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ねこみみと遺跡⑤

「はぁ~もうすっかり夜ねー」

「野営しないと。どこにしましょうか?」


「特にないけど……夜襲ってくるプレイヤーを考えてどうするのかよね……」


「ゲームだから睡眠は必要ないですから休憩程度で…ってユウ?」


フレンディアとミラが話し合っていると結城がミラの服の端を引っ張ってきた。どうしたのかと見てみると目を擦りながら眠たそうにしている。


「あ、あれ?ユウ…眠いの?」

「…………ぅ、ン……」

「ならここで野営しましょう。

ユウは少し寝てていいわよ。私とミラでご飯作りながら見張ってるから」


すると結城は糸が切れた人形のように眠りについた。

その天使ような寝顔にしばらく二人は見続けたあと野営の準備を始めた。


ゲーム内では三大欲求を取らなくていい。

もちろん自ら取ろうと思えば出来るが食事も睡眠も断とう思えばずっと出来るのだ。性欲も同じだがこちらは人としてのマナー、つまりお互いに了承がなければ監獄行きかログイン禁止にされる。


「あぁ~可愛いわ~。………襲ってもいいかしら?」

「それやったら、ユウがやらなくても私が監獄送りしてあげるから」


「あ、アハハ…冗談ですよ……」

「短い付き合いなのにその言葉に信用がないということは分かるわ……」


ご飯を食べたり睡眠を取ればHPもMPも回復する。

効率といえば睡眠だろう。こちらはHPもMPも同時で、食事は出来た料理により回復効果も回復率も変わる。


それでも食事は途中で中断するのも回復するための時間も速い。

睡眠はどうしても無防備になり起きても簡単に頭も体も動かない。


だからこうして野営をするときも全員で寝るのではなく交代でするのが好ましい。もちろん夜という暗闇を利用して襲ってくるプレイヤーの対応策でもある。


そんなプレイヤー達を警戒しながら火を起こしバックからパンと鶏肉を取り出したミラ。ティアは飲み物と取り皿を用意しながら


「サンドイッチでいいですか?簡易的なものですけど」

「いいわよ。現実でも簡単なものしか食べないから」


「ティアって…OLなの?」

「隠すことじゃないからいいけど、食事の傾向でOLって予想するのは失礼よ」


「ご、ごめんなさい…」

「まぁ、いいわ。私は教師よ。

堅苦しいからね、ゲームの中ぐらいはこんな格好もしたくなるよね」


「せ、先生……」

「あっ。もしかして就寝時間とか勉強とか、とやかく言われるって思った?

やらないわよ。そんな面倒なことは。第一私の生徒じゃないし」


「そ、んなものなんですか?」

「口調。ってもう好きにしたらいいわ。

教師っていっても小学生よ。貴女達は高校ぐらいでしょう。管轄違いよ」


フライパンで鶏肉と野菜を炒め、塩コショウで味付け。

パンにバター塗り挟んだ簡易的なサンドイッチが出来上がった。

飲み物はただのミネラルウォーター。


このゲームではリアル的に料理が出来て好評だと聞く。

ここで料理の勉強をしてリアルで実践するものも多い。


「いただきます。………あっ、美味しいわ」

「良かった~」


「これ、なんでこんなに簡単なのに美味しいわけ??」

「やっぱりバターですかね。隠し味ってわけじゃないですけどカラシの代わりにゆず胡椒入れてます」


「だからさっぱりしてても美味しいわけね……やってみようかしら」

「ぜひ。でも入れすぎないでくださいね。分からないぐらいがいいので」


サンドイッチを食べながら色んな話をする二人。

プライベートは控えて主にこのゲームについてだ。

主に話題になったのは他のゲームとの違いだった。


「料理はリアル的。でもダメージによる痛みはどんなものでも一律。

魔法もスキルもあるけど、やたらスキルに気合いが入っているし。

そのなかでもオリジナルスキルは異常だわ。使用者の行動に対して自動的に最適化したサイドスキルを生み出して、それを無意識に使用出来るようになってる」


「やっぱりそうなんですね。ユウのスキル、ほとんど"発言"しなくても使用してたから……」


「私が知っているもう一人のオリジナルスキル保有者はやっぱり他の人よりもずば抜けていたわ。何かしら行動すれば保有者の望み通りのサイドスキルが手に入るんだからね。あれはチートよチート」


「もしかして、絶対防御とか最強の攻撃力とか……」


「流石にそこまではないわ。でも攻撃力はとんでもないことは確かね。

きっとこのイベントも一位になるのは間違いわね」


スキルを使用するとき基本的にそのスキルの名前をいう必要がある。

言葉に出したほうが確実にそのスキルを使用出来るが、心の中で言えばもちろん使用出来る。


しかし心はあやふや。ハッキリと言わないといけないため殆どが発言する。

それでも簡単にスキルを使用出来るものがある。オリジナルスキル、サイドスキルだ。


オリジナルスキルは常に発動状態。

そしてサイドスキルは所有者の意思を読み取り最適化、そしてそれを自動的に使用することができる。


所有者の行動から生まれるスキルなのだ。

他者が作ったスキルとは違うため、自分の行動にスキルが適切に発動する。

そのサイドスキルを上手く使えば自分が理想とするものに一気に近づく。

ゲーム内最強も夢ではない。


「と、いっても"無敵"じゃない。

誰かがそのプレイヤーを倒せばオリジナルスキルなどは奪えるからね。

でも……結城は別。まさか破壊不可、取外不可、強奪不可なんて……

本人は自覚ないだろうだけど、間違いなくいつかナンバーワンプレイヤーになるわよ。そしてそんな結城を狙ってくるやつも多くなる」


「やらせないわ。ユウに触れるなんて……万死に値する」


「や、いや……目が怖いわよ……ゲーム、ゲームだから……」


初めは自分も結城を狙っていたが止めて良かったと本当に思った。

ミラはマジもの。結城に何かあれば文字通り地の果てでも追いかけるだろう。


溺愛。そんな言葉で収まるのかと思うぐらいいまのミラは怖かった。


「ま、まぁ、そこは私達がユウを守ればいいのよ」

「そうですね!!ユウは私が守りますッ!!!」


………これからユウを狙うプレイヤーに激しく同情するティアだった。



…………………………



「………………ン…………」


結城が目覚めるとすでに周りは明るかった。

どうやら仮眠するつもりだったのだがガッツリと一晩寝てしまったようだ。

しかし未だに結城の頭はキチンと起動していないようでボヤーとしている。

周りを見渡すと何故か至るところで地面が抉れていたり木が折れていたりしている。


なんで?と首を傾げて更に周りを見渡すと"仲良く寝ている二人"を見つけた。

起き上がって小走りに走り近づくとどういうわけか所々に汚れが目立つ。

そして二人は疲れきったような、悪夢を見ているかのような表情で寝ている。


結城は何が起きたか分からないようだが、食事を終えたあと火の光に誘き寄せられたようにプレイヤー達が夜襲をかけてきたのだ。

火を消せばいいだけの話だが「ユウが風邪引くッ!!」と謎の訴えによりずっと火を消さずに現れるプレイヤーを倒しまくったのだ。


お陰でミラとティアのレベルは大きく上がりスキルも手にはいった。

それでもついに力尽きて寝てしまったタイミングで結城が起きたのだった。


そんな二人を見てあることを思い出した結城。

よく怖い夢を見たときお母さんが隣で寝てくれたことを。

とても安心出来てぐっすり寝れたことを……


だから結城は二人の間に入り横になった。

うなされているだろう二人に、ぐっすり寝てもらいたくて。

そしていつの間に結城もまた寝てしまい、まるで仲良し姉妹のように草原の中で熟睡するのだった。

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