「被害もさることながら、万が一にでもケミカ先輩が作った道具の事がバレれば最悪彼女は死刑です」


 別に彼女が道具を使って暗殺を目論んだわけでもないのに、と思うが貴族の世界はそういう所がある。原因を作った奴を恨みがちだ。

 実際に、先輩が作った道具で命を狙われたメフティアがそれに反発している。


 なんとなくだが、嬉しくなる。


「あーでも彼女は国の宝なんだろ? さすがに大丈夫なんじゃ?」


 貴族というのは理解しがたいルールで動いているが、馬鹿というわけでもない。

 国の宝と呼ばれるようなケミカ先輩を、理不尽な理由で失うような事はしないはずだ。


「確かに。彼女の優秀さを考えれば、ほぼ間違いなく死刑は免れるでしょう。ですがその死刑回避の過程で必ずどこかの派閥の影響が発生します」


 メフティアの顔は真剣であったが、不思議な事に貴族らしくなかった。


「彼女は派閥間のバランスによって無所属ですが、〝命を救った〟という恩を売れるのならば自派閥に取り込む事を選ぶ派閥が出てきます、具体的には私の兄二人の派閥の事ですが」


 ふとメフティアが不安げな表情を浮かべ、言うべきか言わざるべきか迷うように口をパクパクさせる。

 彼女が迷ったのは一瞬だった。


「《《私は》》……、ケミカ先輩がどこかの派閥に所属して、不自由な思いをするのは阻止したいと……思うのです」


 なるほど、これがメフティアの望みか。

 つまり彼女は、盗まれたケミカ先輩の道具を、事が大きくなって露見する前に回収し、この事を無かった事にしたいのか。


 彼女の望みを知れた事に満足しながら、俺はこの後の展開が予想できてゲンナリする。

 王家の人間がこうやって望む事を伝えてきた場合、その後の展開は一つだけだ。


 初代勇者の借りを返せと要求してくるのだ。

 たぶんそれは命令と言う奴で、実に友達らしくない。


 だから俺はメフティアから、彼女の望む事を聞き出したかったのだ。

 望みを聞き出して俺が実行する、結果は同じだが――俺はそうしたかったのだ。


「そうか分かった」


 自分の声に《《拗ね》》が入ったと自覚した。


「じゃあメフティア《《王女》》、俺に命令してくれ。叶えてやるよ」


 どうせ命令されるなら、自分から望んだ方がまだマシかもしれない。

 いや駄目だな、全然気分がすぐれねぇよ、コレ。


「え? 嫌ですけど?」


 そう言ったメフティアの顔は、恐怖すら感じているような、そんな顔だった。

 王国に恩があるのだからあーしろこーしろと、上から目線で言ってくる連中とは全然違う顔だった。


 我ながら子供っぽいと思ったが、何故か俄然やる気がでてくる。やるなと言われたらやりたくなるとか、完全に小さい子供のそれだ。


「遠慮するなよ」


「嫌ですよ」


「えー言おうよ、素直にさ」


「いえ、素直に嫌です」


 我儘な奴だなー、俺がそうぼやくと、メフティアが何でそんなに嬉しそうなんですかと頭痛に耐えるように目頭を揉んでいる。


「ですが、ええまあ、そうです。私は無能です」


 お? メフティアが再び真剣な顔をする。でも今度はとても貴族らしい顔だ。

 コロコロ顔が変わって面白い奴だなぁ。


「どうにかしたい、と私が口にした所でどうにもならないのもまた事実」


 あらゆる苦汁を飲み下す顔。

 ままならない現実を前に折れない心、人はそれを誇りと呼ぶ。


「ショウ君、《《お願いです》》。私に力を貸してくれませんか?」


 なんだよー、もうー、コイツ―、素直じゃないなー。

 お願いってお前、もう、ホントもう。


「任せろ」


 俺はそう答えた。なんか知らんが嬉しい。

任せろ(フラグ)

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