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無能王女と最強勇者伯~無能王女は無能が無能らしく生きていける平和な世界が欲しい~  作者: たけすぃ


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私が貴方にできること1

 *


 ケミカ・リーダット先輩がメフティアを呼び出した理由は、聞いてみれば当たり前の事だった。

 自分が作った道具が盗まれ、そのせいでメフティアに迷惑をかけたから謝りたい。


 実に真っ当な理由だと俺は思った。

 人に迷惑をかけても謝らない貴族連中に見習ってほしい。


 アイツらは感謝の言葉は気軽にポンポン吐く癖に、謝罪の言葉は余程じゃなければ絶対に言わないからな。マジでクソ。

 人に迷惑をかけたりしたら、人間素直に謝る方が絶対に良いと思うんだけどな。


 俺はその謝れない連中の親玉。王家の人間であるメフティアを眺めながら、そんな事を考えた。場所は学園の中にあるティーサロン、要は喫茶店だ。

 大陸全土から学生が集る為に、学園には学生寮があり、そこの生徒向けに学園内には学食の他に軽食をとれるようサロンが併設されている。


 ちなみに勇者伯の一族は学園内での飲食は全て無料だ。

 初代勇者への感謝の気持ち、という事らしいが。その子孫としては単に初代勇者が食費も払えない人間だったからだと知っている。


 どうも、我がご先祖様は金という物を良く分かっていなかった節があるのだ。

 初代勇者の嫁、つまり曾祖母そうそぼが残した日記には、その事に関しての文句が山のように綴られている。


 文章からは曾祖母の愛情がたっぷり感じられるので、夫婦仲は良かったようだが苦労はしのばれる。

 というわけで、俺は勇者の子孫としての権利を活用して、無料のサンドイッチを齧り、そして枯れ葉を燃やしたような匂いのするお茶を飲んでいた。


 小さな丸テーブルの向こう側では、メフティアが真剣な顔で考え込んでいた。


「茶が冷めるぞ?」


「そうですね」


 駄目だ、まったく意識が俺の方に向いてこない。

 メフティアが暗殺されるわけではない、そうと分かって帰ろうとした俺を引き留めたのは彼女自身だ。それなのにこの仕打ち、酷くない?


 こういう時に、友達だったらどうするのが正解なのだろうか?

 俺は将来、目的かなってメフティアと友達になれた時の練習をしようと、考えた。


 物の本によれば、友達とは相手が欲する事を無償で、かつ求められてもいないのにするものだと書かれていた。

 つまりメフティアは、今何かに悩んでおり、それを俺がメフティアから求められてもいないのに解決するのが、友達としての行動となるはずである。


 問題は、メフティアが何に悩んでいるのか分からない事だ。

 凄いな、世の友達連中は。友達となれば相手が何を欲しているか、言葉にせずに分かるようになるなんて、超人の領域だろ。


 借りを返す為にメフティアと友達になりたい、その目標が果てしなく遠い事に震える。

 仕方がない、俺は妥協した。


「なあメフティア、俺は報復で誰を暗殺したら良い?」


 俺は素直に訊く事にした。

 暗殺されかかったメフティアが、今一番したい事ってなんだろう? って考えたらこれしか思いつかなかった。そして多分正解だ。


 人間は誰かを殺そうとする時には真剣になるものだ。

 問題は、誰に報復したいのか俺には分からない事だった。だったら素直に訊けば良い。


 分からない事は素直に訊く、これも貴族がなかなか出来ない事の一つだ。人間素直が一番だと思うんだけどな。


「報復するとなると、私の場合は数が多すぎるので誰でも良いですね」


 お前はそんなに暗殺されそうになってるのか……。

 期せず知ったメフティアの悲しい真実に泣きそうになる。


 無能とは言え可哀想な奴だ。どこかに無能が無能のまま生きられる国があると良いな。

 見つかった時は俺が責任をもってお前をそこまで連れて行くよ。


 しかし誰でも良いのか……。それはそれで困ったな。誰でも良いと言ってもメフティア派閥の貴族を暗殺するのは駄目だろう。

 となると――。


「第一王子派閥と第二王子派閥、どっちが良い?」


 間違いのない選択肢を俺は出す。


「その二つからでしたら――なんですって?」


 メフティアの目が俺を捉えた。


「ごめんなさい、聞き間違えだと思うんですけど、誰が誰に何をすると?」


 コイツ話を聞いてなかったのか。

 駄目だぞ? 殺すって決めた時に真剣に考えるのは結構な事だけど、周りの音が聞こえなくなる程に真剣に考える事でもない。


「俺が」


 自分の顔を指さす。


「ショウ君が?」


 メフティアが首を傾げる。


「メフティアが望む奴を」


 メフティアを指さす。


「私が望む人を」


 メフティアも自分の顔を指さす。


「暗殺する」


 俺は〝これで合ってるだろ?〟と頷き――。


「なんで!?」


 メフティアは叫んだ。


「え? いやだって真剣に考え込んでたから、誰か殺したいのかなって」


 メフティアの驚き様に、自信が無くなってくる。もしかしたら俺は間違えたのかもしれない。


「私の事を何だと思ってるんですか……」


 メフティアが頭痛を堪えるような仕草をする。どうも本当に俺は間違えたみたいだ。

 それはそれとして、俺は細かな会話も拾う。友達とはそういう物だと本に書いてあった。


「王家の一族」


「そうと言われると、真剣な顔して誰を暗殺するか考えていた、と言われても否定しずらくなるのが、業が深いですね」


「じゃあ、やっぱり」


「違いますからね」


 やっぱり正解だったんじゃ、そう喜ぼうとしたらメフティアに否定されてしまう。


「私が考えていたのは、盗まれたケミカ先輩の道具をどうやって取り戻すか、です」


 今度は俺が首を傾げる番だった。

ぐえええ

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