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ねこみみと遺跡⑥

「………………やらかしたわ………」

「………………ですね…………」

「………………?」


三人が起きたのは、夕方だった。

あれから熟睡も熟睡。

明るい日差しの中でも三人は爆睡してとうとう

夕方になってしまったのだ。


このイベントは丸二日。

そしていまはその二日目の夕方。つまりあと約7時間ぐらいしかない。


そして遺跡攻略のメダルは三人合わせても3つ。

間違いなく10位内には入れない。

それが分かったため、二人は深くため息をついた。

頑張って10位内に入れないなら諦めもつくが、まさか熟睡して時間がなくダメだったなんて……


しかしそれよりもおかしいことに気づいたミラは結城に


「………ねえ、ユウ。ユウって朝方に私達と一緒寝てしまったのよね?」

「…………うん………」


「お陰で熟睡出来た訳だわ~もうとても抱き心地がよかった~!」

「何を確認してるのよ貴女は……」


そう。ミラはいつの間にか結城を抱き枕のようにして寝ていたのだ。

結城の柔らかな体に熟睡効果があったのだろうか…

ちなみにティアは結城の手を無意識に握っていたとか。

本人は「……リアルで忙しかったからよ……」と熟睡の理由を述べたが結城の小さな手が、柔らかなその手が安心感を与えて熟睡させたのは違いないだろう。


「となると、なんで私達街に戻ってないんですか?」

「ええ。私も同じ考えよ。こんな無防備だったのに…」


そう、熟睡していたのだ。日中ずっと。

それは「攻撃してください」と言っているのと同じ。

なのに三人とも無傷で起きたのだった。


何が起きたのか?と考えていると結城が手をあげた。


「はいユウ」

「…………スライム……さんの、スキル……かも……」


「あぁ。確かにね。それがあったわ」

「なにそれ?スライムのスキル。えっ、そんなの無かったわよね?」


すると結城がステイタスを表示させてスキル欄を指差した。

しかしそこにはこの前見たのと同じ。

たが結城が"レアスキル"の下の段に触れると



オリジナルスキル

『動物』


サイドスキル

『純粋』

『ウサギのジャンプ』

『通り抜け』

『リスの木登り』


レアスキル

『優しさの塊』

『流水』


※モンスタースキル

『スライム』



さっきまで何もなかった所から隠されたスキル"モンスタースキル"が表示された。


「…………はぁ?」

「無意識に使った。というか防衛本能かしらね。とにかく助かったわ」

「…………助かった………」


「いやいやいやッ!!!なによこれッ!!!??」


「やっぱりティアでも知らなかったか……

詳しくは話せないけど、あるスライムからスキルをもらったの。それが"モンスタースキル"」


それを聞いただけで頭が痛くなる思いだった。

モンスタースキル。そんなもの全く知らない。

恐らく誰も手にしていないスキルだろうけど……


「……これ、何が出来るの?」

「私も持ってるからやるわね。"スライム"」


スキルの呼称を言う足元からスライムがニョキっと現れた。

そしてそのまま膨らんでいきついにはミラを包んでしまったのだ。


「……な、なに、これ……??」

「特性は"打撃絶対防御"

流石に魔法や斬撃は削られるけどね」


「もしかして…これに包まれていたの、私達……??」

「周りから見たらスライムに喰われた間抜けなプレイヤーに見られたんじゃないかなー」


つまり同情と憐れみなどで誰も"スライムに食べられたプレイヤー"を救うことはしなかったということ。そしてそれが自分も含まれているとなると周りからは"間抜けなプレイヤー"だと思われてしまったことになる。


「べ、弁解したいけど…この情報は流さない方がいいか……」

「お願いしますね。私達も出来るだけ使いませんから」


切り札は多いほうがいい。

この"スライム"もいざとなったら使うが使った時点で"モンスタースキル"という情報が出回る。すると誰もがモンスタースキルを手にしようとアクションを起こす。


悪いことではないが少しでも人より優位に立つならこういった情報は流さない方がいい。


「……じゃ、私達は一度スライムに食べられてヤられたということでいいのね?」

「はい。不本意かも知れませんが……」


「もういいわよ。こんなもの見せられたら隠すのが得策よ」

「ありがとうございます」


…………………………



その後遺跡には入ったものの時間になりイベント終了。

結局結城達は一つの遺跡しか攻略出来なかった。

もちろんランキングは10位には入れずメダルはそのまま換金してお金にすることにした。


ただし、この話には続きがあった。


「えっ。あの遺跡難易度が高かったんですか?」

『ええ。情報屋から聞いた話だとね。

あと2つ同じ難易度があったようで"トラップ""モンスター""迷路"のどれかに特化したものらしいわ』


イベントも終わりティアとはフレンド登録しておいたのでログアウトしたあともこうして連絡を取り合っていた。

ちなみにティアのリアルは小学校の教師。

結城達の住んでいる県ではなくずいぶん遠い県らしい

いつもスーツ姿で嫌気がさしてゲームではあんな風に着崩ししているようだ。


『私達がいた遺跡は"迷路"。スキル"探索"などの探索系スキルがないとまず攻略出来ない遺跡だったみたいね。

五人以上っていうのは遺跡の難易度もあったようだけどその"迷路"を隠すためもあったようね』


「ということはあの遺跡で手に入ったものって……かなり良かったんですか!?」


『そういうことね。ちなみに残り2つは攻略出来ていないわ。

つまり私達だけよ。でもよく"迷路"と言われた遺跡を迷わなかったものね。さっき言ったように隠れた難易度の高い遺跡だったから途中までは普通だったらしいけど、最深部にいたあの人達はあそこに来るまでに1/4以上のプレイヤーと別れたって聞いたわ』


つまりあの遺跡は迷路に迷わせてモンスターやトラップに遭遇してリタイアさせるために作られたようだ。それでも結城達はほぼ迷わずに最深部まで来ていた。


「それ、多分結城の"直感"じゃないですかね」

『でもそれって、スキルじゃないわよね??』


「スキルというか"動物"に含まれている"野性的勘"みたいなものかなーって」

『確かに…あの子の勘の良さにはビックリしたけど…それなら納得だわ……』


つまりは最深部までいけたのは結城の勘・強運によるもの。

ただのまぐれでは到底いけない遺跡を攻略したのだ。その強運は間違いない。


『………宝くじ、買って貰うかしら』

「せ・ん・せ・い??」


『冗談よ、冗談ッ!!』

「結城本人は気にしてないようですけど斎田さんから内密にって」


『確か結城ちゃんの執事よね。……本当にお嬢様だったなんて……

こっちも口外するつもりはないわ。海來さんもよろしくね』


「もちろんです!結城のためなら何でもしますッ!!!」


こうして連絡をやり終えたティアこと本田 あかりは缶ビールを開けて2本目になるそれを口につけた。

うはぁー!!と半分ほど飲み干しアテのキムチを食べる。


「……この姿、見せられないわね……」


学校とのギャップか、ゲームと同じように私生活はだらしなくこうして毎日酒を飲む。部屋は割りとキレイにはしているが食生活に関してはコンビニやスーパーの惣菜ばかり。

部屋着も海來から見えるところまでは清楚にカーディガンを着ていたが止めた途端に脱ぎ捨てて下のスエットで過ごす毎日。


「結城ちゃんとは、雲泥の差ね……」


そんな事をぼやきながら残りのビールを飲み干し、また新しい缶ビールに手を伸ばした。

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