ねこみみとアマツカ
「…………大丈夫、ティア………??」
「え、えぇ…問題ないわ……」
翌日、ミラから連絡を受けティアも含めてこれからのことを話し合うことにした。
パーティーのままか"ギルド"にするのか。
パーティーだと組織というしがらみもなく各々自由に行動出来る。しかしその分集まりも悪くなる。
ギルドだと組織を優先することが多くなる分、最低限の人数は確保出来るし確率は上がる。
どのみちもう少し人数が揃わないとギルドとして立ち上げるのは無理だろうが、方針を固めるには丁度いい時期である。
ということで集まったのだがどういうわけかログインしたばかりというのにすでにティアが苦しい表情をしていた。
「もしかして二日酔いですか?」
「………言わないで」
「………シジミの、味噌汁……飲んだ……??」
「……そういうことは、大人になってから覚えなさいよ……」
ツッコミも覇気がなくずいぶん苦しそうである。
リアルの体調はそのまま影響する。もちろんこちらで時間が立てば治るが……
「でも良かったですね。
昨日みたいに"時間が引き伸ばされて"いなくて」
「ええ。ここで戻ってもリアルに戻ったらまた二日酔いなんて……地獄だわ……」
昨日のようにゲーム内が何日か過ごしてもリアルでは一時間というように"ゲーム内の時間の引き伸ばし"というのがある。
こちらで二日酔いが治っても、リアルに戻れば二日酔いがまた襲ってくるというカラクリである。
「私のことはいいから、話を進めましょう」
「そうですね。どこも有能な人はどこかのギルドに引き抜かれてますから」
昨日のイベント後、上位ランクインした者達は自身でギルドを作ったり何処かのギルドに加入していたりしている。もちろん全員が全員ではないが少なくとも前回一位の「タイム」は自ら作り出したギルド"クロノス"ですでに名を上げている。
「私自身はしばらくはパーティーでいいかと思うわ」
「そうですね……めぼしい人もいませんし」
「あぁ、入ってくれるかもって人なら何人かいるわ」
「そうなんですか?」
「前に話した情報屋でその子にこの前のイベントを話したの。
そしたら一度会ってみたいって話になったり、パーティーに参加したいとか言ってくれる人が何人か出たらしいわ」
情報屋に話したと言っても遺跡内の話や、結城やミラの特徴など。
もちろん今後不利になりそうな情報を外した上で話したら興味を持ってくれた人が現れたという。
「でもね、その人達がどういう人物まで知らない。
こういう時はパーティーとして何度か参加してもらって改めてギルドを作るときに誘うがいいと思うわ。
事前にギルドを作る目的だと話すと"何か知られたくないものを隠す"人も出てくるだろうから」
「……スパイとか、ですか?」
「いないとは断言出来ないからそういうことも想定しないといけないの。
普通に楽しめばいいだけなんだけど、そういう人はいるから」
そういうどうしようもない人は確かにいる。
だから何もかも信じると後で痛い目にあうならと考えないといけない。
「大丈夫ですよ」
突然の第三者の声に振り返りながら武器を手に取り距離をあける。
そこには着物を着た、いかにも"大和撫子"のような黒髪ロングで腰には二本の刀を持っており剣士だと思われる女の子がいた。
「お久しぶりですねユウ」
「…………………うん……………」
「知り合い、なの?」
「………いい、人だよ………」
「そう。ならいいけど」
ユウの一言で警戒を解いた二人。
武器から手を放したがそれでも"注意"を解くにはまだ早いようでどういう人物なのか探りをいれようとしたところで
「申し遅れました。運営管理人の"アマツカ"といいます」
「運営管理人って……このゲームの?」
「なんでそんな人がこんなところに……」
「私みたいにゲーム内には何人かいますよ。
ただ私だけがこうして管理人として名を出してますけどね。
さて、私がここにきた理由でしたね。それは"趣味"です」
「「しゅ、趣味?」」
「趣味です。私の知り合いの人がどのように成長していくのか目の前で見るのが好きなのです」
真面目な表情で言いながらフフフと微笑むアマツカ
本気なのかよく分からない発言に
「か、変わってますね……」
「ええ。変わってないと大規模なゲームの運営管理なんて出来ません」
「そこを納得してしまうと何も言えないわ……」
「ありがとうございます」
のらりくらりと会話を交わしているのか、本当に素で話しているのか分からないアマツカに二人はため息をつく。
「それでさっきの話ですがギルドへのスパイ行為等を発見した場合、最悪無期ログイン停止としますので」
「む、無期……ですか……??」
「無期、ですよ」
ニコっと笑うその表情からしてこの人にはあまり逆らわないほうがいいと感じた。悪い人ではないが完全に信用していいかと言われたら違うとハッキリ言える人物。
「そんなことよりも、ギルドについてお話していたんですよね?
わたしで良ければ詳しいこと話せますよ?」
ゲームの運営管理人から話を聞けばそれは有益な情報が手には入るが、この人自体を信用していいかとなると……と、考えたがここで何かをやる理由も、ましてや運営管理人がそんな真似をするわけがないと考え
「それじゃお願いします」
「はい」
…………………………
「と、いう感じでしょうか」
「お、思っていたより内容が……」
「それは運営管理人ですから。"一から十"以上のことも話しますよ」
ギルドについて話を聞くことになったまでは良かった。
しかしそこからが長かった。さっき話していたギルドのメリット、デメリットについてや、その先にあるギルドとしての在り方や、どのような運営をしていくかなど、こと細かく話してくるものだから結城は寝てしまい、現在アマツカの膝を枕に寝ている。
ミラとティアはげっそりした表情でやっと終わった講義にため息をついた。
「やめましょう。私たちじゃ無理よ」
「はい。それがいいですね」
「良かったら私が立ち上げのお手伝いを」
「「いいですッ!!!!」」
「そうですか」
クスクス笑うアマツカ。
そうギルドを作るには時間も人もいる。なによりお金もいる。
その後の運営や人間関係。それらをやりながらモンスター狩りやアイテム収集などをするとなるとゲームを楽しむどころかゲームに支配される気分になる。
そんなことまでしてギルドを作るぐらいなら何処かのギルドに所属するか、このままパーティーのままのほうがずっと良かった。なにより
「私のユウを他の有象無象に渡すなんてあり得ません!」
「ミラのものでもないけどね……」
他者の所有物になるぐらいなら自らの手で。
ミラとしたらなんより優先させるのは結城の存在なのだ。
こんなにも安らかに、天使の寝顔している結城の姿などを他の人に見せるわけにはいかないというのが本当の気持ちである。
「それでは私はここで」
そういって軽く結城の肩を叩くと「……………ウ……ン……」と声を出しながら瞼をこすり起きた結城。周りを見渡すとミラとティア、そして一番近くにいるアマツカが見えた。
「………おはよう……」
「はい。おはようございます。私、もう帰りますので」
「………また、来る?」
「ええ。近い内に」
立ち上がった結城はアマツカにギュッと抱きついて「……またね……」といい離れた。その行動に優しい表情になったアマツカは「はい。また」と手を振ってログアウトをした。
「さて、邪魔者がいなくなったところで」
「ハッキリ言うの、嫌いじゃないけどね」
「今回、私達が手にしたレア物の性能、機能を確認しようと思います!」
「はいはい。結城ことになると周りが見えなくなるのよね……」
こんなにも分かりやすい人もいるものだなーと感じながらも、ミラの提案には賛同した。どの程度のものか確認せずにぶっつけ本番などバカがやること。
ここでどの程度の性能が、機能があるのか確認するのがセオリーである。
そして今日1日はそれぞれのレア物の性能、機能を確認して終えたのだった。
…………………………
「あんなことまでいってギルド自体に入らないようにする必要性あったんですか?」
「もちろんよ。そうしないと、私、ユウ達と遊べないでしょう?」
「それが目的でしたか……」
とあるビルのオフィスの一つ。
スーパーコンピューターがたくさんある中に一部、いまやっているゲームにログインするためのスペースが設けられていた。
そこにいるのは眼鏡をかけた優男と、和服が似合いそうな黒髪ロングの女性。
「でもいいんですか?こんな勝手に一人のプレイヤーに肩入れして」
「ダメよ」
「………なら、どうして?」
「一つはあの子が桝田裕次郎、世界屈指の大金持ちの一人娘だからよ。
そしてこの"paradise"の筆頭株主になったからよ」
「マジですか…」と唖然とする優男。
paradiseが開始して日にちも浅いというのに筆頭株主になるほどの大金持ち。そしてそこまでして娘のためにやるなんて……
「ちょっとどころじゃないですよその過保護」
「その過保護のお陰でハイスペックなパソコンを複数所有したり、全国に展開出来たのよ。社長も大喜びよ。今度のボーナスはかなり期待できるわね」
「で、その代わりにやるのがその子の監視ですか?」
「違うわ。監視なんてことはしないわ。
やるのは思う存分ユウが楽しめる環境を作ること。その為ならあらゆる手段を使ってもいい。殺人や世界征服よりもこんな可愛い依頼なら進んでやるわよ」
確かにその通りかもしれないが…とそれからは考えようにした優男。
いまの環境に不満があるわけがない。むしろ大歓迎だ。そんなにも快適に趣味に留めていたことを仕事としてやらせてもらえるのだから。
「それで次は何をするですか?」
「それはもちろん彼女達のレア武器などを試す環境を作るのよ」




